坂東眞砂子のレビュー一覧

  • 蛇鏡

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    「死国」「狗神」などで知られる坂東眞砂子氏のホラー・カルテット(実質)最終作。
    「死国」から変わらない、作者独特のテンポのよい語りのスタイル、土俗的暗さを持つムラの描写はそのままに、ストーリーの展開、登場人物の描き方、そして神話・民俗学的奥行きの深い世界観が完成を見た。
    舞台は他の小説の舞台と異なり、奈良であるため、方言は奈良弁である。作者は、大学時代奈良に居住していただけあり、方言も自然である。
    個人的にはホラー・カルテット最高の傑作だと思うのだが、なぜか他作品に若干知名度が劣るのが残念でならない。

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    2009年10月04日
  • 死国

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    VHS全盛期の頃に映画『死国』を鑑賞した時に、この設定は中々面白いなぁ〜という印象があったので、原作を読んで見る事にしました。
    本作は映画の内容を細かく描かれホラー要素半分、恋愛要素半分といった感じで、淡々と複数視点で物語は進み、後半から一気にピークにぶち上げる。そのスケールのデカさは映画を凌駕していた。しかしこの物語は何とも悲哀に満ち溢れてた話で、紗代里が「死んだら〇〇〇」というセリフはかなり切なすぎて言葉も出ませんでした。

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    2025年11月22日
  • 影牢 現代ホラー小説傑作集

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    誰もが知っているような作家の短編集を八つも集めたホラー短編集。
    特に面白怖かったのは、宮部みゆきさんの「影牢」と、三津田信三さんの「集まった四人」、小池真理子さんの「山荘奇譚」、有栖川有栖さんの「赤い月、廃駅の上に」
    あくまでも自分の好みというところですが。

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    2024年11月22日
  • 影牢 現代ホラー小説傑作集

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    傑作ホラーを集めたアンソロジー。1993年以降に発表された全8編を収録する。「七つのカップ」の姉妹編。
    浮遊する水(鈴木 光司)
    猿祈願(坂東 眞砂子)
    影牢(宮部 みゆき)
    集まった四人(三津田 信三)
    山荘奇譚(小池 真理子)
    バースデー・プレゼント(綾辻 行人)
    迷い子(加門 七海)
    赤い月、廃駅の上に(有栖川 有栖)

    読み終えると、なんとなくじんわりゾクッとくる作品ばかり。さすが実力派作家の皆様だと感じる。

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    2024年04月12日
  • 道祖土家の猿嫁

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    明治から昭和まで、高知県の山間部の集落から贄殿川流域農村へ嫁いだ蕗の100年の物語。
    蕗は猿みたいな見た目の嫁だというだけで、特別な人ではない。脈々と現代にまでつながる人々の生活と家族の中で働く嫁の姿を映し出す。

    道祖土家は地主で、嫁いだ家には義父母と義祖父母がいて、さらに出戻りの義姉が誰の子かわからない子を身籠る。
    時代は自由民権運動が激しくなっていて、夫も義姉も政治活動に忙しい。
    運動家と権力側との火振り合戦が起き、蕗は牛や馬を放ち、騒動をおさめる。

    特別な事件はなくても、子どもの成長、夫の浮気、子どもの家出、義父母のこと、などなど、
    戦争に孫が取られ、終戦後には孫が結婚して終盤には曽

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    2023年07月29日
  • 恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション

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    小林泰三『人獣細工』、怪奇趣味的でもありSF的でもあり。
    すごいなこれ。惜しい人を亡くしたって改めて思った……

    他の作品もどれも良かったけど恒川光太郎『ニョラ穴』が特に好き。
    程よく謎が謎のまま残ってて余韻のゾワゾワ感ヤバい。やっぱホラーはこういう読後感が残ってこそですよね!

