北方謙三のレビュー一覧

  • 岳飛伝 二 飛流の章

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    金国、南宋、そして岳家軍はそれぞれ痛手を乗り越え、新たな体制を作りつつあるが、梁山泊だけが、方向性を見いだすことができずにいる。
    第三世代の王貴、張朔はそれぞれに梁山泊とは離れたところに自分の居場所を見つける。

    機が熟したとき、呉用は聚義庁に主だったものを集める。
    全てを率いる存在としての頭領を欲する秦容や呼延凌に対して、それぞれの志を持ち、それぞれの考えを持ったものの集合としての梁山泊を解く第一世代のジジたち。
    それは、すべてを楊令に押しつけてしまったことへの悔恨だった。

    「林冲殿さえ生きていれば、楊令殿が頭領などということは、絶対に許さなかった、という気がする」と泣く曹正に、ついつられ

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    2018年08月06日
  • 岳飛伝 一 三霊の章

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    百年に一度の大洪水で水に没した梁山泊。
    突然の楊令の死に呆然としつつも、機能を回復しつつあるものの、今後の方向性を出せる者は一人もいない。

    楊令亡き後も今までどおりの仕事をしながら、新たな指導者を待つ古い世代と、新たな道を模索する若い世代。
    史進が「じじい」呼ばわりされるくらいなのだから、もう本当に世代交代の時なんだと思うけど、最初から読んできた身としては少しさびしい。

    楊令の死は岳飛の勢いも一時止めた。
    その間に着々と国の体制を整えていく南宋の秦檜(しんかい)と、整えきれない金国の兀朮。

    それぞれのスタートラインが示された第一巻。

    “自分のことは、自分で決めろとは、どういうことなのだ

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    2018年07月24日
  • 楊令伝 七 驍騰の章

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    いよいよ始まった童貫率いる禁軍VSリベンジャーズの梁山泊軍!!!

    初戦は粘り強い趙安VS双鞭呼延灼
    どちらもフラグ立ち過ぎでどうなる事やらでハラハラドキドキ!


    今回は殆どいくさの話ですが若武者達が暴れまくります!


    高俅が大変な事になってます!
    さらに今回は子午山の話が全くありませんでした!今までそんな巻無かったような...

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    2018年07月09日
  • 岳飛伝 五 紅星の章

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    ウジュと岳飛の闘いがし烈を極めていくが、南宋と金の講和のために中断。あくまで岳家軍として「抗金」を掲げる岳飛。国内の安定のため軍閥を解体し南宋軍に組み込む方策を図る宰相・秦檜。互いの理念と志は交わることなく確実に破局が近づきつつある。
    一方、梁山泊では呉用が静かに最期を迎える。
    当初の堅物・嫌われ者から寨の陥落・方朧の乱を経て覆面の名参謀に変わっていったなかなか興味深く目の離せない存在だった。
    そして「岳飛を救え」という遺言。
    今後、岳飛と梁山泊をどう結びつけていくのか。史実と創作の折り合いをどうやってつけていくのか。次巻からの展開が楽しみだ。

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    2018年06月25日
  • 吹毛剣 楊令伝読本

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    『楊令伝』を読み終わったので、一区切りの公式読本。

    年表と人物事典が良かった。
    あとは読者との質疑応答も面白かった。
    書評や対談はいろんな発見があってためになる。

    しかし編集者からの手紙は、いらないなあ。
    もちろん著者と編集者の間に手紙のやり取りがあっていい。
    でもそれを本にする必要はない、というより、はっきり言って邪魔。
    1953年生まれの編集者の、軽薄ぶった文体が気持ち悪くてダメだった。

    『水滸伝』では世直し(革命)が、『楊令伝』では国造りが描かれた。
    『岳飛伝』は、人物を描くのだそうです。

    十二巻を書き終えた段階では、李俊以外の第一世代は全員生き残ると著者は言っていたらしい。

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    2018年05月29日
  • 楊令伝 十五 天穹の章

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    ああ、そうきたか。
    主人公の名のついた『楊令伝』
    彼が脇に回るわけはない。
    そして、生き続ける限り、彼は物語の主役を張る男だ。そう生まれついている。
    だから、楊令の命の終わりがこの作品の終わりだと予想していた。

