坂東眞砂子のレビュー一覧
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ネタバレ『死国』を書いた作家さんが、彼女の出身である高知を舞台にしている作品。
山の広大さ、自然の豊かさを思い起こさせる描写も去ることながら、40歳を超えた独身女性の空虚、そして村や家族との孤立感がひしひしと冷ややかに伝わる。
そしていつの間にか、惹かれゆく若い男の肉欲に『あんたは十分頑張ったよ!いっちまえ!』と背中を押したくなるほど、それほどまでに彼女を許し、応援してしまう自分がいた。
やがて起こる惨劇が音もなく近づいてくるのはなんとなく文脈で察せるし、"真実"はアレだろうなぁと分かってしまうのだが、それでも結末までの残り20ページがなかなかでを止めたくなるほど酷い。
目の前で身体が打ち付けられる音が聞こえるかのような恐怖心と結末を早く読みたいというひしめき合いと葛藤することになるでしょう。
なぜ彼女は孤独だったのか、なぜ年の差の二人が愛し合ったのか、なぜ墓標の前で愛を交わしたのか、隅から隅に至るまで、全てはどこかで最初から決まっていて、美希は祖先が還るための、唯の"箱"でしかなかったのではないか?と考えてしまう。
全体を読み終えて、ファンタジーとリアリティの織り交ぜ方が上手だなと思った。
現実的じゃないとこの没入感は得られないだろうし、かといってつらつら心情と事実だけを並べられてもここまでの魅力は出せないし、、、
作者本人が地方に住みつつ肌で感じただろう人の冷たさ、愚かさ、信仰や歴史、記憶への畏怖、そしてそんな環境から抜け出せなかった名も知らない人々への追悼のような、救いのような作品に感じた。
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購入済み
もっと評価されて良い名作。
初版時に読みました。電子で再読しようと購入。
映画化もされています。宝塚を退団して間もない天海祐希さんが、一世一代の《エロス》に挑戦していて、原作同様、もっと評価されて良い名画でした。
著者の「日本の古い因習に囚われた地方社会」を描いているのですが、単純におどろおどろしい話を書くのでは無く、そこに現代的な視線を当てて書いているので、読んでいて単純に恐がると云うより『日本史の陰には、こういう因習が在ったのかぁ』と、勉強している様な気分にも成り、よくある「怖い話」よりも文学的な、歴史学的な香りがあります。
『死国』もそうですが、読後考えさせられるものが残ります。 -
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「家が呼ぶ」に大興奮して以来、すこしずつ朝宮運河さん編纂のアンソロジーを買い集めている。今作も大興奮!
✂-----以下ネタバレです-----✂
はじめに収録されたタイトルドンピシャの「恐怖」は、短くもラストにドキッとする極上の作品。最初からこの作品…もう期待しかないが、続くは小松左京「骨」。じっくり掘り進められた恐ろしく壮大な情景が、蘇る記憶とともに一気に駆け抜ける大迫力に感動…。
「夏休みのケイカク」「正月女」は現代の割と身近な景色を思い浮かべつつ読み進めていたけど、オチに違ったカラーのダークさがあり面白い。
今回すごく好きだった「ニョラ穴」は、SFチックな作風。日本のこういう作品って初めて読んだんじゃないかな。世界が広がって面白い。アンソロジーの良さ。
「或るはぐれ者の死」、「雛」は現代のどこかで広がっている異様な光景に思いを馳せるような話。「雛」の、チラッと見たら鬼の形相になっているっていう映画的な描写良かったなあ。
そして一番怖かったのは最後の「人獣細工」!
