酒寄進一のレビュー一覧
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日々様々な雑念に惑わされ、本も自分が読みたいものから、世の中で話題になっているもの、仕事で読んだ方が良いもの、と常時10冊以上読むべき本を抱えている。で、「これは本当に読んで良かった」と思えるものは10冊に1冊くらいである。
で、この『デーミアン』を読んで、古典的名作というものはハズレない、読む価値が必ずある、ということを改めて知った。
若い頃『車輪の下』は読んでいたのだが、当時から読みたい本、読むべき本を抱えていて、他の作品も読んでみたいと思ってから幾星霜。
これも若い時に読みたかったと思ったが、今読んでも十分刺激的で、考えさせられるものだった。
10代の普遍的な悩み苦しみが描かれているだけでなく、精神的導き手であるデーミアンをいつも心に置きながら、素直に認められず、なかなか実際には会えなかったり、会わずにいたりするのは、恋のようでもあり、物語として大変惹かれる。
読みながら、「これ、萩尾望都が漫画にしたらピッタリだなあ」と何度も思ったが、あとがきで、なんと訳者の酒寄さんも同じ匂いを嗅ぎとっていたようで(いや、酒寄さんが嗅ぎとっていたからこそ共鳴したのかもしれない)感激した。
先日コルドンの『ベルリン1919 』を読んだので、戦争へ向かうシーンは、ブルジョワのおぼっちゃまだからこんな風に感じたのかな(庶民は暮らしがかかっており、こんなに観念的に考えないだろうな、と。)と思ったが、解説で、第一次世界大戦が化学兵器などを使ってえげつなくなる前で意識的に終わらせていると書かれており、納得した。
この作品についての分析などは研究者がたくさん書いているからおいとくけど、まあとにかく、名言の数々にうっとり。詩人でもあったヘッセの言葉づかいの巧みさと酒寄さんの名訳が一体化した宝石みたいなもので、これを味わえるだけでも至福のひととき。
若者とかつて若者であった人は、ぜひ読んで欲しい。 -
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昨年にデビュー作の「オーブランの少女」、そして「戦場のコックたち」を読んだことで、お気に入り作家となった深緑野分(ふかみどりのわき)さん。
Twitterで、ご本人のアカウントをフォローさせていただいていますが、少し前からこの本を激推しされていて、オビの推薦文も書いておられるということで、発売日に書店を3軒回って見つけ、迷いなく手にとりました。
岩波少年文庫を買うのって何年ぶりかなぁ。
「ニールスのふしぎな旅」、「エーミールと探偵たち」、「名探偵カッレくん」、「レムラインさんの超能力」、「シャーロック・ホウムズ(←この表記がレアねww)」シリーズなどなどなど、小中学生の頃はよく読みましたが、50になろうとする年に買うとはいやはや。
さて前置きが長くなりましたが、本作はベルリンの貧しい通りに住むヘレという少年とその家族ゲープハルト一家を中心に、1919年、1933年、1945年といずれもドイツにとっての激動の年代を描く三部作の物語の第一部です。
1918年の11月革命による皇帝の退位とドイツ帝国の終焉〜ワイマール共和国の樹立、その後のスパルタカス団の蜂起と鎮圧の様子などが、生々しく臨場感たっぷりに描かれます。
それらと現在の僕自身を比べてみて、贅沢こそできないものの日々の食べる物には困らない生活、あるいは戦争とは無縁の生活のありがたさをヒシヒシと感じながら読み進めました。
少年向けというよりは、もう少し上のヤングアダルト世代向けに書かれているようですが、読みやすくかつ読み応えがあり、あらゆる世代の心にささる物語です。
革命が起こってから一区切りの終焉までという意味では、描かれる年代は異なるものの「小説フランス革命」を彷彿とさせられ、また第一次世界大戦と社会主義革命を目指す有志たちという観点からは、舞台となる国は違えど「チボー家の人々」を思い起こさせられました。
ここ1〜2年で読んだ別々の本のストーリーが、パズルのピースのようにカチカチとハマっていく感覚を味わえました。これも読書の醍醐味ですね。
