酒寄進一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
"哲学的命題。マイケル・サンデルさんの「これからの「正義」の話をしよう」の最初に登場するジレンマを戯曲にした作品という印象を持った。
1人を殺すことで5人を救えるとしたら、その一人を殺すべきなのか?
本書では、テロリストにハイジャックされた航空機をミサイルで撃ち落としたパイロットが被告として法廷で裁かれる場面を描いている。
テロリストの意思通りことが運べば7万人で満員になったスタジアムに墜落させ多くの人の命を奪うことになった。
乗客約200人の命と7万人のスタジアムにいる人々の命が天秤にかけられるべきなのか?我々は法治国家に生きており、すべてを法律原則通りに行動することが正しいのか?
命令に従うべきである軍人は命令違反をしてまで起こした行動は、どのような解釈をするべきなのか?
様々な命題が絡み合うように思える。
年に1回は読み直し、思索をしたい。" -
Posted by ブクログ
刑事オリヴァー&ピアのシリーズ5作目。
オリヴァーは主席警部で、ピアは同僚です。
これでやっと順番通りの刊行になる?
とはいえ、4作目を読んだのがだいぶ前なので~刑事たちの人間関係を思い出すのにしばらくかかりましたよ。
風力発電建設会社で、妙な事件が起きます。
ドイツでは、原子力に頼らない再生可能エネルギーの開発が盛んになっているそう。
彼らの住む州には、フランクフルトを含む都市部と風光明媚な郊外の両方があり、風力発電はまだ盛んではないとのこと。
メルヘン街道もあるそうですから、景観破壊になっては困りますよね。
オリヴァーの父親は伯爵で、地元の名士。
事件に関係する老いた農場主は、古い知り合いです。
この農場が美しいところなのですが、風力発電会社が用地買収しようとし、一方では反対派が集結して騒動になっていました。
反対派というのも、一枚看板ではありません。
市民運動家、恋人だから応援する女性、女性に憧れる少年、事情を抱えた人物‥
個性豊かで人間臭い描写は、この作家が得意とするところですね。
しかも、事件には背景があり、スケールを大きくしていく‥!?
4作目で、チームのメンバーにも変動があったのですね。
オリヴァーは妻に去られ、まだ動揺が激しく捜査に集中できないでいます。
しかも、ある出会いから、また振り回されることに?
あらまー‥
ピアのほうはオリヴァーの代わりに自然とリーダー格になり、充実した日々。
ところが仕事に熱中しすぎて、今度はせっかく上手くいっていたパートナーと?
おっと‥
しかも、最後に爆弾発言が?!
読みごたえのあるこのシリーズ、本国では8作目まで刊行されているそうですから~
続きも楽しみに待っております☆ -
Posted by ブクログ
刑事オリヴァー&ピアのシリーズ、日本での刊行は4冊目。
主席警部のオリヴァーと警部のピアは恋人ではなく同僚で、仕事で認めあっている関係です。
時系列としては「悪女は自殺しない」に次ぐ2作目に当たり、1作目はどちらかというとオリヴァー編だったのが、こちらはピア編といったところ。
1作目のほうがシンプルで、こちらのほうが筆が乗っている気がします。
ドイツでは2冊同時に私家版で発表、それが大きな出版社に認められたという作家デビューなのですね。
ピアは、まだ最初の夫と別居中。
その夫ヘニングは高名な法医学者で、オリヴァーとも友人でした。
大事件があると、ヘニングはまたこちらへ来ることにもなります。
動物園という意外な場所で、切断された死体が見つかった事件。
高校教師で積極的な環境保護活動家のパウリーは、動物園にも反対していました。
この男、生徒の一部には慕われているのだが、各方面に抗議したり何かと噛み付いていたため、容疑者はてんこ盛り。
地元で反目し合う実情が明らかになりつつ、事態はどんどん混迷の度を深めていきます。
怪しい人物が多いだけに、謎解きを楽しもうと思えば楽しめるかな。
若い子たちがえらい目に合うのがちょっと気の毒になってきますが。
事件に無関係ってわけでもない。
どう関係しているのかというと‥おっとそこまでは。
いや、ややこしくて書ききれないけど(笑)
それよりも、ピアがもてもてなのがややユーモラスに描かれるので、女性には楽しいんじゃないかな。
尊敬する年上の人と若くして結婚してしまったピアは、仕事しか頭にない夫との生活に耐えられなくなったよう。
家を出て農場を買い、自分らしい生き方を模索していました。
そこへ、感じのいい中年男性クリストフと、すごい美形の若者ルーカスが登場。
さて?
揺れ動くピアの心がどうなったかは、もう翻訳されている作品でわかりますけどね。
書き込まれていて、なかなか読み応えのあるシリーズです☆ -
Posted by ブクログ
第一印象。分厚い!
