坂東眞砂子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
坂東眞砂子 著「眠る魚」、2017.2発行(文庫)。著者、未完の絶筆小説です。バヌアツに住む伊都部彩実は父の死で帰国。福島の原発事故による放射能汚染での急死はアオイロコという病によるものか・・・。後半、彩実の舌の腫瘍が悪性の舌癌とわかり入院に。このあたりから著者自身に重なってきます。本作品は手術前の段階で絶筆となっています。著者は、実際は東京の病院に入院中の所、故郷に帰りたいとの希望が受け入れられ、高知の病院に転院し、亡くなられました。
坂東眞砂子さん、2014.1.27、故郷の高知でお亡くなりになりました。「眠る魚」(2014.5)は、未完の絶筆長編です。巻末に著者の著作が整理されていま -
Posted by ブクログ
現代(よりちょっと昔)パートと戦時中のパートが交互に語られる。
現代は三人称で、戦時中は早夜の視点で。
それが交差した時が物語のクライマックスになる、と思ったのだけど。
現代パートの主人公・額田彩子は出版社で画集を編集している。私生活では自分勝手な同棲相手と別れた直後。
戦時中のパートは美術専門学校を中退した早夜が、奔放な生活の果てに愛した画家・西游(さいゆう)と、美人で金持ちの新進画家・美紗江との三角関係に苦しむ話。
この西游というのが、生活力がなくて女好きのくせに、自分の芸術に対しては一切の妥協をしないという自己チュー男。
しかし、だからこそ、離れられない二人の女。
自己チューという -
Posted by ブクログ
高知のひなびた穏やかな田舎の集落の人々に巣食う狂気。著者自身が村八分になった体験をもとにした恐ろしい小説。田舎の社会が実は和やかなものでなく因習に捕らわれていたり互いに見張り合うような窮屈さを備えたものだということはよく言われもすることだし、都会を好む地方出身者がよく言うこと。そうしたムラ社会の恐ろしさを描いている。
くさいものにふたをするかのように思考することをやめ、真実を知ろうとせず今日だけのもろい安定と異なる軌道外の言動をたたく世間というものの圧力が日本全体に満ちていると思う。著者の言うとおり、それは過疎や限界集落のような末端こそ濃縮して現れるものかもしれないが、一方で都会の駅や電車内で -
Posted by ブクログ
ネタバレ時は中世イタリア。当時パドヴァに暮らした修道士アントニオは、人智を超えた不思議な力で数多くの奇蹟を起こし、人々を病苦・死から救い出したという。彼の死後七百年以上経った今も、その聖性は人々の心に脈々と生き続け、その証として崇められているのは、彼の干からびた舌であった…。表題作の地パドヴァ、魔女伝説が残るトリオラ、鞭打ち苦行の儀式が行われるチェリアーナ、魔都と呼ばれるトリノ等、直木賞作家の著者が、イタリア中世の奇蹟と神秘の地を訪ね歩き、彼らの魂と深層を探りあてた、知的好奇心溢れるエッセイ。(裏表紙)
都市に歴史あり、と感じた一冊。
万が一、イタリアに行くことがあれば、ほかのガイドブックと一緒に持 -
Posted by ブクログ
2017年、25冊目は主に隙間読書用にしていたヤツ❗
今昔物語を下敷きにした、短編を、10編収録。今回もタイトルだけ紹介。
鬼に喰われた女
死ぬも生きるも
空虚の板
生霊
月下の誓い
歌う女
蛇神祀り
稲荷詣
油壺の話
闇に招く手
正直、凄く好き、と、微妙、の狭間の一冊。
隙間読書用としては、1編、30p前後で、内容&分量的にはベスト。その点でも、★★★★☆評価。
ただし、コレは通し読みした方が良かったかも(?)とも思う。いわゆる、頭の中、平安の京の都へ送られちゃうから。現実との、切り替えが少なからず、必要なのよね。
いわゆる、古典(古文)の世界観、鬼、モノノケ、お稲荷さんの類いと -
Posted by ブクログ
ネタバレこわかった!!もうその一言。
・・・・百人一首のあの歌・・オソロシイ。
昔あの歌に惹かれて天の香久山まで登ったんですが、この小説後は感じ方が
変わりそうです。((笑))
ちなみに地元で売っている「白妙の衣」をイメージした「鵜野讃良」という和菓子
が好きなんですが・・今後うををを!と思いそうです。
古語をちりばめた文体に最初は読みにくかったんですが、慣れてくると世界観が
はっきりしてきてよかったです・・。
ネタバレになりますが、後半のクライマックス。
寝所で横たわる讃良が「お前を見つけたぞ」的な表情するのが・・オソロシイ。
読み終わった後、トラウマになりそうでした。トラウマになりそうなときは
-
Posted by ブクログ
徳島県は祖谷渓にあるかずら橋を2度ほど訪れたことがあり、書店で本作を見かけたときにそれを思い出して購入。しかし本作はそんなノスタルジックな気分をかき消すような、少し陰鬱な気分になる中編三作が納められた作品。
「一本樒」「恵比寿」は地方での安寧な暮らしぶりが、外界の異物ーー坂上と鯨の糞ーーによって歪まされてしまう様子が描かれている…んですかね。どちらも地方の主婦が主人公で、“香気”が意味有りげに登場するところが共通しているように思います。
「一本樒」は昼ドラや二時間サスペンス的な印象。ストーリーの面白さよりは、樒の香気が“美しいもの”から不気味な印象に変わってしまうところが不思議と強く記憶に