北方謙三のレビュー一覧
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ネタバレ豊かな中原を巡って金国と南宋がついに戦いの火蓋を切った。
そんな中、交易で独自の存在感を示す梁山泊。
梁山泊とは一体何か。
多くの漢の志で作られた梁山泊は、最早国土など必要としない、理想を具現化したような何かなのだと思う。
義務に縛られるのではなく、自分たちが主体的に守っていく理想?
ただ、なんだろう。
初期メンバーに見られた、熱くたぎるもの、生々しい心のぶつかり合い、喰いしばった歯の間から漏れてくるもの。
そういうものがなくなり、セリフも行動も地の文も淡々と進む。
だから、読んでいても心が震えなくなってきたんだよなあ。
“別に、夢を志と言ったっていいさ。しかし、夢は夢なんだ。志ほど、自分を縛りはしねえよ。捨てたけりゃ、捨てる。だけど、なかなか捨てられねえのが、夢ってやつさ。血が通っちまってるからな。”
そうなの。
そうだと私も思うの。
でも、理屈っぽいなあとも思うのよ。
もっと感覚でわかりあえたはずなのに。 -
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ネタバレついに始まる禁軍VS梁山泊neo
激戦であるが故に敵味方で多くの猛者が散っていく。
扈三娘の大跳躍、首の落ちた緑の軍法、両脚を失った馬麟・・・
水滸伝からの生き残りメンバーも大分削られてきたような気がします。
一方で呼延凌や花飛麟の成長が著しく危なっかしい所はあるものの九紋龍に次ぐ安定感が出てきたような気がします。
さて本巻は8巻で楊令伝の中間地点!童貫軍と楊令軍の戦いも佳境に入っていく中、残7巻でどんな事が起こるのか楽しみでなりません!
因みに前巻に続き本巻も子午山の話がありませんでした。子午山の話で少し癒されたいという思いがあります。 -
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ネタバレ史進は老いを感じるようになってきたし、呉用もいつ死んでもおかしくない状況。
呼延凌は軍の若返りを図り、着々と世代交代が進む三巻。
でも、もう舞台は梁山泊だけにとどまらない。
宣凱は呉用のあとを継ぐんだろうなあと思うけど、秦容(しんよう)は梁山泊を出て越なんのさらに南の地を開拓して甘藷をつくろうとしている。
王清は南宋水軍のために船を作り、王貴は岳飛軍のために兵糧を調達する。
敵ではない。味方でもない。
国の在りようは、物流が決めるということなのか。
子どもの頃から物事に動じない大物感を漂わせていた秦容が、梁山泊を出た。
彼こそが楊令亡き後の頭領になってもおかしくはなかったはずなのに。
特に大きなきっかけもなく、「甘藷をつくる」と言う秦容に、なんだかなあ…って思ったけれど、本人の気持ちよりも先に居るべき場所を与えられてしまい、義務と責任をひとり背負って死んでいった楊令を間近に見ていたからこそ、秦容は自分の居場所を探しに出たのかなあという気もする。
ところで、国対国の政治的駆け引きはあるけれど、国内政治の描写がないんだよね。
全てが行政レベルでクリアできているのだろうか
戦がなくなり、政治がなくて行政ばかりだから、ちょっとストーリーに華がない。
王清の恋(?)は、やたらと理屈っぽいし、相手の女性が扈三娘の劣化版みたいで魅力がないから、やっぱり華がない。
こんな感じで進んでいくのかなあ。 -
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ネタバレ金国、南宋、そして岳家軍はそれぞれ痛手を乗り越え、新たな体制を作りつつあるが、梁山泊だけが、方向性を見いだすことができずにいる。
第三世代の王貴、張朔はそれぞれに梁山泊とは離れたところに自分の居場所を見つける。
