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Posted by ブクログ
罪とは何か。これがシーラッハ文学の中心テーマだ。
…「罪」という漢字を分解すると「目に非ず」と読める。「現実」を把握するのに「百聞は一見にしかず」というが、こと「罪」に関してはこれが通用しない。なぜなら「罪」に見入る者は心の闇を覗くことになるからだ。
ー訳者あとがきより
ブラック・クリスマス、タダジュンさんのおどろおどろしいながらも目が離せない絵に惹かれて読んだ。
たった三遍が載った100ページにも満たないお話。
けれど読みやすい比較的短い文章で綴られた罪に満ちた三つの物語は、その主人公たちの末路はどれもじわじわと衝撃的で、けれど、ああ、これは私たちの物語だ。と思わされた。
主人公たちはカオスに魅入られて、罪を犯してしまう。淡々と描かれる文章に、タダジュンさんの大胆でこちらが飲み込まれそうな黒の挿絵が、不思議なカオスと禍々しさを生み出していた。
そのカオスは、いつ我が身に降り注いでもおかしくない。そのことに戦慄し、その事実を淡々と印象的に描くこの物語たちにゾクゾクした。
どの話を特にピックアップするのは無理というか、三遍とも全て同じくらいゾクゾクするので、甲乙つけ難いのです。
シーラッハの書く物語を、網羅したい気持ちに駆られた作品。
そう思わせてくれるのに、作品そのものはもちろん、充実した訳者あとがきが何役もかってくれたので、ぜひこの本の全部を読んで欲しい。
目次
パン屋の主人
ザイボルド
カールの降誕祭
訳者あとがき
Posted by ブクログ
不必要な文飾を極端なまでに削ぎ落とした簡潔な文体で描ききだされるのは、人間の内面に抑圧されてきた狂気とも、悪とも、暴力とでもひとまずは言える。これが、ゲルマン気質なのだろうか。秩序を愛し、中庸を尊び、ひたすら恭順に世間を生きている人びとが、ひとたび、世間の秩序だった世界の中に自分が容れられないと気づくや否や狂気に囚われた戦士のように衝動的な暴力沙汰を起こす。まるで、それまでの自己が偽りで、今剥き出しにされたのが、本来のあるべき自己なのだとでもいうように。淡々と事態を叙する記述がかえって、その世界の酷薄さを物語るようで、居ても立ってもいられないような強烈な読後感をもたらす。主人公の内にあって常に抑圧を義務づけられた欲望のようなものはもしかしたら誰の裡にもあって、抑圧の激しさゆえに奇妙に捻じ曲げられ歪みきった怪物の姿をしているのではないか。読後、そんな恐怖感に襲われること必至。とんだクリスマス・プレゼントである。
Posted by ブクログ
犯罪、罪悪のような、淡々としてそれでいて怪しさをはらむ数式のような短編集。正直、シーラッハはすごく好きなんだけど前作「禁忌」が個人的にイマイチだったので不安だったが、これはヒット。
これぞシーラッハ節、というような芸術や文化たる整然さと人の業たるカオスさが混ざり合ってなんとも言えず不気味な雰囲気が全編にあふれていた。まさにブラッククリスマス。満足満足。…だけど、やっぱり最初に読んだ「エチオピアの男」を越える傑作短編は、まだない。
あれを越える話をこれからも求め続けるのは、シーラッハにハマった読者の業だろうか。来年再来年と、引き続きそれを期待しながら、また訳者の素晴らしくカオスを落とし込んだ日本語にも期待しながら、ゆっくりと過ごしたい。
Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
ドイツでは、クリスマスに最も殺人が多い。十世紀から続く貴族トーアベルク家のクリスマスの惨劇を描いた表題作と、日本人の女子留学生に恋をしたパン職人の物語「パン屋の主人」、公明正大だった裁判官の退職後の数奇な運命を描く「ザイボルト」を収録。本屋大賞翻訳小説部門第1位『犯罪』のシーラッハによる珠玉の短編を、気鋭の版画家タダジュンの謎めいたイラストが彩る。ふたりの天才が贈るブラックなクリスマス・プレゼント。
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初めて読むシーラッハ。
名前はなんとなく知っていたし、「犯罪」が2012年本屋大賞の翻訳部門で1位を獲得したことも知っていたのでちょっと期待して読んでみたのだけれど、今ひとつ読み応えがなかった。
100頁足らずの中に3つの短編が収録されているので、著者が本領を発揮した作品ではなかったのかもしれない。読みが浅いと言われそうだけれど、内容も何となくありふれた事柄のようにも思える。さらにヒンシュクを買いそうな書き方をすれば、本編よりも「訳者あとがき」の方が読み応えがあって面白かった。
シーラッハは他の作品も積読状態になっているので、そちらに期待。
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