坂東眞砂子のレビュー一覧

  • 蟲

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    これがホラー小説大賞佳作とは思えない文章力。自分は本当に巧いと思った。
    男と女という性を強く意識させられる、繊細で丁寧にかつねっとりと描かれた心情や思考は著者独特の領域。妄想ではないかという疑いをうっすらと持たせられながらも進行していく描きっぷりは「ローズマリーの赤ちゃん」を連想した。振り返ると、大きな流れはホラーのお手本のような展開だけれど、主人公と夫との関係が見事に小説として面白くて、そこが読みどころかな。

    作中にたびたび挿入される海外の戦争のニュースは、何となく意図がわかるようなわからないような。主人公の強迫観念的な恐怖と、社会という外部の終末的な(けれど現実感のともわない)恐怖が重な

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    2013年06月06日
  • 隠された刻―Hidden Times―

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    南の島に古くから伝わる砂絵サリタを軸に、戦前、戦争末期、そして現代のストーリーが交代で進んでいく。途中からは、死んだ人間の視点も時折加わり、それぞれのストーリーがひとつにつながって、伝承の謎も解明された…と思いきや、時間が巻き戻され…。
    夢だったというよりも、もうひとつの未来だったのか。

    視点が変わるたびに、前の段の言葉をつないでいく手法も凝っていて、うまい。勤勉とは対極にある、南の島の粗野な力強さは、作者の得意とする舞台設定で、描写にも熱い息づかいを感じる。

    直木賞を受賞した山妣の印象が強烈で、ずっと追いかけているが、じつのところ最近はピンとくる作品がなかった。本作は、久し振りに読み応え

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    2014年08月13日
  • 逢はなくもあやし

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    ~5月3日

    旅に出たまま戻らない恋人を探すため、OL・香乃は彼の故郷である奈良・橿原を訪ねる。しかし彼の母親から彼は既に亡くなったと告げられる。「すぐ戻るから待ってろよ」と言ったのに、なぜ…。時が止まったような町で答えを探す香乃は、考古学者から亡き夫の復活を待ち続けた女帝・持統天皇の逸話を聞かされる。「待つ」ことの意味とは―時を超え、男女の想いが交錯する。書き下ろし長編小説。

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    2013年05月03日
  • 死国

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    四国と死国の意味。古事記をモチーフに、四国が死国であるがため、代々様々な役割をこなす人々。役割に着く前に早世した少女の復活。死者の復活のより、忘れていた過去の過ちにさいなまれる老女。

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    2013年03月16日
  • 逢はなくもあやし

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    鸕野讚良の最後の解釈が、なるほどね。と思った。
    そうかもしれない。
    「朱鳥の陵」を読んだばかりだったので、なおさら

    篤史の母と鸕野讚良が重なる。 
    香乃は額田と重ねているのか

    私は待たない。過去ではなく今を、これからを生きる。
    2011の東日本大震災の後に書かれたこの話は、そう宣言しているようだ。

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    2012年11月22日
  • 傀儡

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    小さい妖精みたいなものが現れるっていうのは、本当に良い芸を実際によく観ているからこその表現だと思う。まあその点も含めラストに関してももっと巧く描いてくれないと、良い芸に妖精が現れるというエピソードが陳腐になってしまうことが個人的には残念。全体に流れる雰囲気は基本的に好きだし4.5の高評価にしたい。

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    2012年10月30日
  • 傀儡

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    北条氏の専制体制を確立した宝治の乱を起点に、平安時代中期以降に流行した今様、傀儡、鎌倉時代に始まった踊念仏などを取り入れ、タクマラカン砂漠に故郷がある宋の禅僧の目で当時の日本の状況を描いた物語

    鎌倉中期の武士による政治に代わろうとしている状況を背景に
    信仰に生きる人と市井に生きる人々、信仰の本質を問いかける作品

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    2012年09月29日
  • 狗神

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    ネタバレ

    横溝作品のどろっとした部分を抜き出してモチーフにしたような作品。
    憑き物筋という家系に一生を翻弄される女性の諦観や情念がわかりやすく・でも情感たっぷりに描かれていて面白かった。
    最後まで血筋に振り回され、ついに幸せを手にすることができなかった主人公・美希の無念さに涙。

    「死国」に比べると大風呂敷を広げないし視点が主人公に固定されてるので話を集中して追えて、こっちの方がのめりこめたな。

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    2012年09月12日
  • 死国

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    ネタバレ

    展開が早く文章も上手なんでさくさく読めました。

    生者と死者の対比が小野不由美の「屍鬼」を連想させる。
    少女の粘りつくような執念が恐ろしかった。

    怪奇現象に散々悩まされてるわりに主人公の比奈子と文也の行動が能天気すぎる気がした。
    読んでる自分ですらぞっとしたんだから、登場人物二人もあんな目に遭ったら暢気にハイキングなんていかずに屋内に閉じ篭ったりするんじゃないかな。

