酒寄進一のレビュー一覧

  • ある晴れたXデイに

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    ネタバレ

    ドイツの女性作家、カシュニッツの第二短編集。

    一作目は幻想、不条理がメインの短編が多かったが、今作は主人公たちの異常なほど不安になる気持ち、執着する気持ちが軸となる作品が目立つ。
    死んだ養子が戻ってくるかと不安に怯える「雪解け」、行方不明の男の子を見つけることに執心する「幸せでいっぱい」、滅亡する世界を減少し異常なほど怯える「ある晴れたXデイに」。

    わかりやすいホラーは少ない作家。でも、どの作品も時折、読んでいて息苦しくなる。一気に読むというより、少しずつ、堪能する短編集だと思う。良作。

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    2024年12月30日
  • カールの降誕祭

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     皮肉な結末が三話。こんなクリスマスは、絶対に嫌だけれど、お話としては面白かった。どれも甲乙つけ難いが、やはりタイトルである、『カールの降臨祭』が最もインパクトがあった。カールが子どもの頃に言われた 所詮はクズ という一言が、彼の心にずっと燻っていたところが、たまらなかった。
     ドイツの著者だったが、親日家なのか、随分と日本の話が出てきたことも、印象的だ。

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    2024年12月21日
  • 神

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    だれかの人生はわたしのものではないし国のものでも法制度のためにあるものでもない 一般化できない異なる事情を全員が抱えているし、その事情がどういうものか、その人の状況とまったく同じに再現することも理解することも不可能だし実際の気持ちはその本人にしかわからない 罰は類型化できても罪はできないのと同じように、人生は類型化できても死は個別案件すぎるのにな

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    2024年10月19日
  • その昔、N市では

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    書店で何となくパケ買いした1冊。
    自分好みで大満足だった。

    ドイツ人女性作家のカシュニッツが手がけた本書は15作の不思議で少し背筋の凍る短編からなる。
    どの話も何の説明もなく突然始まり、読者は最初置いてけぼりになる。しかし1,2ページ読み進めると状況が掴めてくる、といった自由奔放な構成にも惹かれた。

    個人的に「船の話」「ロック鳥」「幽霊」「長い影」辺りが特に印象に残っている。10ページにも満たないであろう短編を読んでここまで不思議で不安な気持ちを植え付けられることは中々ない。

    これを機に彼女の他の作品も読んでみたいと思った。

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    2024年10月05日
  • デーミアン

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    主人公の少年がデミアンという不思議な少年との出会いを通じて精神的な成長を遂げるまでを描いた物語。

    子ども時代の両親に守られた『明るい世界』から自分の世界へと繰り出そうともがいたり、理想の自分とのギャップに苛まれる主人公に過去の自分を重ねてしんみりとしてしまった。
    ラストのデミアンの言葉には号泣した。
    自分を見つめ直したいときにまた読みたい本である。

    この本は作者のヘッセがユング系のセラピーを受けた後に書いた話らしく、
    読んでいると登場人物や主人公の心の動きがユングの理論を下敷きにしていることがわかる。
    またキリスト教的価値観をわかっているとなお深い考察ができると思う。
    (知らなくても十分楽

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    2024年09月21日
  • 犯罪

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    ネタバレ

    <(前略)私には参審裁判所で裁判長を勤めたおじがいました。故殺や謀殺などの殺人事件を扱っていました。おじは私たち子どもにもわかる事件の話をしてくれました。でも、いつもこういってはじめたものです。「物事は込み入っていることが多い。罪もそういうもののひとつだ」

    おじのいうとおりでした。私たちはさまざまな物事を追いかけています。ところが物事の方が速すぎて、どうしても追いつけないものです。私の話に出てくるのは、人殺しや麻薬密売人や銀行強盗や娼婦です。それぞれにそれぞれがたどってきた物語があります。しかしそれは私たちの物語と大した違いはありません。私たちは生涯、薄氷の上で踊っているのです。氷の下は冷た

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    2024年09月17日
  • コリーニ事件

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    (2013/5/27)
    「ドイツの法律を変えた!」という書評に興味を持って読んだ。デイキャッチで豊崎さんが絶賛してた。
    結末を読んで思ったのは、この事件、記憶にある、ということだった。
    結末のどんでん返しがこの小説のすべてなので、ネタバレは避けたほうがいいのだろうが、、、
    どの書評も結末は書いてない。

