あらすじ
金国内での政争を粘罕が制し、漢人を推戴した傀儡国家・斉が中原に建国された。李富が操る南宋では、趙構が『抗金』の檄を飛ばし、皇太子にしんを冊立する。一方、梁山泊は西域との交易を順調に続け、さらに富を増やし始めていた。だが、李媛と李英の姉弟が護衛する梁山泊の商隊が、突如、金軍に襲われる。急襲を知らせるため、王定六は梁山泊へ向けて疾風の如く駈け抜ける。楊令伝、火急の第十二巻。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
梁山泊、金、南宋、斉、西遼。
様々な国が乱立し、それぞれの思惑が絡み合い、交易によって富み、民の暮らしも安定してきた梁山泊も平穏なままではいられない。
そんな中、本巻では楊令が衝撃の言葉を口にする。
わかってはいたものの、改めて口に出されるとやはり驚き、梁山泊への、そして替天行道の志に対する彼の思いの深さにしばらく呆然とした。
日本の武将に例えるなら、上杉謙信公のイメージが近い気がする。
Posted by ブクログ
素晴らしい親子のエピソードから始まったこの巻。
世代交代の進む梁山泊。
才能を開花させるニューヒーロー。
退役が近い古参兵。
またまた泣かされた。
Posted by ブクログ
巨大な宋国が倒れて、定石通り群雄が割拠し、それぞれの小国家が形を成してきた。いよいよこれから、それぞれがしのぎを削って戦い合う、といった段階か。梁山泊の行末も気になる。
でも今回のハイライトは、何といってもホーキョクの最期の場面。最初の登場からインパクトは強くて(ネガティブな意味で)、“こんな奴が108人の中にいたの!?”って感じだったけど、どんどん魅力的な人物に成長していって、その成長がまた嬉しかったりして…そんな感じで、おそらく北方水滸伝の中で、最も原作から飛躍した漢。いなくなったのはすごく残念だけど、ハイライトになるような死に様を与えられてよかった。
これがなければ、トコーの自殺が一番衝撃的だっただろうけど、少しかすんでしまったかも。あと、オーテーロクの頑張りも好きでした。
Posted by ブクログ
南宋の国からが出現し、金、斉、南宋、梁山泊、張俊、岳飛がそれぞれの駆け引きがある。
王定六と鮑旭の誇り高き最期が印象的であった。
李媛のこだわりが強すぎて、杜興が死をもって黙らせる。
Posted by ブクログ
4.0
大将軍とは言えないけど、記憶に残る場面を多く残してきた鮑旭。北方水滸シリーズを貸してくれた先輩が彼を好んでたけど、納得しかできない。
俺が張俊の立場なら「大将軍の影に隠れた一将軍がここまで魅力的なのヤバすぎ。俺もこの好漢たちと共に戦いたい。」って言って禁軍の旗を投げ飛ばすね。
Posted by ブクログ
本巻では古参の男達が多く死んだ。
王定六 戴宗に見染められ走り続ける。最後まで走り抜け死ぬまで走り続けた。人生完全走破。彼の足なら三千世界の彼方まで行けることであろう!
杜興 皆んなの嫌がることを進んでやる。そして卒なく器用にこなす。自分の心と身体を磨り減らし最後の最後まで人の為に生きる。そんな老人になりたい!
鮑旭 追い剥ぎだった彼は魯智深に連れられ王進の下で生まれ代わる。部下を守るリーダー!彼にこそ今の時代の中間管理職は学ぶべきものあり。死神と呼ばれた昔の彼が最後に少しだけ蘇る!
楊令伝の残数が少なくなってきました。
ラスト三巻楽しみです。
Posted by ブクログ
今回の展開はちょっと納得いきません。
ネタバレになるけど、いいかしら。(ダメなら読まないでね)
梁山泊は交易による莫大な利益によって、民から多額の税を徴収しなくてもすんでいる。
そのため梁山泊の商隊を軍が護衛している。
李媛が指揮する商隊を護衛していたのは弟の李英が率いる隊だった。
姉弟の父は、重装備部隊の隊長だった李応。
梁山泊には二世の将校が結構いる。
その中で、なかなか結果を出せない、上に引き上げてもらえない李英は焦っていた。
そんな時商隊が金軍に襲われて、李英は積み荷を守ることよりも、手柄を立てることを優先してしまった。
手柄を立てる=敵を打ち取ることが、積み荷を守ることだと思い込んだということも、ある。
しかし李媛はそんな弟を解任して、現場の指揮を執る。
結果として李媛の判断は正しかったわけだ。
なのに、梁山泊は、楊令の感傷(?)により、せっかく捕まえた捕虜を解放し、李英を元の部署にもどす。
なのに梁山泊は、「李媛がうるさい。黙らせろ」と言う。
正論なのはわかるが、うるさい、と。
いやいやいや。
李媛が正しいでしょ。
結果で判断するのが軍隊じゃないの?
