酒寄進一のレビュー一覧

  • デーミアン

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     私は、自分を壊してまで自らの心を覗き込んで、向き合って、探究する必要はないと思っているけれど、たとえ苦くて辛くても自分と向き合う時間はかけがえのないものだなって、改めて思わせてくれた小説。

     ぱっぱと読んじゃうのには勿体なくて、少しずつ少しずつ読んでいくのがいいかなって、個人的には思った。

     自分の思想と合うか合わないかは別として、人が普段鍵をかけて奥底に沈めている部分に揺さぶりかけてくる、素晴らしい本だと思う。無視しようとしても、なんとなく無視できない、鮮烈な印象を残す本。ただ書くのが上手いとか、ストーリーが面白いとかっていうんじゃなくて、魂を削って、全部曝け出して、痛みを強さに変えて

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    2021年04月29日
  • 生者と死者に告ぐ

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    オリヴァー&ピアのシリーズ、第7作。
    ドイツのミステリです。

    オリヴァーは主席警部で捜査のリーダー。ピアは恋人ではなく、仕事上のパートナーです。
    散歩中の女性がライフルで遠くから射殺される事件が起きた。
    ピアは夫と休暇旅行に行くはずだったが、人手不足の時期に難事件が起きたのを案じて取りやめる。
    次々に射殺事件が起きるが、被害者は誰も恨まれるような人柄ではなかった。
    捜査は難航するが…?
    思いがけない事件の描写がシャープで、ミステリとして興味を引く内容。

    オリヴァーは離婚後、幼い末娘を可愛がって、ようやくだいぶ落ち着いた暮らしに。ただし、今の交際相手とはどうも仲が深まらないので別れを考えてい

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    2021年04月16日
  • 悪しき狼

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    「刑事オリヴァー&ピア」シリーズ第六弾。読み始めたらぐいぐいと引っ張られていく展開。事件が事件だけにつらくなるような描写もあるけれど、面白さは抜群。ひとつひとつが少しずつ繋がりだしていくその描きかたが本当にうまくて全体が見えた時の鮮やかさは素晴らしい。続刊も早めに読もう。

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    2021年03月27日
  • ベルリン1945 はじめての春(下)

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    ネタバレ

    読み終わってしまった・・・ベルリンロスで呆然としています。
    この3部で、またハンスに会えることを期待して「実はハンスが生きていた」っていう展開を願っていたのだけど。ずっしりとした喪失感を味わいました。
    激動の中、ぶれることなく信じることを守った人。大勢の中に呑まれ、力あるものを信じ込まされた人。戦争が終わって、価値観がひっくり返る様は日本の戦後も一緒だと思いました。

    一生本棚に置いておきたい本に出会ってしまった。

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    2021年03月17日
  • ベルリン1933 壁を背にして(上)

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    読むまでは、外国の歴史上の事だと思っていたし、ナチを支持する人なんて悪人ばかりだと思っていた。だが…どのようにしてあの惨劇が普通の労働者の中で進行していったのか、ドキュメンタリーを読んでいるようだった。

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    2021年03月16日
  • ベルリン1933 壁を背にして(下)

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    この前の赤い水兵では、栄養不足で衰弱し「この子は生き延びることができるのか」と思ったあの小さなハンス坊やが15歳に成長して登場。先が不安定な労働者として働きつつ、ヘレの信頼できる同志になっていく。まだ15歳なのに・・・。日毎にナチの力が増大して、圧力と暴力で追い詰められていく様に胸が押しつぶされそうでした。信じるものを変えるのは難しくない。自分で考える方がずっと難しいというフレーズが刺さってきました。強いものに巻かれて行き着いた先がナチスドイツ。ハンスの周りの人々の先が気になってなりません。

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    2021年02月23日
  • テロ

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    戯曲なので、読みやすい。逆に読みにくいと感じる人もいるかもしれません。
    有罪か無罪か。正義なのか、命の選別なのか、とても難しい問いかけに明確な答えはありません。考え続けるしかないのです。
    そもそも、発端はテロ行為です。如何なるテロ行為も許すまじ、神の名の下であっても!という著者の思いに共感しました。

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    2021年01月14日
  • ベルリン1945 はじめての春(下)

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    ネタバレ

    _それでも人生はつづく。逃げ隠れしようとしても無理だ_

    転換期三部作、ついに完結です。

    小説を読んでいて、目を覆いたくなるような、というのもおかしな表現だけど、実際に、一瞬瞼を閉じてしまうことが幾度もあった。

    ゲープハルト一家との付き合いも30年近くに及んできたので?感情移入しないでは読めない。
    可愛かったあの子が、、、
    えっ、あの人が?そんなばかな、、、
    と序盤からさまざまな衝撃の連続。

