酒寄進一のレビュー一覧

  • 月の夜は暗く

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    オーストリアの作家「アンドレアス・グルーバー」の長篇ミステリ作品『月の夜は暗く(原題:Todesfrist)』を読みました。
    ここのところドイツミステリが続いていましたが、今回は同じドイツ語圏のオーストリアミステリです、、、

    「アンドレアス・グルーバー」の作品は、約2年振りで3作品目ですね。

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    「母さんが誘拐された」ミュンヘン市警の捜査官「ザビーネ」は、父から知らせを受ける。
    母親は見つかった。
    大聖堂で、パイプオルガンの脚にくくりつけられて。
    遺体の脇にはインクの缶。口にはホース、その先には漏斗が。
    処刑か、なにかの見立てか。
    「ザビーネ」は

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    2024年01月04日
  • 珈琲と煙草

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    話の節々に、日本人と違う感覚を持っている人がいると感じた。この本ではコーヒーとタバコで自分の心を癒していたが、多分、人によってそれは何でも良い。自分の心を落ち着かせてくれるものを持っているという自覚が大事なんだと思った。あと、体に悪いものを結局好きになってしまうのは、世界共通であると感じた。

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    2023年11月18日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    2013年日本刊行、シーラッハの初長編作品とのこと。
    『禁忌』は読んだことあったけど、あれよりもこちらの方が前だったとは。

    やっぱりこの文体は好き。
    どこか不穏でぴりっとした緊迫感が終始漂う。
    決して奇をてらった表現や独特な言い回しがあるわけではないのだが、何がどうしてこの著者特有の雰囲気が生まれているのだ。
    すごく物語世界に没入させられる。
    訳者、酒寄さんの力量、推して知るべし。

    ある夜ホテルで一人の大物実業家ハンス・マイヤーが元自動車組立工の年老いたイタリア人コリーニに殺される。
    そこには強烈なまでの憎しみがあった。
    殺害後自ら警察を呼ぶが、その後は黙して何も語らない。
    新米弁護士のラ

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    2023年11月04日
  • 神

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    安楽死は、これからの社会では切実かつ避けては通れない問題です。
    自分はどちらか、と言えば…賛成側です。
    作中にて、最近、世間を騒がせているアノ問題にニアミスしています。
    日本では、ここ半年前から騒がれ始めましたが、作者の地元·ドイツを含む欧米では、発覚した当時は大騒ぎだったようです。以前聞いた話では、「修道院では就寝時、両手は毛布から出す」のが決まりだとか…
    本筋からズレてしまい、すみません

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    2023年10月10日
  • 珈琲と煙草

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    シーラッハの作品は、とても不思議。刑罰などの作品同様、文章は(エッセイでもあるしなお)淡々としている。のに、とても惹かれてしまう。どういうこと?なんで?を残したままのエッセイやお話もある。でもそこに、たまらなく惹きつけられてしまう。
    面白いとかそういうのではなく、これはもう、この人の書く文章が、書き方や想いが、ただ好きだとしか言い表せない。

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    2023年09月01日
  • 犯罪

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    こういう本を読むと、彼の国はそんなことになってるのねー、と興味深い。ドイツの本てのもなかなか読む機会ないしね。
    EUでは優等生のドイツだけど、暗部も抱えていそうで。でも金のあるところには人も犯罪も集まるということで、やっぱ活気があるんだろうな。
    というわけで色々と犯罪ネタがあって興味深い。よくある移民ネタもあるけど、国産品もいっぱいで、特にフェーナー氏とエチオピアの男は社会派っていうかね、人情派っていうかね、グッと来るものがあるよね。何故に飛んでアジスアベバーって意味わからんけど豪快で好きよ。

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    2023年07月03日
  • その昔、N市では

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    あ、たぶんこれ私好きだなと思った一目惚れ装丁。
    不可思議はそんなに遠いことではなく、実は身近にあるんじゃないかと思わせる短編集でゾクゾクした。

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    2023年06月27日
  • 聖週間

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    安定のおもしろさとちょうど良さ。すっかりこのシリーズのファンです。

