坂東眞砂子のレビュー一覧
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ネタバレ栗山千明様の表紙ではなく、皆川博子様「巫子」みたいな装画の版で読みました。
映画は観ました。栗山千明様は美しいし夏川結衣さんも美しいし根岸季衣さんは怖いし筒井道隆さんはフラフラしている……あんまり怖くない作品でした。
3人の三角関係が中心だったようで、小ぢんまりしていた印象でした。
原作は、3人が幼少期を暮らした矢狗村や神の谷、石鎚山すべてを巻き込む死者の蘇りで、大ごとになっていました。
復讐される人もいれば、「会いたかった…」と還ってくる人もいました。哀しい。
修験者は石鎚山の山頂で鎮めて、神の谷では再生した莎代里を死の国に戻すために、死の国から日浦康鷹がやってきて連れ帰る。照子さんを振り切りながらなのでアツい…!願わくば、これを大杉漣さんで観たかったな…
狭いコミュニティだと、噂はすぐ広がるから、何か話題が出たら「どこから知られた?どこまで拡がってる!?」と疑心暗鬼になってしまい避けるようになるのはあるある。人も土地も。
四国にはいまだにいったことがないのでますます行ってみたくなりました。
石鎚山、2000m近くあるのか!観てみたいな〜 -
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基本的に大体の時間は良質な恐怖作品を摂取したい!と嗅ぎ回っているような生活をしている。しかしどういうタイプの怖い話を摂取したいか、というのは日によって随分異なる気がする。
アンソロジーの良いところは、特に下調べせず手に取っても、なにかしら気分にぴったりな作品に出会えるところ。
今回しっくりきたのは三津田信三『集まった四人』、小池真理子『山荘奇譚』。
山あいの怪談が気分だったのかもしれない。
ーーーーー以下ネタバレーーーーー
三津田信三『集まった四人』
これ絶対アカンやつ!という序盤の電話シーンや神社絡みの伝説から期待膨らむ。知らない者同士で曰く付きの山に行くとか嫌やなぁ...。山あいにある謎のカモフラージュ入口や、やっぱり用意されてた魅惑的な石、という展開も良すぎる。山居に関してもかなり期待した通りの描写・きれいなオチで、一編読むだけでかなり満足度の高い作品だった。
小池真理子『山荘奇譚』
語り手が直接怖い体験をするのかと思いきや、部下を介してひたひた迫ってくるのが面白い。地下での出来事が伝聞に終始するのが逆に余白があって怖い気がする。 -
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ネタバレ角川ホラー文庫ベストセレクションの第二弾。今回も8名の作家の8作品だった。特に印象に残ったのは以下の3作品。
「骨」小松左京
なにかに突き動かされるように庭を掘り続ける主人公の姿が最後に悲しみを誘った。何かを思い出しかけているという描写がよかった。
「或るはぐれ者の死」平山夢明
こんなにも悲しい話だとは思わなかった。自分だけでも死者を埋葬しようとしたその清らかな心は悪意に踏み躙られる。
「人獣細工」小林泰三
この作品が最も衝撃だった。自分と父の秘密を探らずにはいられない、そのはやる気持ちが痛いほど伝わってくる。凄まじいラストだった。 -
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ネタバレ高知の山村、郊外の村を舞台にした短編集で、5編が収められている。
まず表題作の「神祭」と「火鳥」と「隠れ山」の3編は嬉才野村を舞台にした作品。
前者は老女由喜の回想譚。
畑の物、海の物、山の物を氏神様に捧げて五穀豊穣を願う神祭。とはいえ、親戚一同が会して宴を行うだけの特にこれといって変わり映えのない祭りだったが40年前の神祭で由喜は今も忘れらない事件がある。それは当時男子に恵まれなかった由喜夫婦のために、精がつくと云われる鶏の生血を夫に飲ませようということになり、親戚一同、盛り上がっていた。夫が暴れる鶏を抱え込み、従兄の敬一が首を刎ねたのだが、首の無い鶏はそのまま裏山に飛び込んで消えてしまい、親戚一同で探索するが、見つからないづくだった。その後、由喜は子宝に恵まれたのだったが・・・。
「火鳥」は村にある二畳ほどの広さしかない蔵番小屋に住む未亡人みきの話。
