あらすじ
梁山泊軍を出奔した李英の行方を追って、姉の李媛も姿を消した。侯真は致死軍を率いて、二人の捜索に向かう。だが、開封府でこせいと面会した李英は斉の将軍となり、岳家軍との戦に出陣した。一方、楊令らは、赫元の尋問によって、南宋皇太子出生の秘密を知る。やがて中原一帯には自由市場が立ち、梁山泊が支配する物流の勢いは、ついに南宋にまで広がろうとしていた。楊令伝、怒濤の第十四巻。
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本作品で戴宗という登場人物が嫌いでした。
一般的な水滸伝としては神行太保と呼ばれ足の速さを活かして活躍する好漢の一人です。黒旋風の李逵と組で活動していたような気がします。
本作、特に楊令伝になってからは候真に嫌な絡み方をしたり、酒に飲んだくれたりと嫌な先輩No. 1の代表格でした。
しかし、本巻で彼は死んでしまいます。今まで抱いていた嫌悪感は勝手なイメージに過ぎずキッチリ仕事をして若者を育てる昭和の時代の職人のような死様でした。
思わず涙が出てしまいました。
楊令軍には色々な指揮官がいます。
それこそ昔ながらのやり方に拘る頑固親父、新進気鋭の若手営業マン、2代目だけど親を超える才覚を見せるJr.、現場から嫌われる役員、面倒見の良いパワハラ上司、何を考えているか解りませんが何をやっても上手くいくひとなど、登場人物達にはサラリーマンとして見習うべき魅力があると私は思います。
次巻が最終巻!楽しみです!
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あちこちで激戦が始まり李援・李英の姉弟も・・・。
総力戦になりつつも童貫戦のように「負ける~~」という緊迫感はないような気も。
いよいよ次で最終巻。
果たしてどうなる??
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前巻のレビューで形を変えていろんな戦が始まっているという意味のことを書いたが、本巻では大規模な軍の衝突という本来の意味での戦が起きる。
「替天行道」の志から考えた新たなものを生み出そうとする楊令の思いが、このまま叶ってほしいと強く思う。
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「上等だ。梁山泊軍は、伊達じゃねえんだ。どこの軍とやり合ったって、勝てる。そして天下を取れる」
「意味があるのかなあ、それが」
「なんだと?」
「いや、私の任務は、病人を診たり、怪我を治したりすることですから。いつも、相手はひとりだけです。天下を見渡している余裕など、ありませんよ」
「志が、あるだろう」
「自分の場所で、懸命に闘う。志を考えれば、私がやるべきことは、それです」
「安道全や薛永はな、最後まで梁山湖の湖寨に留まった。命を懸けて、志を貫いたのよ」
「医師や薬師の場合、生き延びた方が、その後の役に立つ、と思います」
「おまえ」
「無論、安道全殿も薛永殿も、立派に志を貫かれたと思いますが」
「ぶちのめしてやろうか、小僧」
二十歩の距離で、急所に当てれば、確実に相手を殺すことができる。
修練は、積んできた。こういう飛刀を李英が遣うことを、誰も知らない。
李英は、板から小刀を抜いた。板はもう、穴だらけである。時には、突き通ってしまうこともあるのだ。三日で、一枚は使う。使いものにならなくなったら、焚火に放りこめばいい。
頭を下げた。上げながら、三本打った。狙った通りのところだ。また抜き、距離を取り、頭を下げた。
人が、故郷を思ったり、血を意識したりする年齢が、あるのだろうか、と楊令は思った。自分の故郷をどこと言えばいいのか、楊令にはよくわからない。
「難しいことを吐いて、なんになる。冗談は冗談でいいじゃねえか、冗談に踊らされているのも、また人間さ」
「なんのための、狼藉か訊こう」
「誇りのため。『替天行道』の誇りのため。俺は、誇りを傷つけられた。それは、雪がねばならん。身をもって雪ぐのが、男というものだ」
「笑止な。おまえは、串刺しになって死ぬのだぞ」
「もとより、生きようとは思っておらん。ただ、おまえに合う機会を、待っていただけだ」
「無駄であったな」
「身は、鉄の板で守れよう。鉄の板では守れぬものを、おまえはなにも持っていない」
「串刺しで、すぐ死なせるのは惜しい。命乞いをするほど、苦しみと恥辱を与えてやろうか」
「おまえのような男に、俺の志が穢せると思うのか」
そうだ、志に生きたのだ。不器用で、失敗ばかりした。小心で、周囲の目をいつも気にしていた。それでも、志に生きたのだ。それを見失ったことは、一度もない。
短かった。もっと闘いたい、という思いはある。しかし死は、古い友が訪ねてでも来るように、ある日そばに立っているのだ。
「見ておけ。これが、梁山泊の漢の、死にざまだ」
