【感想・ネタバレ】ある晴れたXデイにのレビュー

あらすじ

非行の果てに死んだはずの養子に怯え、戸締まりを厳重にする妻。夫との会話から見えてくる真実とは……(「雪解け」)。知らぬ間に手脚に痣や傷が増えていく会社員の女性。親指の付け根を切ってしまっても気づかず、すねを拳骨で打ってもまったく痛みを感じない。自己観察を続ける彼女の生活は、どんどん異様になっていき……(「火中の足」)。広告塔に大きな写真が貼られ、新聞でも連日報道された、行方不明の少年を探すことに取り憑かれた女性は、その少年を見つけたのだが……(「幸せでいっぱい」)。町が消え、家も、学校も、図書館も、なにもかもがなくなる。みんないなくなり、あとは地を這う人間の残骸がいるだけ。――世界が滅亡するXデイが気がかりで、ある母親はその日に起こるはずのことについて詳細な手記を執筆する……(「ある晴れたXデイに」)。日常に忍びこむ幻想。悲劇と幸福が結びついた人生観。歪で奇妙な家族たち。戦後ドイツを代表する女性作家による、『その昔、N市では』に続く全15作の傑作短編集!/【目次】雪解け/ポップとミンゲル/太った子/火中の足/財産目録/幸せでいっぱい/作家/脱走兵/いつかあるとき/地滑り/トロワ・サパンへの執着/チューリップ男/ある晴れたXデイに/結婚式の客/旅立ち/訳者あとがき

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ドイツの女性作家、カシュニッツの第二短編集。

一作目は幻想、不条理がメインの短編が多かったが、今作は主人公たちの異常なほど不安になる気持ち、執着する気持ちが軸となる作品が目立つ。
死んだ養子が戻ってくるかと不安に怯える「雪解け」、行方不明の男の子を見つけることに執心する「幸せでいっぱい」、滅亡する世界を減少し異常なほど怯える「ある晴れたXデイに」。

わかりやすいホラーは少ない作家。でも、どの作品も時折、読んでいて息苦しくなる。一気に読むというより、少しずつ、堪能する短編集だと思う。良作。

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2024年12月30日

Posted by ブクログ

日常という薄氷がひび割れ、暗い水に沈んでいくような、人間心理の歪さ、奇妙さを描く短編集。「ティンパニの一撃」により様相が一変する様や、不条理さ、語りの上手さなどはサキやビアスを思わせるところもあるが、カシュニッツは登場人物達の歪みや孤独を自己のものとして内面化しきって書いているような印象を受けた。文章自体は抑制されたものだけれど、共感のまなざしを感じる。短編としての完成度の高さも素晴らしかったけど、そこがとても好ましかった。そういう意味では、作品のタイプは違うけれども同時代人のエリザベス・ボウエンも少し思い出す。どの作品もそれぞれよかったけど、特に好きなのは「雪解け」、「脱走兵」、「いつかあるとき」。

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2025年05月09日

Posted by ブクログ

一作目から強く引き付けられた、ドイツ女流作家カシュニッツ、2作目。
ナチス政権下にありながら、出国せず、ドイツ内で内的亡命という執筆活動を継続した(ちょっと、想像がつかない、凄いもの!)

男爵の家系に生まれ、夫が学者、きわめてエリートの資質を持った気高い女性かと思われる。
訳者酒寄氏の言葉によると、この2冊で、彼女の短編作品の3割邦訳が達成と。
今後も追い続けられるのは愉しみ。

作風としては「超常現象・心理劇・シュールな筋立て」
夫の影響によるものではなく、恐らく、彼女が生来持っている世界観・人生観であろうと語る酒寄氏。

薄い一冊だが、ㇲ~っとはとっても読めない。1行1行、吸い付くように、読み進めた。
15の短編はいずれも、日常の一コマを切り取っているような・・だが微かに感じる歪みはあとからじんわり湧き上がってくる・・そしてガーンという一撃すら覚えさせる作品も。。。

読みながらとったメモが久しぶりにかなりの枚数となったが。。
①雪解け:2人の思惑は妄想?それとも…誰も二人を殺しには来やしない。メンタルロスの失望が痛い。
②太った子:人間の笑顔の底に潜むダークな表情がむき出しになる・・怖さ
③火中の足:第3者から見ると今日の一言に尽きそうな女性の日記の呟き
④幸せでいっぱい:丁寧で切々とかたる主人公の口調が怖い
⑤作家:筆が折れそうになった作家夫婦の互いの心をなめあう様な作品
⑥脱走兵:戦の渦中から脱走した夫婦の愛・・絶望の中から先を見ようとする新たな決意が見える
⑦地滑り:生きることをやめようか‥と思う人々が振り返る来し方、そして行く末は。。
⑧ある晴れたⅩデイに:内的亡命をした彼女ならではの作品。滅亡へ進む祖国を見据えた強い視線
⑨心変わり:
この秋、ネットフリックスを続けてみた月があった・・Black mirror~