    だけど、全然死ぬ気配はない。
    梁山泊の大きな柱が1本、また1本と倒れていっても、彼が倒れる気配は最後までなかった。

    それでもことが起こってみたら、ずっとそこに答えはあったような気がする。

    楊令よりずっと年下の秦容が「生意気を言いますが、おれは同情していました」と言った。
    楊志が命をかけて守った息子であることから、梁山泊を背負って立つ男の運命を生きることになってしまった楊令。
    ひと

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    2018年05月15日
  • 楊令伝 十四 星歳の章

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    李媛と李英の姉弟は報われないなあ。
    彼らに対する聚義庁(しゅうぎちょう・梁山泊の中枢)の態度は、絶対に間違いだと思う。
    厳しくするべきところを厳しくしないで、正論を黙らせた。

    彼らの父、李応を好きだったんだよね。私。
    いいところのお坊ちゃんだったけど、そんなことを鼻にかけずに、地味で目立たない重装備部隊の仕事をやっていたところが。
    実直で。

    だからそんな李応の子どもたちが、努力を認められることこともなく終わってしまったことが非常に無念だ。
    李英は、登場当時は本当に優しい青年だったんだよ。
    それが、同輩たちにどんどん先を越され、ついには部下にまで追い越され、焦ったあまりにやるべきことを間違え

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    2018年05月05日
  • 水滸伝 二 替天の章

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    2巻目にして、梁山湖の自然の要塞に巣くう盗賊の首領を排除し、主役たちが揃い、名前も新たに梁山泊と改め、この地を拠点に世直しがはじまる模様。3巻目がたのしみである。

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    2018年05月05日
  • 岳飛伝 五 紅星の章

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    結局、岳飛とウジュとの間に決着はつかず、南宋軍と金軍は講和する方向で調整することとなった。その後の各人の行方をそれぞれ追っていく。史実を知らないので、それぞれの話が歴史上のどういった意味・布石なのか感じ取ることができないが、今後の推移を見守りたい。個人的には秦容と韓セイの話が好き。後、呉用の死で、ますます史進の存在が切ないものに・・・水滸伝第1巻(2巻?)からの付き合いであった史進には思い入れがあるので、最期まで漢を貫いて欲しいと思うばかりです。

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    2018年05月01日
  • 岳飛伝 四 日暈の章

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    岳家軍と金軍との戦い。格好良くてひりつく展開と戦闘描写は流石。梁山泊、特に秦容はもはや何を目指しているのか?と思ってしまうが、これはこれで漢達の物語。知らぬ地を開拓していく様にも戦いがあり楽しい。北方さんが自分で経験したことを元にしているのでは、と思うほどディテールが凄い。この話も今後の展開が楽しみだ。

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    2018年05月01日
  • 楊令伝 十三 青冥の章

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    ひとつの目的のために、大勢が心を一つにして立ち向かう。
    そんな時代を過ぎてしまった梁山泊は、もう一枚岩ではない。

    国を造る。
    いうのは簡単だが、思い描く国の形はそれぞれ。
    楊令に託す国の形が、自分勝手なものになってきたとき、梁山泊の未来に暗雲が立ち込めてくる。

    まるで哲学の書のように、「国とは?」を考える人物たち。
    国とは、民衆を守るための強い軍隊と考えた岳飛は、守ってきたはずの民衆から反乱を起こされる。
    国とは、民衆から搾り取った税金で潤っていくものと考える旧宋の生き残りたち。
    国とは、民族の独立のためにあるものと考えた女真族の国・金。
    国とは、民衆が安寧に暮らせる場所と考える楊令。

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    2018年04月20日
  • 岳飛伝 十七 星斗の章

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    大水滸伝完結
    多くの人の死の積み重ねの上に、新しい世が始まる。
    それにしても、人を殺しすぎ。。。
    それだけしないと、既存の制度は破壊できないのかもしれない。

    国家を超えたグローバル企業が支配する社会。現代社会から地域紛争がなくすためのひとつの方向かもしれない。
    岳飛伝はSFだったのかぁ。。。

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    2018年04月15日
  • 岳飛伝 二 飛流の章

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    少しずつ登場人物のおさらいができて、物語に入りやすい状況になった中、王進、公叔の死と梁山泊軍対金軍の激突。流石の死に際の描写に涙して、相変わらず格好いい戦闘描写に鳥肌が立ち、あっという間に読んでしまった第2巻だった。

