あらすじ
闘うことでしか生きられない者たちに勝敗を決する秋が来た。楊家の男の証である「吹毛剣」を手に戦う六郎に、父楊業の魂が乗り移る。その剣に打たれたとき、遼国の名将・石幻果の記憶がにわかに蘇る。遼国に忽然と現われたこの男は、かつて宋遼戦で落馬し、記憶を失い、遼国に連れ去られた北平寨の将だった。過去を取り戻した石幻果は二つの人生を抱えてしまった運命を呪い、苦悩する。そんな石幻果に今を生きることを決意させたのは、父とも慕う耶律休哥である。一方、戦場で石幻果と出逢った六郎も、石幻果に既視感を覚える。不安を抱きつつ石幻果に近づく六郎。予感は的中した。運命に弄ばれる男たちの哀しみを描く慟哭の終章。綾なす人々の憎悪と哀しみが交錯する衝撃の結末。乱世の終わりを彩る壮絶な物語が、今静かに幕を降ろす。『水滸伝』に登場する青面獣楊志、楊令が佩く宝刀との奇しき因縁も明らかになる「北方楊家将」完結編。解説は森福都氏。
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楊家将から始まり、切ないというか、いつまでも楊家が報われない運命から逃れられなくて読んでいて苦しい気持ちもあった。しかし、それも人生なのだとどこか腑に落ちる力強さを感じる。戦の描写は相変わらず凄すぎる。疾走感はもちろん、重要なシーンは全てが一瞬スローモーションに飛び込んでくる。このジェットコースターの様な感覚を文字で体感できる楽しさは異常だ。
今回の楊家将、血涙は「思惑」というのがかなり前面に出ている分、北方謙三らしからなという印象も少しあった。しかし、それは自分の間違いで思惑というのは、人間の本性を隠すことがとても難しい分、抗う事のできない大きな渦の様な中で、人はどう生きるのか、今の社会にも少し通ずる点もあるだろう。自分を貫くのか、渦に従うのか。どちらを選ぶことも人生、選んだ先に選んだ道がある。血の涙を流しても自分を貫く事のできる人は、今の世の中には少ないかも。
楊家という悲しき運命を辿る一家の行末を見届けた。それは人生において一つの財産といっても過言ではないかもしれない。これから楊令伝に戻って、楊家の執念が宋をという国を滅ぼしてしまうのか、梁山伯と宋の行末を見届けようと思う。
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血涙というタイトルの意味がわかってきた時、読み進めるのを躊躇った。楊家の男たちの熱い生き様、死に様、楊業に劣らぬ耶律休哥。
宋という国の腐ったところが見え、水滸伝への繋がりを感じざるを得ない。その後、吹毛剣がどうやって楊志へ渡ったのかも知りたいところ。
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なんという結末。楊業の死後、目まぐるしく変わっていく情勢。結局楊家軍は宋にとって、なんのための軍だったんだろうか。
様々な複雑な想い…
新楊家将ここに完結。
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宋と遼の戦いがいよいよ決大詰め。
耶律休哥軍と楊家軍、そして石幻果と六郎の血の涙を流す戦いが決着する。
最後の六郎と石幻果が剣を交えるシーンは、圧巻で切なくて壮絶で感動的です。まさに熱い心と涙なしでは読めないシーンだと思いました。
太后視点のエピローグも、ああ終わったんだ…という感じがすごく出ていて、登場人物の心にぽっかり穴が空いているように、読んでいる私にもぽっかり穴が空いてしまったような気持ちになりました。
それから、英材のセリフ。ここから、北方水滸伝に楊家の血が繋がって行くのかと思うと、北方水滸伝がついつい読みたくなっちゃいました。特に4巻とか5巻とか6巻とか!
