【感想・ネタバレ】咆哮のレビュー

あらすじ

ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞作!

著者アンドレアス・フェーアは、現地南ドイツでは、ドイツミステリの女王ネレ・ノイハウスと並び称されるビッグ・ネームである。
そのフェーアのデビュー作をお届けする。
2010年フリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)新人賞受賞作、初の邦訳!
読み始めたら止まらない、抜群のリーダビリティをぜひご賞味ください。

ドイツ南部ミースバッハ郡の小さな湖で、厚く凍りついた湖面の下から16歳の少女ピアの死体が発見された。謝肉祭のプリンセスのようなドレスを着て、口の中には数字の書かれたブリキのバッジが押し込まれていた。
第一発見者のクロイトナー上級巡査は自身が手柄を立てようと躍起になるが、ミースバッハ刑事警察署に特別捜査班が立ち上がり、ヴァルナー捜査官が指揮を執ることになる。

捜査が進む中、新たに13歳のゲルトラウトの死体が見つかった。現場はなんとヴァルナーの自宅の屋根の上。
ピアと同じようなドレスを着て、口の中からは数字の書かれたバッジが見つかった。
捜査線上にピアの通う学校の教師が容疑者として浮かぶが、700キロ離れたドルトムントの港で少年の遺体が引き揚げられ、少年の遺体にも少女二人との共通点が見つかって――。

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Posted by ブクログ

咆哮とは、獣などが吠え猛ること。
原題は『Der Prinzessinnenmörder(プリンセス殺し)』。これは断然、邦題のほうがストーリーに合っているとわたしは思っている。最後まで読み終わったら、咆哮というタイトルの重みがひしひしと感じられた。

事件の舞台は、ドイツのバイエルン州。田舎町にある小さな湖の氷の下に、金色のドレスを着た少女の遺体が漂っているのを発見したのは、クロイトナーというお調子者で目立ちたがり屋の巡査だ。本の表紙はこの女の子の姿だと思うけど、それは世界で一番美しい死体と言われた『ツイン・ピークス』のローラ・パーマーを思わせた。
捜査の指揮を取るのは、ヴァルナー捜査官。
少女の口の中から、数字が書かれたバッジが見つかった。これが何を意味するのかはまだ分からないが、犯人からのメッセージではないかと警察は考える。
次なる被害者の少女の遺体はとんでもない場所から発見されるが、やはり彼女も金色のドレスを身にまとい、口からは数字が刻まれたバッジが見つかった。そう、連続殺人事件だ。

場面は変わって、いきなり雪山。
仲の良い親子が二人で一緒にスキーを楽しんでいると、バランスを崩した娘が崖から落ちてしまう。100mほど下に見える娘の足がわずかに動いていることを確認した父親は、助けを呼ぶ無線を借りるため、近くにある山小屋へと向かうが、その山小屋は実は・・・。

まったくかけ離れた場所で起こったふたつの事件は、もちろん繋がっている。それがどこで結びつくのかがこの物語の肝の部分で、おそらく邦題のタイトルの由縁にもなっている。
わたしが過去に読んだ小説を参考して考えると、死体に印を残すという行為は連続殺人事件であることが多く、犯人は大抵知能が高い完璧主義者で、自己顕示欲が強い傾向があり、犯罪行為を心から愉しんでいることがほとんどだ。途中までは、この話もそのように思えた。
でも違うんだよね。
わたしはこの本を読んでる最中、「頼むから、もうやめてくれー」と2回思った。
1度目は雪山で。
2度目は雪山の山荘の夜に。

日本の作家が書いた似たような題材の本を読むと、日本の小説のほうがウエットに感じる。
わたしが日本人だからなのか、それとももっと違う理由がどこかにあるのか、それはよく分からない。

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2025年05月19日

Posted by ブクログ

ドイツの作家による推理小説。ドイツのフリードリッヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)新人賞受賞作品。

アンドレアス・ヒューアと言えば、弁護士アイゼンベルクシリーズで知られていますが、こちらは別のシリーズ作品。シノプシスを見ると、主席警部のヴァルナーと上級巡査のクロイトナーのシリーズ作品という事ですが、実際には??

