北方謙三のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
前の巻で、若さ故に裏切り者が出た、と書いた。申し訳ない。私の浅はかさだった。志で結びついた若者たちは、そう簡単に全てを裏切らない。李英は梁山泊の一員として立派な最期を遂げる。
最終巻近くになって、やっぱり、まさか、という感じで英雄たちが死んで行く。新しい時代を理解出来なかった古いタイプの革命家の戴宗は成る程という形で死んでいった。いい死に方だったと思う。
楊令は言う。
「なんのために戦をするか。それはもう、梁山泊を守るため、ということではなくなっている。新しく、現れてくるものを守る。新しいものを、ただの夢で終わらせない。そのために戦をする。俺は、そう思っている。新しく現れてくるものが、どん -
Posted by ブクログ
北方謙三の少年モノである。どうして女が描く少年は小学5年から中学2年までの大人一歩手前になって、男の描く少年は大人になるまでを描くのだろうか。
眠れなかった。躰の芯の方に痛みがある。佐野とやり合った時より、ずっとひどいようだ。一発一発のパンチがずしりと肚にこたえた。
やるだけはやった。久我とやりあって、勝てるはずも無いことは、頭のどこかでわかっていた。だからやめる。そうしなくてよかった、と周一は思った。最初からやめていれば、闘う前に負け犬だ。やりあって負けはしたが、それは第一ラウンドの負けのようなものだ。
寝返りを打とうとしたが、背中あたりがひどく痛んだ。顔も腫れているので、横にはむけられな -
Posted by ブクログ
ネタバレ前作からずっと追い続けてきた人物の物語が終った。
『水滸伝』はまさに叛逆と破壊の物語であり、志のもとに集った並みいる英雄たちが、強大な権力に挑み、壮絶な戦いを繰り広げていた。克明に描かれる漢たちの強さ、弱さ、絆、愛、怒りと悲しみに幾度も胸を熱くさせ、また熾烈な策謀や戦闘のシーンでは、敵味方問わず夢中になった。
前作に対し、『楊令伝』はその緊迫感や爽快感をやや欠いた。
四散していた梁山泊の同志たちが、北の大地に消えた楊令を見つけ出し、新たな頭領を得るところから、宗教という要素を持ち出し、人間存在や戦とは何かを徹底的に追求した方臘戦、それを乗り越え究極の戦人となった童貫将軍との最終決戦まで