第二部の1933が4月に、第三部の1945が6月に出るそうで、買い揃えることが確定しました。 -
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昨年にデビュー作の「オーブランの少女」、そして「戦場のコックたち」を読んだことで、お気に入り作家となった深緑野分(ふかみどりのわき)さん。
Twitterで、ご本人のアカウントをフォローさせていただいていますが、少し前からこの本を激推しされていて、オビの推薦文も書いておられるということで、発売日に書店を3軒回って見つけ、迷いなく手にとりました。
岩波少年文庫を買うのって何年ぶりかなぁ。
「ニールスのふしぎな旅」、「エーミールと探偵たち」、「名探偵カッレくん」、「レムラインさんの超能力」、「シャーロック・ホウムズ(←この表記がレアねww)」シリーズなどなどなど、小中学生の頃はよく読みましたが、50になろうとする年に買うとはいやはや。
さて前置きが長くなりましたが、本作はベルリンの貧しい通りに住むヘレという少年とその家族ゲープハルト一家を中心に、1919年、1933年、1945年といずれもドイツにとっての激動の年代を描く三部作の物語の第一部です。
1918年の11月革命による皇帝の退位とドイツ帝国の終焉〜ワイマール共和国の樹立、その後のスパルタカス団の蜂起と鎮圧の様子などが、生々しく臨場感たっぷりに描かれます。
それらと現在の僕自身を比べてみて、贅沢こそできないものの日々の食べる物には困らない生活、あるいは戦争とは無縁の生活のありがたさをヒシヒシと感じながら読み進めました。
少年向けというよりは、もう少し上のヤングアダルト世代向けに書かれているようですが、読みやすくかつ読み応えがあり、あらゆる世代の心にささる物語です。
革命が起こってから一区切りの終焉までという意味では、描かれる年代は異なるものの「小説フランス革命」を彷彿とさせられ、また第一次世界大戦と社会主義革命を目指す有志たちという観点からは、舞台となる国は違えど「チボー家の人々」を思い起こさせられました。
ここ1〜2年で読んだ別々の本のストーリーが、パズルのピースのようにカチカチとハマっていく感覚を味わえました。これも読書の醍醐味ですね。
第二部の1933が4月に、第三部の1945が6月に出るそうで、買い揃えることが確定しました。 -
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ネタバレ主人公・ライネンは、弁護士になってやっと42日。
初めて殺人犯の国選弁護人になったが、容疑者、いや、犯人は犯行を認めるものの、動機を明かさない。
犯行に至るまでのどんな背景が事件にはあったのか、そして、なぜ犯人は動機を明かそうとしないのか。
何を書いてもネタバレにかすってしまうので、感想を書くのが難しいなあ。
これから読もうと思う人は、この先を読まないでね。
いまだにドイツに影を落とし続けているのが、ナチス時代に行った数々の非道。
犯人であるコリーニがなぜ殺人を犯さなければならなかったのか。
それもまた、現在に残るナチスの影のせい。
ナチの生き残りが作った戦後ドイツの法律が、ナチの犯罪をなかったことにする。
余談だが、この小説の出版がきっかけで、ドイツはナチの過去再検討委員会を立ち上げたという。
小説が政治を動かしたのだ。
閑話休題。
犯人は結局最後まで多くを語ることはなかった。
作者としては、その存在が、訴えたいことのすべてだったのかもしれない。
そもそもなぜイタリア人の犯人は、ドイツに暮らし続けたのか。
ずっと癒えない傷を忘れないためにそうしていたのか。
犯人の心のうちにあったものは、恨みだったのだろうか、それとも今は亡い人たちを慕い続ける思いだったのだろうか。
生涯独身を貫いた犯人は、愛する人を持つことはなかったのだろうか。
自分自身を生きることはできたのだろうか。
多くの疑問が頭の中をぐるぐる回るけれど、簡単に答えを出すことではないとも思う。
「わたし、すべてを背負っていかないといけないのかしら?」
「きみはきみにふさわしく生きればいいのさ」
それほど長い作品ではないのに、ずっしりと重い読後感が残された。 -