取りつかれたように、毎日、一話ずつ、5シーズン。
世界中で評判を呼んだというだけあって。。【先を急いでいた男が物語に耳を傾けたせいで、招かれていた結婚式に遅れ 心変わりをしてしまう】を見た時と同じ印象を受けた。
カシュニッツの作品全体もBlack mirrorと感覚的に共通するものがあるな‥いやカシュニッツの作品のインスピレーションを受けて制作したのではといえるのだろうかな

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2024年12月17日

Posted by ブクログ

歪な家族、日常に忍び込む幻想…
「太った子」は嫌な気配のする女の子と接していくうち、ある事件に遭遇する話。どうなるのだろうと緊張しながら読みました。この作品が1番のお気に入りです。他も面白さと幻想を感じることができる短編集です。

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2024年07月02日

Posted by ブクログ

滅亡の日を憂いでいる彼女の日常に溢れる幸福と悲哀… カシュニッツ作品集第二弾 #ある晴れたXデイに

■きっと読みたくなるレビュー
ドイツ生まれで、戦後1940-60年代に小説や脚本を手掛けたカシュニッツの短編集です。ミステリーではありませんが、人間の深い部分を描いた作品集とのことで、気になっていた一冊です。

どの作品も何かしらの背景を抱えつつ、人間は家族関係を切り取って表現している。幻想的な世界観ではあるものの、心情描写は芯を突いた深い部分を感じることができる作品ばかり。いくつかお気に入りの作品をご紹介します。

●雪解け
夫婦の物語。夫が自宅に帰ると、妻は外を警戒している様子で…

人生を共に歩んできた二人から漏れ出す会話。贖罪よりも失望の念が痛々しい。短いお話なのに永遠にも感じてしまうのは何故だろうか。

●太った子
自宅で子供たちに本を貸していた作家の物語、ある日太った女の子が本を借りに来て…

人間の静かな醜さが光る作品。読んでるといやな気分になるんだけど、自分自身も変わらないと気づかされる。作品全体から感じられる得体のしれない怖さが好き。

●火中の足
痛みや感情が人とは違った女性の物語、日記形式で綴られる。

本作もやたら現実的で辛い気持ちになる。周りの人の優しさが徐々に痛くなってきて、読み終わると虚しさが広がる。彼女には幸せになって欲しい。

●幸せでいっぱい
行方不明になっている子を探す女性の物語。夫からは既に亡くなっていると諭されるが。

人を思いやる幸せな話、そして丁寧な語り口でひたむきな主人公。でも、怖い。

●作家
書けなくなった作家とその妻の物語、彼は転職しようとするが…

人生を共に生きている夫婦という関係性を温かく描いていて幸せに包まれる。色んな苦労があるけど、お互いに支え合って暮らしているのが伝わってきました。

●脱走兵
戦争で逃げ出した兵隊とその妻の物語。絶望と旅立ちの狭間を描いた作品で、愛がヒシヒシと感じられる。

●地滑り
街を巡りながら住むか決めかねていた夫婦の物語。

何かをきっかけに、これまでの夫婦関係や人生を振り返ることってあるよなぁ。人生が終わりに近づいたとき、こんな風に思う日がくるのかしら。

●ある晴れたXデイに
主婦の手記、滅亡の日を憂いでいる彼女の日常を描いた作品。

疫病や戦争を憂う気持ちが伝わってくる。たとえどんな日であっても、いつもの一日と同じく過ごすことが家族にとって一番の幸せですよね。

■ぜっさん推しポイント
人生を長く生きていると、辛いことや悲しいこともある。それでも人は生きていかねばならない。そのためには、愛する人と手を取り合いながら、希望を見つけていくのではないでしょうか。

そんな人々の素直さと静かさを描いたバラエティに富んだ作品群。素敵な時間をいただけたことに感謝したいです。

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2024年05月30日

Posted by ブクログ

前作の方が全体的に好みではあったけど、それでも好きだなって感じの作品もいくつか。

3冊目が出ても買うと思う。

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2025年05月20日

Posted by ブクログ

以前読んだ『その昔、N市では』のほうが好みの話が多かったかもしれない。

好きだったのは、
「太った子」
「火中の足」
「幸せでいっぱい」
かな。

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2024年07月15日

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