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Posted by ブクログ
台本形式(戯曲)の書き方なので、芝居(舞台)をあまり見慣れていない人にはとっつきにくいかもしれませんが、法廷劇や戯曲が好きな人なら絶対に楽しめる作品だと思います。
ドイツでハイジャック事件が発生し、乗客164名を乗せた飛行機が満員のサッカースタジアムへ向かう。7万人の観衆を救うため、空軍少佐は命令に(あるいは憲法に)背いて旅客機を撃墜、164人を殺害した罪で起訴された。彼は大量殺人者か、それとも7万人を救った英雄か。
検察側、弁護側双方の主張はどちらも説得力がありましたし、(おそらく)観衆の評決によって被告人が無罪/有罪となる2パターンのエンディングが用意されているのも魅力的でした。
自分でも評決を入れる気持ちになって考えながら読むことができ、頭を使いましたが楽しい時間を過ごすことができました。
検察官の主張にある、「みなさんを縛るのは、法律となったものだけです。現実に存在する法律は、憲法に合致し、込み入った民主的な手続きを経て、わたしたちの議会によって公布されます。ですからモラルに反して間違っているように思えても、法律は有効なのです。……「モラルとしては正しい」ことでも、その意見が憲法を超えることは決して許されないことです。」という論旨には法治国家としてのあるべき姿を感じましたし、弁護人の主張する「生命を他の生命と天秤にかけることはできないというこの基本的な考え方は、わたしには疑わしいものであり、健全な人間の考えと矛盾するように思います。それに、より小さな悪を優先させることは正しいとする判決が過去に何度も出されています」という英米法の判例も、実生活に即した判断であるように思います。
それぞれのケースに応じて判断する(だからこそ判決に「揺れ」が生じて議論の的になるわけですが)こと、またその判断が適切であったかどうか検証して次に活かすことこそが重要なのだということを改めて考えさせられました。
Posted by ブクログ
よく考えようシリーズ。飛行機がハイジャックされ、サッカースタジアムに突っ込もうと目論むテロが起こる。7万人の観客の命を救うために、160人の乗客を乗せたこの飛行機を撃墜した空軍少佐。この小説はこの事件をめぐり逮捕された空軍少佐の裁判を演劇風に表現したもので、生存権とは、法律とは、市民を守ることとは、命の数を天秤にかけることの是非などの主張が対立する。いわゆるトロッコ問題を、テロを絡ませてとてもリアルに再現して問いかけている。私たちがもっとも苦手とする正解のない、果てしない議論であり、太平洋戦争時代から、シン・ゴジラが来襲した時にも首脳陣が見せた結論先送り・事なかれ主義的なことでは済まされない、論理的に考え方針を出す訓練になる。
Posted by ブクログ
"哲学的命題。マイケル・サンデルさんの「これからの「正義」の話をしよう」の最初に登場するジレンマを戯曲にした作品という印象を持った。
1人を殺すことで5人を救えるとしたら、その一人を殺すべきなのか?
本書では、テロリストにハイジャックされた航空機をミサイルで撃ち落としたパイロットが被告として法廷で裁かれる場面を描いている。
テロリストの意思通りことが運べば7万人で満員になったスタジアムに墜落させ多くの人の命を奪うことになった。
乗客約200人の命と7万人のスタジアムにいる人々の命が天秤にかけられるべきなのか?我々は法治国家に生きており、すべてを法律原則通りに行動することが正しいのか?
命令に従うべきである軍人は命令違反をしてまで起こした行動は、どのような解釈をするべきなのか?
様々な命題が絡み合うように思える。
年に1回は読み直し、思索をしたい。"
Posted by ブクログ
テロリストにハイジャックされた旅客機に乗った164人と、その飛行機が突っ込む先のサッカースタジアムにいる観客7万人−−。どちらかしか助けられない状況に、もし自分が陥ったら−−。空軍少佐は164人が乗った旅客機をミサイルで撃墜し、スタジアムの7万人の命を救った。そして少佐は逮捕され、裁判所で有罪か無罪かの評決を受ける。裁判ではさまざまな意見がかわされ、有罪を主張する検察側も無罪を主張する弁護側も、どちらの意見もまっとうであり理解できる。さて、評決は? 有罪でも無罪でも議論が沸き起こるだろう。結末はネタバレになるので書かないが、この裁判の模様を読むことで、本書は、各自がどのような態度をとるべきか考える良い教材となる。道徳の教材にぴったりではないだろうか。
Posted by ブクログ
ラジオで?誰かがシーラッハの話をされていて、読んでみた。
164人の乗客を乗せたルフトハンザ機がハイジャックされ、7万人の観客でいっぱいのサッカースタジアムへの墜落が目論まれる。知らせを受け緊急発進した空軍少佐が命令を無視して旅客機を撃墜。逮捕。裁判にかけられることになる。
この裁判の様子が描かれる法廷劇+フランスの雑誌『シャルリー・エブド』がM100サンスーシ・メディア賞を受けた際のシーラッハによるスピーチを収載。
有罪評決の結末と無罪評決の結末、両方が用意されていて読む人に考えさせるようになっている。
自分が裁判員になっていたら、パイロットだったら、報告を受けて指示を出す国防大臣だったら、とかまあ考えますな。
わたしは、検察官が検察側の証人にハイジャックの連絡を最初に受けてから旅客機の墜落までに52分間あったのだから、スタジアムに連絡して観客を避難させることができたのではないか?と質問したことが頭に残っている。
スタジアムが空になったとしても旅客機が墜落させられてしまえば164人は死んでしまうことには変わりがないのか?
私たちのモラルや良心は揺らぐものだから、憲法という「原則の集合体」があるのだ、という検察官の論告もよく分かる。
しかしそれだと「上品な法治国家はテロリストになんら手を出さない」と保証してしまうことになる、という弁護人の最終弁論は、わたしにはへ理屈にも感じられなくもない。
しかししかし。。。
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