北方謙三のレビュー一覧
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ネタバレ今回の展開はちょっと納得いきません。
ネタバレになるけど、いいかしら。(ダメなら読まないでね)
梁山泊は交易による莫大な利益によって、民から多額の税を徴収しなくてもすんでいる。
そのため梁山泊の商隊を軍が護衛している。
李媛が指揮する商隊を護衛していたのは弟の李英が率いる隊だった。
姉弟の父は、重装備部隊の隊長だった李応。
梁山泊には二世の将校が結構いる。
その中で、なかなか結果を出せない、上に引き上げてもらえない李英は焦っていた。
そんな時商隊が金軍に襲われて、李英は積み荷を守ることよりも、手柄を立てることを優先してしまった。
手柄を立てる=敵を打ち取ることが、積み荷を守ることだと思い込んだということも、ある。
しかし李媛はそんな弟を解任して、現場の指揮を執る。
結果として李媛の判断は正しかったわけだ。
なのに、梁山泊は、楊令の感傷(?)により、せっかく捕まえた捕虜を解放し、李英を元の部署にもどす。
なのに梁山泊は、「李媛がうるさい。黙らせろ」と言う。
正論なのはわかるが、うるさい、と。
いやいやいや。
李媛が正しいでしょ。
結果で判断するのが軍隊じゃないの?
判断ミスで、たくさんの人命を失うことになり、財産を奪われることになったかもしれなかったことを、なかったことにすることは、ほかの兵の士気にかかわるんじゃないの?
李媛は確かに北京大名府や開封府を攻め落としたいという野望を持っていたけど。
今は交易の仕事に誇りを持っている。
だからこそ、自分の感情だけで突っ走ってしまった弟を許せなかったのだ。
それを梁山泊は「黙らせろ」と。
黙らせるために、李媛にショックを与えるために、もともと李家に仕えていた杜興が自裁した。
私にはどうしても、杜興が命をかけてまで李媛を黙らせなければならないとは思えなかった。
李英の処遇に、誰も異を唱えない梁山泊が、不気味だと思った。
それ以外では、王定六や鮑旭のように、地味な仕事を実直に続けてきた者たちの死が辛かった。
特に鮑旭、まさしく朱仝が乗り移ったかのような戦いっぷり。ああ。
燕青のリタイヤも寂しい。
しかし感度が鈍ることは命を失うことにつながるのだから、燕青も年を取ったということなのだろう。
史進が50歳ですと?あの暴れん坊がねえ…。 -
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ネタバレ漢たちが命を散らしていく。
出奔した李英が見せた意地にも近い漢らしい死に様。
そして呑んだくれで憎まれ役・戴宗の渋く散っていく。
戦場のど真ん中から決して動かず雄々しく果てた郭盛。
さらに張横、童猛、阮小二と梁山泊を陰から支えてきた者たちも。前作からの古参たちがそれぞれの誇りと不器用な生き様を刻み付けるよう死んでいく。
そして史進の愛馬・乱雲も主人を庇い倒れる。死にきれなかった史進、主人の苦しみを理解しながらも身を呈して守った乱雲。この愛馬との絆も「水滸伝」の魅力。胸を締め付けられる。
いよいよ次は最終巻。梁山泊、南宋、そして金。この戦いにどんな終局が待っているか。そして楊令と岳飛の決着は? -
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ネタバレ童貫を討ったことにより、戦いは一度終結する。
宋をめぐる思惑は、あちこちに不穏のたねを残しているけれど、楊令はこれ以上梁山泊を大きくするのではなく、民が安心して豊かに暮らせる国づくりを考える。
ここからみんなが幸せになっていければいいのだけど、そうはならないのが哀しいところ。
侯真は失うために人生を生きているような気がして不憫。
花飛麟のような感じで生きていくのかしら。
戴宗はもう使えないのではないか。
宋江と出会ったばかりの頃の戴宗は、懐の大きな人だったのに、今は何よりも心が老いて、小さく凝り固まってしまっている。
それなのに肉体の衰えがほとんどないせいで、心の老いに気づくことができない。
いつか、きっととんでもないことを仕出かしてしまうのではないかという予感と、妙に公孫勝が戴宗をさりげなくフォローしているので、最終的にはたいそうのせいで公孫勝が死ぬんじゃないかと不安になる。
李媛もそうだけど、想い描く理想の国の姿が楊令と違う場合、それは梁山泊にとっての大きな穴になってしまうのではないかと思う。
それを埋められるほど、まだ梁山泊は大きくはない。
なんとかみんな足並みをそろえて欲しいけれど、それでは小説にならないもんなあ。
岳飛が急激に成長した。
童貫が生きていた時は、童貫の言うことを聞いているだけの、まだまだひよっこだったのに、急に一軍を率いる将の風格がついてきた。
経験と置かれた立場がひとを成長させるんだなあ。 -
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ネタバレえ?このタイミングでこの展開?って思いました。
ドラマチックに書こうと思えばどこまでもドラマチックになるシーンを、簡潔な記載であっさりと終了。
『水滸伝』は国を倒す物語であったけれど、『楊令伝』は国を造る物語だったのだ。
新しい国の形。
楊令が考えに考えたそれを、どう実現させていくのか。
物語は大きく進路を変え、それに伴って青蓮寺は姿を変え、宋という国に終焉の足音が近づく。
戦いがひと段落した時、梁山泊第一世代が老いたなーと思う。
第二世代にも戦死者が出てくるようになったし、時間はずいぶんと流れているのだなあ。
それにしても郝瑾(かくきん)の最期は、あっさりだった。
第二世代では一番苦労している子だと思うのだけど、これと言って見せ場もないままに終わってしまったな。
今後は政治や経済の話が主になるのだろうか?