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北方シリーズ2冊目。どうでもいいんですけど、「北方○○」ってあると、どうしても「ほっぽう○○」と読んでしまう悪い癖。
さて、初北方だった楊家将からの続編。その間北方は読まず。いやー漢ですねー。かっこいー(^^)いやに見えてしまうのは宋軍のほかの将くらいw
運命というのか、なんというのか、楊家の兄弟たちのような経験なぞできるわけもないですが、だからこそ、かっこいいんだろうなーと思う今日この頃。
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後半、俄然面白くなってきた。
記憶を取り戻した石幻果。それでも過去を捨て、石幻果として生きることを決意する。
対する楊六郎率いる楊家軍。
なぜに「血涙」なのかが今分かる!
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上で今までの敵の中で生きると決めた楊四郎、その後の兄弟達の苦悩や敵であった人たちが新生、自分の父母という記憶が戻っても決意して生きて行くその生きざまがすごい。兄弟達もそれぞれすごいと思ったがう~ん。暫くぶりに読みふけった作品でした。
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棺桶に入れたい一冊。
北方節が炸裂。
楊家将から続く続編で、こちらは兄弟愛を中心に描かれている。
こっから青面獣楊志や楊令に心意気が繋がっていくのだと思うと、
ぐっとくるものがある。
(水滸伝や楊令伝に全然関係はしないけれど)
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楊家将・血涙 全4巻の最終章。
宗にとっての楊家軍の立ち位置の変遷をみていると、国の繁栄に対して、政治と軍との距離感というか関係性を考えさせられる。ここでは楊家に感情移入してしまっていたので、虚しさを感じてしまったが…
石幻果は自分自身と決着をつけながら、かつては孤高の白い狼だった耶律休哥と親子以上ともいえる絆を深め、耶律休哥は軍人としてこの上ない死に方で人生の幕を閉じる。このように遼軍側は、よりパーソナルな人間ドラマが描かれているように感じた。
今までのように盛り上がりや期待感に溢れた劇的な感じではなく、終盤は沈静化ともいえる終わりかたなので、3冊続いた疾走感は失速していく感じがあったが、落ち着くところにおさまった感じはして、静かな満足感は得られた。
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楊家将の続編。
楊家将下巻、最後の戦で父楊業をはじめ多くの兄弟を失た。
残った六郎、七郎、が中心になり楊家を再興して行く物語。
楊家の娘九妹、亡くなった長男延平の息子延光も加わり
残った家臣たちも武将としてだけではなく、それぞれの仕事を
新しくもち遼と戦っていく。
楊家を再興するに当たり、武だけではなく物資や馬を集めるという
仕事に生き残った武将や前の戦で負傷をおった者たちがあたり
いかにして楊家を再興していくかまでもが描かれている。
遼の耶律休歌軍には、新たに石幻果という武将が加わりこれでま以上に
強くなっていく。
石幻果の過去が謎でそれが徐々に明かされていく。
楊家がこの物語では主役ではあるが、耶律休歌の生き様も主役なみに
描かれている。
=ネタバレ=
石幻果は前の戦で死んだとされていた楊家の四郎だった!
四郎は頭をぶつけ完全に記憶うしない遼軍の将軍になって宋と
戦うが、楊六郎と剣を交えた際に記憶が蘇り自分はどうすれば
いいのか悩む。
遼では父と慕う耶律休歌に剣で切られ、四郎は完全に石幻果として
生まれ変わる。
僧になり生き延びていた楊五郎とも六郎、七郎は再会を果たすが
五郎は石幻果を殺せるのは自分だと信じ戦いをいどむが石幻果に
逆に殺されてしまう。
そして宋と遼は自国の存亡と悲願をかけた戦いに突入する。
宋の文官、武官たちは武の家である楊家を捨て駒として扱うが、
六郎は宋の為でも王の為ではなく、楊家の誇りをかけて戦う。
九妹、延光、七郎までもが石幻家に倒されてしまうが
六郎が石幻果を倒す。
遼と宋は結局協定を結び戦いは終わる。
楊家は解体され六郎は新たな暮らしをはじめ、石幻果の息子英材が
六郎を訪ね、その時のことを語る場面で物語は終わる。
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読み終わった!!
何だろこの高揚感!そして、宋と云う国に対して湧き上がる苛立ちは!