判断ミスで、たくさんの人命を失うことになり、財産を奪われることになったかもしれなかったことを、なかったことにすることは、ほかの兵の士気にかかわるんじゃないの?
李媛は確かに北京大名府や開封府を攻め落としたいという野望を持っていたけど。
今は交易の仕事に誇りを持っている。
だからこそ、自分の感情だけで突っ走ってしまった弟を許せなかったのだ。
それを梁山泊は「黙らせろ」と。
黙らせるために、李媛にショックを与えるために、もともと李家に仕えていた杜興が自裁した。
私にはどうしても、杜興が命をかけてまで李媛を黙らせなければならないとは思えなかった。
李英の処遇に、誰も異を唱えない梁山泊が、不気味だと思った。
それ以外では、王定六や鮑旭のように、地味な仕事を実直に続けてきた者たちの死が辛かった。
特に鮑旭、まさしく朱仝が乗り移ったかのような戦いっぷり。ああ。
燕青のリタイヤも寂しい。
しかし感度が鈍ることは命を失うことにつながるのだから、燕青も年を取ったということなのだろう。
史進が50歳ですと?あの暴れん坊がねえ…。
Posted by ブクログ
「水滸伝」からのベテラン勢が何人も散っていく第十二巻。
命の限り駆け続けた王定六、自裁することで問題にけりをつける杜興、死してなお闘い続け敵の心までも揺さぶった鮑旭。
世代交代が進みスマートな印象になった梁山泊だが、やはり修羅場をくぐり抜けてきた男たちの凄味や底力は泥臭いが胸にくるものがある。
個人的には燕青VS周炳の立ち会いがハイライト。
燕青の華麗な体術が「楊令伝」に入ってからあまり見られなかったので「やっと来たか!」という感じ。
金軍の梁山泊商隊への襲撃、李英の暴走、金の傀儡国家・斉の建国。微妙な均衡の上に成り立っていたパワーバランスが崩れかかり、順調に拡大を続ける交易にも歪みが生じ始めている。
今後の展開に注目したい。
Posted by ブクログ
ちょっと小康状態になって、まったりとした展開が続いておりますが、梁山泊、金、南宋、西夏、斉、耶律大石の国と気づけば6つの国に分かれ、それに張俊と岳飛の元宋禁軍独立軍という、かなり複雑な図式になってきましたが、この後、どのような国や軍の結びつきや対決の展開を見せていくのかが注目です!
Posted by ブクログ
「戴宗が、天下統一にこだわる気持が、わからんでもないな。しかし、困難な道だ。俺は、そう思う。岳家軍との交戦はあったが、いまいきなり戦の時代になることはない、と思っているよ。戦の時代は、童貫戦で一度終った。それは、俺にもよく見えてきた」
「いずれ、戦の時代になるのですか?」
「多分な。楊令殿も、その時に備えて、兵の入れ替えを急いでいるのだと思う」
この食堂は、味がいつも同じだった。飽きたような気分に、しばしば襲われる。料理人に、向上しようという気持ちがないのだと、李瑛は不満だった。兵糧は、不満を感じたことはまったくない。食事とは、どこかちょっと違うものだからだ。
「男は、一度だけでも、自分が生きたのだと思いたい。おまえのように小さくかたまっていても、同じであろう」
「潰しても、潰れない。殺しても、死なない。権力というのは、そんなものだ、と俺は思っていますよ。青蓮寺が、権力そのものになるのは、これからではないでしょうか」
「開封府が崩壊する過程で、それから別のなにかが生み出されてくる。私は、そう思っていた。違ったな。権力が権力であることには変りなく、それが場所を移した、ということだと思う」
「そうたやすく、新しいものは生まれませんね、燕青殿」
「梁山泊が新しいものを生みつつある、と私は思っている。新しいものは、いまあるものを、踏み越えるか、打ち倒すかしないかぎり、場所は与えられない、とも思う」
「楊令殿は、新しいものに、場所を与えようとされているのでしょうか?」
「まさしく、そうだろう。生みの苦しみと言うのだろうか。私は、自分の生みの苦しみを、楊令殿に押しつけている、という気がしている。生れ出てきたものについて、つべこべ言っているだけだ。」