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    2012年08月29日
  • 死国

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    板東眞砂子。好んで読んでいた作家の一人。生と死、それに纏うような男と女の愛憎。古来伝承を交えながら話が展開していき、どっぷりとその世界に引きずり込まれる。いつもながら、凄い。

    「生きていくとは、こういうことだ。山積する問題を背負いこんで歩く。それが亀の甲羅。」だけど「甲羅を抱えこむこと自体、生きていることの証、生者の特権だ。」と…

    生とはそういうもの。

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    2012年05月12日
  • 曼荼羅道

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    曼荼羅道を探しに行くといって出て行ったまま行方不明になった麻史と静佳。
    戦局が厳しくなりまた戻るといったまま日本に帰国した蓮太郎とサヤ。
    歴史を超えたストーリーに、楽しく読めた。

    12/03/22-35

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    2012年03月22日
  • 蛇鏡

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    今年初めての一冊は、日本人でよかった~!と思える伝奇小説。坂東さんの狗神に衝撃を受けて、虜になってしまった。これも、日本的な湿った怪奇小説で、舞台が奈良の土着的なお話。とにかく世界観がドハマリなんです。好き嫌いあると思うけど、日本人でヨカッタ!

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    2012年01月03日
  • 逢はなくもあやし

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    久しぶりの坂東さんを読む。

    今度はどんなドロドロした怖さが出てくるのかと、怖いものみたさで読み終えたけど、意外とアッサリ系だった。

    ただ、この本の「待つ」というテーマは、しっとりとワタシの心にしみ込んだ。
    ワタシも、密かに待ち続けてるのかもしれない人がいるから。

    ・・・この世のヒトだけどね^^

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    2011年10月16日
  • 道祖土家の猿嫁

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     最初、道祖だの猿嫁だのという単語があったので、民俗学を取り入れたホラーなのかと思いましたが、全然違って、蕗という一女性の一代記でした。
     蕗は猿みたいない顔なので、嫁入りしたときに「猿嫁」と軽蔑されます。しかし懸命に、地道に日々励むなかで、次第に閉鎖的な村社会にも受け入れられていき、かけがいのない存在へと変わっていきます。
     もちろん架空の人物ですが、土佐地方の歴史を織り交ぜつつ、明治・大正・昭和と激動の時代を股にかけて、次々に襲いかかる困難に力強く立ち向かう主人公の生き方が、とても痛快です。
     こういう小説を大河小説というんだな、と納得した作品です。

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    2017年08月15日
  • 葛橋

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    表題作を含む中篇小説が3本収められています。
    ミステリーでもホラーでもないけれど、人間の心の奥深くに潜んでいる説明のできない“不思議さ”のような部分がどの話の中にも書き込まれています。

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    2010年12月04日
  • 狗神

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    最後まで展開読めなかった!
    なんか日本の古来風習とか、日本人っていう生き物を考えてしまった。
    映画化もされているようで、今度見てみたいと思いました。

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    2010年07月24日
  • 蛇鏡

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    板東さんのホラーにはまっていた時に読んだ本。
    霧菜に、すごく共感してしまった。

    怜が元彼のことを考えている時の
    ・私は浮き輪のように彼にしがみついているだけなのかもしれないという言葉に考えさせられた。
    あぁあたしもしがみついてたのかも。

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    2010年04月14日
  • 桃色浄土

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    四国へんろの区切り打ちから帰ってきたときに見つけた一冊。
    子供の頃に読んだ『お月さんももいろ』と、補陀洛渡海の合わせ技。すごいねこのヒト。エログロのイメージがあったけれど先入観持つのは食わず嫌いとおんなじなんですなー。
    あらためて、『死国』なんて読んでみよーかしら…。

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    2010年02月21日
  • 蛇鏡

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    ひっそりと歩み寄る恐ろしさを感じる秀作。
    心の弱い部分につけ込まれるとどうしようもなくなる様は、共感できるだけにわかっていながらも罠に嵌っていく心境にさせられる。

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    2009年10月07日
  • 桜雨

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    ジャンルはホラーサスペンスと言えるだろうが、
    ロマンス要素もかなり強かったと思う。
    三角関係に絡む一枚の絵画の謎解き。
    最後の最後にハッとするような結末が!

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    2009年10月04日