酒寄進一のレビュー一覧

  • 生者と死者に告ぐ

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    初めて読みました。
    デンポよく話が進んで、本の厚さを感じさせないくらい、あっと言うまに間に読み終わりました。

    街の雰囲気を想像できるような描写でよかった!
    酒寄さんの翻訳に感謝。

    他の作品も楽しみ❣️

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    2023年09月27日
  • 珈琲と煙草

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    みんな大好きシーラッハさんの社会「観察記録(訳者あとがきより)」です。

    48の章に別れたエッセイと創作が区別無く(視点の違いがヒントかも)並べられていて、それぞれが短文だからかシーラッハ独特の世界の切り取り方、視点、省略が「犯罪」「罪悪」以上に鋭く感じられ、予想以上に楽しめました。

    幾つか「何この話」という物もあれば法律や権利を題材にした重い話もあったり、虚無感を抱えながらも人間をやっていくには他人を信頼していくしかないね、みたいな価値観に共感しながら読んでいました。

    また頻繁に挿入される引用も魅力的でした。シーラッハファンは必読かと。是非是非。

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    2023年09月24日
  • デーミアン

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    真の自分になるために己の道を歩く
    試行錯誤して己の道を行くことが人生
    でも真の自分になれた人はいない
    人類皆兄弟だから分かち合うことはできる、でも自分を解き明かせるのは自分しかいない
    序章のこの考えが面白くて何度も読み返したくなる
    アブラクサスやカインとアベルの話で宗教を学ぶことの面白さを見出した
    うまく言語化できないけど、この本で苦境を乗り越えるヒントのようなものを掴んだ気がした
    ニーチェやユングの心理学も併せて読んでみようと思う

    世界を卵に例えて雛が殻を突き破ると言う表現が少女革命ウテナにもあったような気がしてこのアニメももう一回見直したいなと思いました

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    2023年09月08日
  • 罪悪

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    前作以上に短編のバラエティが豊かになり、シーラッハの才能を存分に味わえる1冊。
    あまり感情を挟まない描写から、被害者や加害者の人生、言葉にできないような複雑な心の動きが、苦しいほど伝わってくる。

    特に名作だと思うのは、冒頭の『ふるさと祭り』『遺伝子』『イルミナティ』。全て重量級の衝撃が胸に残る。
    ショートショートの『解剖学』『アタッシェケース』も好き。世にも奇妙な物語みたい(もっと残酷だけど)。

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    2023年09月05日
  • 珈琲と煙草

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    ネタバレ

    エッセイなのか小説のアイデアメモなのかショートショートなのか、弁護士であり小説家のシーラッハが書いた文章臭といった体の1冊。

    「法律なんだから守らなければいけない」法治国家で生きる以上それはそうなんだが、法律は本当に正しいのか?そのことは常に疑問に感じていたいと思う。

    戦争当時のドイツも日本も法に基づいてかの戦争をしていたわけだし、戦後ついこの間までのアメリカの黒人は法に基づいて差別されていたし、今のロシアは法に基づいてウクライナに侵攻している。

    万能でない人間が決めたものなんて、そんなものである。社会生活を営む以上順法姿勢は取っていても、あからさまに怪しそうな取り決めは疑ってかかるのがちょうどよい。

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    2023年06月24日
  • デーミアン

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    これは自己実現の過程を赤裸々に語った貴重な物語。ユングの心理学について知っていればかなり面白いと思う。
    全て物語としても読めるけど、無意識の領域やアニマ、グレートマザー、影とかそういうものと登場人物を読み替えていく楽しさ…村上春樹も凄いと思ったけど、こんな風に無意識そのものをテーマに自己との対決から逃れず書き切ったのはすごすぎる。
    ヘッセ自身の名前で最初は出さなかったのも頷ける、相当恥ずかしかったと思う…内容がどうあれ、自分の内面世界をここまでさらけ出すのは身を削ってると思う。ほんとにすごい。