その小屋の隣に家を建てて住んでいたみき夫婦はその肉を食べると祟ると云われていた全身真っ赤な鳥ミズヨロロを食べたために火事で家と家族を失ったと専らの噂だった。しかし村の少年竹雄はいつも満ち足りた表情をしているみきを見て、みきが不幸であるとは信じかねるのだった。ある日、竹雄はみきが川で全裸で水浴びをしている所に遭遇する。それは竹雄の性の目覚めであった。それがきっかけでみきと時々交わる事になった竹雄だったが、ある夜、我慢できなくなり、みきに夜這いをかけようとするのだが。
「隠れ山」は北村定一という村役場の課長が突然失踪するという話。
家庭菜園と亡き母の墓の世話を唯一の趣味にしている何の特徴の無いこの男らしく、いつものようにふらっと出掛けたまま、それっきり帰らなくなってしまったのだった。村の消防団で山中を捜索するが、どこそこで見たという噂があるだけで、その行方は杳として知れなかった。しかし、失踪1ヵ月後、頭から血を流して佇む定一の姿を見たという人物が現れる。しかし、それは北村定一という男がその後、繰り返す奇行の始まりでしか過ぎなかった。
4編目の「紙の町」は嬉才野村の近くにある白糸町を舞台にし、そこに住む知恵遅れの老女ヒサの一日の散策とそれに伴う生い立ちの回想譚。
最後の「祭りの記憶」は戦後10年目のよさこい祭りで起きた外国人殺害事件を扱った作品。
外国人の殺害事件が起こった祭りのとき、田宮良則は現場の近くに居た。その時、不意にすれ違った恍惚な表情を浮かべた若者の顔に見覚えがあった。記憶を辿り、それがかつての教え子村上卓雄だと気付く。隠居前、蓮浜で学校の先生をしていた田宮は当時大人しく、これといって特徴の無かった卓雄が犯人ではないかと思い、蓮浜へ赴く。当時と変わりの無い街並みを歩きつつ、かつての教え子やその親たちと邂逅しながらも当の卓雄には逢えないのだった。数日後、はりまや橋の料亭で働く卓雄の母親を訪れたその足で再び蓮浜を訪れた田宮が見たものは・・・。
土俗ホラー作家として名高い坂東氏だが、本短編集ではホラー色がでているのは最後の「祭りの記憶」ぐらいで、その他は日本昔話や「世にも奇妙な物語」を髣髴させる御伽噺とか「奇妙な味」作品群である。
今までの短編集もそうだが、30~40ページ前後の短編とは云え、その濃厚な筆致は全く薄まっていない。逆に時にどぎつさを感じさせられる情念は成りを潜めている分、その文章は洗練された印象が強い。
5編とも外れはなく、どれも読み応え十分。
表題作の首の無い鶏のアイデア、「火鳥」の南国を舞台にした少年の性の目覚めとギラギラした情欲の話、「紙の町」の知恵遅れの女ヒサが辿ってきた人生譚、「祭りの記憶」の引退した教師が遭遇する蓮浜という一見善良な町民が行ったある秘密、等々非常にコクがある。
そして個人的なベスト作品は「隠れ山」。何の特徴もない公務員の男があるとき、ふらっと失踪する。その発端自体は決して珍しい物ではないが、その後の展開に着想の冴えが光る。
その定一が出くわした人々に当たるとも遠からずの町民の噂話をしては山へ帰っていくというのが面白い。それが町の混乱を引き起こすのだが、そこでカタストロフィが訪れるのではなく、それをありのままに受け入れる村社会の、懐の深さというか、暢気さが非常にいいのだ。
そして坂東作品に通底する人の起こす物事は性の衝動に起因するという考えはここでも常に述べられており、特に知恵遅れのヒサの口を通して語られる、「下半身にいる別の生き物」や「昼と夜とでは人は変わる」といった表現は痛烈である。
そしてこれらの話は全て何かが解決するわけでもなく、物事は起こった後も、そのまま秘密のままに残される。本格ミステリとは対極に位置するが、これもまたミステリ。謎は謎のままなのが世の常なのだ。
初期の『死国』、『狗神』、『蛇鏡』、『桃色浄土』、『山妣』、そして短編集の『屍の聲』などでは、それぞれの人が抱える人間の業が情念の渦となり、最後の最後にカタストロフィとして、それぞれに人生の終焉や無限に続く不幸を投げかけるといった作風だったが、先の『葛橋』や『道祖土家の猿嫁』以降、本作も含め、物事が起こるが、それで皆が不幸を迎えたり、生活が破綻するではなく、その後も人の営みは続くのだという風に変わっている。
これはもちろん創作者としての成熟もあるのだろうが、当時タヒチに在住していた著者が異国で体験する事も関係しているのかもしれない。 -