「燕青殿は、新しいものを生む苦しみの中におられる、と俺は思います」
「それは違うな、候真。生み出されたものを、どうやって守るか、ということについては、命を懸けられる。しかし、生み出すということについて、私は無力だ」
「民は、次々と上を望む。喜びなど、束の間のものだ。際限もなく、上を望む。絞り取れば、かなりのところまで、耐えもする。不思議なものだと、俺は思いはじめている」
「民に感謝されようというのが、甘い。そう思っているなら、正しく民のことを捉えていると言っていい。厳しくしたら、憎まれる。こちらの方は、多分、そうだろう。身勝手なものが、民なのだ。その民が、無償の血を流し、意味もなく死ぬことを肯んずる」
「方臘のもとで、それを見た、と言いたいのだな、呉用」
「ほかにも、いろいろ見たさ。人は単純に見えて複雑で、複雑に見えて単純だ」
「不安と添い寝する。それが頭領の宿命のようなものであろうな」
「俺の走っていく先には、いつも同志がいるよ」
「それだけですか?」
「俺は、寂しがり屋なのだ。ひとりで走っていると、寂しくて仕方がない。それで、出来るだけ早く、同志のところへ行こうとする。そうなのだと、走りながら考えて、わかったんだよ」
「あなたは、戦をどこまで読んでいるのですか、秦容?」
「読んでいる、と言うのでしょうか。三万の軍を率いて、ここを攻めている、という立場で考えているだけです」
「あなたが、指揮をしていますね」
「そのつもりはありませんが、俺のいる一千の舞台は仲間ですから、できるだけしなないように、と考えています」
「謝ることはない。商いが愉しくて、好きで、そしてきちんとできる。それは素晴らしいことではありませんか」
戦で死ぬことを、いとうのは恥だ。しかしそれは、自らの判断による敗北である。ひとりの人間のためだけに、死ねるのか。
すぐれた指揮官が、梁山泊軍には何人もいた。そういう人間と並んで一軍を預かるには、平凡の強さを生かすしかなかった。作戦も、指揮官から兵士にいたるまでの動きも、すべて平凡である。
しかし、屈しない。屈しないことだけは、平凡でもできるのだ。
「鮑旭殿」
「いい。軍法にはそむくが、俺は助けなければならないやつがいる。俺より先に、死なせたくないやつが」
Posted by ブクログ
前は李媛にいらっとしたけれど、落ち着いてよかった
・・・って思っていtのに、やっぱりいらいら。
しかも杜興・・・好きだったのに!ホントにココだったのかなあ、悲しい。
そして当然弟にもむっとする。
若いことを加味しても、この兄弟嫌いだー。
王定六もなんて。
燕青も!?と手に汗握る。ほっ。
としたら、鮑旭。
淋しい。
こうやって入れ替わって行くものだとしても。
Posted by ブクログ
梁山泊が安定してしまうと、途端に不安を覚えるのは何故だろう。
楊令は安い税で小さく豊かな国を作ろうと苦心しているけれど、
なかなか理想の姿が見えてこない。
「水滸伝」から沢山の漢達が、志のもとに命を落としていった。
彼らの死をどうか無駄にしないで欲しいです。
古参の同志達が退場してしまうのは、
仕方のない事と分かっていてもやっぱり寂しいですね。
若い人材が育ってきてはいるけれど、、、あの頃の勢いが懐かしい。
Posted by ブクログ
戦乱渦巻くなか
それぞれに自が道を進み続ける
梁山泊は
独立し
金と宋が戦いあい
国が乱れ
何時に成ったら
中原に平和が訪れるのだろうかと思った
Posted by ブクログ
金国が傀儡を立て、斉という国を建てた。南では、南宋が形をなし、旧宗と同じような統治が始まった。独立した形を取り続けている岳飛軍、張俊軍。交易で富を蓄えている梁山泊に、西で統一した耶律大石。さらに混迷を極める。でも、期は熟した感じがあり、国同士の争いが激しくなりそうな予感。
Posted by ブクログ
梁山泊も世代交代が徐々に進んでいく。
梁山泊が豊かになるにつれ、内外で不安定要素が増えてくる。
さあどうする、楊令。
梁山泊は、替天行道の理念は、どうなっていくのか?