冷たく鋭く人間の尊厳に切り込んだ作品で、一番本能的な恐怖をおぼえたかもしれない…。何度も「冒涜だ…おそろしい…」とつぶやきながら、ページを捲る手が止まらなかった。
面白かったのでシリーズ前作の「再生」も買おうっと♪ -
Posted by ブクログ
ネタバレどこで買ったのか記憶にはないがそこそこ最近手に入れたはずの本。
昔は角川ホラー文庫をよく読んでいたものだが、最近はあまり読んでなかったので久しぶりのゾクゾク。
帯に『「血」の惨劇が幕をあけたーー』とあるので、村人全員滅びるとか狗神に食い散らかされるとか狗神の狂気が村人に伝染して殺戮の宴が…!
という展開を予想していたのだが、特にそんなことはなく、いや、死者はとんでもない人数になってはいるけど、津山三十人殺し的なことではなかった。紙漉きを生業にする女性が淡々と暮らしていく日々が描かれていき、あんまり血の惨劇感はないなぁ、と改めて見直したら… 『「血」の悲劇』だった。
「血」… そういうことか!狗神筋の血ということか… それだったらまあ、納得の血の悲劇だわ。
最初に男性が善光寺の胎内めぐりみたいなやつをしていると、なぜか出口がわからなくなり、同様に迷っている女性と途方に暮れている間に女性の話を聞き始めると… 女性の過去語りが始まる。
女性の村には、一見支配階級にありそうな大きな一族、坊之宮家がある。その一族の人でもあるが色々あってあまり一族には関わっていない、村で紙漉きを嗜む41歳の女性が主人公。
女性は過去、若いときに子供を死産していてそれ以降は結婚もせず、一人でずっと仕事をしている。村の人達は苦手だけど、村自体は好きというおとなしい女性。平和に暮らしていければいいんだけど、これってホラー小説なのよね。
静かに暮らそうとしていたのに、若いイケメンの中学校先生と激しい恋に落ちて子供までできてしまうが、その先生は実は女性の息子というそらもうインモラル。そもそも若いときの子供も、知らなかったこととは言え実の兄との子供だったわけで、血が濃くなりすぎている!
でもイケメンも言っていたように、お互い知らなきゃ関係ないっちゃあ、ない。なにかの力が働いてるのかってくらいサバサバしすぎな気もするが。
しかし、狗神様はせいぜい主人公の憎しみに呼応して相手を呪ったり、最悪殺したりしてしまうくらいだけど、村の人間は30人以上の坊之宮家の人々を一気に焼き殺すという、桁が違う残虐さを振りかざし、しかも物語の最後で別に罪を償っているわけでもなく、ショットガンで殺人したジジイすら普通に生きているという…
やっぱいっちゃんおっとろしいのは狗神様じゃねぇ、狗神様を弑し奉ろうとする一般村人だべぇってなった。
タイトルは実は「狗神(より怖いのはやっぱり人)」なのかもしれない。
しかし、最初の男性もなにか血の関係がありそうだが、坊之宮家は絶滅してそうなんだよなぁ。 -
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古代史と日本古来の信仰に翻弄される運命を描いた恋愛ホラーの傑作 天孫降臨からの系統で大和政権を築いた人たちは、天照大御神をはじめとする天津神を信奉していた。日本古来、土着の神である国津神を退散させるために崇神天皇が鏡作職人に作らせた鏡(八咫鏡)が、伊勢神宮と賢所にある。
その更に複製が鏡作神社のご神体となっているが、盗まれていた。蛇神の妻として生贄となる女性たちが鏡によって惑わされ心に潜む情を表出させられ死を選ぶ。
多黄子、綾、玲、霧菜と、それぞれ女性たちを取り巻く事情から情念に惑わされ死を選ぶに至る心の動きが、日本古来の信仰と共に進行する様子が描写され、スリリングで引き込まれるストーリーとなっている。最後のページまで何が起こるかと期待させるところも凄い。
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Posted by ブクログ
まさしく傑作揃いというしかないホラーアンソロジーです。全部再読だけれどどれもこれも全部素敵すぎる一冊でした。