    ジワジワ怖い、ゾッとする不気味な印象の話が多め。
    同シリーズの『再生』とは毛色の違ったアンソロジーに仕上げてきたなーって感じ。

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    2023年03月20日
  • 葛橋

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    高知の村人の特性、山の風景、すべてがリアルに描写されている。誠実で良心的な人間の心の奥に潜む、憎悪や復讐心。良い人間が虐げられて、でも死んでからちゃんと復讐する。気分がいい。高知の女は気が強い。

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    2023年03月16日
  • 狗神

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    ネタバレ

    初めて読んだ坂東眞砂子氏の作品。トリックのあるミステリーなのか、ホラーなのか‥‥ホラーでした。濃い血の繋がり、いわゆる近親相姦と、閉鎖された山村での村八分が描かれています。ドロドロですが、先が気になって、あっという間に読破。

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    2023年02月19日
  • 蛇鏡

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    ネタバレ

    この人の小説は一筋縄ではいかない。予定調和で決して幕を閉じないのだ。
    人間の業はまだ終わらないというメッセージが共通して感じられる。

    そして、『死国』、『狗神』、この作品と3作品通して共通しているテーマが、死者の再生。失われた者たちが生者の心の隙間を利用して甦ってくるという設定が一貫して、ある。
    生を営む者たちが心の奥底に潜ませている愛という名の傲慢さを発揮した時に、再生を虎視眈々と狙っている死せる者達が牙を剥く。そして坂東眞砂子氏はこの生者たちが己の感情の赴くままに犯す過ちを描くのが非常に巧い。

    私を含め、すぐ隣にいる誰かが心に孕んでいる感情、それは凡人であるがゆえに説明できない気持ちや

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    2023年02月05日
  • 死国

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    ネタバレ

    『ぼくらの頭脳の鍛え方』(立花隆・佐藤優)をきっかけに本作に興味を持った。読んだ感想として、自分が好きな和風ホラーゲーム「零 赤い蝶」と似た雰囲気や展開で、個人的に読みやすい小説であった。本作は高知県の矢狗村を舞台に、小学時代に過ごした村を訪れた主人公の明神比奈子、かつて主人公の親友で今は亡き日浦莎代里と幼馴染の秋沢文也の三人を中心に物語が進む。この話の見どころは、秋沢文也をめぐっての主人公と蘇った親友の関係性と争いであろう。物語の中盤で判明するが、比奈子にとって、莎代里が小学時代で一番仲がよいと思っていたが、それに反して、莎代里は比奈子を単なる付属物、いいかえると自分にとって都合のいい操り人

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    2023年02月04日
  • 狗神

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    ネタバレ

    なんとも業の深い物語である。
    前作『死国』と同じく作者の故郷、高知の山村、尾峰という閉じられた空間を舞台に、昔ながらの風習が息づき、「狗神」を守る坊之宮家とそれらに畏怖の念を抱く村の人々の微妙な関係をしっかりした文体で描いている。

    前作『死国』でも感じた日本の田舎の土の匂いまでも感じさせる文章力はさらに磨きがかかっていると感じた。後に『山妣』で直木賞を獲るその片鱗は十分に感じられた。

    そして今回は物語の語り方が『死国』よりも数段に上達したように感じた。

    まず主人公の美希の人物造形である。
    この41歳の薄幸の美人の境遇に同情せざるを得ないような形で物語は進んでいくのだが、次第に明かされてい

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    2023年01月27日
  • 葛橋

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    面白かったです。
    暗すぎず、怖すぎず。一本樒が一番好きかな。またたび酒の虫の話は、わ〜!と思ったけど。梅酒とかつけてみたい。
    そういうまめまめしい女性の暗い話がかなりツボでした。
    葛橋も、あの世につながる話ですごく魅力的。性的描写がなければもっと好きだな。

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    2022年07月24日
  • 狗神

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    ネタバレ

    著者の名前はどことなく聞き覚えがあり、読み終えて気づきました。

    1999年に「リング2」と同時上演され、映画館で見た「死国」の原作者。

    調べてみると高知県の産まれだそうで、納得。

    映画「死国」も舞台はもちろん四国、本書の舞台も高知県の山里で、そこで暮らす美希が主人公です。

    彼女の一族は「狗神筋」と呼ばれ、村人達から忌み嫌われていました。

    「狗神」とは?