    敗戦の色濃くなってきた1945年のベルリン。米英軍からの爆撃は普通の市民を容赦なく巻き込みます。
    終戦を迎えても、瓦礫の街で生き延びるのは容易なことではなく、ヒトラーを信じた自分を責め続ける人、自由

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    2021年01月12日
  • ベルリン1945 はじめての春(上)

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    ネタバレ

    _それでも人生はつづく。逃げ隠れしようとしても無理だ_

    転換期三部作、ついに完結です。

    小説を読んでいて、目を覆いたくなるような、というのもおかしな表現だけど、実際に、一瞬瞼を閉じてしまうことが幾度もあった。

    ゲープハルト一家との付き合いも30年近くに及んできたので?感情移入しないでは読めない。
    可愛かったあの子が、、、
    えっ、あの人が?そんなばかな、、、
    と序盤からさまざまな衝撃の連続。

    敗戦の色濃くなってきた1945年のベルリン。米英軍からの爆撃は普通の市民を容赦なく巻き込みます。
    終戦を迎えても、瓦礫の街で生き延びるのは容易なことではなく、ヒトラーを信じた自分を責め続ける人、自由

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    2021年01月12日
  • ベルリン1919 赤い水兵(上)

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    ドイツ革命、激動の3カ月に起きたこと。
    その只中で生きる13歳の少年ヘレにとっては、歴史なんかじゃなく、家族や友だちとともに否応なく巻き込まれていく現実。
    ヘレの気持ちや生活の描写が丁寧で、ヘレの気持ちで読み進めます。

    食べるものも暖房もままならない冬のドイツで、家族や仲間たちの安否を懸念する緊迫感に引き込まれました。読み終えて、ドイツ革命の歴史をおさらいして、また読んでいます。

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    2021年01月09日
  • ベルリン1933 壁を背にして(上)

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    _どこから来たかは問題じゃない。大事なのはこれからどこへ行くかだ_

    ベルリン3部作の第2部。

    世界恐慌のあおりで飢えと貧困が蔓延する1932年のベルリン。
    カツカツと聞こえてくるナチの足音は大きくなり、やがて傾倒して行く国民たち。それらに翻弄されての、家族や隣人との悲しい分断。
    15歳の少年の目から見た激動の数ヶ月が描かれます。

    主人公は、第1部 『ベルリン1919 赤い水兵』の主人公ヘレの弟で、赤ん坊だったハンス坊や。
    苦悩しつつ踏み出した社会は、きつい労働に加え、非ナチという理由でナチの従業員から不当な暴力を受けたり、想像以上に過酷。

    そんな毎日の中で出会う、同じ職場で働く少女、ミ

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    2021年01月07日
  • ベルリン1933 壁を背にして(下)

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    _どこから来たかは問題じゃない。大事なのはこれからどこへ行くかだ_

    転換期三部部作の第二部。

    世界恐慌のあおりで飢えと貧困が蔓延する1932年のベルリン。
    カツカツと聞こえてくるナチの足音は大きくなり、やがて傾倒して行く国民たち。それらに翻弄されての、家族や隣人との悲しい分断。
    15歳の少年の目から見た激動の数ヶ月が描かれます。

    主人公は、第1部 『ベルリン1919 赤い水兵』の主人公ヘレの弟で、赤ん坊だったハンス坊や。
    苦悩しつつ踏み出した社会は、きつい労働に加え、非ナチという理由でナチの従業員から不当な暴力を受けたり、想像以上に過酷。

    そんな毎日の中で出会う、同じ職場で働く少女、ミ

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    2021年01月09日
  • 白雪姫には死んでもらう

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    ネタバレ

    冤罪で11年の刑期を終えたトビアスは、出所して故郷に帰って来る。
    それに合わせたかのように再び不穏な空気に襲われるアルテンハイン。
    暴力事件が起こり、再び少女が行方をくらます。

    これ、ものすごく怖い話です。
    例えばテレビの「逃走中」で自分一人が残った時に、何十人ものハンターが表情一つ変えることなく自分を追いつめてきたら。
    それも、捕まえて終わりではなく、命を取るまでゲームが終わらないとしたら。

    ところが自体はそれほど単純ではなくて、真実が少しずつ明かされるたびに二転三転と状況が変わって行く。
    トビアスは無罪。
    誰が、何のために、彼に罪をかぶせて、なおかつ今もなお暴力で支配しようとしているの