戴宗(たいそう)と侯真(こうしん)の間に齟齬が生まれてきつつあるが、どう見ても戴宗の物言いが悪い。
人として言ってはならないことを言って恥じない、そんな人ではなかったと思うのだけど、これも老害?
この亀裂が、何か大きな悲劇の引き金になりそうな気がする。 -
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全くもってハードボイルドな生き様をしていないサラリーマンが読むのも何だか恥ずかしいのですが、いつまでも「ソープに行け!」の人、的な認知をしているのも申し訳ないので、意を決して読んでみました。。
ストーリーとしては、やくざ者がのし上がっていく過程を連作短編で描いたもので、日常とはかけ離れた世界だけど、その中の日常と言うべき姿が淡々と描かれています。
まさにハードボイルド小説、二部構成の前半パートは特に荒涼たる記述で、解説にも「一切の心理描写を排した第三者の視点」で書かれているとの記載があります。短編の1つ「砂時計」は舞台で見ても面白そうなミニマムな構成で、「鳩」の公園のシーン等も含めて、場面毎の見せ方の妙を感じました。
読みやすい文章にもかかわらず、読んでいて儚さ、刹那さ、ままならなさをずっしりと感じる。読み終わっても上手く自分の中で消化しきれない、引っ掛かりを感じる作品でした。
ちなみに解説は、ハードボイルドとは何たるかを含めて書かれており、私のような素人としては先に読んだ方が楽しめたかなという感じで、本著の理解を助ける補助線になりました。 -
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ネタバレついに決戦の火蓋が…と言っても、童貫は動かない。
周辺の小競り合いが本気の度を増して、ようやく楊令や童貫を動かそうかというところ。
しかし、本気で戦えばこそ、次々と死者も出る。
張清好きだったんだよなあ。
梁山泊のメンバーとしては珍しく好きな女とちゃんと結婚し、子どもも持ったし、なおかつ優秀な将校であったところ。
普通に格好いいと思う。
扈三娘は罪な女だよねえ。
彼女自身も幸せだったかというと、ちょっとよくわからないけれど。
花飛麟と関係を持てたということで、聞煥章に汚された自分をリセットして、晁蓋の元に行けたってことなのかなあ。
花飛麟はショックだよね。救われない。
今回郭盛はまだ死なずにすんだけど、楊令との別れをすませた時点でもう永くないだろう。
そして馬麟もまたあちらに行ってしまった。
世代交代は必要なことだけど、やっぱり寂しい。 -
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ネタバレとうとう宋禁軍と梁山泊軍の決戦が始まった。
これまでの局地戦とは違い総力戦となるこの戦いに際しての、童貫の準備には執念すら感じられる。
宦官であることから、人一倍武人であることにこだわり続けた童貫は、逆に武人として戦いきったという実感を持てないままここまで来てしまったのだろう。
休戦の勅令など出されないように南部の叛乱を平定し、北方の国が介入してこないように備えの軍を置き…ああ、まどろっこしい。
これが老いということなのだろうか。
あまりにも用意周到すぎて、戦の勢いが感じられない。
まだ童貫自身の戦闘シーンがないからかもしれないが、宋禁軍、梁山泊軍共に小さくない犠牲を出したのに、まだ局地戦の気がするんだよね。
そしてついに楊令の弱点が明らかに。
トラウマがいびつな形で楊令の心に巣食っていた。
子どものうちにきちんと悲しみを解放できなかったことのツケだと思う。
それはまわりの大人の責任だ。
楊令はそれを乗り越えることができるのか?
なかなか手に汗握る展開にならないのは、青蓮寺の動きがないせいもあるだろう。
梁山泊はずいぶんと重層的に描かれているが、宋は童貫しかいないんだもの。
童貫が戦死してから李富が動き出すのかなあ。
聞煥章が意外とあっさり物語から退場してしまったし、呂英もいまいちだしなあ。