北方謙三のレビュー一覧
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悲しくて、辛くて、途中で何度も本を置きそうになりましたが
それでも最後まで宋と遼の行く末を見届けずにはいられなかった。
「血涙」とはまさにその通りのタイトルだなぁ…。
石幻果の苦悩、六郎の失望、耶律休哥の不器用な優しさ。
そして皆の根底にあるのは武人としての誇りと意地。
色んな感情や思惑が去来して、何とも言えない気持ちになりました。
命と命のぶつかり合いの後は、ただ美しい草原が広がるばかり。
憎しみも、悲しみも、全ては土に還ってゆくのですね。
沢山の人々の血を吸って重たくなった吹毛剣が
やがて心優しき楊令へと受け継がれていくのだと思うと
それだけで何だか救われる気がする。 -
Posted by ブクログ
呉用が楊令を見つめてくる。
「行こうか、梁山泊へ」
「ほう、本気になったか」
「いままでも、本気だった。本気であるがゆえに、勝つ道筋が見えなければ、立つこともできなかった」
「そんな道筋はどこにもない。俺たちにもないが、童貫にもない」
「確かに、そうだ。私は、確かに、いや楊令殿自身に、手を握って引き摺り込まれたかったのかもしれない」
「いくらでも引き摺り込んでやる。反吐が出るほどにな。俺が足りないと思っていたものが、これで揃った。あと足りないのは、兵力ぐらいなものだ。それはおまえの頭でなんとかして貰うしかない」
「わかった」
この巻は大きい戦の続いたシリーズの「転」巻のようものだ。今まで揃っ -
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「方臘殿に、お伺いしたい」
燕青は、階を見あげて言った。
「この乱で、血が流れすぎた、とは思われませんか?」
「燕青、叛乱では、血は流れないのか?」
「多すぎたのではないか、と申し上げております」
「ひとりの血も、百人の血も、同じだ。一万であろうと、百万であろうと、俺の信徒どもは、死ぬほうが幸福だと信じたのだ。大地は血と同時に、信徒の喜悦も吸った」
「わかりません」
「わかる必要はない。俺は叛乱を起こして、面白かった。生きて生きて、生ききった、といま思える。教祖だけやっていては、そんな思いは得られなかったと思う」
「流れた血が多すぎました」
「どれほど多かったのだ。半分だったら、それでよかった