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    2023年06月16日
  • 犯罪

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    「物事は込み入っていることが多い。罪もそういうもののひとつだ」
    序章の一文が象徴するように、この短編集は、いろいろな出来事が積み重なっていき、後戻りできない犯罪を犯す人々を描いている。
    犯罪を犯す刹那は、今まで踊っていた薄氷が不意に割れて、冷たい氷の下に落ちてしまう瞬間のようだ。誰だってそうなる可能性はある。
    作者も言う。「幸運に恵まれれば、なにも起こらないでしょう。幸運に恵まれさえすれば」。

    あくまで淡々と事実を積み重ねるクールな筆致ながら、行間に溢れ出すようなやるせなさや、切なさや、時には幸福感などの叙情を感じざるを得ない文体、ものすごく好みだった。
    例えば最初の『フェーナー氏』、フェーナーの心情は一度もはっきり書かれない。フェーナーは、ラストに「しわくちゃになった封筒」から出した新婚旅行の写真の、妻の顔を親指でなでる。その写真は「保護膜がはがれ、彼女の顔はほとんど真っ白になって」いるのだ。
    その描写で、フェーナーのいろいろな込み入った思いが伝わってきて、胸がいっぱいになる(読めば分かります…!)。

    特に好きなのは『タナタ氏の茶碗』『チェロ』『正当防衛』『エチオピアの男』。
    『チェロ』の最後、『華麗なるギャツビー』からの引用の「さあ、櫂を漕いで流れに逆らおう。だけどそれでもじわじわ押し流される。過去の方へと」も、胸が締め付けられる(こちらも読めば分かります…!)。
    『エチオピアの男』は、泣ける!!

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    2023年06月02日
  • 終戦日記一九四五

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    ネタバレ

    描写が鮮やかで、「偽物映画を撮っている滑稽な絵面」も含め、全体が映画のように頭に浮かんだ。
    ツィラータール鉄道の終着駅、マイヤーホーフェンはいつかTVで見たように思う。
    金色の草原に立ち、眉をひそめてこちらを見送るケストナーを、列車の窓から見ているような読後感である。

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    2023年04月30日
  • 珈琲と煙草

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    シーラッハ「珈琲と煙草」tsogen.co.jp/sp/isbn/978448…
    あー海外作家で今たぶん一番好き。短編とも言い難い断片的な約50の作品集で、たとえば4行だけの作品もあり、全体に犯罪と死と孤独が漂ってる。話はどれも陰鬱で思索的なのに描写が瑞々しくて映像的で、そのギャップがシーラッハだよなー好きだなー

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    2023年04月14日
  • カールの降誕祭

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    罪とは何か。これがシーラッハ文学の中心テーマだ。
    …「罪」という漢字を分解すると「目に非ず」と読める。「現実」を把握するのに「百聞は一見にしかず」というが、こと「罪」に関してはこれが通用しない。なぜなら「罪」に見入る者は心の闇を覗くことになるからだ。
    ー訳者あとがきより

    ブラック・クリスマス、タダジュンさんのおどろおどろしいながらも目が離せない絵に惹かれて読んだ。
    たった三遍が載った100ページにも満たないお話。
    けれど読みやすい比較的短い文章で綴られた罪に満ちた三つの物語は、その主人公たちの末路はどれもじわじわと衝撃的で、けれど、ああ、これは私たちの物語だ。と思わされた。
    主人公たちはカオスに魅入られて、罪を犯してしまう。淡々と描かれる文章に、タダジュンさんの大胆でこちらが飲み込まれそうな黒の挿絵が、不思議なカオスと禍々しさを生み出していた。
    そのカオスは、いつ我が身に降り注いでもおかしくない。そのことに戦慄し、その事実を淡々と印象的に描くこの物語たちにゾクゾクした。
    どの話を特にピックアップするのは無理というか、三遍とも全て同じくらいゾクゾクするので、甲乙つけ難いのです。

    シーラッハの書く物語を、網羅したい気持ちに駆られた作品。
    そう思わせてくれるのに、作品そのものはもちろん、充実した訳者あとがきが何役もかってくれたので、ぜひこの本の全部を読んで欲しい。


