北方謙三のレビュー一覧
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「楊家将」の続編。北方小説の例に漏れず、不世出の豪傑達が信念を愚直に貫き、死んでいく物語。しかし、今回は少し違う見方を提案したいと思う。
それは、政治と軍の関係という視点。前作は五代十国の後期、宋が北漢を併合するところから遼への親征まで、本作では親征の2年後から澶淵の盟が結ばれるまでの物語が描かれている。時代背景を簡単に要約するなら、多数の国がお互いの国家主権を軍事力で脅かしあっていた戦国時代から、宋・遼という2大国家に集約され、その2国間でも同盟が結ばれ平和が訪れたという時代。この時代の流れの中で、軍に求められる役割は劇的に変化していく。平和な時代に向けて強力な軍閥は不要とされ、政治の扱 -
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本紹介(抜粋):
宋建国の英雄・楊業の死から2年。息子たちに再起の秋が訪れる。楊家軍再興―。六郎は、父が魂を込めて打った剣を佩き、戦場へ向かう。対するのは、強権の女王率いる遼国の名将・石幻果。剣を交えた瞬間、壮大な悲劇が幕を開ける。軍閥・楊一族を描いて第38回吉川英治文学賞に輝いた『楊家将』の続編でありながら新展開
・・この石幻果が、実は宋の捕虜となり記憶を亡くした宋の若き将 楊四郎(六郎の兄)であることはすぐ明らかになるのだが、あら~記憶を戻したらどうなっちゃうの~的なドラマが陳腐にならず、あいかわらず熱い漢たちの絆と苦悩に萌えるのでした。 -
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戦闘シーンや戦術のくだりはどんどん読み飛ばしてしまった。「替天行道 北方水滸伝 読本」の人物事典にて登場人物の背景や性格を確認しながら読み進めているものの、各塞の将校レベルになると中々イメージがわかずに苦労する。項充(本隊の水陸両用部隊隊長)や楊林(飛竜軍隊長・元飲馬川の賊徒)など何度人物事典を紐解いたことだろう。
本作品において私の興味は登場人物の機微である。性格や背景に特徴を持つ人物が意外な場面で頭角を顕したりするのが楽しいのだ。この辺り、私が元人事担当者という経歴と無関係ではないだろう。
そして、王進のもとで修業をしている楊令と張平、水軍預かりとなっている趙林などの10代は、楊令を中心と -
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宋の時代。楊業なきあとの楊家を継いだ楊六郎が遼との戦に立ち向かいながらも,やがて血を別けた楊四郎こと石幻果との戦いに終結して行くありさまを描く。まさに読んでいると血の涙が出てこざるを得ない物語である。
耶律休哥は楊四郎の父とも言えるほどに石幻果に思いを入れ込み,そして戦に進んでいく。『戦は変幻の中にある。そこで大事なのは,相手よりも,自分の姿がどうなのか,いつも見ていることだ。』石幻果はそう休哥に教わった。『剣の腕を挙げ,強くなるということは大事なことだが,第一のことではない。第一は毎日の稽古をどれほど出来るかと言うことだ。』『冷静に,落ち着いて次の行動を判断する。感情が昂ぶったところから指揮