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ネタバレこの小説は猿に似た風貌から猿嫁と呼ばれた蕗の一生を明治中頃から現代に至るまで日本の歴史の移ろいを重ねて語ったもの。そこには自由民権運動から始まり、日露戦争、太平洋戦争、東京オリンピックなどが蕗の人生に織り込まれ、彼女の人生に色んな影響を与えていく。
また作者の緻密な筆致は健在で、吹きぼぼ小屋、若者の間で行われた和歌の会などの当時の風俗、火振村の伝統行事である七夕祭りに、その時に行われる女房担ぎなる駆け落ち、「女の家」という風習、道祖土家の先祖を讃える玄道踊りなどを交え、エピソードに事欠かない。
火振村の大地主の長男の嫁として迎えられた蕗は、予想に反して大地主の嫁として村に一目置かれる存在として扱われずに、家内では舅、姑、そして夫にこき使われ、半ば下女のように使われる。家族に隠れて飲む酒を唯一の愉しみにして、明日をまた生きるのだ。
そんな彼女にも転機は訪れる。一度目は夫を亡くして実家に帰ってきた義姉の蔦の父知らずの子を引き取ると決めた時。そこに母親としての強さが芽生えるのだった。
二度目は後に火振合戦と呼ばれる警官と自由民権運動を支持する者達の戦いにおいて、夫と家族を助けるために、牛馬を放ち、警官達を一網打尽にする。
しかし、それらは蕗にとっては一時の転機に過ぎず、蔦の子、秋英は学生時分に家出して、音信不通となり、火振合戦で牛馬を放つきっかけとなった大楠からの啓示から家に植わる大楠を生き守様と拠り所にして、報われない日々を生きていくのだ。
そう、この主人公はいやに報われない。
村の者達から猿嫁と馬鹿にされ、家では下女同然の扱いを受け、老境に入ってからも戦争で若い労力を取られることでなかなか隠居できずに家事に追われる始末。
そして、子供4人のうち、1人は家出して行方知れず、1人は台風に河に落ちて死亡。さらに将来を期待された孫、辰巳に関しては太平洋戦争でビルマへ出兵し、そのまま還らぬ人に(最後にサプライズあるが)。
こういった境遇はもちろんながらも、最も酷いと感じたのは、蕗がセックスにおいて女性の悦びを知らずに死んでしまったことだ。
92歳になって始めて孫夫婦の交わりを目の当たりにし、夫婦の営みとはかくも心地よい悦楽を得られるものかと愕然とするその事実。その股座に手を当てても渇ききってしまっており、もはや潤いは沸かない。その事実に蕗は涙を流すのだ。
この扱いは確かに残酷だと思う。ここに蕗の人生の答えが出ていると私は思った。
人生、楽しい事は僅かしかなく、大抵が辛い事だろう。価値観が多様化した今、全ての人がそうであるとは云わないにしても、ほとんどがそうだと思う。
しかし、そんな毎日の中に、確かに幸せを感じる瞬間はある。
実際、自分の人生を振り返っても、幸せの時というのは頻繁にはないにせよ、決して少なくはない。そんな事を思い浮かべながら、老後に、人生楽しかったと感じるのではないだろうか?
しかし、この蕗の人生はどうだろう?
道祖土家の知り合いの紹介で断るに断りきれない気まずさから結婚した夫清重は、蕗との間に夫婦愛というものを介在せず、単純に身の回りの世話をし、時に欲情を覚えた時には一方的に交わるだけの女としてしか蕗を見ない。
最初は猿に似た風貌を注視するのを避けて向き合っても視線を宙に浮かして喋るほどだ。
夫婦間との関係がそんな状態だから、蕗は常に居るべき所にいず、居てはいけない所に腰を据えている居心地の悪さを常に感じながら、とうとう生まれ故郷の狭之国に還ることなく、一生を終える。
一度、離縁を決意して里帰りを決行した時もあるが、結局は引止めに来た夫に負けてそのまま還ってしまった。もしあの時故郷へ帰っていたらという思いが最期の間際でも過ぎる蕗。
これは人生のターニング・ポイントを見過ごした者の行く末を描いた小説なのだろうか。
いや、必ずしもそうではない。
作者は道祖土家に残った蕗を中心に道祖土家の血縁者ら、蕗の子供ら、孫らのそれぞれの旅立ちを描くが、彼ら・彼女らが決して幸せになったという風には書いていないのだ。
作者のメッセージは終章に出てくるある人物からの手紙に書かれている、「常に自分の真の故郷は(中略)母と子供のいる場所だ」の一文になるのだろう。
とすると、作者は蕗の一生は幸せだったと云っているのか?
