酒寄進一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2025年の翻訳大賞とってたので、初めてシーラッハ作品を読んだ。確かに不可解なパートもあるし、哲学とか歴史とかの話も入るので教養のない自分には難しく思えたけれど、やはり大賞獲るだけあって訳された日本語の美しさが心地よかった。
全体をとおしてドラマチックで詩的な文章がとても好き。
訳者あとがきの「エッセイ未満の創作」は言い得て妙だし、エッセイと思ってもう一度読み返すと感じ方が変わるかも。
個人的には(エルメスのいない)「キノの旅」感あるなあと思ったけど、異論は認めます。
どんでん返しほどではないにせよ章末で急にハンドル切ってくるこの感じがクセになる。
この方のほかの作品も読んでみよう〜。 -
Posted by ブクログ
「性根」というものについて考えてみた
「性根が腐ってる」とか「性根が座ってる」みたいな使われ方をするよね
生まれながらに備わっている性格や性質を言い、後天的に変えにくいもの、精神や魂そのものを指す場合もあるようです
で、ナチよ
積極的にナチに加担した人たちって一定数いるわけな
そういう人たちってもともと「性根が腐ってた」んだろうか?
んで本来そういう人たちは、やっぱりまっとうな世界では日陰者になるところをナチスが支配する世界ではむしろ「素晴らしい人格者」とか言われて、俺たちの時代が来たぜとか思ってたんだろうか
いやね
ヨーロッパのミステリーではよくあるのよ
元ナチの犯人や元ナチの被害者(恨まれて殺される)がね
殺す側でも殺される側でも「性根の腐った」やつとして登場するんだけどね
うーん、なんかまとまらんなー
ドイツミステリーの本作はナチスを題材にしてきまして、やっぱりドイツではナチに積極的に加担したやつは「性根の腐った」人という扱いなんだなぁ〜と思った次第
まぁ、そりゃそうか -
Posted by ブクログ
続けてドイツ人作家の小説。本作の著者フェルディナント・フォン・シーラッハは、ナチ青少年最高指導者の孫だと云う。そんなの関係ねー!と思いつつ、不穏感が湧いてくるのが正直なところ…。
著者は弁護士の傍ら小説を書き始め、デビュー作の本作でドイツのクライスト賞、日本で2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位を受賞。11篇の連作短編集ですが、それぞれにつながりはありません。
タイトル通り、罪を犯した人々の物語です。著者が実際に携わった刑事事件から着想を得たそうで、まるで11の刑事事件の実録?というほどリアルな印象です。しかし、ただの事件の羅列ではなく、描かれるのは人間の挫折・罪・素晴らしさです。
一般的な推理小説とはまるで別物です。弁護士の〈私〉から見た犯罪者を、加担も非難もせずに、淡々と誇張のない簡潔な筆致で綴る各短編は、極力無駄を削ぎ落としながら客観事実を重ね、犯罪者たちの人生が凝縮されたような描写です。
犯罪者もかつては「ただの人」だったはずで、私たちは一歩誤ると犯罪の道へ足を踏み入れてしまう危うさを孕んでいることに気付かされます。
そんなの関係ねー!と前述しましたが、弁護士として人の罪を検証し、調書を元にしてできた小説の行間に、祖父がナチ高官だったという出自がもたらす贖罪と孤独が潜んでいる、と考えるのは勘ぐり過ぎでしょうか?
著者は、人としての道徳心と法の境界線で、法制度の限界と人間への愛情を示している気がしてなりません。もはやミステリーではなく、濃密な人間ドラマと思える珍しいタイプの短編集でした。 -
Posted by ブクログ
最近失恋したので再読。今年の9月くらいに買ったのにもう読むのは3度目だ。この本を自分への処方箋にしているところがあるかもしれない。
最後に主人公が自殺する話を読んで、自分が自殺を考えないかと自分で心配するところがないわけではない。実際、この本が出版された当時、ウェルテルに共感した若者の自殺が相次ぐということもあったそうだ。しかし、本を読むことの良さは自分ではなかなかできない体験を本を通じて理解するということにもあると思う。自分の言語化できない心情を言葉にしてくれる本を通じて、自分の心情をかき分けていくということができる。やっぱり読んでよかった。僕とウェルテルがどれだけ重なっているところがあるかわからないが。
ところで、最も印象に残っている箇所はウェルテルの自殺直前のロッテに宛てた手紙の箇所だ。愛しい人に向けた最後のメッセージということで、なかなか心が揺さぶられた。
この本のなかでロッテとの出会いからウェルテルの死まで描かれているが、ウェルテルがロッテと出会いたての頃から、ロッテとの交流を通じてさらに惹かれていく様子はまさに激情の波というべきで、ウェルテルの気持ちが痛いほど伝わってきた。ウェルテルは最後に死を選ぶわけだが、ウェルテルはアルベルトとロッテの幸福も考えた上でそうしているのだから、自分にはとてもできない芸当だと思う。自分だったら絶望するのは同じでも、いつまでも自分の殻に閉じこもって、妄想に浸って昔のことを回顧するだけでなにも前進しない。ウェルテルはよくできた人物で、ゲーテは偉大な作家だと思う。