風力発電所の建設計画をめぐり、建設を推進したい施設建設会社と、自然保護を名目として建設反対を訴える市民団体との争いを軸にストーリーは展開する。
風力発電ならばクリーンエネルギーとして環境にも優しいと考えがちだが、巨大な風車を数多く建てなくてはならないから、やっぱり木々を倒し、土地を均して環境を変えなくてはならない。市民団体もその点を突く。さらには自然の立地としても風車を回すほどの風が常時吹くほどの見込みはない。それではなぜそこに建設しようとするのか。その裏に見え隠れするのは補助金やファンドから流れ込む潤沢な資金の影。大金が動くところに人は群がる。そして事件は起こる…
刑事オリバヴァーとピアが活躍するシリーズの第5弾とのこと。
やたらめったら登場人物が多いので最初は戸惑った。でも邦訳がとても簡潔でわかりやすいので、外国文学を読んでいる感じは受けなかった。シリーズを読んでいる人には難なく物語の世界に入り込めるだろう。
他の方のレビューを読んでいるとオリヴァーは当初は優秀でかっこ良くて頼りになるボスタイプとして活躍していたようだが、この巻から読むと、ファム・ファタールに弄ばれる間抜けな男にしか見えない。主に活躍するのも、犯人の見当をつけるのも、部下である女性のビアだ。女性の活躍が少ないとかファンからの苦情でもあったのか? オリヴァーのダメダメぶりは、凡人の自分には共感できる部分も多いが、第1作のからのファンはどう思うのか心配だ。
読み終えて振り返って考えると、犯人があの人だということは筋道としてとても納得いくのだが、読んでいる途中では全然気づかなかった。騙された。でも心地よく騙された。
これは第1作からぜひ読んでみたい。
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Posted by ブクログ
ネタバレ次々と登場する人物、錯綜する人間関係、交互に入れ替わるオリヴァーとピアの視点、そして頻発する事件…、一気読みできた。
ただ、丁寧な登場人物一覧に助けられるものの、やはりドイツ語の名前は覚えにくい!しかも親子で登場が多いし。
しかし、次々と容疑者を繰り出しながらも最後まで犯人を絞らせない展開の速さは見事で、前作より進歩している。
確かこの作者は立て続けに(自主出版で)発表しているのにこのレベルというのはスゴイ。
今作では環境破壊と汚職という骨太なテーマもあるし、一方でオリヴァーやピアの家族や過去に触れて横糸ともなるドラマもしっかり描かれホント盛り沢山な一作だった。 -
Posted by ブクログ
テロリストにハイジャックされた旅客機に乗った164人と、その飛行機が突っ込む先のサッカースタジアムにいる観客7万人−−。どちらかしか助けられない状況に、もし自分が陥ったら−−。空軍少佐は164人が乗った旅客機をミサイルで撃墜し、スタジアムの7万人の命を救った。そして少佐は逮捕され、裁判所で有罪か無罪かの評決を受ける。裁判ではさまざまな意見がかわされ、有罪を主張する検察側も無罪を主張する弁護側も、どちらの意見もまっとうであり理解できる。さて、評決は? 有罪でも無罪でも議論が沸き起こるだろう。結末はネタバレになるので書かないが、この裁判の模様を読むことで、本書は、各自がどのような態度をとるべきか考える良い教材となる。道徳の教材にぴったりではないだろうか。
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Posted by ブクログ
前作の『犯罪』と同じ系統の15編の短編を収録。
短編と言うよりも掌編小説と言った方が良いような小品もあり、前作に続き、不思議な魅力を感じた。全ての短編が創作なのだろうか。極めて淡々と冷めた視点で様々な市井の人びとの罪を描いた短編ばかりたのだが、救いのある短編もあれば、喪失感だけが残る短編、ミステリーの要素を感じる短編が混じる。
短編に描かれる数々の人びとのの罪は現実に起こりうるものばかりだ。もしかしたら、短編に描かれる登場人物の名前は単なる記号に過ぎず、主人公は人間ではなく、人間の犯す罪なのかも知れない。これは、最後の作品の『秘密』に著者の名前が出たのを見ると、あながち的はずれではないように思った。 -
Posted by ブクログ
不必要な文飾を極端なまでに削ぎ落とした簡潔な文体で描ききだされるのは、人間の内面に抑圧されてきた狂気とも、悪とも、暴力とでもひとまずは言える。これが、ゲルマン気質なのだろうか。秩序を愛し、中庸を尊び、ひたすら恭順に世間を生きている人びとが、ひとたび、世間の秩序だった世界の中に自分が容れられないと気づくや否や狂気に囚われた戦士のように衝動的な暴力沙汰を起こす。まるで、それまでの自己が偽りで、今剥き出しにされたのが、本来のあるべき自己なのだとでもいうように。淡々と事態を叙する記述がかえって、その世界の酷薄さを物語るようで、居ても立ってもいられないような強烈な読後感をもたらす。主人公の内にあって常に抑圧を義務づけられた欲望のようなものはもしかしたら誰の裡にもあって、抑圧の激しさゆえに奇妙に捻じ曲げられ歪みきった怪物の姿をしているのではないか。読後、そんな恐怖感に襲われること必至。とんだクリスマス・プレゼントである。