幸せとはこういうものだと云っているのだろうか?
ここに来て私は、またもや首を傾げてしまうのだった。 -
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ネタバレ坂東眞砂子氏の中編集。彼女お得意の土俗ホラーというものではなく、2編が怪奇物で1編が奇妙な味系か。
まず怪奇物2編は冒頭の「一本樒」と末尾の表題作。
前者は妹のやくざ紛いの情人が姉夫婦の家を付き纏うというお話。ネタ自体は特に目新しい物はないのだが、樒やまたたび酒などの小技が効いている。
後者は妻を亡くした男が仕事の忙しさに疲れ、故郷の徳島に帰った時に出くわす怪異譚。
この作品のモチーフとなっている葛橋は私も祖谷にある物を渡った事があるだけに興味深かった。古事記の伊邪那岐命の話から葛橋はあの世とこの世を結ぶ橋という設定を生み出した(実際そう伝えられているのかもしれないが)坂東作品の王道であるが、処理の仕方がいまいちか。
残る1編は奇妙な味とも云うべき「恵比寿」。
高知県の漁村に住む主婦、宮坂寿美が主人公で、サラリーマンから漁師へ転身した夫、3人の子供に舅姑の七人家族を支えて毎日慌しく過ごしていたある日、いつものように夫と子供らを送り出してパートに出かける道すがら、海岸に打ち上げられた奇妙な物体に気がつくことから物語は始まる。
淡い灰色のその塊はぐにゃぐにゃと柔らかく泡を固めたような物だった。家に持ち帰ると舅はかつて自分が漁師だった頃に南方の島で異国の者に見せてもらった鯨の糞だという。恵比寿様の贈り物だといって神棚に奉納していたが、寿美は娘の個人面談の時に娘の担任教師にその物体について尋ねたところ、龍涎香という抹香鯨の結石で香料として使われ、非常に価値のあるものだという。宮坂一家はその知らせに大金獲得の夢に思いを馳せるのだが、というストーリー。
坂東作品の中では珍しくどこかコミカルであり、新機軸として面白く読んだ。皮肉なラストはちょっと余計かなとも思ったが、この作者らしからぬ処理の仕方に逆に好印象を持った。
各3編に共通するのはどれもがどこか片田舎を舞台にしているということで、それぞれが小市民ながらも一生懸命生きているという生活感が滲み出ているところ。坂東作品の持ち味である登場人物が抱える業が無いのも珍しいと思った。『屍の聲』が短編であるのにもかかわらず、それぞれの登場人物が業を抱えているのにだ。
しかしそれゆえにちょっとあっさりとした感じがするのも確か。
全く贅沢なものである。 -
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ネタバレ今まで四国、奈良と古き因習の残る小村、または町を舞台に伝奇ホラーを展開してきた坂東氏が今回選んだ舞台はなんと東京。しかも本作はホラーではなく、戦前の画家の探索行と昭和初期の情念溢れる女と男の業を描いた恋愛物。
しかし、舞台は東京といっても年寄りの街、そして仏閣の街、巣鴨。やはり死がテーマの一部である。
物語は混乱の昭和初期を生き抜いた二人の女性の物語を軸に、戦前の画家西游を巡る現代の物語が展開する。
当初本作の主人公とされた額田彩子のストーリーよりも五木田早夜と小野美紗江という対照的な二人の物語の方が比重が大きくなり、またその情念の凄さから物語自体、かなり濃密である。
この二つの物語についてはそれぞれの人生観が特徴的に表れていると思う。
雪深い新潟の地を出るように上京し、画家を目指すが、人生に翻弄されるがままに生きていき、西游という狂乱の画家と出逢う事で愛憎に苦しみながら生きてきた早夜は「人生は食べてしまった饅頭のように何も残らないものだ」と述懐する。
一方、同棲相手から逃げるように飛び出し、未練を残しながらも新しい生活に向かおうとする彩子は「散った桜が消えないように、人生も過去に思いを馳せつつ残り続けていく」と考える。
何もかも失ってしまった早夜―最後に命さえも失った事が解るのだが―と三浦英夫との同棲に失敗した思い出が色濃く残る彩子。この二人を象徴するのに最適なエピソードだと思った。
そして早夜と美紗江の過去の物語の登場人物全てが不幸であるというのもまた坂東氏の特徴がよく表れている。
早夜は元より、その類い稀なる美貌と絵の才能を持っていた美紗江もまた西游に人生狂わされ、緑内障により、画家の道を閉ざされ、生涯独身を余儀なくされる。
そして榊原西游も周囲の人生を狂わせる事で絵の才能の糧にし、女の内面を写実的に描き出す。しかし空襲でその作品のほとんどは焼き尽くされ、現在では最早忘れ去られた存在に(実在の人物なのかどうかは解らないが)。
そして早夜の上京時からの良きパートナーであった有馬雄吉もまた、新進の俳優の道が開ける正にその時、戦争に徴収され、顔に火傷を負い、俳優の道を閉ざされ、家業の桶屋を継ぐことになる。しかも妻と子供は空襲で爆死するといった有様だ。その死に様は身寄りの無い年寄りの孤独な死である。
この救いの無さは一体何なのだろう?
