酒寄進一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
簡潔で事実を元にしたようなドキュメンタリーっぽい文体。国際色豊かで人物の階級も多岐にわたる。難民がよく登場する。
犯罪というタイトルの通り犯罪が扱われている。複雑な人間の行動を犯罪という一面から切り取っているような小説。
本屋大賞1位も納得。ただミステリーらしさは全然ない。
『棘』『ターナー氏』『エチオピアの男』がいいが、どれも甲乙つけがたいくらい面白い。
本書はネット上で誤訳があるという指摘があるが、それはハードカバー版が加筆前のものを題材にしているのに誤訳を指摘している側が参照しているのは加筆されたバージョンのものだから、だという。私が読んだ文庫版は加筆版を元に翻訳されている。 -
Posted by ブクログ
刑事オリヴァー&ピア・シリーズ10作目。
ドイツの警察小説、ベストセラーです。
出版社の有名な毒舌編集者が失踪。
ピア・ザンダーは、元夫のヘニングに頼まれ、連絡がつかないという女性の家を訪ねた。ヘニングは昨年、自分とピアをモデルにした小説を書いて、それが大ヒット。ピアは迷惑しているのだったが…
2018年9月、オリヴァーの末の娘ゾフィアは12歳。
オリヴァー・フォン・ボーデンシュタインは、6年前の事件(「生者と死者に告ぐ」)で知り合ったカロリーネと再婚して5年になる。50代半ば?
継娘のグレータは18歳、オリヴァーへの反発を募らせて荒れ、家庭は破綻しつつあった。
オリヴァーの元妻コージマが癌とわかって2ヶ月、カロリーネまで気分の上下が激しくなったのだ。コージマとの間に情熱はとうに消え去っているが、カロリーネにしたら気になるのは無理もない面もある…
元々、オリヴァーとヘニングは友人。
ピアが警察の仕事に復帰して、オリヴァーと組むようになって13年。恋愛感情はない、あくまで信頼し合うパートナーだけど、ある意味では長く連れ添った夫婦のような、何も言わなくても通じることもある仲。
穏やかでハンサムなオリヴァーが、不安定な所のあるキャリア女性に惹かれては、優しさにつけ込まれるのを心配していました。
ふさふさの褐色の髪で育ちのよい貴族、完璧な発音、本来優秀なオリヴァーですが、10年ほど前の離婚後かなり迷走してるんですね~。
金髪で明るいピアは、2作目で知り合った動物園長クリストフと後に再婚して、こちらはまあ上手く行ってます。一時幸せ太りしてた(6作目「悪しき狼」)のも解消したよう(笑)
あ、モデル小説の件で今ちょっと揉めてるけど(笑)
失踪したハイケ・ヴェルシュは赤毛、先代の愛人でもあり、出版社の文芸部長として長く実権を握っていたが、解雇されたばかり。
1年半前に社長が交代、傾いた経営を立て直したのだが。方針に反対のハイケは、作家を引き抜いて新会社を作ろうと目論んだのが、漏れたのだった。
強引なハイケに敵は多い。担当した作家ゼヴェリン・フェルテンの盗作を暴露したのもスキャンダルになっていた。この作家、署長のニコラ・エンゲルがファンだったり(笑)
ハイケに続いて長年の同僚ロートも倒れ、学生時代からの友人達に動揺が広がる。
新社長のカール・ヴィンターシャイトは34歳。両親を早く亡くし、アメリカで成功した男性だが、先々代の社長の孫。先代の甥に当たります。
先代の娘ドロテーアは年の離れた従姉で、カールが営業部長にと呼び寄せた。
ユーリアは、ヘニングの担当編集者で33歳位。長い髪を三つ編みにした、化粧気のない女性。新人で、社長に認められつつある。生き生きしてます!
