ヤマザキマリのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
-----おわりに より抜粋
『人間が70年なり80年なり生きていく上で、失望も屈辱も失敗も悲しみも避けて生きていける可能性など正直皆無と言っていい。なのに、私たちは自分たちの心構えや行い次第で、苦労も苦しみもない幸せに満ちた夢のような暮らしも可能だと子どもの頃から安直に思い込まされ、そうならなかった場合の対処をほとんど修練させられていない。水溜りを避けて歩く方法論ばかり学んだところで、水溜りに嵌まった場合にどうしたらいいのか、我々の得意な機能である想像力を稼働できない人間が今は多すぎるのではないだろうか。極端な人であれば、水溜りに足を濡らしただけで、「ああ、もう自分の人生はこれでおしまいだ」 -
Posted by ブクログ
50年前の最初のテレビ漫画のゲゲゲの鬼太郎は見た。実写版の悪魔くんもうっすら覚えている。昭和ヒトケタの父親が鬼太郎は面白いと云っていたなあ。
子供時分は、水木さんの絵は少し苦手だった。手塚さんや石ノ森さんの丸っこい描線が好きだった。今見ると、背景や妖怪の緻密な描写や点描の凄さに驚きつつ、人物、人間側の鬼太郎達の描き方と奇麗な女性やイケメンの描き方にギャップがあるなと思う。
4人の語り手が水木さんを解き明かす。境港での幼少期、食うや食わずの紙芝居描き、貸本時代。死地を彷徨った軍隊時代、幻想怪奇譚好きが水木さんを形づくったとのこと。
成程、改めて、この人は野放図な天才だと知ったよ。 -
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Posted by ブクログ
自分が想像していた内容とは少し違っていたけれど、欧州諸国と、日本を対比させたのがすごく面白かったし、学びになった。
やはり、日本は四方を海に囲まれ、欧州諸国のよりも侵略されにくい国。
それこそが、さまざまな日本人気質を産んでいるんだな。。
パンデミックの時に、アマビエが流行った理由も納得。
この科学の世界にいながらも、日本人の中には、妖が疫病をもたらすという、風俗がしっかりと残ってる。
ついでに。西洋のやり方をそのまま踏襲した民主主義が日本で成り立たない理由もしっくりきた。
あれだけ違ったら、そりゃ別物になるよな。。。
知らない、考えたこともなかった世界を知れて面白かった -
Posted by ブクログ
博学のお二人が現在の日本、日本人の状況について縦横無尽に語り合われた内容。
対談の部分については正義、生贄、世間体、個性を失う教育といったことに対して容赦ない分析が会話の中で行われていく。その知識のバックグラウンドは半端ではない。
対談の章では「なるほど」と思わされるところが多々あった。ただ、「で、どうしたら良い?」という問いに対する答えのようなものが見えてこなかった。
「自分は自分が大事、相手も自分が大事、それを尊重し認め合うこと」という言葉が最後の方で出てきた。まさしくその通りだと思う。
最後の章のヤマザキマリさんのお考えは、とても納得のいく内容だったと思う。 -
Posted by ブクログ
日本より海外暮らしが長いヤマザキマリさんだから見えてくる日本のお国柄。
言われてみればそうかも知れないなぁ、と思うくらい、日本でしか暮らしたことのない私には極々自然な習慣や国民性ですが、海外と比較することで、日本の文化や習慣などの特性がよく見えてきました。
日本って意外とスゴイかもと思ったのは確かですが、その美徳も海外の人たちと渡り歩くにはパワー不足かも。
それでも誇れるところは沢山あるな、と再認識しました。
ヤマザキさんの切り口が面白く28のエッセイのそれぞれの終わりに出てくるそのエッセイの内容に沿ったイラストにもニヤリとしてしまいました。 -
Posted by ブクログ
ヤマザキマリ(1967年~)氏は、東京生まれ、北海道育ちで、イタリア在住の漫画家、随筆家、画家。
私は著者とほぼ同世代で、これまで何となく気にはなりつつも、漫画を含めてその作品を読んだことはなかったのだが、昨年12月にNHK番組「趣味どきっ! 読書の森へ 本の道しるべ」で紹介されたことから、所謂自伝である『国境のない生き方』(2015年)を読んでみたところ、実に刺激的・魅力的な半生を送っていることを知り、本書も新古書店で入手した。
本書は、2020年2~3月に新型コロナウイルスによるパンデミックが始まり、それまでは、日・伊の行き来のほか、世界各地を旅することをライフスタイルにしてきた著者が、日