「俺は、雷光のようだ、としばしば思うことがある」
「へえ。俺は、自分が千里風だとは、まるで思いませんが」
「同志みんなと駆けているはずが、なぜか遥か先行し、一騎だけで駆けている」
四刻の疾駆のあと、のんびり歩くのが、雷光は気持よさそうだった。馬首を並べた秦容が、楊令の顔を見ている。
「たまには、並んで駆けてくれる者がいる。それが、今日わかった」
「はあ」
それが、見定められたわけではなかった。ただ、感じた。感じることが、戦場では武器になる。鈍れば、斬れなくなった剣を振るっているようなものだ。
「よく、頭領がつとまったもんだな、楊令殿。あの若さで担ぎあげられて」
「ひとりきりだった。いまふり返ると、そう思う。同志がともにいる。いつもそう思おうとしてきたが」
「同志はいたさ。死んでいった、梁山泊の同志がな」
「そうだな」
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いよいよ物語も佳境って感じで、各国がこぞって大きく動き出した。その趨勢ももちろん気になるけど、それよりもやっぱり目がいってしまうのは、漢たちの死に様。今回もたくさん死んでしまったけど、インパクトのあるラストシーンが多かった印象。リリツ、タイソー、カクセーの最期はインパクト大だったし、特にリリツの行為には、鳥肌立っちゃいました。
あと一巻。どんな大団円が待ち構えているんでしょうか。
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「自由市場は国の否定である。あれを許せば、統治というものの意味がなくなる」【呉乞買】
梁山泊は物流(自由市場)で中華を制そうという動きをとる。
金と南宋は自由市場を敵視し、ここに梁山泊に対する二国の利害が一致した。
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4.0
水滸シリーズ史上最大の戦。5人の将軍と遊撃隊史進、そして楊令。短かったけど梁山泊軍の凄まじさを見せつけられて満足感ある。
岳雲の「なんなのですか、やつらは」という台詞を見て、敵として立ち合う怖さを知った。それぞれの軍がカッコ良すぎる。
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李媛と李英の姉弟は報われないなあ。
彼らに対する聚義庁(しゅうぎちょう・梁山泊の中枢)の態度は、絶対に間違いだと思う。
厳しくするべきところを厳しくしないで、正論を黙らせた。
彼らの父、李応を好きだったんだよね。私。
いいところのお坊ちゃんだったけど、そんなことを鼻にかけずに、地味で目立たない重装備部隊の仕事をやっていたところが。
実直で。
だからそんな李応の子どもたちが、努力を認められることこともなく終わってしまったことが非常に無念だ。
李英は、登場当時は本当に優しい青年だったんだよ。
それが、同輩たちにどんどん先を越され、ついには部下にまで追い越され、焦ったあまりにやるべきことを間違えてしまった。
間違えたことは厳しく断罪し、罰を与えてから元の場所に受け入れればよかったのに、なかったことにしてしまったことから歯車がくるってしまった。
だけど李英は父ちゃんの名に恥じない生き方を貫いたよ。
嬉しくて悔しくて悲しくて、涙が出た。
いよいよ南宋と梁山泊の直接対決。
ともに頭領の首を狙いに行くが、決め手に欠ける。
次が最終巻。
どんな結末が待っているのだろう。
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漢たちが命を散らしていく。
出奔した李英が見せた意地にも近い漢らしい死に様。
そして呑んだくれで憎まれ役・戴宗の渋く散っていく。
戦場のど真ん中から決して動かず雄々しく果てた郭盛。
さらに張横、童猛、阮小二と梁山泊を陰から支えてきた者たちも。前作からの古参たちがそれぞれの誇りと不器用な生き様を刻み付けるよう死んでいく。
そして史進の愛馬・乱雲も主人を庇い倒れる。死にきれなかった史進、主人の苦しみを理解しながらも身を呈して守った乱雲。この愛馬との絆も「水滸伝」の魅力。胸を締め付けられる。
いよいよ次は最終巻。梁山泊、南宋、そして金。この戦いにどんな終局が待っているか。そして楊令と岳飛の決着は?
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梁山泊の目指す民(商人)を母体とした国作りと、南宋の旧来の帝を中心とした民政による対立という新たな図式で、梁山泊軍と南宋軍が全面対決に入りました。そこにウジュの金軍がどう絡んでいくのか?ということになるかと思われますが、次はいよいよ楊令伝の最終巻であり、その後は岳飛伝ともなると、梁山泊軍が崩壊するような終わり方になってしまうのでしょうかね?
