あらすじ
ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞作、第2弾。
その日、ミースバッハ刑事警察の上級巡査クロイトナーは、リーダーシュタイン山の頂上を目指していた。全欧警察技能コンテストに向けてのトレーニングの一環だった。
やっとの思いで頂上に着くと、小さな礼拝堂のそばになぜか大きなビール樽が立ててあった。運んできたのは顔見知りの小悪人スタニスラウス・クメーダーだった。
挨拶もそこそこに、クロイトナーは突然気分が悪くなり、頂上を囲む手すりから身を乗り出して嘔吐する。だが、顔を上げて振り向くと、クメーダーの姿が消え、頭部が吹き飛んだ胴体がその場所に横たわっていた。
2年前、クメーダーの恋人が失踪した。クメーダーが殺される前、クロイトナーはその失踪中の恋人の行方を弁護士のファルキングが知っていると聞かされていた。
クメーダーの恋人が失踪した頃、弁護士のファルキングは、20万ユーロに及ぶ大金を義父から借りていた。ファルキングは仕事上の損失を補填するため、インサイダー取引の危険な賭けに出るつもりだった。
ネレ・ノイハウスと並び称されるドイツ・ミステリのビッグ・ネームが本書の著者アンドレアス・フェーアである。
2010年ドイツ推理作家協会賞(フリードリヒ・グラウザー賞)新人賞を受賞した『咆哮』(小学館文庫)に続く、ドイツで大人気の傑作警察小説〈ヴァルナー&クロイトナー〉シリーズの第2弾をお届けする。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
弁護士アイゼンベルクシリーズの作者による別シリーズ、クロイトナー上級巡査とヴァルナー警部シリーズ。
シリーズ2作目ですが、シリーズ最高かも。例によって、引っ掻き回すクロイトナーと、私事に悩み事を抱えつつ慎重に事件を解決に導くヴァルナー。ドイツに警察制度では、クロイトナーとヴァルナーは別の警察に属しているのかと思っていましたが、同じ警察に属しているんですね。
いやぁ、それにしても、シリーズ最高というのは、入り組んだ謎もそうなのですが、その真犯人が意外な人物であること。それも、無理やりではなく「あー、そーなんだ」と納得できる描き方。いや、良かったです。
Posted by ブクログ
シリーズ第二弾。
ドイツ南部、リーダーシュタイン山の山頂で、クメーダーという男が射殺される事件が発生。
クメーダーは、死の直前に偶々居合わせたクロイトナー上級巡査に二年前に失踪した恋人の行方を、弁護士・ファルキングが知っていると告げていて・・・。
タイトルになっている「羊の頭」とは、バイエルン州の伝統的なカードゲーム・「Schafkopf(羊の頭)」のことで、本文中にも登場人物達がSchafkopfに興じる場面が出てきます。
さて、前作で凍結した湖で少女の死体を発見し、本作では、目の前で男が射殺されるという、相変わらず“持っている”クロイトナーと、祖父のマンフレート爺さんの“現役っぷり”に心乱されている苦労人・ヴァルナー主席警部の対比が楽しいこのシリーズ。
プロローグは、義父から大金を預かろうとする弁護士・ファルキングの場面と、恋人からのDVに耐えきれなくなって逃げだそうとしている少女の場面という不穏な状況から始まり、これらの過去のパートと現在のパートを交互に織り交ぜながらスリリングに話が進んでいきます。
内容的に、結構入り組んでいるのですが、展開が気になってついついページを捲ってしまいます。
特に終盤は手に汗握るシーンの連続で、DV男・ペーターから逃げようとするズージー。彼女を守ろうとするも、ペーターに連れ去られてしまい、追う羽目になる警察側の脇の甘さにジリジリしながら読みました。
二転三転を経てたどり着いた、ラストのどんでん返し的な真相は、意外ではありましたがちょっと切なかったです。
このように、展開の上手さに引き込まれてしまう本書ですが、今回の事件の背景にあるDVも辛いですし、女性に暴力をふるう男は勿論、彼女達の苦しみに付け込むような輩がクズすぎて不快だったので-★となった次第です。
とはいえ、ミースバッハ刑事警察署の面々のキャラは、割と好きなので次作以降も追っていきたい所存です~。