あらすじ
敗戦から2年ほど過ぎ、まだ国は困窮と混乱の中にあったが、人々の目には興奮と輝きがあった。占領軍に呼び出された法城は、箱根の事件の原因と思しきあるものを探し出せと命じられる。重要な手がかりを持つ人物として浮かび上がったのは、あの安西リツだった。リツは東京でジャズシンガーになっているという。彼らは再び、国際的陰謀に巻き込まれてゆく──。動乱の時代を力強く生き抜く女たちを描く、著者渾身のミステリ巨編。
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Posted by ブクログ
敗戦直前から戦後すぐの時代を舞台にしたミステリー(っていうのかな)。箱根の旅館に収容されたUボートの乗組員が近くの池で死んでいるのが見つかってというところから始まり、ストーリーの面白さでぐんぐん読んでいける。
ストーリーの裏には、書中のことばでいえば、男は権力で動き、女は愛(のようなもの)で動くというテーマがあるのだろう。ストーリーテラー的な役割でもある男・法城がいろいろ思い悩みながらもいまいち行動力に欠けたり芯の弱さが感じられるのに対し、旅館の女中からジャズ歌手へと変貌していく安西リツや、ドイツの新聞記者でありながら最後にソ連とのつながりが明かされるオルガといった女性たち。リツがフワフワと心のおもむくままに生きているようなのに対し、オルガの信念に殉じる生き方も対象的。
自分としてはオルガの鮮やかな生き方を好ましく思っていただけに、あわれな末路はちょっと衝撃だった。このままハッピーエンドになればと思ったけど、その末路だからこそ、彼女の信念の強さが強調されもする。
Posted by ブクログ
「愛」という名のもとに、強く逞しく信念に向かって生きるリツとオルガと、戦争に翻弄される法城と。
ミステリー要素も良く、早く先を読みたくなると引き込まれたが、とにかく三様の生き方に、いろいろ考えさせられる。ヘラヘラしつつもどこか憎めないリツがいい。