    目次
    パン屋の主人
    ザイボルド
    カールの降誕祭
    訳者あとがき

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    2023年03月28日
  • 刑罰

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    ネタバレ

    初のフェルディナン・フォン・シーラッハ。
    短編集。巻末の解説から、実は「犯罪」「罪悪」との三部作で完結作とのこと。失敗しました。

    作品全体にだが、余計な文章が全くない。
    登場人物の感情がほとんど描かれておらず、その辺りは読み手が推察することになる。
    ここまで徹底するのは凄い。

    犯した罪と、その罰のバランスが取れているのか、ということが主題だったと思う。
    おすすめは、参審員、逆さ、小男、友人。

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    2023年01月22日
  • その昔、N市では

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    『「それから?」 夫はきつい口調でたずねた。「白熊がなにをするか知ってるくせに。首を左右に振るのよ。いつまでも右に左に」「きみみたいにな」「わたしみたいに?」女はおどろいてそうたずね、闇の中でいまいわれたとおり首を左右に振った。「きみはだれかを待っていた」夫がいった』―『白熊』

    初めて読む作家、マリー・ルイーゼ・カシュニッツの短篇集。最初の幾つかの短篇を読むかぎり、これまで読んだ欧州の怪奇譚の雰囲気と似ている語り口で、初めてのような気がしない。例えば最近読んだものだとアラン・ノエル・ラティマ・マンビーの「アラバスターの手」とか、シルヴィア・プラスの「メアリ・ヴェントゥーラと第九王国」などが思い浮かぶ。更に言うなら、もう少し前に読んだゾラン・ジヴコヴィッチの「12人の蒐集家/ティーショップ」なんかにも似ている印象を受ける。要は、あちらの世界とこちらの世界が何やら薄暗いところを通して繋がってしまう話とか、人間がいつの間にか獣のような邪悪な存在になってしまって悪さをするとか悪魔が出て来るような話。それが西欧的な世界観に由来するものかどうかは不明だけれども、似たような話を極端に単純化して要約してみると、本邦の番町皿屋敷のように個人的な恨みや怨恨を持って張本人の前に現れるというような話は案外少なくて、何だか人智を越えた存在にふっと誘われ(あるいは、さらわれ)そうになる展開というのに彼の地の人は関心があるのかなとも思ったり。そう書いてみて気付いたけれど、小泉八雲の「怪談」なんかもどちらかといえばそういう話が多いような気がするのは、やはり西欧の人の関心の為せる業なのかも知れない、などと思考が脱線する。

    『その昔、大都会であるN市の黄金時代が終わった。メイドやウェイターや売り子や車掌や道路清掃人や郵便配達人や墓掘人の黄金時代が。雇い主に奉仕すること、スープを給仕すること、商品をだしたり、包装したりすること、子どもの体を洗うこと、老人に付き添うこと、瀕死の患者の介護をすること。たとえ高給がもらえても、だれひとりそういう仕事につこうとしなくなったのだ。オフィスでは数十万人のビジネスマンがデスクワークをしているというのに、路上はきたないまま。食堂は店じまいし、郵便は配達されなくなり、車掌、切符売りを必要とする公共交通機関は運行を停止した。新聞各紙がこの憂慮すべき状況を打破するべくさまざまな提案をしたが、どれも不発に終わった』―『その昔、N市では』

    ところが後半に入ると、ぐっと現代的な要素が色濃くにじみ出た作品が多くなる。その構成については翻訳家と出版社の仕掛けという側面があるにせよ、半世紀以上前の作品に現在の社会的な問題を見い出してしまうというのは、作品が根源的な人の業を描いているからに違いない。例えば表題作でもある「その昔、N市では」を読みながら、感染症に喘ぐ都市が抱えている問題、例えばいわゆる「エッセンシャルワーカー」の問題や、貧富の格差の問題などを想起しないでいることは難しい。そこまで大きな社会問題のようなテーマを扱っている作品はこの短篇集では他に「ルピナス」位だけれど、人間の性悪(これを、しょうわる、と読むか、せいあく、と読むかで意味も少し変わるような気がする)な部分(あるいはそれを人間性というのかも知れないけれど)が強調されて描かれたディストピア的世界観がこの作家の根底にあるようにも思える。それはひょっとするとナチス政権下の第二次大戦を経験した作家ならではの思いなのか、と想像しながら読み終える。