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    2021年01月06日
  • ベルリン1919 赤い水兵(下)

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    ネタバレ

    何ヶ所、号泣したかなあ・・・

    1919年、ドイツ。戦争を終わらせるため、水兵が蜂起したことをきっかけに起こったドイツ革命。それらに命をかけたベルリン市民の闘いを軸に、貧しくも誇り高い主人公ヘレの一家と隣人たちが、世界を、生活を、未来を良くしようと挑む命がけの日々。

    大きな時代のうねりをしっかりと描きながら、登場人物それぞれの心の動き、その背景にあるものを蔑ろにしない。とりわけ、主人公ヘレ目線での、家族や友人そして社会に対する心情の描写が素晴らしく、何度も息が止まりそうに切なくなった。

    革命がなくても、戦争が終わっても、食うや食わずの苦しい生活の中で、家族や隣人たちと心を寄せ合い、ユーモア

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    2020年11月29日
  • ベルリン1919 赤い水兵(上)

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    ネタバレ

    何ヶ所、号泣したかなあ・・・

    1919年、ドイツ。戦争を終わらせるため、水兵が蜂起したことをきっかけに起こったドイツ革命。それらに命をかけたベルリン市民の闘いを軸に、貧しくも誇り高い主人公ヘレの一家と隣人たちが、世界を、生活を、未来を良くしようと挑む命がけの日々。

    大きな時代のうねりをしっかりと描きながら、登場人物それぞれの心の動き、その背景にあるものを蔑ろにしない。とりわけ、主人公ヘレ目線での、家族や友人そして社会に対する心情の描写が素晴らしく、何度も息が止まりそうに切なくなった。

    革命がなくても、戦争が終わっても、食うや食わずの苦しい生活の中で、家族や隣人たちと心を寄せ合い、ユーモア

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    2020年11月29日
  • 森の中に埋めた

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    ネタバレ

    オリヴァ―とピアシリーズの第8作。

    大変良かった。
    オリヴァーのルーツとも言える事件が解決したこともそうだが、
    長年もやもや、いや、いらいらしていたオリヴァーの私生活が安定を得られそうなことが、とても良かった。

    とはいえ、登場人物が多く、かつその関係が複雑で、
    さらには過去と現在を把握していないと話について行けないので、
    かなり読み進めるのが難しかったことは否めない。

    しかも、
    知識豊富で、証言を引き出すための嘘も上手い新人が入ってきたことや、
    (彼のあだ名、アインシュタインはそういうタイプの天才ではないと思うが)
    オリヴァーが義母の遺言で屋敷を相続することになったこと、
    今の恋人に心の

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    2020年11月28日
  • 悪しき狼

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    女性刑事ピア・キルホフが主人公の作品。
    重いテーマではあるものの、展開が早く目が離せない。
    プライベートの悩みを織り交ぜながら、展開が早く、引き込まれる。
    2作目から読み始めてしまったが、ドイツのベストセラー商品だけある。
    北欧作品に比べて少し色づきもある。

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    2020年10月13日
  • ベルリン1919 赤い水兵(上)

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    1918年冬。第一次世界大戦下のドイツ帝国・ベルリン。ヘレのお父さんが片腕をなくして戦地から帰ってきた。一家の暮らしは苦しく、市民の間でも政府への不満が高まっていた。ヘレも市民革命に巻き込まれ、危険な任務をこなすようになる。皇帝が亡命し、革命が成功したかに見えたのもつかの間、事態は思わぬ方向へ。
    あまり語られることのなかった近代ドイツの混沌を子どもの目線から描く傑作。

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    2020年09月27日
  • テロ

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    ネタバレ

    テロリストに乗っ取られ、7万人が居るサッカー場に突っ込もうとしていた航空機を撃墜した軍人は有罪か無罪か・・・

    いままさに生じてもおかしくはない出来事ですね。この作品の秀逸なところは、その結末。有罪と無罪の結末、両方が書かれています。読者に考えさせると言う事なんですね。

    あっという間に読み終わりましたが、中身は物凄く濃いです。

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    2020年08月24日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    法廷もの。しかも過去と現代を行きつ戻りつするのにすごく読みやすくておもしろかった。
    映画化されてますね。顛末をわかっていても観てみたくなります。
    「やがて来る者へ」というイタリア映画に第三帝国時代のドイツの蛮行が描かれています。
    併せて観るとコリー二の無念さがより浮かび上がってくると思います。

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    2020年08月24日