というのも、ドイツの警察制度では、制服警官による外勤の保安警察と、私服勤務がデフォルトの刑事警察と、制服組と私服組が異なる警察組織になるんですよね。なので、日本の様に、制服警察官から始まり、階級が上がって、刑事になると私服勤務になるという事では無いんですよね。なので、ヴァルナーとクロイトナーが、所謂“コンビ”か?と問われると、若干微妙です。まぁ、事件解決に向かって、互いに何らかの関係があるんですけどね。

描かれている事件自体は、非常に重いもの。これが、はっきり言って、若干のドタバタ劇があっての解決なので、読み終わると“不思議”な感じにとらわれました(笑)

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2024年05月17日

Posted by ブクログ

ひとつひとつの要素は目新しいものじゃない、むしろベタだったりするのに、絶妙にわくわくさせてくれてどんどん読み進めさせてくれる小説だった。登場人物も良い。
特に中盤、警察と犯人が接触しそうでしないハラハラ展開はさすがドラマの脚本家だっただけのことはある。
なんでこのシリーズ全部翻訳されてないの?

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2023年06月23日

Posted by ブクログ

面白いものは面白いんだなぁ~

ヴァルナ―とクロイトナー
絶妙の緊張と緩和、あっという間に読み終わってしまった。

この物語は酔っ払い警官のクロイトナーが偶然死体を見つけるところから始まり、そして最後も……。
苦労して犯人を絞りこんでいくヴァルナ―、直観で行動するクロイトナー
で、この2人はチームでもバディでもない。え?なにそれ!

ドイツの警察小説ということで読み始めたが、いい意味で裏切られた。
愛と人生とトラウマを帰納法で証明しようとするシュリンク
犯罪心理を因数分解で明らかにしようとして、結果「わからない」とするシーラッハ
こんな人ばかりと思っていたら、こんなミステリ小説もあるんだって感じ。

バッハやメンデルスゾーンのなかに美空ひばりを見つけた気分

あとがきに、クロイトナーによる南部ドイツの旅行案内のおまけ付

シリーズものなので、がぜん次が読みたくなった。

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2022年09月02日

Posted by ブクログ

ドイツ南部ミースバッハ郡の小さな湖で、厚く凍りついた湖面の下から16歳の少女ピアの死体が発見された。謝肉祭のプリンセスのようなドレスを着て、口の中には数字の書かれたブリキのバッジが押し込まれていた。
第一発見者のクロイトナー上級巡査は自身が手柄を立てようと躍起になるが、ミースバッハ刑事警察署に特別捜査班が立ち上がり、ヴァルナー捜査官が指揮を執ることになる。

捜査が進む中、新たに13歳のゲルトラウトの死体が見つかった。現場はなんとヴァルナーの自宅の屋根の上。
ピアと同じようなドレスを着て、口の中からは数字の書かれたバッジが見つかった。
捜査線上にピアの通う学校の教師が容疑者として浮かぶが、700キロ離れたドルトムントの港で少年の遺体が引き揚げられ、少年の遺体にも少女二人との共通点が見つかって――。

弁護士アイゼンベルクのシリーズは読んだことがある。ネレ・ノイハウスよりもライトな筆致で読みやすい。

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2022年08月15日

Posted by ブクログ

ドイツミステリー。凍った湖で遺体を発見したのは外勤警官のクロイトナー。次に捜査担当のヴァルナー首席警部の自宅の屋根から第二の死体。どちらも口内から数字を示したバッジが発見された。並行して描かれるのは、昔。バックカントリースキーをしていたら、娘が転落し、救出しようと死にものぐるいの父親の姿・・・

中まではそれほど面白くなく、先が楽しみでもないのでやめようかと思った。しかし山岳遭難の方の関わりが分かると急に面白くなる。

殺人の動機がこれほど読ませる小説はあまりないかも。

下にネタバレ。


※ネタバレ

スキーで転落した娘を救うために、夜半に山を彷徨ったペーターがやっと山小屋に辿り着いた。そこではドラッグでラリった男女がいた。救助隊を呼ぶために無線機を貸してくれと頼むが、ふざけた奴らが壊してしまった。ペーターが、彼らの子供など大切な人たちを殺そうとする。