なんといっても綾辻行人「バースデー・プレゼント」が最強です。これは今まで読んだすべての作品でトップ1だと思っているし、そもそも私がホラーとミステリにどっぷりハマるきっかけになった一作なので、何度繰り返し読んでも飽きることがありません。おぞましく、美しく、そしてどこかしら穏やかで静謐な印象が強く残ります。
鈴木光司「浮遊する水」、三津田信三「集まった四人」は本当に怖くって、嫌。ホラーは怖くても楽しいと思えるものが多いのだけれど、こういう質の怖さは本当に嫌。なのだけれどもちろん大好きです。夜中にひっそり読めないというだけで……。 -
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やはり、坂東眞砂子は、おもしろい。テンポが、他の作家と違う。亡くなる前の力作であり、秀作と思う。
時空を超えた話が、違和感なく伝わる点では、タイトル、サブタイトルなどを外連味たっぷりで、出版社と売らんかなとしてかいている時代劇やミステリー作家とは、明確に一線を画しており、読みごたえがある。
この本では、作者の幅広い知識が詰め込まれ、散りばめられている。量子の世界や、放射線など、難解な学問すら、文学に転換されている。
売らんかな作家とちがい、日頃から、人というものを、その根幹である生命と生殖で見つめて、平たくいえば生と性を大事に考え抜いた作家だったと思う。
物理、医学までの幅広い知識を持って考えるこの作家は、情理だけでしか行動しないネット社会民からは理解されない子猫殺し事件発言で、自らバッシングの対象となった。
この女性の作家は、芥川龍之介や水上勉、横溝正史などと並ぶ文筆家と思うが、女性であることは、やはり違いがでる。
全てが遺作となったの今、久々に読んだ坂東眞砂子さんの作品。安物のミスがはやる中、時々読みたいと思う。
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敗戦直前から戦後すぐの時代を舞台にしたミステリー(っていうのかな)。箱根の旅館に収容されたUボートの乗組員が近くの池で死んでいるのが見つかってというところから始まり、ストーリーの面白さでぐんぐん読んでいける。
ストーリーの裏には、書中のことばでいえば、男は権力で動き、女は愛(のようなもの)で動くというテーマがあるのだろう。ストーリーテラー的な役割でもある男・法城がいろいろ思い悩みながらもいまいち行動力に欠けたり芯の弱さが感じられるのに対し、旅館の女中からジャズ歌手へと変貌していく安西リツや、ドイツの新聞記者でありながら最後にソ連とのつながりが明かされるオルガといった女性たち。リツがフワフワと心のおもむくままに生きているようなのに対し、オルガの信念に殉じる生き方も対象的。
自分としてはオルガの鮮やかな生き方を好ましく思っていただけに、あわれな末路はちょっと衝撃だった。このままハッピーエンドになればと思ったけど、その末路だからこそ、彼女の信念の強さが強調されもする。 -
Posted by ブクログ
敗戦直前から戦後すぐの時代を舞台にしたミステリー(っていうのかな)。箱根の旅館に収容されたUボートの乗組員が近くの池で死んでいるのが見つかってというところから始まり、ストーリーの面白さでぐんぐん読んでいける。
ストーリーの裏には、書中のことばでいえば、男は権力で動き、女は愛(のようなもの)で動くというテーマがあるのだろう。ストーリーテラー的な役割でもある男・法城がいろいろ思い悩みながらもいまいち行動力に欠けたり芯の弱さが感じられるのに対し、旅館の女中からジャズ歌手へと変貌していく安西リツや、ドイツの新聞記者でありながら最後にソ連とのつながりが明かされるオルガといった女性たち。リツがフワフワと心のおもむくままに生きているようなのに対し、オルガの信念に殉じる生き方も対象的。
自分としてはオルガの鮮やかな生き方を好ましく思っていただけに、あわれな末路はちょっと衝撃だった。このままハッピーエンドになればと思ったけど、その末路だからこそ、彼女の信念の強さが強調されもする。