川上弘美のレビュー一覧
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川上さんの文章は、言葉の質感や空気感が素敵だ。読んで感じるものがとても強く在るように思う。
川上さんの小説には、あやふやなこと、不安定なもの、そういった不確かなものが散りばめられていて、ぐにゃぐにゃしたようなゆらゆらしたような世界を生み出している。
ロジックのしっかりとした小説だけが良い小説というわけではないということを気付かせてくれる。
こんな風に在れればいいのにと羨むほどに物語の中に居る人間は強く美しい。
けれども私には強すぎて凛々しすぎて理想像にしか思えない。人間はもっとどうしようもなく感情豊かだと思うから。
もっと足掻くし、もっと取り乱すし、もっとみっともないはず。なのにこの作品の中 -
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川上弘美という人は、毎日なにかにちょっぴり困って、うつむいている。かと思うと、ふと顔をあげて、いたずらを思いついた童女のようににっこり笑って駆けだしている。ただし行き先不明・・・というイメージ。
いつもどっちつかずでとらえどころがなくてわからない。つまりこのタイトルどおり「あるようなないような」な人です。って知り合いでもないのに言い切るのもどうかと思いますが。少なくとも、彼女のエッセイはそんな風情を醸し出していて、それがたまらなく魅力的。
なんにもやる気がでないときは、川上弘美ワールドに浸るとなんだか癒される。
さらに、このエッセイ集のいいところは、「読書目録」とか「読書ノート」とか、彼女 -
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川上さんの小説は何冊か読んだことがありましたが、エッセイを読むのはこれが初めてです。
エッセイは、小説とはまた違った著者の一面が見られます。あのような小説を書く人は、普段、このようなことを考えているのか、こんな日常を送っているのかと新たな発見があるのが面白いです。
川上さんには、息子さんが二人いらっしゃると知りましたし、ちょっとだけ足を伸ばして、遠出をし、ビールを飲むと言った、日常を忘れる小さな旅がお好きなこともわかりました。
誰にでも起こりうるような日常の一場面を切り取って、おかしみと豊かさのある文に仕上げる表現力はさすがだと思いました。 -
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一篇が数ページという掌編が全部で26作品集められています。
写真は、そこに存在するものを、フレームという枠と、瞬間と言う時間で切り取るもの。誰でもが見られるものを、どう「切り取る」かが撮影者の技(芸)術なのでしょう。
この本もそんな感じがします。いかにもありそうな場面、人生と言う尺度で見れば一瞬に過ぎない時間を狭い視野で切り取って見せるような掌編です。
川上さんの体験では無いことは明確ですが、何故か私小説の匂いがあります。ただ、何故この瞬間が切り取られたのか、私にはどこかしっくり来ないところが多かったようです。
嵌れるか嵌れないか、結構好みの分かれる作品のように思います。個人的には川上さんに -
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読みながら、何度も「これ川上さんだったよな」と表紙を見直しました。
確かに川上さんらしい、フワフワした感じはあります。でもそれも所々です。それ以上に「何でこういうストーリーなの?」という感じのほうが強いのです。
ある人の感想に「物語世界から現実世界へ」というキーワードが有りました。これまでも「センセイの鞄」や「古道具 中野商店」のように現実社会を描いたものもありますが、それでもどこか霞がかかったような、浮世離れした感じがしました。それに対して、この作品は単にウソばなしや良い意味での現実感の無さが消えて、何だか生臭い程の現実感があるのです。
川上さんはこういう方向に向かうんですかね。私はやっぱり -
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とても久しぶりに本棚から引っ張り出して、
読みすすめてみたところ、
新しく感じ入る部分やシンクロする部分が増えていることに、
何だかかすかに誇らしい気分がした。
(鎌倉について、俳句についての部分でした)
その一方で、結局同じところに、
同じようにぐっと来ている自分に、
昔の日記を読み返して偶然気付いて、
なんだ、何も私は変わっていないなとも思ったり。
(ドラえもんについての部分でした)
歳を重ねても、
知識が増えても、
前よりお金を持つようになって、
少しはいろんな店にも詳しくなって、
一人で夜に飲みに行くくらいになっても、
結局のところ、私は何一つ、変わっていないのだと痛感。
それは -
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「最近、川上さんにはまっとるん?」
夏休みに帰省した娘に言われました。大分、私の本棚に溜まってきましたからね「椰子・椰子が良かったよ」という勧めで読んでみたのですが。
半分くらいまでは、クスクス笑いながら気分よく読んでいました。でも、途中からちょっと・・・。
何となく、夢で見そうなストーリーだなと思って、あとがき(対談)を読んだら「半分くらいかな、実際に見た夢をもとにしたのは。」という言葉がありました。それを読むと、なんだか興味が一気に半減した感じです。「こんな不思議なウソ話を良く思いつくなぁ」という驚嘆が私の興味の多くを占めていたのかもしれません。それが夢の話なら不思議なのは当然なので。。。