    3作読んで思ったことメモ:こういうシリーズものって大抵、事件の内容と主人公の過去のなんやかんやが重なってたりして、新たな謎を呼んだり裏で糸を引く因縁の敵の存在が仄めかされたりしつつ主人公の暗部をチョイ出し&人格を深堀りする仕掛けがあるのがセオリーかと思うんだけど、今のところヴァルナーもクロイトナーも各事件とパーソナルに関わることはなく、自分の人生をただガツガツと生きてる。
    だからあんまりおもしろくない(ドラマ性に欠ける)と捉えることもできると思うけど、逆に、物語のための装置として設計されたキャラクターじゃないんだぞっていうラ

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    2023年06月27日
  • 咆哮

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    ひとつひとつの要素は目新しいものじゃない、むしろベタだったりするのに、絶妙にわくわくさせてくれてどんどん読み進めさせてくれる小説だった。登場人物も良い。
    特に中盤、警察と犯人が接触しそうでしないハラハラ展開はさすがドラマの脚本家だっただけのことはある。
    なんでこのシリーズ全部翻訳されてないの?

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    2023年06月23日
  • その昔、N市では

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     15編収められた短編集。作品の配列にとてもこだわったと訳者あとがきにあります。怪異・ユーモア・性が入り混じった作風。ドイツという国が重ねてきた歴史の影の部分も時折見え隠れします。女性の心理描写がきめ細やかで、多くの作品では自惚れや恋心や恐れの果てに死や老いへと主人公は突き進んでいくのですが、少年から性的な欲望を向けられ怯えていた少女が、やがてその欲望の美しさも感じ取るようになるまでの僅かな時間を描いた『長い影』が一番好みでした。最後に収められた『人間という謎』で、読者の我々も作者との旅からいったん解き放たれます。

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    2023年06月20日
  • 珈琲と煙草

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    異様な罪を犯した人間たちの物語。幼少期の体験を描く自伝的エッセイ。社会のさまざまな出来事についての観察とメモ。法の観念と人間の尊厳、芸術についての論考。作家としての物語へのアプローチの仕方……。数ページずつ綴られる断片的な文章は、たがいに絡みあい、複雑で芳醇な文学世界を構築する。『犯罪』で脚光を浴び、刑事専門弁護士から現代ドイツを代表する作家となった著者による、最もパーソナルで最も先鋭的な作品集。

    ショートショートのような落ちの短編が気に入った。

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    2023年06月10日
  • 珈琲と煙草

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    倫理や法律について論理的且つシニカルな短い逸話が繰り返されるが、多くが伝聞や書物に基づくものでサッチャー元首相の逸話なども事実か物語なのか迷わせる。
    人権の話で、ドイツ基本法第1条では、「人間の尊厳は不可侵である」と定められているにも関わらず、2017年にベルリンで前年比60%増の947件の反ユダヤ主義の事件が起きており「私たちは言葉の外へは出られない。私たちの理解できるのは、理性だけだ。説明することを可能にするのは、つねに概念だ。 他に方法がない。しかし自然や生や宇宙にとって、そうした概念はなんの意味も持たない。重力波に善も悪もない。光合成に良心などない。 重力に対して、われわれは無力だ。」

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    2023年06月07日
  • 刑罰

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    久しぶりのシーラッハ。

    いつも通り、感情の起伏がない、淡々とした空気感。なのに、内容はやはり衝撃的でした。
    でも今回は、なぜかとても文学的な雰囲気を感じて、ちょっと感動してしまった。
    私のなかでは、ミステリーではなく、文学だな。

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    2023年05月21日
  • 黒のクイーン

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    オーストリアの作家「アンドレアス・グルーバー」の長篇ミステリ作品『黒のクイーン(原題:Schwarze Dame)』を読みました。

    『夏を殺す少女』に続き、「アンドレアス・グルーバー」作品です。

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    保険調査専門探偵「ホガート」は顧客からある依頼を受けた。
    プラハの展覧会に貸し出した絵画が焼失、調査に派遣した絵画専門の調査員は行方不明になった。
    調査員の安否と保険詐欺のことを調べて欲しいというのだ。
    プラハに飛んだ「ホガート」は、そこで猟奇連続殺人事件に巻きこまれる。
    首と手を切りおとしビロードにくるんだ死体の謎。
    『夏を殺す少女』で衝撃のデビュ

