酒寄進一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この本を通して読むのは初めてのことではありません。
大昔にふとしたきっかけで手に取って、私にとって最も大切なもののひとつになった本です。
文章そのものに漠然とした大きな時間が内包されていて、本を読んでいる間に時間が過ぎるという当たり前のようなことの中にそれ以上の時間、人生といっていいようなものを感じ、その荒波にひと息に流されるという貴重な経験をすることのできる一冊です。
私が個人的に尊敬していて、心から好きだと思っている人を彷彿とさせる節があり、最近ちょっと読むのを苦しく思っていましたが、昨日なんとなく手に取れるような気がして、また読み返してしまいました。
面白い本とか、考えさせられる本というより、この本を読んでいる時、読者をデミアンの庭に置かれているように感じさせる、もっと広がりのある何かだと思っています。
なんかまとまりのない感想になりましたけどとりあえずおすすめです!みんな読もう!ついでにちょっと迷子になろう! -
Posted by ブクログ
私は、自分を壊してまで自らの心を覗き込んで、向き合って、探究する必要はないと思っているけれど、たとえ苦くて辛くても自分と向き合う時間はかけがえのないものだなって、改めて思わせてくれた小説。
ぱっぱと読んじゃうのには勿体なくて、少しずつ少しずつ読んでいくのがいいかなって、個人的には思った。
自分の思想と合うか合わないかは別として、人が普段鍵をかけて奥底に沈めている部分に揺さぶりかけてくる、素晴らしい本だと思う。無視しようとしても、なんとなく無視できない、鮮烈な印象を残す本。ただ書くのが上手いとか、ストーリーが面白いとかっていうんじゃなくて、魂を削って、全部曝け出して、痛みを強さに変えている本。節々のエピソードや心情の描写もめちゃめちゃ心に刺さる。
特に子供時代のエピソードは、なんともいえないあの感覚が巧みに表現されていて、感嘆した。状況や経緯にリアリティがあって自然だし、シンクレアの心情も臨場感たっぷりに的確に表現されていた。
美しい夢のような第一の世界と、臭気を放つ第二の世界の話は、すっと腑に落ちた。二つの世界があってその間をフラフラする感覚。第二の世界について考えれば考えるほど無視できないことに気づく。でも、美しい夢を捨てて、輝く色彩の世界を放棄して、そのことに折り合いをつけるのに慣れてしまっても、世界の輝きを見て感動することはできる。この部分にもすごく共感した。全部灰色に見えてしまう時があっても、ちゃんと鮮やかに見える瞬間がまた訪れるって、心に刻んでおきたい。 -
Posted by ブクログ
オリヴァー&ピアのシリーズ、第7作。
ドイツのミステリです。
オリヴァーは主席警部で捜査のリーダー。ピアは恋人ではなく、仕事上のパートナーです。
散歩中の女性がライフルで遠くから射殺される事件が起きた。
ピアは夫と休暇旅行に行くはずだったが、人手不足の時期に難事件が起きたのを案じて取りやめる。
次々に射殺事件が起きるが、被害者は誰も恨まれるような人柄ではなかった。
捜査は難航するが…?
思いがけない事件の描写がシャープで、ミステリとして興味を引く内容。
オリヴァーは離婚後、幼い末娘を可愛がって、ようやくだいぶ落ち着いた暮らしに。ただし、今の交際相手とはどうも仲が深まらないので別れを考えている。
今回は捜査に州の事件分析官が参加するが、これがやや戯画的というか、口は達者だが的外れで、お荷物になってしまう。
ピアの妹キムが登場、実は司法精神医で、彼女の見立ての方が、事件分析官よりも役に立つという結果に。
ピアは家族と上手く行っていないという話だけは以前からあったが、詳しいことは出てこなかったと思います。
旧弊な両親らしいけれど、それなりに和解が成立した様子にほっとする心地。
事件の関係者でキャリアウーマンのカロリーネの描写が丁寧で、ん?この人、オリヴァーとお似合いじゃないかしら…(笑)
重いテーマを背景とした事件に切り込みつつ、人間的要素で読ませます。
現実味のある登場人物、捜査する面々も等身大で、人生が少しずつ変わっていきます。
そのあたりも読みどころ。楽しみなシリーズです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ_それでも人生はつづく。逃げ隠れしようとしても無理だ_
転換期三部作、ついに完結です。
小説を読んでいて、目を覆いたくなるような、というのもおかしな表現だけど、実際に、一瞬瞼を閉じてしまうことが幾度もあった。
ゲープハルト一家との付き合いも30年近くに及んできたので?感情移入しないでは読めない。
可愛かったあの子が、、、
えっ、あの人が?そんなばかな、、、
と序盤からさまざまな衝撃の連続。
敗戦の色濃くなってきた1945年のベルリン。米英軍からの爆撃は普通の市民を容赦なく巻き込みます。
終戦を迎えても、瓦礫の街で生き延びるのは容易なことではなく、ヒトラーを信じた自分を責め続ける人、自由になっても、収容所での地獄の日々から本当の意味で解放されない人、ソ連兵の襲撃に怯えて暮らす人…
簡単に平和は訪れません。
今作は、第1部で主人公だったