あらすじ
台北、東京、マラケシュ、ウィーン、チューリヒ、パリ……。弁護士で作家の「私」は講演会や朗読会で世界各国を訪れ、さまざまな過去を抱える人々と出会う。16年前に弁護したかつての依頼人がマラケシュで語った、当時明かさなかった事故死の事情。イタリアの古い館に滞在中、怪我をした隣人の女性から聞いた衝撃的な身の上話。ベルリンで亡くなった知人の遺言執行者に指名されて知った、彼の唯一の遺産相続人との愛憎半ばする関係──。死や罪悪感に翻弄される純粋で奇妙な人々の物語と、ところどころに挿入された歴史上のエピソードによる全26章は、ページを閉じたあとに、深く鮮烈な余韻を残す。クライスト賞受賞、日本で本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた『犯罪』の著者が贈る新たな傑作短編集!
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Posted by ブクログ
初めましての著者の本!
犯罪を読もうかなって出た時思ったような思わなかったような。
今作がかなり良かったからいずれ読みたい。
短編集ってあるのにタイトルのみで目次なし。
ありゃなんで?って思いながらスルスル読んで4か5で訳者さんのあとがき読んでやっと理解した。そういうことか!なら番号のみにそんなに困惑しなくても読んでけるわと気を取り直して進めました。
特に良かったのは8.12.16
どれもいい映画見たあとくらい満足感があった。オチも切れ味良くて最高でした。
他にも3.5.20.21もかなり楽しかった。
Posted by ブクログ
シーラッハ2冊目、最新刊の短編集です。200ページ足らずの本書には26編が収められ、長くて20ページ程度、短いものは1ページ、それもわずか3行という掌篇もあります。そして各話にタイトルがなく、通し番号が付されています。
読み始めは1話ごとの脈略やテーマがよく判らず少し困惑しましたが、デビュー作同様、弁護士・作家である著者の〈私〉が登場し、かつて仕事等で訪れた世界各地で誰かと出会い、打ち明け話を聞くというエピソードが淡々と語られます。
過去にあった事実、その人生の断片は、どこまでが創作か境目があやふやで、幻想か現実かが曖昧な印象です。各掌篇の好みの振れ幅が大きいと思いました。トータルで俯瞰した時に、つかみどころのない哲学的な要素も感じ、戸惑いにつながるかもしれません。
それでも、本書タイトルの「午後」に限らず、夜をイメージする話も多く、孤独や苦悩の人の生き様を喚起する展開と意外性のある結末など、味わい深い掌篇が魅力的です。評価を3寄りの4とします。
デビュー作と最新作、それも短編集しか読んでいないので、機会があればシーラッハの長編を含めた多作品を読んでみたいです。もしかしたら、シーラッハは読後の不穏さが癖になる作家なのかもしれません。