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    2023年01月11日
  • その昔、N市では

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    カシュニッツは今回初めて読んだけど、面白かった!
    人間心理の闇、奇妙な味、といったような短編集。
    日常が少しずつずれていく感じや、夢と混ざり合っていくような感じの塩梅がちょうど良かった。
    あまりにも突飛だったり、幻想的すぎる話だと個人的には楽しめないことがあるので…。

    迷信かと思いきや否定もしきれない『精霊トゥンシュ』。
    間違った船に乗ってしまい、奇妙なことが起き続けていることを知らせる手紙が届く『船の話』。
    隠れて生きたユダヤ人女性の人生を描いた『ルピナス』。
    若い夫婦に追いやられていく老女の『いいですよ、わたしの天使』。
    そして、SFホラーぽさもある表題作の『その昔、N市では』。

    どれも面白かった。
    『ルピナス』と『いいですよ、わたしの天使』は、リアルに苦しくなる展開と終わり方だったけど作品としては特に好きかもしれない。

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    2023年01月08日
  • 悪女は自殺しない

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    ドイツ人の名前に馴染みがないので、登場人物の名前は覚えにくいし、間柄や話題によって呼び方が変わるので、ちょっと前のページに戻って確認したりしながら読みました。

    元貴族の名前には、フルネームの中にそれと分かる呼称が入っているとか、ドイツ社会の中の警官の立ち位置がちょっと分からない(例えば、取り調べにきた刑事に侮蔑、見下すような眼差しを向けるといった表現があるけれど、日本では警官に対してそういった感情は起きにくいと考える)といったこともあるけど、物欲や見栄や嫉妬というたぶん全世界共通の、ドロドロな人間模様の中でおこる殺人。
    面白かったです。

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    2023年01月07日
  • その昔、N市では

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    カシュニッツは1901年に生まれて1974年に亡くなった作家で、これまでも何冊か翻訳が出ていたらしいが、全く知らなかった。
    読んでみると、暗くて不安に満ちていて、うっすらとした恐怖を感じるという全体のトーンは共通しているが、内容はバラエティーに富んでいて、こんな面白い作家、どうして今まで話題にならなかったのだろうかと思った。
    「いいですよ、わたしの天使」「船の話」なんかは岸本佐知子の「居心地の悪い部屋」に入っていてもおかしくない。
    「白熊」「幽霊」「精霊トゥンシュ」は、古典的な幽霊小説の風格があるし、「長距離電話」「ルピナス」は構成の巧みさが際立つ。
    「ジェニファーの夢」「ロック鳥」「人間という謎」の人間心理の恐ろしさを描いたものもいい。
    「その昔、N市では」は本のタイトルになるだけあって、読みやすく面白い。外国人労働者や奴隷制、AIなどの寓意も読み取れて、現代の問題として考えることもできる。40年くらい前に書かれたとは思えない。ゴーレムやフランケンシュタインも思い出した。
    酒寄さん選りすぐりのせいか、どれもいい作品でハズレがない。
    私が特に好きなのは「船の話」「ルピナス」「四月」「見知らぬ土地」。特に戦後すぐ、フランス空軍の兵士との束の間の交流を描いた「見知らぬ土地」がいい。あそこにあんな風にサン=テグジュペリが出てくるとは。すごい。
    カシュニッツはドイツ生まれでドイツ国内、ローマを転々として暮らしたとあるが、主人公もドイツ人とは限らず、舞台もスイス、イタリア、イギリスなどで、ちょっと前に読んだグァダルーペ・ネッテルみたいだなとも思った。