いや、もう国家ってこんなもんかと割り切るしかないのかなー。
楊業の無念さや六郎の絶望に心が痛みます。
素晴らしかった!!
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血涙続き
なんと石幻果の正体はあろうことか記憶をなくした四郎だった。
過去の家来にも気づかず剣を振る四郎
そして六郎の吸毛剣とのまじわりによって記憶を取り戻しどちらの人間として生きるか苦悩する。
血涙の意味が分かります。
宋のためではなく楊家という武家の誇りにかけて戦う男、女のドラマです。
誇りとは何か、何のために生きるのかを考えさせられる一冊
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【もはや、その任に耐えず】
宋という国に翻弄された楊一族。
そして、自身との決闘のうえ遼に行った四郎。
なんともやるせない切ない話に仕上がる。それでいて戦や取り巻く文官や国・政治の絡みもしっかりと書かれている。
楊家のこの4冊はかなりおもしろかった。
Posted by ブクログ
ついに宋と遼が雌雄を決することになる。耶律休哥、石幻果と楊家軍との戦闘シーンは、まさに圧巻で自身が戦場を疾駆しているような錯覚を巻き起こしてくれる。
それにしても戦により新たに生まれ変わった楊四郎こと石幻果と、戦わなければならない運命となった六郎、七郎、九妹の楊家軍は、国に報じているものの、当時の文民統治の制度ということもあろうが、あまりにも報われていない感がある。
逆に軍人の力が強すぎるとクーデターを考えなければならないとなると常にバランスが大切なのであろう。
最終的には外交により、休戦をもたらすことになったのであるが、あまりにも多くの犠牲を要し、さらにあまりに不安定なものであることを感じざるを得ないのは、常に侵略と王朝交代が繰り返される中国の歴史が示すとおりであるからだろう。
遡るように楊家将そして水滸伝を読みたくなった。
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うーん、なんとも悲しい物語。楊家四男だった過去を切り伏せた石幻果とそれに立ち向かう楊家の生き残り3兄妹。もう国がどうとか関係ない状況だけど、遼の方が人を大切にしている雰囲気。まぁもともと分母が少ないって事もあるかもだけど。対して宋は楊家を全滅させてでも国を守る方針で…楊家は何の為に、誰の為に戦うのか?結局は国だとか軍だとかは関係なく、自分たちのために戦うのだと自分に言い聞かせる。今の組織でも、やる気も実力もある人が、周りの同調圧力に屈して潰れていく事もあるもんね。いずれにしても素晴らしい物語でした。
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悲しき楊家軍。終焉を飾る死兵として、また宋に裏切られる。しかし兄弟ながら敵味方に分かれた石幻果が、死に水は俺がとばかりに前にでる。クライマックスでありエンディングの最後の戦いが、澶淵の盟へと導いていく。
文治主義の宋だからこそ、悲運の主人公の話が成り立つ。「楊家将」も「水滸伝」も悲しき武人たちの話。
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歴史小説の醍醐味を感じ、読み応えがありました。
お恥ずかしながら楊家についての知識がなく、史実はわかりませんが、ストーリーとして最後は六郎と四郎が2人とも相打ちとなるんじゃないかと思ってたので、ちょっと肩透かしを喰らったかなと。
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自分の過去を知り苦悩する石幻果と の向き合い方は耶律休哥らしいというか、耶律休哥しかできないやり方だと思った。本当は、石幻果としてではない生き方を選んでいたとしたら・・・と考えてしまう。
いろいろな人が耶律休哥と石幻果に戦いを挑むがことごとく返り討ちにされる。やっぱり楊業がいなくなった後は、耶律休哥が最強になって誰も止められない!