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ドイツのミステリ、刑事オリヴァー&ピアのシリーズ、6作目の刊行。
主席警部のオリヴァーとピアは恋人ではなく同僚で、仕事で認めあっている関係です。
オリヴァーは離婚後やっと落ち着き、幼い末娘に愛を注ぐ日々。
前作「穢れた風」まではどうなることかと思わされたけど、まずはよかった、よかった。
川で少女の変死体が発見され、不審な事実が判明。
一方、人気女性キャスターが拉致されます。
さらに、事件が‥
少女虐待を暗示する描写が挿入され、誰のことなのか、過去のことなのか、救出が間に合うのか‥はらはら。
絡み合う事件がしだいに大きな姿を見せ始めるのです。
登場人物が多い中で、すべてを失った男がひっそりと生きながら仲間を助けたりしているのが印象的でした。
ピアは恋人とは安定した関係ですが~
年上の彼には大きくなった娘がいて、孫までいる。
その孫が勝手に送り込まれてきて、ピアは慣れない世話をするはめに。
4歳児リリーに振り回され、太ってると言われたり、「じいじの相手ならばあば?」と言われたり。
これが次第に馴染んで来るのが微笑ましい。
ついには母性愛が高まっていくのです。
ピアの出番が多めで、お金持ちの友人の家に行ったり、いつもより豪華な面も。
ドレスアップしている時に現場に駆けつけると、同僚に感心されたり。
ピアは金髪でかなりの美人なのだが、やや豊満な体型らしい?
農場に住んでいるから働きやすい服装で、仕事のときも実用本位のスタイルなんでしょうね。
第一作では30代後半でしたが、6年経って40代なかば近い?
子供もいないのに、ばあばはないよねー。
最後はドイツのお母さんだね、と呼ばれます(笑)
女性たちが大活躍、充実した読み応えでした☆ -
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台本形式(戯曲)の書き方なので、芝居(舞台)をあまり見慣れていない人にはとっつきにくいかもしれませんが、法廷劇や戯曲が好きな人なら絶対に楽しめる作品だと思います。
ドイツでハイジャック事件が発生し、乗客164名を乗せた飛行機が満員のサッカースタジアムへ向かう。7万人の観衆を救うため、空軍少佐は命令に(あるいは憲法に)背いて旅客機を撃墜、164人を殺害した罪で起訴された。彼は大量殺人者か、それとも7万人を救った英雄か。
検察側、弁護側双方の主張はどちらも説得力がありましたし、(おそらく)観衆の評決によって被告人が無罪/有罪となる2パターンのエンディングが用意されているのも魅力的でした。
自分でも評決を入れる気持ちになって考えながら読むことができ、頭を使いましたが楽しい時間を過ごすことができました。
検察官の主張にある、「みなさんを縛るのは、法律となったものだけです。現実に存在する法律は、憲法に合致し、込み入った民主的な手続きを経て、わたしたちの議会によって公布されます。ですからモラルに反して間違っているように思えても、法律は有効なのです。……「モラルとしては正しい」ことでも、その意見が憲法を超えることは決して許されないことです。」という論旨には法治国家としてのあるべき姿を感じましたし、弁護人の主張する「生命を他の生命と天秤にかけることはできないというこの基本的な考え方は、わたしには疑わしいものであり、健全な人間の考えと矛盾するように思います。それに、より小さな悪を優先させることは正しいとする判決が過去に何度も出されています」という英米法の判例も、実生活に即した判断であるように思います。
それぞれのケースに応じて判断する(だからこそ判決に「揺れ」が生じて議論の的になるわけですが)こと、またその判断が適切であったかどうか検証して次に活かすことこそが重要なのだということを改めて考えさせられました。 -
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ネタバレすごく読みやすくてありがたかった。
それでいて格調もある。
酒寄氏も解説に記されているとおり、ユング全開といってもいいくらいの作品であることにあらためて驚いた。(それなのにユングに言及されていないという酒寄氏の指摘。おもしろい。)
ベアトリーチェは見るからにアニマだし、クローマーはたしかに「影」。エヴァ夫人は太母だけれどもアニマ的なところもあるのかな。デーミアンはすべてを包摂した「自己」だと解説には記されていてなるほどと。そうするとラストでシンクレアは自己の統合を果たしたということになるんだろうか。
西欧の精神史をたどるような内容でもあり、さまざまに読める奥深さを持っている。個人的には、冒頭のクローマーとのいざこざがしつこく描かれなくて好みだった。 -
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ちょっと前に民放テレビで映画「カメラを止めるな」が放送されたとき、冒頭に出演者が出てきて、予告をしていたんですが、「冒頭何分までは、よく分らないかもしれないけど、我慢してみれば、後半は必ず面白くなります。」という趣旨の発言をしていたのが気になりました。カメラではなく、視るのを止めるな、という訴え。
確かに前半に伏線が一杯張ってあって、分かりにくかったり不自然だったりして、それが後半で回収されていくのが面白さの映画なので、後半まで視てもらわないと、な映画ではありますが、しかし作り手自ら「我慢」って、という違和感。そう、youtubeをはじめとした動画を見慣れた世代は、だらだら退屈な部分はすっ飛ばして、ハイライト、オチだけ見るというのが普通の感覚で、それができないテレビのリアルタイム放送はまさに、「我慢」でしかないんだなと改めて思いました。
さて、本書、巻頭の表に載ってるだけで、40人近くの登場人物が出てくる上に、次々と場面転換してく複雑な構成。群集劇というか、ホテルグランド方式というか、全ての伏線がある一つのイベント会場に集約していくこの気持ちよさは先の動画視聴スタイルでは決して味わえません。たまにはじっくり時間をかけて、「我慢して」、そういう体験をしてみるのも良いのでは。 -
Posted by ブクログ
よく考えようシリーズ。飛行機がハイジャックされ、サッカースタジアムに突っ込もうと目論むテロが起こる。7万人の観客の命を救うために、160人の乗客を乗せたこの飛行機を撃墜した空軍少佐。この小説はこの事件をめぐり逮捕された空軍少佐の裁判を演劇風に表現したもので、生存権とは、法律とは、市民を守ることとは、命の数を天秤にかけることの是非などの主張が対立する。いわゆるトロッコ問題を、テロを絡ませてとてもリアルに再現して問いかけている。私たちがもっとも苦手とする正解のない、果てしない議論であり、太平洋戦争時代から、シン・ゴジラが来襲した時にも首脳陣が見せた結論先送り・事なかれ主義的なことでは済まされない、論理的に考え方針を出す訓練になる。
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ドイツミステリーの女王による、オリヴァー&ピア刑事のシリーズももう6作目。川で少女の遺体が見つかった。凄まじい暴行の跡があった。身元がなかなか分からない。肺にあったのは塩素で消毒された水なので、川で溺死したのではない・・・人気ドキュメント番組のキャスター、ハンナ・ヘルツマンは、大きなネタを掴んだ。極秘裏に取材を進めていくと、とんでもないことが分かってきた。しかし・・・ピアの友人エマは、シングルマザーとその子供のための協会「太陽の子協会」の創始者の息子と結婚し、義父、義母と共に暮らしている。しかし、夫は家庭を顧みず・・・トレーラーハウスで暮らす貧しい男は、裏で弁護士のような仕事をしている・・・それらが並行して描かれるが、後で一点に集約されていく。
うーむ。さすがネレ・ノイハウス。面白過ぎる。(どうでもいいことだけれど、ネレって、礼という字に似てるな)
おぞましい事件の裏にあるおぞましい真実。作者のあとがきによると、現実の世界でもあることらしい。その話がメインにあるのだけれど、サイドストーリーも素晴らしい。感じの悪い刑事だったフランク(どの話が忘れた)がなぜそうなったのか、本作で分かる。
個人的には、偽弁護士のようなことをする男と、ロードキングス(バイク乗りたちの犯罪集団)の元幹部の話が非常に興味深かった。