酒寄進一のレビュー一覧
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ネタバレ戦後ドイツの作家、マリー・ルイーゼ・カシュニッツの日本オリジナル短編集。
一編一編が高級チョコのように味わえる作品集。幻想的でありつつも、どこか人間の普遍的な不安感が漂う。その暗い感じがクセになる作家。
以下、作品毎の感想。
◯白熊 ★おすすめ
帰ってきたのに何故か電気を付けたがらない夫と妻の会話。出会った動物園で、妻は本当は誰を待っていたのか。会話しているのは本当に夫なのか。不安がピークになるころ意外な展開に。
◯ジェニファーの夢
夢を見たという娘のジェニファー。日を追うごとに夢が日常を侵食しているようで、得体の知れない娘への不気味さが描かれた作品。
◯精霊トゥンシュ ★おすすめ
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Posted by ブクログ
ネタバレ登場人物が多い上に人間会計が複雑、更にそれぞれがあだ名で呼びあったり、作中作小説は仮名処理されてて、誰が誰だかわからなくなる。
しかも、みんな嘘ついてて、ルービックキューブかってくらい事件の構図が目まぐるしく入れ替わり、その度に容疑者候補順位が次々シャッフルされる。
これを最後に収束させられる技量半端ない。
ピアがため息混じりに「これは最低の事件よ。嘘と巻き添え被害だらけ」というのも頷ける。
そんな中、ゼヴェリン・フェルテンのキャラが最高。未だかつてここまで強烈な噛ませ犬がいただろうか。
終盤で特殊応力を発揮するし、ニコラのお気に入りになってるし、レギュラ入りを予感させますね。 -
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ネタバレオリヴァ―とピアシリーズの第10作。
オリヴァーの私生活はこんな酷いことになってたんだっけ?
上手く行っていたような気がしたのだが、
ピアに言わせれば、いつも同じタイプ、
不安定さを抱えるキャリアウーマンタイプに惹かれるオリヴァーが悪いのだが。
元妻のコージマが癌になり末娘と一緒に住んでいるが、
妻の娘が悲惨な事件を目撃したトラウマからか意地悪三昧。
オリヴァーひとりなら、自業自得で終わりだが、
娘を巻き込むのは親としてどうかと思う。
別居すると聞いて「ようやく?」と言いたくなるピアの気持ちがよくわかる。
さらには、家を出た後に元実家のお城を改装したホテルに泊まり込み、
敷地内の家に安い家賃 -
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『犯罪』『罪悪』に続く短編集。当初は本書を含めた三部作として構想されていたらしい。
前作および前々作と同様、描写は簡潔で、登場人物の心情はほとんど語られないため、読者の脳内で埋める余白部分が非常に多いのが著者の特徴。
幸せが一瞬のうちに奈落の底に突き落とされるような急転直下の展開が多いが、読んでいて驚くと同時にどこか納得してしまうのは、余白部分を埋めるパズルのピースの取捨選択が恐らく完璧だからで、率直に凄いと思う。
バッドエンドが多いので読後感の良さを求めるのであれば本書は向かないが、緊張感のある読み心地を体験したいのであればおススメの一冊である。
やはりシーラッハは現代を代表する短編作家だと -
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みんな大好きシーラッハさんの社会「観察記録(訳者あとがきより)」です。
48の章に別れたエッセイと創作が区別無く(視点の違いがヒントかも)並べられていて、それぞれが短文だからかシーラッハ独特の世界の切り取り方、視点、省略が「犯罪」「罪悪」以上に鋭く感じられ、予想以上に楽しめました。
幾つか「何この話」という物もあれば法律や権利を題材にした重い話もあったり、虚無感を抱えながらも人間をやっていくには他人を信頼していくしかないね、みたいな価値観に共感しながら読んでいました。
また頻繁に挿入される引用も魅力的でした。シーラッハファンは必読かと。是非是非。 -
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真の自分になるために己の道を歩く
試行錯誤して己の道を行くことが人生
でも真の自分になれた人はいない
人類皆兄弟だから分かち合うことはできる、でも自分を解き明かせるのは自分しかいない
序章のこの考えが面白くて何度も読み返したくなる
アブラクサスやカインとアベルの話で宗教を学ぶことの面白さを見出した
うまく言語化できないけど、この本で苦境を乗り越えるヒントのようなものを掴んだ気がした
ニーチェやユングの心理学も併せて読んでみようと思う
世界を卵に例えて雛が殻を突き破ると言う表現が少女革命ウテナにもあったような気がしてこのアニメももう一回見直したいなと思いました -
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ネタバレエッセイなのか小説のアイデアメモなのかショートショートなのか、弁護士であり小説家のシーラッハが書いた文章臭といった体の1冊。
「法律なんだから守らなければいけない」法治国家で生きる以上それはそうなんだが、法律は本当に正しいのか?そのことは常に疑問に感じていたいと思う。
戦争当時のドイツも日本も法に基づいてかの戦争をしていたわけだし、戦後ついこの間までのアメリカの黒人は法に基づいて差別されていたし、今のロシアは法に基づいてウクライナに侵攻している。
万能でない人間が決めたものなんて、そんなものである。社会生活を営む以上順法姿勢は取っていても、あからさまに怪しそうな取り決めは疑ってかかるのが -
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「物事は込み入っていることが多い。罪もそういうもののひとつだ」
序章の一文が象徴するように、この短編集は、いろいろな出来事が積み重なっていき、後戻りできない犯罪を犯す人々を描いている。
犯罪を犯す刹那は、今まで踊っていた薄氷が不意に割れて、冷たい氷の下に落ちてしまう瞬間のようだ。誰だってそうなる可能性はある。
作者も言う。「幸運に恵まれれば、なにも起こらないでしょう。幸運に恵まれさえすれば」。
あくまで淡々と事実を積み重ねるクールな筆致ながら、行間に溢れ出すようなやるせなさや、切なさや、時には幸福感などの叙情を感じざるを得ない文体、ものすごく好みだった。
例えば最初の『フェーナー氏』、フェー