機が熟したとき、呉用は聚義庁に主だったものを集める。
全てを率いる存在としての頭領を欲する秦容や呼延凌に対して、それぞれの志を持ち、それぞれの考えを持ったものの集合としての梁山泊を解く第一世代のジジたち。
それは、すべてを楊令に押しつけてしまったことへの悔恨だった。
「林冲殿さえ生きていれば、楊令殿が頭領などということは、絶対に許さなかった、という気がする」と泣く曹正に、ついつられて涙が出たが、よく考えたらそんな状況でも楊令ったら隠し子作ったんだよね。
その胡土児が金軍で兀朮の養子になっているのも、運命の皮肉と言いましょうか。
この先どうなるんだろう、ドキドキ。 -
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ネタバレ百年に一度の大洪水で水に没した梁山泊。
突然の楊令の死に呆然としつつも、機能を回復しつつあるものの、今後の方向性を出せる者は一人もいない。
楊令亡き後も今までどおりの仕事をしながら、新たな指導者を待つ古い世代と、新たな道を模索する若い世代。
史進が「じじい」呼ばわりされるくらいなのだから、もう本当に世代交代の時なんだと思うけど、最初から読んできた身としては少しさびしい。
楊令の死は岳飛の勢いも一時止めた。
その間に着々と国の体制を整えていく南宋の秦檜(しんかい)と、整えきれない金国の兀朮。
それぞれのスタートラインが示された第一巻。
“自分のことは、自分で決めろとは、どういうことなのだ。好きなように生きればいい、というのとは少し違うような気がする。誰でも、どこかでなにかを耐えている。なにかを諦めている。それが生きるということだろう、と張朔(ちょうさく)は思っていた。”
母親代わりの顧大嫂(こだいそう)に、自分のことは自分で決めろと言われ悩む張朔。
けれど、梁山泊に足りなかったことは、確かにそういうことなのだ。
彼らが何を考え、何を行い、何を諦めていくのか。
続きを読むのが楽しみだ。 -
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ネタバレウジュと岳飛の闘いがし烈を極めていくが、南宋と金の講和のために中断。あくまで岳家軍として「抗金」を掲げる岳飛。国内の安定のため軍閥を解体し南宋軍に組み込む方策を図る宰相・秦檜。互いの理念と志は交わることなく確実に破局が近づきつつある。
一方、梁山泊では呉用が静かに最期を迎える。
当初の堅物・嫌われ者から寨の陥落・方朧の乱を経て覆面の名参謀に変わっていったなかなか興味深く目の離せない存在だった。
そして「岳飛を救え」という遺言。
今後、岳飛と梁山泊をどう結びつけていくのか。史実と創作の折り合いをどうやってつけていくのか。次巻からの展開が楽しみだ。 -
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ネタバレ『楊令伝』を読み終わったので、一区切りの公式読本。
年表と人物事典が良かった。
あとは読者との質疑応答も面白かった。
書評や対談はいろんな発見があってためになる。
しかし編集者からの手紙は、いらないなあ。
もちろん著者と編集者の間に手紙のやり取りがあっていい。
でもそれを本にする必要はない、というより、はっきり言って邪魔。
1953年生まれの編集者の、軽薄ぶった文体が気持ち悪くてダメだった。
『水滸伝』では世直し(革命)が、『楊令伝』では国造りが描かれた。
『岳飛伝』は、人物を描くのだそうです。
十二巻を書き終えた段階では、李俊以外の第一世代は全員生き残ると著者は言っていたらしい。
けど、実際は…そのあとばたばたと死にましたねえ。
やっぱり梁山泊は強すぎますから、みんな生き残っていたら歴史が変わっちゃうもんねえ。
それでもまだ多くの人材が残る梁山泊は、歴史の裏に隠れてどう生き残っていくのだろう。(核になるのは誰?)