    是非とも第二弾を出して欲しい。

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    2023年01月04日
  • 深い疵

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    日本語訳にされたのは、これが一冊めのようですが、シリーズとしては三作目。

    基本的に読み切りなので、これ一作だけでも十分楽しめますが、ちょこちょこ過去の話題が出てくるので、やっぱり一作目も読んでみよう!と思うほど、面白かった。

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    2022年12月16日
  • 犯罪

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    ネタバレ

    「物事は込み入ってることが多い。罪もそういうもののひとつだ」。当事者でない人たちがいくら物語を作ろうともそれは真実ではない。。
    それでも、作者は現役の刑事事件弁護士なので(こういうこともあるかも…)のリアルさがあります。冷静だけど冷徹ではなくて、情緒もあるけど大仰ではない文章、好きです。
    お話は特に「ハリネズミ」「緑」「エチオピアの男」が好き。
    怖いのは「正当防衛」「愛情」。「愛情」には佐川一政の名前が出てきてタイムリーでした。世界的にも有名なんだな。
    「棘」も、一人の人が壊れていく過程が描かれててゾッとしました。職務怠慢だ。。
    “弁護人が証人に尋問する場合にもっとも重要なのは、自分が答えを知らない質問は絶対にしないということだ”…これにはしびれました。裁判は検察と弁護人どちらが場や流れを支配するかバトルもあるのだろうからそれはそうなんやろけど。
    「タナタ氏の茶椀」(わんの字が出ない)も、、5人よりタナタ氏側の方が裏社会って事だったんだろうな。チンピラ3人が小心者で良かった…一人、ギリシア人なのにフィンランド人だと言い張ってる人はどうかしていて面白かったです。「家族はみんなギリシア人だけど、俺まで一生ギリシア人になってうろつきまわることもないだろ」(???)

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    2022年12月10日
  • 刑罰

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    止むに止まれぬ心情から繰り出された犯罪の瞬間を描いた傑作短編集。
    短い文章で、ことの顛末を描き出す見事な描写に毎回唸るしかない。その犯罪に対して、司法がどのように対峙したのかも描かれる。ドイツの司法制度ではあるが、法の解釈、考え方を学ぶ場にもなっている。
    夢中になって一気に読み切った。今のところ翻訳されているシーラッハ作品は全て読んでいる。どの作品も好きだ。
    次回作も首を長くして待つことにする。

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    2022年11月12日
  • 刑罰

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    フェルディナント・フォン・シーラッハ『刑罰』創元推理文庫。

    読者に媚びを売らず、時に読者を突き放すような乾いた文体で、極めて淡々と描かれる物語は長岡弘樹の一連の短編と似ている。人生の機微と不思議な魅力を感じる捻りの効いた犯罪ミステリー短編12編を収録。

    『参審員』。世の中には時折、皮肉な出来事が起きる。それは必然であり、偶然ではないという人生の機微。冒頭から一人の女性カタリーナの孤独な人生が綴られる。幸せなひと時から、人生に起きる様々な波乱。幾つもの波乱を乗り越え、新たな職を得ても自ら孤独な人生を選ぶカタリーナは参審員に選ばれる。裁判を通じて夫からDVを受けていた証人に自分の人生を重ね合わせ、痛く同情したカタリーナに裁判所の下した判断は。★★★★★

    『逆さ』。この短編集の中では一番のミステリーであろう。やるせない結果となった事件を弁護したことが切っ掛けで、ギャンブルと酒に溺れた弁護士のシュレジンガー。妻とも離婚し、他愛のない弁護依頼を引き受けながら、自堕落な日々を過ごすうちに殺人容疑者の弁護を引き受けるとになる。全く勝ち目の無さそうな事件だったが、過去に弁護した男から謎に満ちたヒントをもらう。★★★★★

    『青く晴れた日』。自らの過ちに気付くことの大切だが、気付いてからでは遅いこともある。何とも言えぬ含蓄を含んだ短い話。赤ん坊を死なせた夫の罪を肩代わりし、3年後に出所の日を迎えた母親が取った行動は。★★★★★