でも、民が暮らしやすい(潤う)国とはどういうものなのか?ということが今後の重要なテーマのような気がします。
Posted by ブクログ
残すところ、あと1冊。
なのにどうやってまとめるんだろ?ここまでスケールの大きい話だともう、まとめに入っていなきゃ間に合わないのでは・・・
と勝手に心配してしまうくらい。
李媛・李英に関しては
ああ、やっぱり。な結末なので言うことはないけれど
堂猛・郭盛は悲しい。好きだっただけに。
乱雲なんて、もう。
史進の肩、抱いてやりたいくらいだ。頼まれたら胸も貸す。
それにしても、どうして
秦容が好きになれないのだろう・・・秦明将軍は大好きだったのに。
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「替天行道」の旗の下、宋という大国に立ち向かい、ついにはそれを滅ぼした梁山泊。新たな頭領となった楊令が目指したものは何だったのか...。作者はそれを「経済」が「国」を超える、というまさに現代の資本主義であり、グローバリズムであるものの原型だと設定した。その試みは成功したのだろうか?ともあれいよいよ梁山泊の最後の戦いが始まった。
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自由市場及び物流で国を支配するっていうのがピンと来ないな…。ダラダラ続いてしまって物語の方向性がぼやけているような…。でも先が気になってあっさり読み終わる。
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絆は人間同士だけのものではない、人間と馬だって同じなんだ。
無敵のように思えていた史進に、老いが見え始めた頃だっただけに、
乱雲が咄嗟にとった行動には思わず涙しました。
そして李英のくだりも、これぞ漢だ!と思いました。
梁山泊から裏切者が出るはずがない。だって志があるもの。
それにしても、誰も彼もが死に向かっている気がするのは何故?
昔からの同士が次々と退場していくのは悲しすぎる。。。
Posted by ブクログ
前の巻で、若さ故に裏切り者が出た、と書いた。申し訳ない。私の浅はかさだった。志で結びついた若者たちは、そう簡単に全てを裏切らない。李英は梁山泊の一員として立派な最期を遂げる。
最終巻近くになって、やっぱり、まさか、という感じで英雄たちが死んで行く。新しい時代を理解出来なかった古いタイプの革命家の戴宗は成る程という形で死んでいった。いい死に方だったと思う。
楊令は言う。
「なんのために戦をするか。それはもう、梁山泊を守るため、ということではなくなっている。新しく、現れてくるものを守る。新しいものを、ただの夢で終わらせない。そのために戦をする。俺は、そう思っている。新しく現れてくるものが、どんな姿をしているのか、俺はまだ言葉で言うだけだ。実際に現れてきたら、それは俺たちを押し潰すようなものなのかもしれん。しかし、俺はそれを見たい。梁山湖の湖寨に拠って、宋とのいつ終るともしれぬ闘いを始め、死んでいった梁山泊の先人たちは、みんなそこに光を見ていたのではないか。おぼろだが、「替天行道」の導く光を。志の導く光を」
全員が楊令を見つめている。楊令は低く「替天行道」を暗誦した。途中から眼を閉じた。湖寨にあった聚義庁の、燃える炎が見えた。背後の岩山で、ひとりで待っていた宋江の、静かな眼が見えた。心の中の、黒々としたものに光を当てよ、と言った宋江の声が聞こえた。(282p)
楊令の国は共和制になっただけではなかった。梁山泊を越えて燎原の火の様に「自由市場」が広がる。膨大な物資を動かして、その利鞘だけで運営する国。それは現代でさえもまだ実現していない、究極の資本主義社会である。楊令初め、この時代の登場人物たちがその正体を見極め、コントロール出来るはずがなかった。金や宋はこれを畏れ、梁山泊は守ろうとする。そうやって、最後の闘いの機は熟していこうとしていた。
国とは何か。革命とは何か。
大きな問が立ち上がろうとしていた。ここまで来てまだ混沌としている。果たしてどの様に決着が着くのか。あと一巻しか無いのである。
Posted by ブクログ
国の形が姿をあらわすがその行く末は誰もわかりようがない。それは止められない奔流となって英傑達を翻弄する。しかしその中で水滸伝からの漢達が儚く死にゆく様はやはり寂しくもあります。次巻ラストにそれぞれの生き様をしっかり見届けます。
Posted by ブクログ
楊令伝も終盤に差し掛かり、生き残った過去の英傑たちも徐々に物語から退場し始め、昔からのファンとしては寂しい限りですが、国のあり方については、また盛り上がり始め、目が離せなくなってきました^^
Posted by ブクログ
また泣いてしまった。
今回は常に戦場の真ん中にいた男の話です。
いよいよ、楊令の狙いが理解されはじめます。クライマックスに向けて、いったいどうなるんだろう?
Posted by ブクログ
経済を核とした国家を建設しようとする梁山泊と旧来の体制を指向する国家の南宋との戦い。
その中で水滸伝以来の人々が次々と退場していく。
楊令の目指す国家観が経済成功とともに、梁山泊に人々や南宋、金の人々にあらためて国家とは何かを考えさせる。
楊令伝はどんな完結になるのか?超近代的な国家はできるのか?
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李英が梁山泊から離脱して斉に加わった。
李援も李英を追って行方不明に。赫元が杳が偽物であることを吐いた。
楊令は斉や南宋に自由市場を立てて、経済を牛耳ろうとしていた。
張俊が南宋に下り、李英が劉ヨに拝謁したところで暗殺を試みたが失敗して自裁する。
自由市場を巡って、南宋と梁山泊の戦が始まる。梁山泊が南宋に大打撃を与えて勝利した。