岳飛とはどうかかわっていくのだろう。 -
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ネタバレああ、そうきたか。
主人公の名のついた『楊令伝』
彼が脇に回るわけはない。
そして、生き続ける限り、彼は物語の主役を張る男だ。そう生まれついている。
だから、楊令の命の終わりがこの作品の終わりだと予想していた。
だけど、全然死ぬ気配はない。
梁山泊の大きな柱が1本、また1本と倒れていっても、彼が倒れる気配は最後までなかった。
それでもことが起こってみたら、ずっとそこに答えはあったような気がする。
楊令よりずっと年下の秦容が「生意気を言いますが、おれは同情していました」と言った。
楊志が命をかけて守った息子であることから、梁山泊を背負って立つ男の運命を生きることになってしまった楊令。
ひとつ間違えばそれは、秦明の息子であった秦容の運命だったかもしれない。
子どもらしい子ども時代は短く、梁山泊の夢を生きざるを得なかった楊令。
それでも思ったよりも梁山泊の人的ダメージも領土的ダメージも少なかったのではないだろうか。
この先は岳飛の話にシフトしていくようだけど、けっして消滅したわけではない梁山泊という生き方を、この先どうやって見せてくれるものか、わくわくする。 -
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ネタバレ李媛と李英の姉弟は報われないなあ。
彼らに対する聚義庁(しゅうぎちょう・梁山泊の中枢)の態度は、絶対に間違いだと思う。
厳しくするべきところを厳しくしないで、正論を黙らせた。
彼らの父、李応を好きだったんだよね。私。
いいところのお坊ちゃんだったけど、そんなことを鼻にかけずに、地味で目立たない重装備部隊の仕事をやっていたところが。
実直で。
だからそんな李応の子どもたちが、努力を認められることこともなく終わってしまったことが非常に無念だ。
李英は、登場当時は本当に優しい青年だったんだよ。
それが、同輩たちにどんどん先を越され、ついには部下にまで追い越され、焦ったあまりにやるべきことを間違えてしまった。
間違えたことは厳しく断罪し、罰を与えてから元の場所に受け入れればよかったのに、なかったことにしてしまったことから歯車がくるってしまった。
だけど李英は父ちゃんの名に恥じない生き方を貫いたよ。
嬉しくて悔しくて悲しくて、涙が出た。
いよいよ南宋と梁山泊の直接対決。
ともに頭領の首を狙いに行くが、決め手に欠ける。
次が最終巻。
どんな結末が待っているのだろう。 -
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ネタバレひとつの目的のために、大勢が心を一つにして立ち向かう。
そんな時代を過ぎてしまった梁山泊は、もう一枚岩ではない。
国を造る。
いうのは簡単だが、思い描く国の形はそれぞれ。
楊令に託す国の形が、自分勝手なものになってきたとき、梁山泊の未来に暗雲が立ち込めてくる。
まるで哲学の書のように、「国とは?」を考える人物たち。
国とは、民衆を守るための強い軍隊と考えた岳飛は、守ってきたはずの民衆から反乱を起こされる。
国とは、民衆から搾り取った税金で潤っていくものと考える旧宋の生き残りたち。
国とは、民族の独立のためにあるものと考えた女真族の国・金。
国とは、民衆が安寧に暮らせる場所と考える楊令。
歴史的に見ると梁山泊は生き残れない。
だとしたら物語の着地点はどこか。
楊令が生きている限り梁山泊は負けないのなら、楊令の死をもって終わるのか。
しかし楊令は戦いに負けることはないはずだ。そういう存在に作られている。
だとしたら病死、事故死、暗殺、自殺…のうちのどれかなのか。
「仲睦まじい父と子」という存在が楊令の唯一の弱点で、それすら克服しかかっている現在、楊令は無敵だ。
けれどなんでだろう、巻が進むにつれて楊令の内心が虚ろに感じる。
何のために闘い、何を守ろうとしているのか。
誰に相談することもできない、誰にも意見を聞くことがない、絶対的な頭領・楊令。
楊令の幸せはどこにあるのかな。
軍事的過ちをうやむやのうちになかったことにされた李英は、やっぱり自分を反省することなく、出世できない不満だけを膨らませていくことになった。
「あれはなかったことになったはずなのに、なぜだ?」
反省するきっかけを得られなかった李英は、成長するきっかけも得られなかった。
これは本当に聚義庁(しゅうぎちょう)の落ち度だ。
そして、楊令から子ども呼ばわりされた岳飛が、今は子持ちなのである。
時間の流れが速すぎて…私も年を取るはずだよ。←違う