しかし、前述したように過去と現在との物語では断然過去の物語の方が面白い。
これから判断するに、人の不幸こそ面白い、というのが坂東氏の物語作法なのだろうか?
しかし、私はこの物語は失敗作だと思う。
いや、失敗作というのは適切ではない。未完の作品だと思う。
過去と現在の物語の濃度に差がある故にバランスを欠いているように感じるのだ。
主人公の予定だった彩子がなんともぼやけた存在になってしまっている。
行きつけのパブ「リンダム」の常連達である弥生と大磯夫婦など個性あるキャラクターもいるのに物語があまり膨らんでいない。
しかし何といっても物語の結末の仕方がすべて曖昧なのだ。
はっきりした答えなど必要ない、感じたことを信じればそれでいいのだ。
確かにこれも一種の結末の付け方だろう。しかし、なんとも据わりが悪い。
今回、死の象徴とされた蝙蝠傘を持ち、「都市は冥界である」と唱える男の正体、絵の作者、西游の行方、美紗江の真意。
これら全てが未解決であるから余韻を残す結末ではなく、どうにも消化不足のような気がしてならない。
ミステリではないからと云われればそれまでだが、あと少し書き込めばなかなかの傑作になったのではないかと思うのだが。 -
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なぜこの本を予約したのかさっぱり思い出せません。ともかく読んでしまう。
1993年角川ホラー文庫創設。そこから30年あまりの作品の中から精選収録のアンソロジー。
竹本建治「恐怖」1983
小松左京「骨」1972
SFっぽさあり
宇佐美まこと「夏休みの計画」2017
新しいなって思う
坂東眞砂子「正月女」1994
女の嫉妬の怖さ
恒川光太郎「ニョラ穴」2013
平山夢明「或るはぐれ者の死」2007
都会の隅で見過ごされる悲しさ
服部まゆみ「雛」1994
雛人形の怖さと女の情念の怖さのダブル
小林泰三「人獣細工」1997
ありえなくもない豚と人間の相互移植
坂東さんの正月女は、言い伝えにまつわる話。死期が近い若い妻が死んだ後の夫への嫉妬。諦めきれない思いや、優しげだけど裏がありそうな家庭の状況等、怖いより上手し。
たぶん、坂東さん読みたかったのだと思う。
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【2024年10冊目】
ホラー小説のアンソロジー!1作目から怖くて、「どうしよう寝れない怖い」となりましたが、いろんな作家さんのホラー小説が味わえて、結果オーライでした!
1番怖かったのは、やはり「浮遊する水」でしょうか。「仄暗い水の底から」も拝読したことがあるので、多分読んでるはずなんですが、当然のように覚えてなくて、恐怖再来でした。今でもCM覚えてます、蛇口から髪の毛出てくるやつ。あれようお茶の間に向けて流してたな。
「猿祈願」もぎょっとする話で、あんまり想像しないようにして読みました。因果応報なのだろうか、でも子どもに罪はないのに…。
「影牢」はさすがの宮部みゆきさん!といった文体と、ただでは済まさないぞという結末が素晴らしかったです。本当に何読んでも外れない方ですね。
読んだことのない作家さんの話も読めて楽しかったです。でも、怖かったんで話の内容はなるべく記憶から消すようにしたいと思います!