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    2023年03月25日
  • 夏を殺す少女

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    オーストリアの作家「アンドレアス・グルーバー」の長篇ミステリ作品『夏を殺す少女(原題:Rachesommer)』を読みました。
    オーストリアの作家の作品は初めて読みましたね… この前まで読んでいたドイツミステリと同じドイツ語圏なのですが、この作品を読んだ限りではオーストリアミステリの方が好みかな。

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    酔った元小児科医がマンホールにはまり死亡。
    市議会議員がエアバッグの作動で運転をあやまり死亡。
    一見無関係な事件の奥に潜むただならぬ気配に、弁護士「エヴェリーン」は次第に深入りしていく。
    一方ライプツィヒ警察の刑事「ヴァルター」は、病院での少女の不審

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    2023年03月25日
  • コリーニ事件

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    ドイツの作家「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の長篇ミステリ作品『コリーニ事件(原題:Der Fall Collini)』を読みました。

    『罪悪』に続き、「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の作品です。

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    新米弁護士の「ライネン」は大金持ちの実業家を殺した男の国選弁護人を買ってでた。
    だが、被疑者はどうしても動機を話そうとしない。
    さらに「ライネン」は被害者が少年時代の親友の祖父だと知る。
    ──公職と私情の狭間で苦悩する「ライネン」と、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士が法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。
    犯人を凶行に駆り立てた秘めた

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    2023年03月25日
  • 弁護士アイゼンベルク

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    ドイツの作家「アンドレアス・フェーア」の長篇ミステリ作品『弁護士アイゼンベルク(原題:Eisenberg)』を読みました。

    「ハラルト・ギルバース」の『オーディンの末裔』に続き、ドイツ作家の作品です。

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    凄腕の女性刑事弁護士「アイゼンベルク」は、ホームレスの少女から弁護を依頼される。
    友人のホームレスの男が、女性の殺害容疑で逮捕された件だという。
    驚いたことに、彼は「アイゼンベルク」の元恋人だった。
    物理学教授の彼がなぜホームレスになり、殺人の被疑者に? 
    二転三転する事態と熾烈な裁判の果てに明らかになる、あまりに意外な真実。
    一気読み必至の傑

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    2023年03月25日
  • 終戦日記一九四五

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    1945年ドイツにおける終戦前後の著名作家(反政府的とみなされていた)の生活状況と考察を書いた日記。日本同様ドイツでも終戦前後の混乱はあったようだがその様相は若干違うよう。人名・地名等になじみがないこと、歴史・思想に対する知識不足により少々読みにくかった。それでも全体的な動きは大体理解できたと思う。戦争というものを考える時にその時代の(ほぼ)生の証言は必要であろう。

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    2023年03月15日
  • その昔、N市では

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    文章は理知的。怪異譚もクラシカルな趣きで端正。しかし登場人物の心は揺らぎ、不安定な危うさを秘めている。
    すっと読み通せるが、収められた各短編には読み流すことを許さない、しっかりとした手応えがある。
    表題作は、外国人労働者への依存と無理解、エッセンシャルワーカーの仕事に価値をおかない世界に対する批評が想起される寓話。
    『見知らぬ土地』では、“人間性という壊れやすい幻想がささいなことで消し飛ぶ”様が描かれる。戦後ドイツの連合国による占領地域にて、敵国の軍人と居合わせることによる緊張がサン=テグジュペリの名前を出すことによって緩和されていく。しかし、その交流は脆く、苦い思いが残る。ヒューマニズムを否

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    2023年03月11日
  • 急斜面

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    クロイトナーシリーズ4作目。いつもブレーキでポンコツのクロイトナーが今回はめちゃ働いていて、ミステリーとしてもストレスなく読めた。「働く」とは言え性格は変わる訳ないので、それがエンタメミステリとしても笑いがあって面白かった。

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    2023年03月09日