マリアはヘニングの文芸エージェントで、56歳。
エージェントというのは、作家の代理として出版社と交渉、契約する、間を繋ぐ存在。
ハイケやロート、マリア、ドロテーアの夫らは、先代社長の子供世代で家族的に扱われた年月がある関係。ロートの妻パウラが「永遠の友人」と揶揄する、閉じられたサークルの中にいた…
「友情よここで終われ」というタイトル、前にもそんな話あったような…と思いましたが。
いや、これは…~もうっ、ほんっとに、ここで終われ、すぐ終われ、いっそ遡って終われ!と言いたくなるような話でした(笑)
まあでも~これで多くの真相が明らかになり、良いこともあったわけで…すよ~それはね、確かにね。
登場人物が多く、それでもかなり、わかりやすく書かれてはいると思うのですが。
誰が誰だか、後で思い返そうとするともうわからない!ので再読。
年齢や外見など、確認しながら、書いてみました。
重厚な背景、意外性のある複雑な展開、ユーモアや心通い合うシーン含め、読みごたえたっぷりです。
オリヴァーが、思わず苦言を呈したピアに対して、その真心に感謝するところも良いし。
ゾフィアが、子供達のなかで一人だけ馬が好きで、オリヴァーの実家で幸せに暮らし始めるのは微笑ましく、いいですね☆ -
Posted by ブクログ
ネタバレオリヴァ―とピアシリーズの第11作。
雪の中で女子高生の死体が発見され、他殺と判明する。
親友の家に泊まると両親には嘘をついて恋人と過ごす予定のようだったが、
その秘密の恋人が犯人なのか。
遺体の体や服から移民の青年のDNAがみつかるが、
その青年は行方がわからない。
そして、被害者の母親のところには見知らぬ女が現れ、
「犯人を捕まえた、娘の復讐がしたくないか」と告げる。
一方、警察の捜査は行き詰まる中、
裁判官が裁判所で人質をとって立てこもりオリヴァーを呼び出す。
部下の一人、カトリーンが自分は裁判官の恋人だと言って
無理やりオリヴァーに同行するが、
裁判官はカトリーンを射殺したうえで爆弾で自爆する。
女子高校生の殺人と裁判官の自爆は関係があるのか。
オリヴァーは無事離婚できて、末娘のゾフィアと穏やかに暮らしていたのに、
目の前で射殺と爆弾自殺にあうとは。
ピアの方は、結婚していた時は結構もめていたのに
検死官ヘニングとは親友のようになっていて
認知症を発症している母親について相談にのってもらっている一方、
夫クリストフとは揉めている。
とはいえ、最後にはクリストフと共にナミビアに一年間行くことを決意する。
ピアのいない間、オリヴァーは大丈夫?
新しいメンバーが活躍するの?
それにしても、
娘を殺されたのにクリスマスツリーを買うべきかどうか悩むほど、
ツリーは重要な存在なのだろうか。
被害者の使っていたハローキティの毛布、キノコ農場でシイタケ、
親友が葬儀でしていた攻殻機動隊の草薙素子のコスプレと、
ちょいちょい日本が出てきて嬉しかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレドイツの女性作家、ネレ・ノイハウスのオリヴァー&ピアシリーズ第二弾。
動物園で切断された死体が発見される。死体は環境保全運動の活動家であり、政治家をはじめ各方面でトラブルを起こしていた一方で、一部の若者から熱烈な支持を受けていた…
一作目「悪女は自殺しない」より断然面白い。
オリヴァー&ピアシリーズといいつつも、一作目はピアにそこまで焦点が当たらず、キャラクターとしても薄味だったのが、今作ではピアがメインでがっつりと肉付けされる。
このシリーズの特徴なのか、登場人物のプライベートがしっかりと描かれる。容疑者二人を天秤にかけて揺れるピアとか、初恋の相手と仲良さそうな容疑者に嫉妬するオリヴァーとか笑。特にピアは、警察として良いんかいなと、ハラハラさせられる。
事件そのものは、活動家の死体発見というつかみから、二転三転して意外なところに持っていかれる。終盤まで犯人が予想もできず、ミステリとしても良い。
順当に翻訳されて嬉しいシリーズ。難点は、ドイツミステリあるあるだろうけど、登場人物の名前が全く覚えれないこと笑。しかもこのシリーズ、巻によっては登場人物表だけでなんと四ページもあるので…何はともあれ、追っていきたいシリーズ。 -
Posted by ブクログ
最高すぎる!
ネレ・ノイハウスのそこ知れない懐の深さや頭脳の明晰さ、問いかける重さに唸るしかなかった。
ミステリーとしても、オリヴァーとピアの物語としても、捜査11課の物語としても圧倒的な本作になったと思う。エンタメ性もすごくあった。
移民問題やそのヘイト、10代の危うさ、司法の視点、どれもデリケートな問題なのにぐいぐい引き込まれ読むのが止まらなかった。
個人的に、アンネの人物描写、心情描写が心震えるほど丁寧で沁みた。また、登場人物のページだけで3ページに笑った。
あと、前々から怪しいなぁ、ちょっと不透明な人だなぁと思ってました!