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    2018年04月10日
  • 岳飛伝 一 三霊の章

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    楊令伝を読んでから4、5年経ってしまい、登場人物の人間性は記憶おぼろげの状態。そうであっても、北方謙三さんが描くピリッとした漢らしい雰囲気や短い言葉に含まれる情感は相変わらず引き込まれる。

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    2018年04月10日
  • 岳飛伝 十六 戎旌の章

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    梁山泊と金、そして南宋との戦はいよいよ終盤、史進が瀕死の傷を負いながら敵の総帥を討ち果たします。
    すでに歴史を超えたところで描かれる大河小説は、どこへ行くのか、最後まで目が離せません。

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    2018年04月04日
  • 楊令伝 十二 九天の章

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    ネタバレ

    今回の展開はちょっと納得いきません。
    ネタバレになるけど、いいかしら。(ダメなら読まないでね)

    梁山泊は交易による莫大な利益によって、民から多額の税を徴収しなくてもすんでいる。
    そのため梁山泊の商隊を軍が護衛している。

    李媛が指揮する商隊を護衛していたのは弟の李英が率いる隊だった。
    姉弟の父は、重装備部隊の隊長だった李応。
    梁山泊には二世の将校が結構いる。
    その中で、なかなか結果を出せない、上に引き上げてもらえない李英は焦っていた。

    そんな時商隊が金軍に襲われて、李英は積み荷を守ることよりも、手柄を立てることを優先してしまった。
    手柄を立てる=敵を打ち取ることが、積み荷を守ることだと思い

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    2018年04月03日
  • 楊令伝 十四 星歳の章

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    ネタバレ

    漢たちが命を散らしていく。
    出奔した李英が見せた意地にも近い漢らしい死に様。
    そして呑んだくれで憎まれ役・戴宗の渋く散っていく。
    戦場のど真ん中から決して動かず雄々しく果てた郭盛。
    さらに張横、童猛、阮小二と梁山泊を陰から支えてきた者たちも。前作からの古参たちがそれぞれの誇りと不器用な生き様を刻み付けるよう死んでいく。
    そして史進の愛馬・乱雲も主人を庇い倒れる。死にきれなかった史進、主人の苦しみを理解しながらも身を呈して守った乱雲。この愛馬との絆も「水滸伝」の魅力。胸を締め付けられる。
    いよいよ次は最終巻。梁山泊、南宋、そして金。この戦いにどんな終局が待っているか。そして楊令と岳飛の決着は?

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    2018年03月25日
  • 楊令伝 十一 傾暉の章

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    ネタバレ

    独立したものの、未だに国の基盤が固まらない金。
    皇帝と名乗るものはいるものの、実態の殆どない南宋。
    その間で、着実に国の形を整えていく梁山泊。
    一見すると梁山泊の一人勝ちのように見えるが、だからこその陥穽も見え始めてきた。

    岳飛や張俊は未だに自分の治める土地のありようについて、悩みながら試行錯誤しているが、梁山泊はある程度人材もそろっているがゆえに、ちょっと出来すぎなところがあって面白くないなーと思い始めたところで、岳飛の一手。
    青蓮寺も動き始めて、次はどうなる!?

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    2018年03月20日
  • 岳飛伝 十五 照影の章

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    この巻が出るまでインターバルが空いてしまいましたが、その空白を埋めるには少し盛り上がりに欠ける展開にやきもき。残り2巻、梁山泊はどうなるのか、歴史を超えた命を吹きこまれた岳飛の運命は如何に。

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    2018年03月07日
  • 楊令伝 十 坡陀の章

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    童貫を討ったことにより、戦いは一度終結する。
    宋をめぐる思惑は、あちこちに不穏のたねを残しているけれど、楊令はこれ以上梁山泊を大きくするのではなく、民が安心して豊かに暮らせる国づくりを考える。

    ここからみんなが幸せになっていければいいのだけど、そうはならないのが哀しいところ。
    侯真は失うために人生を生きているような気がして不憫。
    花飛麟のような感じで生きていくのかしら。

    戴宗はもう使えないのではないか。
    宋江と出会ったばかりの頃の戴宗は、懐の大きな人だったのに、今は何よりも心が老いて、小さく凝り固まってしまっている。
    それなのに肉体の衰えがほとんどないせいで、心の老いに気づくことができない

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    2018年03月05日