    どう描いていいかわからないから、まずはDBから。

    内容(「BOOK」データベースより)

    2001年5月、ベルリン。67歳のイタリア人、コリーニが殺人容疑で逮捕された。
    被害者は大金持ちの実業家で、新米弁護士のライネンは気軽に国選弁護人を買ってでてしまう。
    だが、コリーニはどうしても殺害動機

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    2024年09月04日
  • 神

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    自殺を考えたことがある人間としては安楽死が制度化されることは反対という立場で本作を読んでいた。
    問題を提起したおじいさんの弁護士の言葉には一理あると思いつつもとてもイライラさせられた。
    というのも、私は手段も場所も選んで実行しようとしたことがある。ただし、実行することはできなかった。自殺を考えるまでとそこからでは必要な精神力がまるで違った。死にたいけれども、実際に死んでしまった際に悲しむだろう人たちの顔が浮かんでくるものだ。だからこそ、実際に死ぬ部分のハードルを他人に託すことはとても恐ろしいことに思える。それに、人を殺すという業の深いことを他人にやらせるというのも罪深いことに思える。

    解説に

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    2024年07月27日
  • 友情よここで終われ

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    ネレノイハウス禁断症が出かかっていたので読めて良かった!
    過去No.1の圧巻感と丁寧な伏線回収がダイナミックだった。筆者とヘニングの世界が現実と虚構のラインでつながって、ピアとオリバーと読者で物語に参加している感覚になった。
    著者もキャラクターたちも、1番油が乗っている作品ではないだろうか。
    ネレノイハウスは毎回500ページまでが本当に読んでいて楽しい。500ページを超えた先がもっと楽しいことをファンなら知っている。今回も大満足の1冊だった!
    禁断症状が出るまでに、早く自作を読みたい。

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    2024年07月19日
  • 神

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    78歳のゲルトナーは3年前に妻を亡くした。
    身体的にも精神的にも健康な状況であるが、妻を亡くし人生に意味を見出せなくなったため医師による自死の介助を求めた。
    ドイツの倫理委員会主催の公開討論会で様々な専門家が医学、神学、法学的に議論する。

    ・感想
    ここ数年よく考える事柄が題材だったのでとても興味深く読んだ。
    自己決定権、自由意志、一般的人権、尊厳とは。
    生と死についての定義づけと線引きすることがいかに不可能かということ。

    印象に残ったのはドイツの憲法では神について言及されているということ。個人的にはそんな「神」なんて存在するかどうかもわからないものを憲法に挟むなんてあり得ないと

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    2024年07月19日
  • 若きウェルテルの悩み

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    現代人には理解し難いほど、ウェルテルは感受性が豊かで心労が絶えない。自分の正義を貫き、抱えきれないストレスを抱えてしまっている。どうしてこんなに結論に至るのが早いのか。劇なら可哀想で美しい悲劇だが小説だとちょっと美しくない結末かな。でも文章は好き。

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    2024年07月03日
  • 羊の頭

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    弁護士アイゼンベルクシリーズの作者による別シリーズ、クロイトナー上級巡査とヴァルナー警部シリーズ。

    シリーズ2作目ですが、シリーズ最高かも。例によって、引っ掻き回すクロイトナーと、私事に悩み事を抱えつつ慎重に事件を解決に導くヴァルナー。ドイツに警察制度では、クロイトナーとヴァルナーは別の警察に属しているのかと思っていましたが、同じ警察に属しているんですね。

    いやぁ、それにしても、シリーズ最高というのは、入り組んだ謎もそうなのですが、その真犯人が意外な人物であること。それも、無理やりではなく「あー、そーなんだ」と納得できる描き方。いや、良かったです。

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    2024年06月08日
  • 母の日に死んだ

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    最初はその分厚さに圧倒されたけど(文庫本で700ページ弱って!)読み始めたら物語に引き込まれてすいすい読めるし読むのを止められない。とはいえ、馴染みがない名前や地名でその辺りはちょっと読み難いけど。

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    2024年05月15日
  • その昔、N市では

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    ネタバレ

    戦後ドイツの作家、マリー・ルイーゼ・カシュニッツの日本オリジナル短編集。

    一編一編が高級チョコのように味わえる作品集。幻想的でありつつも、どこか人間の普遍的な不安感が漂う。その暗い感じがクセになる作家。

    以下、作品毎の感想。

    ◯白熊 ★おすすめ
    帰ってきたのに何故か電気を付けたがらない夫と妻の会話。出会った動物園で、妻は本当は誰を待っていたのか。会話しているのは本当に夫なのか。不安がピークになるころ意外な展開に。

