無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで203万冊以上配信中!
梁山泊軍を出奔した李英の行方を追って、姉の李媛も姿を消した。侯真は致死軍を率いて、二人の捜索に向かう。だが、開封府でこせいと面会した李英は斉の将軍となり、岳家軍との戦に出陣した。一方、楊令らは、赫元の尋問によって、南宋皇太子出生の秘密を知る。やがて中原一帯には自由市場が立ち、梁山泊が支配する物流の勢いは、ついに南宋にまで広がろうとしていた。楊令伝、怒濤の第十四巻。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
※期間限定無料版、予約作品はカートに入りません
Posted by ブクログ
「上等だ。梁山泊軍は、伊達じゃねえんだ。どこの軍とやり合ったって、勝てる。そして天下を取れる」
「意味があるのかなあ、それが」
「なんだと?」
「いや、私の任務は、病人を診たり、怪我を治したりすることですから。いつも、相手はひとりだけです。天下を見渡している余裕など、ありませんよ」
「志が、あるだろう」
「自分の場所で、懸命に闘う。志を考えれば、私がやるべきことは、それです」
「安道全や薛永はな、最後まで梁山湖の湖寨に留まった。命を懸けて、志を貫いたのよ」
「医師や薬師の場合、生き延びた方が、その後の役に立つ、と思います」
「おまえ」
「無論、安道全殿も薛永殿も、立派に志を貫かれたと思いますが」
「ぶちのめしてやろうか、小僧」
二十歩の距離で、急所に当てれば、確実に相手を殺すことができる。
修練は、積んできた。こういう飛刀を李英が遣うことを、誰も知らない。
李英は、板から小刀を抜いた。板はもう、穴だらけである。時には、突き通ってしまうこともあるのだ。三日で、一枚は使う。使いものにならなくなったら、焚火に放りこめばいい。
頭を下げた。上げながら、三本打った。狙った通りのところだ。また抜き、距離を取り、頭を下げた。
人が、故郷を思ったり、血を意識したりする年齢が、あるのだろうか、と楊令は思った。自分の故郷をどこと言えばいいのか、楊令にはよくわからない。
「難しいことを吐いて、なんになる。冗談は冗談でいいじゃねえか、冗談に踊らされているのも、また人間さ」
「なんのための、狼藉か訊こう」
「誇りのため。『替天行道』の誇りのため。俺は、誇りを傷つけられた。それは、雪がねばならん。身をもって雪ぐのが、男というものだ」
「笑止な。おまえは、串刺しになって死ぬのだぞ」
「もとより、生きようとは思っておらん。ただ、おまえに合う機会を、待っていただけだ」
「無駄であったな」
「身は、鉄の板で守れよう。鉄の板では守れぬものを、おまえはなにも持っていない」
「串刺しで、すぐ死なせるのは惜しい。命乞いをするほど、苦しみと恥辱を与えてやろうか」
「おまえのような男に、俺の志が穢せると思うのか」
そうだ、志に生きたのだ。不器用で、失敗ばかりした。小心で、周囲の目をいつも気にしていた。それでも、志に生きたのだ。それを見失ったことは、一度もない。
短かった。もっと闘いたい、という思いはある。しかし死は、古い友が訪ねてでも来るように、ある日そばに立っているのだ。
「見ておけ。これが、梁山泊の漢の、死にざまだ」
「俺は、雷光のようだ、としばしば思うことがある」
「へえ。俺は、自分が千里風だとは、まるで思いませんが」
「同志みんなと駆けているはずが、なぜか遥か先行し、一騎だけで駆けている」
四刻の疾駆のあと、のんびり歩くのが、雷光は気持よさそうだった。馬首を並べた秦容が、楊令の顔を見ている。
「たまには、並んで駆けてくれる者がいる。それが、今日わかった」
「はあ」
それが、見定められたわけではなかった。ただ、感じた。感じることが、戦場では武器になる。鈍れば、斬れなくなった剣を振るっているようなものだ。
「よく、頭領がつとまったもんだな、楊令殿。あの若さで担ぎあげられて」
「ひとりきりだった。いまふり返ると、そう思う。同志がともにいる。いつもそう思おうとしてきたが」
「同志はいたさ。死んでいった、梁山泊の同志がな」
「そうだな」
Posted by ブクログ
『水滸伝』から続けて読んだので、最初はどうしても宋江たちの梁山泊と比べながら読んでしまいました。
でも、読み進めるうちに「これは同じ梁山泊でも、まったく別の物語なんだな」と少しずつ思うようになりました。
楊令が散り散りになった仲間たちをもう一度まとめていくところはやっぱり熱く、かつての梁山泊を知っているだけに、名前のある人物が出てくるたびに少し嬉しくなりました。
ただ、楊令は宋江の真似をするのではなく、自分なりにその先を考えていて、戦に勝つことより、「勝った後に何を作るのか」で悩み続ける姿がかなり印象に残りました。
後半になると戦より交易や国づくりの話が増え、『水滸伝』のような勢いを期待していると、正直少し長く感じるところもありました。
それでも童貫との戦いなど、ここまで読んできたからこそ胸が熱くなる場面は何度もありました。
最後まで読むと、志を受け継ぐというのは、同じことを繰り返すのではなく、自分の時代に合った形に変えていくことなのかもしれないと思いました。
15巻ずっと付き合ってきただけに、読み終えた時は達成感よりも、「もうこの梁山泊を見られないのか」という寂しさのほうが強く残るシリーズでした。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
試し読み
小説・文芸
小説・文芸
試し読み