この巻では、精強な将軍が次々と死んでいく。ここから、水滸伝に繋がるのかぁ・・・。楽しみだなぁ。
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もちろん熱い。筆致にブレもない。でも、上下二巻だけだと物足りなく感じた。漢たちの物語をもっと読みたい、って思っているうちに終わってしまった気がした。
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悲しくて、辛くて、途中で何度も本を置きそうになりましたが
それでも最後まで宋と遼の行く末を見届けずにはいられなかった。
「血涙」とはまさにその通りのタイトルだなぁ…。
石幻果の苦悩、六郎の失望、耶律休哥の不器用な優しさ。
そして皆の根底にあるのは武人としての誇りと意地。
色んな感情や思惑が去来して、何とも言えない気持ちになりました。
命と命のぶつかり合いの後は、ただ美しい草原が広がるばかり。
憎しみも、悲しみも、全ては土に還ってゆくのですね。
沢山の人々の血を吸って重たくなった吹毛剣が
やがて心優しき楊令へと受け継がれていくのだと思うと
それだけで何だか救われる気がする。
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ロミオとジュリエットものが好みなところとしては、石幻果の選択は残念な所もある。
前作よりも、一人一人の考えが深く描かれていて、苦しくても、最後はこれで良かったんだなと思えた。
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複雑。
血涙は遼と四郎を中心として動く。
北方謙三は、四郎の生きざまに惹かれたんだと思う。
「技のぶつかり合いでなく、意地のぶつかり合いでも、生命そのもののぶつかり合いでもない。強いて言えば、哀しみと哀しみのぶつかり合いだった」
四郎(石幻果)と五郎の戦いのシーン。
四郎の生きざまと楊家の流す血の涙が血涙のテーマなのかなぁと。
そして、吹毛剣が楊家を導く。
てか、五郎が魯智深そのものだったところなど、水滸伝、楊令伝へのオマージュが…
個人的に、一番てつまらないかもしれないかもしれない「単なる楊業の敵討ち」という結末を期待してたけど、そうならずによかったのかもしれない。
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石幻果として生きることを決意した、楊四郎。
楊六郎との対決は、宋軍の中での楊家軍は。
遼と宋との国をかけた戦い、登場人物が次々と
なくなっていくが佳境に繋がって行く。
宋創設のあまり表に出てこない、男と男の物語であった。
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「楊家将」の続編。北方小説の例に漏れず、不世出の豪傑達が信念を愚直に貫き、死んでいく物語。しかし、今回は少し違う見方を提案したいと思う。
それは、政治と軍の関係という視点。前作は五代十国の後期、宋が北漢を併合するところから遼への親征まで、本作では親征の2年後から澶淵の盟が結ばれるまでの物語が描かれている。時代背景を簡単に要約するなら、多数の国がお互いの国家主権を軍事力で脅かしあっていた戦国時代から、宋・遼という2大国家に集約され、その2国間でも同盟が結ばれ平和が訪れたという時代。この時代の流れの中で、軍に求められる役割は劇的に変化していく。平和な時代に向けて強力な軍閥は不要とされ、政治の扱いやすい軍が求められていく。澶淵の盟を結ぶ直前、決定的に軍閥が不要となる中で、宋・遼最強の軍閥である楊家軍、耶律休哥軍の決戦が命じられる。
政治と軍の関係は今の世界情勢を考える上でもホットなトピック。ジャスミン革命を発端とした一連の民主化運動は、各国の軍がどのように関与するかで民主化が成功するか否かが左右されると言われていた。リビアの軍になぜ傭兵しかいないのか考えることで、多民族国家の国家運営の難しさが理解できる。本書を読みながら、世界情勢に思いを馳せるのも楽しいかもしれません。
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楊一族の生き残り六郎と七郎は、帝の要請により楊軍の再建に力を傾け、遂に十分な兵力を整備するに至る。一方、元楊四郎であった遼の石幻果は、楊軍の一員であった頃の記憶を蘇らせ、その境遇に戸惑い思い悩む。そして、楊四郎としての自分を死に至らしめ、遼の石幻果として生き抜くことを決意する。また楊六郎、七郎も四郎が石幻果であることを知り思い悩み、密かに接触も試みて、四郎の決意を知る。そして、宋と遼、両国の決戦を迎え、楊家の悲劇は再び繰り返される。何という結末であろうか?!