    『リュディア』。人間以外への愛をどう受け取るのか。人には様々な考え方があり、様々な生き方はある。妻に裏切られ、妻と離婚したマイヤーベックはひっそりと孤独に生きていた。ある日、テレビのルポルタージュでラブドールの存在を知った彼はお気に入りのラブドールを購入し、リュディアと名付けた。★★★★

    『隣人』。24年間、一緒に過ごした最愛の妻エミリーを失ったブリンクマン。ある日、無為な日々を過ごす彼の家の隣に夫婦が越して来る。夫の姿はたまに見掛けるだけで、ブリンクマンは妻のアントーニアと少しずつ距離を縮めていく。★★★★

    『小男』。運が良かったのか、悪かったのか、何とも皮肉な結末。43歳で未婚のシュトーレッツは小柄な男で、リビングに小男の伝記をコレクションしていた。ふとしたことで大量の麻薬を手に入れた彼は密売を決意するが、飲酒の揚げ句に交通事故を起こし、麻薬所持の容疑で逮捕される。拘置所では小男と馬鹿にされることはなく、大物犯罪者として一目置かれた彼だったが。★★★★★

    『ダイバー』。異常な性癖の果てに招いた悲劇。事実は小説よりも奇なり。妻の出産に立ち会ったのを切っ掛けに異常なまでの潔癖症になった夫。ある日、妻は浴室で黒いダイバースーツに身を包み、首をくくって亡くなっていた夫を発見する。しかし、妻は殺人容疑で逮捕される。★★★★

    『臭い魚』。少年は時に残酷であり、何をするか分からない。様々な悪い噂が付きまとう臭い魚と呼ばれる男に少年たちの取った行動は。★★★

    『湖畔邸』。大きな痣という肉体的な十字架を背負った男が平穏な暮らしを壊されたことに怒る。世の中は常に移ろいゆくもので、それに抗うことは時に愚かさとなる。仕事を辞めて、まるで引きこもるかのように祖父との思い出のある湖畔邸で平穏に暮らすアッシャー。しかし、平穏な暮らしも長くは続かなかった。★★★★

    『奉仕活動』。人生の勝利は時として思わぬ形でもたらされる。僅かな望みも捨ててはいけないのだ。トルコ人の厳格な父親に育てられたセイマは大学に進み、弁護士になる。初めて弁護を担当した人身売買事件の被告はどこから見ても容疑は明らかだった。勝ち目のない裁判。★★★★

    『テニス』。人生はいつどこで、どちらに傾くか解らない。テニスの腕が無いと夫に忠告される妻。夫の浮気相手の真珠のネックレスを見付けた妻は、これ見よがしにネックレスを家の階段に置いて、出張へと旅立つ。★★★★

    『友人』。財産があり、美しい妻が居ても満たされないのが、人生。かつての友人も今も変わらぬ姿でいるとは限らない。ドラッグに溺れ、変わり果てた姿になった友人。そうなったのには、ある理由があった。★★★★★

    本体価格720円
    ★★★★★

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    2022年10月21日
  • その昔、N市では

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    これは面白かった!というか、実に好み。ホラー寄りの奇妙な味、というのかな。柔らかいのだけれど。

    読んでいて、なんか読んだことあるなーと思い、カシュニッツはいくつか読んでるんだと思うんだけど、もっと読みたくなった。でも家を探したが河出の『ドイツ怪談集』しか見当たらなかった。特に『いいですよ、わたしの天使』は絶対読んだことあるーと思うんだが、なんのアンソロジーに収められいるのか。訳者あとがきでは既役について素っ気なく、なんのアンソロジーに入っているのかわからない。

    特によかったのは『白熊』『ジェニファーの夢』『船の話』『幽霊』『ルピナス』『長距離電話』『四月』『いいですよ、わたしの天使』…あれ?ほとんどではないか。

    他のももっと読みたい。

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    2022年10月13日