事件解決までの時間を一緒に体感しているのがいつも心地よい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ当然罪を犯せば罰も償いもある。形はそれぞれでも。現役刑事弁護士が書いた話題の書。犯罪小説だが軽い読み物。
作者はドイツの現役、刑事弁護士で扱った事件にヒントを得て書いた短編集。本人が実名で出てくる(^^)
文章は端正で気持ちよく切れがある。余分なものをマッシュしない、素材を形のままナイフでスパッと切って盛り付けたサラダのようで、読んだ後の感じにはおいしいドレッシングも振りかけてある。
当然罪を犯せば罰も償いもある。形はそれぞれでも。
話の締めには、なんだか大岡裁きのような情愛が感じられる部分もあって、評判のよさの一端もこういうところにあるのではないかと感じた。
題名が硬いしデザインも暗いので、大きな犯罪小説のように見えるが、犯罪の元は貧困だったり、無知、劣悪な環境、男女の縺れ、など身近なところで起きた事件がおおく、ドイツという国の法、裁判制度の現状がかいまみられるのも面白い。
フェーナー氏
フェーナー氏はイングリットと知り合い結婚を誓った。彼は模範的な開業医で、信頼も厚かった。だが次第にイングリットが大声でののしりはじめ、それは絶え間なく続いた。72歳になるまで結婚の誓いを思い出して耐えた。そして斧を振り上げた。私には弁護の余地がなかったが、懲役三年の判決を受け、開放処置がとられた。夜は刑務所で過ごし、職さえ持てば昼間は自由に行動できた。彼は趣味の園芸から手を広げ林檎を作り、果実販売を始めた。私のところにも赤い林檎が届いた。
タナタ氏の茶碗
サミールと二人の友達はタナタ邸に盗みにはいって、金庫の中から金と茶盌を盗んだ、タナタ氏は激怒した。サミールと二人の悪事は続いたが、茶碗は巡りめぐってタナタ氏のもとに帰った。
この間の様々な出来事が面白い。
チェロ
建築会社の二代目は娘テレーザのチェロを聞かせるパーティーを開いた、音楽は理解できないし、教育には関心がなかったので看護師が厳しくしつけた。テレーズは音楽大学に入ると家を離れた、大学には行かず弟と旅をして暮らした、二年後弟が事故で廃人になり、テレーズは看病を続けた。痛みが増してきた弟を風呂場で殺した。私は独房にいる彼女に面会に行ったが、いつも本を読み聞かせてくれるだけだったが。
ハリネズミ
犯罪一家に八人の似た顔をした兄弟がいた、皆そろって出来が悪く前科があった。そのうち一人が窃盗で逮捕された。裁判ではまたかという空気だったが、タリムが証言台に立って口を開いたので驚いた。彼は兄弟の中に隠れてはいたが、別部屋で勉強し知能の高さを誰にも見せなかった。彼は非常に面白い証言をした。
幸運
イリーナは戦争でベルリンに逃げてきた。そこで体を売っていたが、カレと言う青年と知り合って同棲した、そこに客だった男が来るようになり、部屋で死んだ。カレはイリーナを助けるために解体して埋めた。イリーナが逮捕されたがカレは助けたかった。
かれはイリーナに弁護士をつけた。カレは自白したが。私は過去の判例を持ち出した。
サマータイム
素行の悪いアッバスはついに麻薬の売人になった。だがボスに知られて指を切られ、恐れて足を洗った、シュテファニーと知り合ったが生活のアテが無く、彼女はこっそり客をとるようになった。その 中の一人で実業家がアッバスに殺された。事件を追う警察は手がかりがない、アッバスの証言は揺るがなかった。私は調べを進める。携帯電話、防犯カメラ、現代の道具が役に立つ、込み入った話が面白い。
正当防衛
ベッグと仲間は地下鉄で男をみつけて襲ってみたが一瞬のうちにやられてしまった。男は逮捕された。私は弁護を依頼された。男は黙秘を続けていた。この顛末と結びが面白い。
緑
店のまえに血のついたナイフを持った若者が立っていた、通報して逮捕されたが、彼は羊を殺して目玉を集めていた。女の子が行方不明になっていた、彼に誘拐されたのではないか、だが彼女は帰ってきて彼は釈放された。私は羊を殺した彼の話を聴く。
棘
警備員の仕事に就いたが、係りがローテーションのカードを入れ忘れてしまった。結果、彼の仕事は毎日同じ部屋に詰める事だった。気分転換にさまざまなことをして時間を潰したが、とうとう切れた。
愛情
パトリックは愛しすぎて彼女の背中を刺してしまった。軽い傷害罪だったが精神科の診察を拒んで姿を消した。私はカニバリズムを思い浮かべたが彼の弁護を降りた。
エチオピアの男
ミハルカは見掛けも悪く智恵もない孤児で、引き取られた家でも厳しく小言を言われながら育った。仕事もクビになったり盗難事件の犯人にされたりした。娼婦館で雑用係になったがそこでも懸命に働いた。娼婦のために借金をして返せなくなり逮捕された。生活資金を得るのに銀行に入った。手に入れた金でバスに乗り、アデスアベバまで行って住み着いた。彼は勤勉で珈琲作りにも向いていた、育て方や運搬方法や販売ルートを改善し、村人に感謝されて村も彼も裕福になり家庭を持った。当局に身元を知られドイツに送られた。家族も村人も泣いた。5年の禁錮刑になった。ミハルカは村の名前を知らなかったので連絡も取れなかった。だが、、、。心温まる話。