Posted by ブクログ
「何もかも、『替天行道』が悪いのじゃよ、宣賛」
「おかしなことを、言われますね」
「いや、悪い。悪いということにしておこう。宋江殿はあれに、新しい国を作る夢まで書かれてしまった」
杜興の言葉に、冗談を言っている響きはなかった。
「腐敗した権力を倒すべし。それだけが書かれていたら、宋を倒して、梁山泊の闘いは終わりであった。新しい国は、誰か別の者が作ればいい。梁山泊で闘った者は、人民の海に消えていくだけで良かったんじゃ。そしてまた、権力が腐敗すれば、 『替天行道』 を読み継いだ者が、立ち上がればよい。闘いの輪廻はあっても、闘う者たちはそのたびに変わる」
「新しい国を作ることは、間違いだと言っているのですね」
「そんなことは、言っておらん。そこまでできるのだろうか、と言っている」
「おかしなことを、言われます。現に、この梁山泊は」
「うまくいっておるのであろうな、多分」
「まだ、この世に顔を出したばかりの国ですが」
「難しいな。ここは国なのか?」
「国です」
なんという話だ、と思っても、杜興は途中でやめない。
「わからんのう」(213p)
大いなる不安の中で、梁山泊は苦しんでいた。杜興は小さな綻びを直す為に、自ら命を落とす。古株たちも水滸伝の英雄に負けない見事な最期を遂げたが、 私はこの古狸の死に方が1番心に残った。思えば、楊令が初めてみんなの前で新しい国つくりの理想を語ったとき、一番冷静に沈思して聞いていたのは、この杜興だった。
「のう、宣賛。いま梁山泊はいい夢の中じゃ。夢は醒める。醒めた時、いい夢が現実になっておる。そうするのは、おまえたちの仕事じゃよ。わしは、もうきつい仕事はできん。おまえたちが、やれ」
いま日本は、外面は穏かな大木だが、中味はグズグズに腐っている陽だまりの樹なのではないか。真の意味で、憲法が暮らしの隅々まで活かされている国、そんな未来は果たして来るのだろうか?もし出来た時、私たちはもしかしたら、途方に暮れるのではないか。そんなことさえ、思ったのである。私は、杜興の立場か、宣賛の立場か。
Posted by ブクログ
それぞれの国の在り様が動き出す第12巻、漢達の死に様は心に残ります。この先を形として俯瞰するも、今を精いっぱい生きるもそのバランスはそれぞれ魅力的であります。愚直に生きられればと思います。
Posted by ブクログ
だんだんスケールがでかくなってくる。単なる歴史小説が、理想の社会とは何かという命題になってくる。
北方謙三は、楊令にそれを考えさせることによって、自ら理想の社会を描いて見せているのである。少しやり過ぎではないか。税負担が1割の社会が本当に可能であれば、政治家たちに読ませたいのだが。
交易で上がる利益だけで、それが可能というのは、いささか無理があるような気がする。
Posted by ブクログ
2012年05月 02/35
一晩で読んでしまった。
情勢が混沌としてきた中で、楊令が見つけた答えと宣賛のやり取りが興味深い。世代交代が進んでいくのを見ると、また最初から読み直したくなります。
Posted by ブクログ
金はネメガがダランとの政治闘争を制し、中原に斉を建国。
江南は李富の暗躍で宋が建つ。
梁山泊は金国にも金を払って西夏との交易をしていたが、商隊が金のオリドに襲われる。
燕青が罠にハマり、周欧を倒すが、盲目になる。
李援が李英の処分を求めて騒ぎ出し、収集するために杜興が自裁する。
金国もまだ勢力争いでごたごたが続いていた。
金軍が岳家軍に攻め入り、張俊がその隙に双頭山に攻め入り、退役間近の鮑旭を討つ。
Posted by ブクログ
「いま梁山泊は、いい夢の中じゃ。夢は醒める。醒めた時、いい夢が現実になっておる。そうするのはおまえたちの仕事じゃよ」(杜興)
金は南宋攻めを止め国内の権力争いに注力する。
南宋、金の傀儡 斉、耶律大石の西遼と国が次々と建った。
梁山泊と軍閥の小競合いが続く。乱世。
Posted by ブクログ
梁山泊と金が一触即発に!!
そして、各地で新たな国が建国されていく。
戦国時代に突入か??
ややスケール感がなくなってきたように感じたので★3つ。
Posted by ブクログ
李英と李媛と杜興。水滸伝中盤戦の独竜岡李家荘の戦いの後に加わった面々は本当に引っ掻き回してくれる。李媛の主張と聚義庁の方針に生じた綻び、そして小刀で1本で綻びそのものになり、綻びに誰も触れられないようにした杜興が12巻の核であったように思う。