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ネタバレ自然への憧憬と畏怖から社会や人間への失望への流れと感情の変化をこんなに荒々しく、その上で詩的に表現した文章があっていいのか
感情の濁流に飲み込まれて帰って来れないのではないかという新しい読書体験をした
これはただ失恋で死に魅せられてしまった話ではなく、そもそも自然に憧れた青年が自身の感受性を御しきれなかった話だと感じた。
情緒のある人に惹かれていくものの、その人もまた無粋な社会には適合してしまっている。自分の理解者を見つけられないまま、ロッテが社会の枠にはまらず自分とともに感性に従って生きてくれることを望んでしまった
友愛ではなかったのか。と言えるほど、アルベルトがいながらロッテを愛し自然を楽しめていたウェルテルが、荒々しい自然が目につきロッテを自分のものとしたくなってしまったのはこの社会への絶望感があるのだろう -
Posted by ブクログ
自我からの解脱を目標に、苦しみを乗り越えて道を切り開いていくシッダールタの姿に、引き込まれました。
宗教的内容であることを予想し、読み始めは身構えましたが、その心配は無用でした。
苦行を3年間一緒に積んだシッダールタと友人ゴーヴィンダは、違う道を進みます。ゴーヴィンダはブッダの弟子となります。
苦行で身につけたもの(断食、待つ、考える)を遊女のカマラー、商人との出会いの中で手離すことになったシッダールタ。そのかわりに得たものは、官能の喜び、快適な暮らし、富(とみ)でした。しかし、シッダールタの心は満たされず、その後、彼に大きな影響を与える人物との出会いがあり、彼は変わります。
後半は、一人の人間の覚醒だけでなく、親子のあり方を考えさせられる場面もありました。“可愛い子には旅をさせよ”“若い頃の苦労は買ってでもしろ”という、ことわざが思い出され自分自身の経験と照らし合わせて、納得のいくものでした。
世の中の真理を、川から学びとっていくシッダールタ。『戦争と平和』の登場人物の一人であるアンドレイの心の変容をも思い出されました。
シッダールタに共感でき、ここまで自分が生かされて本書に出会えたこと、本当に良かったと思います。心揺さぶられる、芸術的感性を刺激される読書体験でした。現時点の私にとって傑作中の傑作です。観念のみで至った境地が書かれているのでないからです。苦しみ抜いた者だけがその先に見ることができる、辿り着ける境地を描ききっています。今年最高の一冊の本になる予感です。
以下、余談ですが、
舞台『シッダールタ』の公演があること、本書を読み始めたときに知りました。
東京公演(2025.11.15〜12.27)
兵庫公演(2026.1.10〜1.18)
草彅剛主演ということで、同じ中学校出身なので(ただそれだけの理由で、お友達でもないのですが)頑張ってほしいと思っています。
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Posted by ブクログ
刑事事件の専門弁護士である著者が描き出す、奇妙な事件の話が15話収録されている。ふるさと祭りの最中に、給仕していた少女への集団暴行事件を描く「ふるさと祭り」、寄宿学校で秘密結社にかぶれる男子生徒による事件を描く「イルミナティ」、麻薬売買の現場に自宅を提供していた老人と、自分の運命から逃げられなかった男を描いた「雪」など、弁護士の「私」はさまざまな罪の形を語る。
ふるさと祭り
「私たちは大人になったのだ。列車を降りたとき、この先、二度と物事を簡単には済ませられないだろうと自覚した」
ふるさと祭り、がお気に入りです。
法で捌けない罪というのはミステリーではよく登場しますが、怒っても、泣いても、解決することができない物事があることに気づくというのはやるせないものです。
描写が調書のように丁寧に、かつ端的で鮮烈に表現されています。読みやすいだけでなく、記憶に残ります。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ個人的には2025上半期一番面白かった!
ここが良い!
・細かいミスリード
・先が気になる構成、描写なので飽きがこない
・設定はシンプル王道なのに、楽しめる
ここは好き嫌いありそう
・シンプル王道、長い
・殺害方法がえぐい
・最後の、犯人クリスティアン(ゼバスティアン)との対峙、戦闘描写が急に雑
・散りばめた伏線があり過ぎる
・ユーリ・サルコフとかいう日本翻訳版が出てない作者デビュー作の登場人物の謎クロスオーバー
・登場人物に魅力が、、、キャラクターで読ませる小説ではない
ミスリードが上手。ヴィーは『アルプスの少女ハイジ』が大好きでぼろぼろ泣いたという過去の章の描写。本当に些細な描写で、大分後になってから、クララとその名前の由来が明かされたから(ページ数だとP93→356)、阿呆みたいに普通に騙された。
ただ、伏線置きっぱなしなの沢山あるから2ヶ月連続刊行にしたのは大正解だと思う。
この作品楽しめた人は、J・D・パーカーの『悪の猿』3部作も楽しめると思う!