酒寄進一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレオーストリアの作家アンドレアス・グルーバーの本邦デビュー作。一気読み必至の佳作。
なんでもない事故のために窮地に陥っていた叔父を助けるために、その案件に関わっていたエヴェリーンは、同じようになんでもない事故だと思われていた案件にも同じ少女の姿が映っている映像があることに気づく。
一方、精神病院に入院歴のある子供が自殺している案件で不審な注射の後を見つけ、殺人ではないかと疑いを持ったヴァルターは、その犯人の後を追うように捜査を始める。
一見、なんのつながりもない事故、あるいは自殺にまつわる、二人の視点で物語が展開する。いずれも心に傷を持ち、一方では真実のために脇目も振らない活躍をする。エヴェリー -
Posted by ブクログ
『コリーニ事件』
この小説を読み終えた後、読者は深いため息をつくことになる。
シーラッハの長編はこの作品が初めてである。わたしもまた、深いため息をついた。
法と個が交わる難しい状況が描かれている作品だと、前提条件としてわかっていたが、読み進めていくうちに、更には社会や歴史も深く交わっていることがわかっていく。
「わたしは法を信じている。きみは社会を信じている。最後に軍配があがるか、見てみようじゃないか」
そして読み終わった後には、真実を解き明かすことそのものが個にとっては正義ではないのかもしれないという気持ちになる。
「マッティンガーはわずか2時間で、コリーニの父をもう一度殺した -
Posted by ブクログ
プラハの展覧会に貸し出した絵画が焼失した…ところがその絵は偽物
本物の絵画を探すためプラハに調査員を派遣するが、行方不明になる
本物の絵画を探すため、また行方不明になった調査員を探すため、保険調査専門探偵のホガートは、プラハに飛ぶ…
しかしそこで彼は、猟奇的連続殺人事件に巻き込まれることになる…
プラハを舞台にしたミステリーは珍しいと思い手に取った
プラハはかつてユダヤ人のゲットーだった場所として知られ、作品にもそれが関わってくる
もちろんプラハには行ったこともないが…登場人物たちと一緒に巻頭にある地図を見ながらプラハの街を行ったり来たりしている気分だった…(笑)
登場人物がなかなか個性的で -
Posted by ブクログ
感情を込めない淡々とした文章に戦争が及ぼす次世代への影響、法律の歴史、戦犯の別の側面などドイツが舞台ではありながら、どの国でも考えるべき問題が取り上げられています。
ページ数も登場人物も少なめです。心情もあまり語られないし、登場人物たちの行動から推しはかるという描写が多いです。
著者の祖父が元ナチスのユーゲント指導者だったという背景が作品に多いに影響していると思われます。この著者だからこそ描けた小説なのだと思います。最後の1ページが心に残ります。
実際にドイツの政治を動かしたとも言われる社会派小説。日本だったらどうでしょうね?自国の戦犯の話って自分も責められているようですごく辛い。ドイ -
Posted by ブクログ
『犯罪』
シーラッハはわたしのお気に入りの作家の一人。
ドイツ文学は少し授業で齧ったりもしたけどこんなにも、のめり込む様な世界を与えてくれたのはフェルディナント・フォン・シーラッハだった。
「犯罪」と書かれた題名からして、そしてミステリーという区分に、きっとどんでん返しのストーリーが待ち構えていると誰もが思うであろう。
11章の短編で構成されたこの本はとても読みやすく、ドイツ文学初心者の方でもするりと入り込める。
しかし、どんでん返しものではなく、現実の話のように「まあそうなるだろうな」と進む話が多い。至って単調な話の連続のように感じるが、彼の描くストーリーは調書や報告書など事務的なもの -
Posted by ブクログ
シーラッハの作品は、なんというかストーリーに余白があって余韻が心地よい。
決して居心地のよい話ではない事が多いのだが、読んだ後に、自分の心の中でいろいろなことが静かに共鳴する感じがする。
本作は、言ってみれば短編集なのだろうが、短編とも呼べない、掌編ですらないくらいの数行で終わる作品もあって、尚且つ各編にタイトルがない。ないというか、単純に連番が振られている。訳者によれば、共感覚者であるシーラッハには、それなりの意味があって振ってある数字なのかもしれないが、それがまた読み手には自分でイメージを膨らませる余地になり、一層作品を味わい深くしている。
作中にはいくつもの実在の小説や映画、歴史的事 -
Posted by ブクログ
主人公ウェルテルが、友人ヴィルヘルムに宛てた書簡形式で構成された作品。ロッテという女性への熱烈な恋心が吐露されています。彼女には婚約者(アルベルト)がいます。にもかかわらず、ウェルテルにも心惹かれている。いわゆる三角関係です。ウェルテルには恋の悩みの他に、職業が定まらないという辛い現実があります。
最初の方の手紙は、ロッテへの好き好きオーラ出まくりですが、後半は悩み深くとても重苦しい内容です。恋は盲目、恋の病という言葉が想起され、ウェルテルの心が、どんどん病んでいくのが読み取れました。
読み進める中で、自分の経験が思い出されてきました。
学生時代、恋愛がうまくいかず、入院するまでになって