北方謙三のレビュー一覧
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「何もかも、『替天行道』が悪いのじゃよ、宣賛」
「おかしなことを、言われますね」
「いや、悪い。悪いということにしておこう。宋江殿はあれに、新しい国を作る夢まで書かれてしまった」
杜興の言葉に、冗談を言っている響きはなかった。
「腐敗した権力を倒すべし。それだけが書かれていたら、宋を倒して、梁山泊の闘いは終わりであった。新しい国は、誰か別の者が作ればいい。梁山泊で闘った者は、人民の海に消えていくだけで良かったんじゃ。そしてまた、権力が腐敗すれば、 『替天行道』 を読み継いだ者が、立ち上がればよい。闘いの輪廻はあっても、闘う者たちはそのたびに変わる」
「新しい国を作ることは、間違いだと言って -
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「退け。退き鉦」
初めて岳飛はそう言った。しかし、遅い。「珪」の旗が、すぐそばにあった。
それからどうしたか、わからない。駆けに駆けた。追撃が熄んだ時、一万騎は七千に減っていた。
そのまま隆徳府の軍営に駆け込んだ。馬を降り、顔をあげて営舎に入り、ひとりになると膝を折った。床に額を叩きつけた。流れた血が、視界を塞ぐ。(略)
「会議を開く。敗因について、俺が説明する」
「そこまでしなくても」
「いや、俺の誤りで負けた場合は、それは説明すべきだ」
徐史は、迷っているようだった。岳飛は、大声で従者を呼んだ。
隆徳府の軍営にいた将校は、全員集められた。岳飛は出動し、斥候を出したところから説明を始めた。壁