    血が引き起こす恐怖の伝播。

    そして、明かされた血の内容にはある種の戦慄を覚えました。

    読み始めた時にプロローグとして始まる信濃•善光寺のシーン。

    そこから舞台は高知県に移りますが、善光寺の「戒壇廻り」から始まらなければ本作の恐

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    2022年06月03日
  • 狗神

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    ネタバレ

    いつもながら四国の情景に心奪われた。
    田舎の嫌な人間関係と、畏れとのバランスが良かった。いつも男女関係があるけど、恋愛感情なしでは運命に勝つの難しいのかな、、
    救われない話だったけど、それも儚い伝承の話の味を出していた。
    いつも土地神様とか昔ながらの逸話が絡むので面白く読ませていただきたした。

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    2021年11月29日
  • 恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション

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    前回のベストセレクション「再生」よりもこっちのほうがずっと好み。
    であるが故に、過去に読んだ話が半分くらい…
    平山夢明氏と小林泰三氏が一冊に入ってるアンソロジーだから買って後悔はない。

    背表紙の著者名が小林泰三氏になってて、新しく本棚に氏の本が並んだのも嬉しい。

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    2021年10月03日
  • 貌孕み

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    現代の話と昔の話が織り交ぜられていて、楽しく読ませていただきました。
    怪談というより、人の業、因果応報という話たち。
    人の悲しみと、それでも生きていく人たち、幽世と現世の不思議な感じ。

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    2021年08月22日
  • くちぬい

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    震災後、放射能汚染を気にする麻由子は、夫の峻亮の強い希望でもあった高知の田舎へ、移住することを決めた。
    美術教師であった峻亮は、長年の夢であった穴窯を作り陶芸に勤しむ毎日。
    しかしその地域にある鎌神社のお宮まて続く、赤線と呼ばれる道の一部に穴窯を建てたことから、村人達の苛めが始まる。
    猫の死骸が吊るされていたり、車をパンクさせようと包丁が埋められていたり。
    確かな嫌がらせがありながら、顔を合わせると誰もが優しく接してくる。
    気にするなと言う峻亮に苛立ち、ストレスから夫婦仲も悪化、麻由子は疑心暗鬼になっていき、殺人事件にまで発展して行く。

    田舎移住番組などを観ると、こんな老後もいいなぁと呑気に

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    2021年07月12日
  • 死国

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    日本を代表する巡礼である「四国八十八ヶ所巡り」に、呪術的要素を加えた、怪奇ロマン系のホラー小説です。日本の風習や、しきたりといった土俗的な部分に惹かれてホラーを好きになった私としては、世界観に入り込みやすかったです。

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    2020年11月20日
  • 死国

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    小中学生の頃に深い恐怖に陥れられた映画「リング」。その続編の「リング2」と同時上映された作品が、この「死国」だった。「リング」、「リング2」は強烈な恐怖として記憶に残っているのだが、この「死国」は栗山千明の美しい黒髪と切れ目の妖艶さの印象が強く、内容を漠然としか記憶していなかったので、原作を当たることにした。

    本作は、「四国=死国(黄泉の国に最も近い場所)」の古代伝承(解釈)を基にしたホラー小説。
    高知県の矢狗村という田舎が舞台の中心。村の口寄せ巫女である照子は、亡くなった娘(莎代里)を甦らせるべく「逆打ち(=四国八十八ヶ所の霊場を死者の歳の数だけ逆に巡る)」を行う。その最中、主人公である比

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    2023年01月12日
  • 狗神

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    高知県山間部の牧歌的な風景と裏腹な忌むべき因習・差別、閉鎖的なムラ社会が醸成するドロドロとした人間関係。

    ミステリー的な伏線回収、村を覆う悪夢の真相も含め、好みの作風だった。

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    2020年05月17日