    ◯ジェニファーの夢
    夢を見たという娘のジェニファー。日を追うごとに夢が日常を侵食しているようで、得体の知れない娘への不気味さが描かれた作品。

    ◯精霊トゥンシュ ★おすすめ

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    2024年04月21日
  • 友情よここで終われ

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    オリヴァーとピアシリーズ10作目のドイツミステリー。事件解決と並行して二人の私生活も深く語られるので、もはや私にとって二人は正月に近況を知らせてくれる親戚の様な親近感を抱かせてくれる。とは言え、今回の事件は登場人物も多く関係性も複雑、さらに過去の事件の影響が多大で、嘘に嘘を重ねる容疑者が常に入れ替わる。
    解決に繋がるチームのメンバーの地道な仕事も描かれているので600ページ超えもあっと言う間によめた。

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    2024年04月16日
  • 友情よここで終われ

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    ネタバレ

    登場人物が多い上に人間会計が複雑、更にそれぞれがあだ名で呼びあったり、作中作小説は仮名処理されてて、誰が誰だかわからなくなる。
    しかも、みんな嘘ついてて、ルービックキューブかってくらい事件の構図が目まぐるしく入れ替わり、その度に容疑者候補順位が次々シャッフルされる。
    これを最後に収束させられる技量半端ない。
    ピアがため息混じりに「これは最低の事件よ。嘘と巻き添え被害だらけ」というのも頷ける。
    そんな中、ゼヴェリン・フェルテンのキャラが最高。未だかつてここまで強烈な噛ませ犬がいただろうか。
    終盤で特殊応力を発揮するし、ニコラのお気に入りになってるし、レギュラ入りを予感させますね。

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    2024年03月17日
  • 友情よここで終われ

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    ネタバレ

    オリヴァ―とピアシリーズの第10作。

    オリヴァーの私生活はこんな酷いことになってたんだっけ?
    上手く行っていたような気がしたのだが、
    ピアに言わせれば、いつも同じタイプ、
    不安定さを抱えるキャリアウーマンタイプに惹かれるオリヴァーが悪いのだが。
    元妻のコージマが癌になり末娘と一緒に住んでいるが、
    妻の娘が悲惨な事件を目撃したトラウマからか意地悪三昧。
    オリヴァーひとりなら、自業自得で終わりだが、
    娘を巻き込むのは親としてどうかと思う。
    別居すると聞いて「ようやく?」と言いたくなるピアの気持ちがよくわかる。
    さらには、家を出た後に元実家のお城を改装したホテルに泊まり込み、
    敷地内の家に安い家賃

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    2024年03月11日
  • 若きウェルテルの悩み

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    婚約者のいるロッテに恋したウェルテル。若さゆえの愛情も次第に絶望も深まっていく。そして、社会に対する怒りも絶望へ。長く読み継がれる作品だけあって読み応えがあった。本書は、初版からの翻訳とのことなので、改訂版の訳でも読みたい。

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    2024年02月28日
  • 犯罪

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    ネタバレ


    「順調なときにだけ約束を守るというのではだめだ。」

    フェーナー氏が立てた誓いは、最期まで守られたのだろうか。法廷で、今でも妻を愛していると、そう誓ったからだと、話す場面が目に浮かびます。ついでに涙も
    それがいつか身を滅ぼすとしても、立てた誓いを破るわけにはいかない。それは裏切りになるから。ほんとうに、痛いくらい素直で泣きたくなるほど優しい人なんでしょうね
    何度読んでも、『フェーナー氏』 は泣いてしまいます。

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    2024年01月20日
  • 珈琲と煙草

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    煙草関連のエッセイは編著含めとりあえず気になるのでタイトルから手に取る。
    数ページ読んだ感じは思ったものと違う(煙草がそこまで現前しない)ので、断片的な小作品とはいえ読み終えられるか疑問符が生じたものの、「ドイツ」「弁護士」といった著者の身近な題材から広がる様々な物語は、小説に対して筆者のもの含めなかなか手を出そうと思えない偏執の身からしても、良質な、いい意味で自信から縁遠いものに巡り合うことが出来たことは僥倖だった。

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    2023年11月19日