【感想・ネタバレ】カールの降誕祭のレビュー

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Posted by ブクログ

罪とは何か。これがシーラッハ文学の中心テーマだ。
…「罪」という漢字を分解すると「目に非ず」と読める。「現実」を把握するのに「百聞は一見にしかず」というが、こと「罪」に関してはこれが通用しない。なぜなら「罪」に見入る者は心の闇を覗くことになるからだ。
ー訳者あとがきより

ブラック・クリスマス、タダジュンさんのおどろおどろしいながらも目が離せない絵に惹かれて読んだ。
たった三遍が載った100ページにも満たないお話。
けれど読みやすい比較的短い文章で綴られた罪に満ちた三つの物語は、その主人公たちの末路はどれもじわじわと衝撃的で、けれど、ああ、これは私たちの物語だ。と思わされた。
主人公たちはカオスに魅入られて、罪を犯してしまう。淡々と描かれる文章に、タダジュンさんの大胆でこちらが飲み込まれそうな黒の挿絵が、不思議なカオスと禍々しさを生み出していた。
そのカオスは、いつ我が身に降り注いでもおかしくない。そのことに戦慄し、その事実を淡々と印象的に描くこの物語たちにゾクゾクした。
どの話を特にピックアップするのは無理というか、三遍とも全て同じくらいゾクゾクするので、甲乙つけ難いのです。

シーラッハの書く物語を、網羅したい気持ちに駆られた作品。
そう思わせてくれるのに、作品そのものはもちろん、充実した訳者あとがきが何役もかってくれたので、ぜひこの本の全部を読んで欲しい。


目次
パン屋の主人
ザイボルド
カールの降誕祭
訳者あとがき

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2023年03月28日

Posted by ブクログ

シーラッハの安定した独特な文章に加えタダジュン氏のインパクトある版画絵の表紙や挿絵により、更なる相乗効果で作品一つ一つがとてもリアルに楽しめました。もちろん、決して楽しい内容ではないのですが、人間誰にでも潜んでいる悪や「罪とはなにか」について、とても深く考えさせられます。また、巻末の訳者酒寄進一氏の解説により、よりシーラッハが伝えたい意味も参考になりました。少し早めの自分へクリスマスプレゼントになりました。

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2016年02月16日

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「パン屋の主人」
「ザイボルト」
「カールの降誕祭(クリスマス)」の短編3編収録。
ザイボルトめいた状況は前の職場であった。直接面識はないが、お元気で過ごされているだろうか。

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2015年12月24日

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不必要な文飾を極端なまでに削ぎ落とした簡潔な文体で描ききだされるのは、人間の内面に抑圧されてきた狂気とも、悪とも、暴力とでもひとまずは言える。これが、ゲルマン気質なのだろうか。秩序を愛し、中庸を尊び、ひたすら恭順に世間を生きている人びとが、ひとたび、世間の秩序だった世界の中に自分が容れられないと気づくや否や狂気に囚われた戦士のように衝動的な暴力沙汰を起こす。まるで、それまでの自己が偽りで、今剥き出しにされたのが、本来のあるべき自己なのだとでもいうように。淡々と事態を叙する記述がかえって、その世界の酷薄さを物語るようで、居ても立ってもいられないような強烈な読後感をもたらす。主人公の内にあって常に抑圧を義務づけられた欲望のようなものはもしかしたら誰の裡にもあって、抑圧の激しさゆえに奇妙に捻じ曲げられ歪みきった怪物の姿をしているのではないか。読後、そんな恐怖感に襲われること必至。とんだクリスマス・プレゼントである。

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2015年12月21日

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ネタバレ

目次
・パン屋の主人
・ザイボルド
・カールの降誕祭(クリスマス)

短編が3作。
ぜんぶ合わせても100ページにも満たない。

そして犯罪が3つ。
そのうち殺人が2件。
しかし悪意をもった犯罪者はいない。

悪意をもたずに起こす殺人。
それは、犯人にとってはやむを得ない行動であるのだが、第三者からすると、行為に手を染めてしまうその一線が、壁の薄さがうすら寒い。

もう一人の犯罪者は…彼の犯した罪は、本当に社会悪だっただろうか?
しかし信念を持って起こした行動を、彼がずっと守ってきた法律が犯罪と断じた時、彼の中の何かが壊れてしまった。
彼の充実した人生は、一体どちらにあったのか?