復讐することが正義だとすれば、ペーターのしたことは必ずしも間違った事ではないのか?復讐の向く先が子供なであることが間違ってるのか?それとも復讐自体が間違ってるのか?なんてことを考えた。

たぶん、多くの読者は慎重な、捜査を指揮するヴァルナーと、ワイルドでテキトーなクロイトナーの落差を面白がるのではと想像するけれど、個人的にはそれほどではなかった。

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2021年03月23日

Posted by ブクログ

没頭させていただきました。最後の方、失速?かと思いきや、なかなかの展開で面白かったです。恨んでるのはわかるけど、そもそも自分のせいでは?感が拭えません。検問の時とラストシーンの雰囲気で、クロイトナーの人となりがわかりますね。張り詰めた場面を和ませてくれてる感じです。南ドイツの冬の厳しさがひしひしと伝わります。いつか行ってみられたらなあ。

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2021年03月18日

Posted by ブクログ

久々に一気読みした。酒寄氏の訳に間違いないし、アイゼンベルクシリーズとは違った趣も感じた。犯人の目星はつくミステリーだが、読みものとしても面白かった。

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2021年03月11日

Posted by ブクログ

9.5割位まで全く事件の真相が見えなくて、あ、終わりだ、ぽいっ、ぽいっ、と事実を二つ程投げ込まれて、だだだーと終わる。最近こういうの多くない?作者はハードSなのかハードMなのか、読書とはただの暇つぶしというアイテムでよいのか。。。とかおもぅぃました。シリーズ物の幕開け作品らしく無駄に同僚などのやりとりがあったり、家族がこれからなんかやらかしますよ、という匂わせなどあり。うん、まあ要するに今回もはまれなかった。

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2023年08月05日

Posted by ブクログ

『弁護士アイゼンベルク』シリーズが面白かったので、同著者のデビュー作だという本書を手に取ってみました。

ドイツ南部の凍てついた湖の氷の下から、少女の死体が発見されます。
殺人事件として捜査が開始されますが、捜査の指揮をとるヴァルナー主席警部の自宅屋根の上から、新たな少女の死体が発見されて・・。

連続殺人事件のパートと雪山で大ピンチになっている父娘のパートが交互に描かれる展開からスタート。
デビュー作という事もあってか、序盤は文章がちょっと読みずらい部分もありましたが、地名やキャラ特性がわかってくるにつれ、プロット自体はよくできていることもあって徐々に引き込まれていきました。
死体に隠されたメッセージや、被害者たちの関係性(ミッシングリンク)といったミステリ要素もワクワクします。
ただ、中盤である程度の謎解きはできてしまうので、後半からは犯人と警察との追いつ追われつのサスペンス的展開を楽しむ感じで、特に終盤の怒涛の展開は手に汗握りながら読みました。
メインキャラのヴァルナー主席警部は、冷え性で真面目。コツコツ地道に捜査を進めるタイプですが、祖父のマンフレート爺さんにペースを乱されるわ、最初の死体の発見者でもある、やんちゃキャラ・クロイトナー巡査に美味しいところを持っていかれるわで、まさに“苦労人”という感じです。
しかも、どうみても本書ではヴァルナーが主役なのに、巻頭の登場人物紹介ではクロイトナーがトップになっているあたりも彼の不憫さを表しているなぁ、と思いました。

因みに、巻末には「レーオンハルト・クロイトナー上級巡査とハイキング」という、クロイトナーによる観光案内コーナーがあって、この遊び心あふれるサービスも嬉しいですね。

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2023年04月01日

Posted by ブクログ

<弁護士アイゼンベルク>シリーズはタイトルしか存じ上げないが、その著者によるドイツ発の警察小説<ヴァルナー&クロイトナー>シリーズの第一作目。クロイトナーは傲岸不遜で独断専行型の不良警官だが、異様な強運の持ち主で、丹念な地取りを続けるヴァルナー警部を尻目に、常に美味しい場面を掻っ攫うという何とも独特の存在感を放つ。今作がデビュー作とあってか、荒削りで煩雑な印象は否めないが、巻を重ねる毎に洗練されていくのだろうな。脇役ではあるが、ヴァルナーの祖父の一癖も二癖もあるキャラクターも中々エキセントリックで面白い。

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2021年04月04日

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