短い小説ばかりだけれど、読んだ後に残されたものはとても重い。

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2017年08月04日

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3つの短編集です。やたらという簡潔で淡々とした文章ですが、内容は衝撃的です。主人公は、秩序とかルールとか常識とかの中では安定して生きているのですが、その枠組みがなくなった途端に壊れてしまいます。なんとなくドイツ人は日本人と似ている気がします。

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2016年12月22日

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薄氷を踏むような危うさ、一度踏んでしまえば、繰り返される麻薬のような体験。日本にも興味があるらしいシーラッハの仕掛も効果的です。

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2016年02月13日

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 犯罪、罪悪のような、淡々としてそれでいて怪しさをはらむ数式のような短編集。正直、シーラッハはすごく好きなんだけど前作「禁忌」が個人的にイマイチだったので不安だったが、これはヒット。
 これぞシーラッハ節、というような芸術や文化たる整然さと人の業たるカオスさが混ざり合ってなんとも言えず不気味な雰囲気が全編にあふれていた。まさにブラッククリスマス。満足満足。…だけど、やっぱり最初に読んだ「エチオピアの男」を越える傑作短編は、まだない。
 あれを越える話をこれからも求め続けるのは、シーラッハにハマった読者の業だろうか。来年再来年と、引き続きそれを期待しながら、また訳者の素晴らしくカオスを落とし込んだ日本語にも期待しながら、ゆっくりと過ごしたい。

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2015年11月29日

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初シーラッハです。殺人犯たちの殺人にたどり着くまでのエピソードやその背景が淡々と描かれています。まるで、モノクロの短編映画を見るように、自然と映像が浮かび上がってきました。挿絵もすばらしい。物語を盛り上げる重要な要素になっています。

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2020年05月06日

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短編集。犯罪小説。ミステリ。サスペンス。
ジャンル分けが難しい。精神崩壊小説とでも言いたい。
『犯罪』でも非常に特徴的だった、極めてシンプルな文章が心地よい。
奇妙な絵も含めて、読んでいる人の精神にまで影響を与えるかもしれない作品。

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2016年12月24日

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ネタバレ

三編の短編集。「パン屋の主人」が一番好き。黒い森のチェリーケーキが食べたくなる。「カールの降誕祭」は、母親の言葉が心に抜けない棘のようにずっと刺さってたんだろうと思うと切ないです。

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2016年11月10日

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シーラッハ作品は、「犯罪」しか読んでいなかったので、本作が2作目になります。

が。

大分前に読んだから、詳細覚えてません←

この本を読んでる時に浦沢直樹のMONSTERに出てきた絵本を思い出した、ってことを思い出しました←←

クリスマスには殺人事件が増えるっていうフレーズ、クリスティ作品に無かったっけか。

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2016年03月24日

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シーラッハらしい危うさに満ちた短編3作。
その怖さを感じるためには自分の想像力も必要。ただ他の作品を読んでいるとパターンが読めてしまうのが残念ではある。

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2016年03月11日

Posted by ブクログ

クリスマスプレゼントにちょうどいい短編3つを収録した本。相変わらずシーラッハは読みやすく、この本は1時間もかからない。
筆者の犯罪者への眼差しが温かく、悲惨な事件でも読後が暗くないところが好きなのだけど、同じパターンが続くのでそろそろ飽きてくるかも。
ちょっとした刺激、クリスマスならではの人の温かさ(温かくあろうとする)、社会を少し批判的に振り返る、といった小品。

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2016年08月25日

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ネタバレ

シーラッハ、新刊が出るとつい読んでしまう。
今回は薄くてすぐ読めた。
元弁護士だけあって実話を元にした話しが興味深い。

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2015年12月23日

Posted by ブクログ

全編93頁だが、うち10頁は訳者あとがき。

相変わらずの無駄なし筆致。でも短けりゃいいってもんじゃない。短すぎてブラックさに欠ける。短すぎてフツーのお話でしかない。行間から罪とか狂気とかを読み取るのがこの作者の醍醐味なのに、変な挿絵と余白の多さで世界に入り込めなかった。

絵本みたいな本にこのお値段とは。創元社さん、挑戦的だわー。

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2015年11月21日

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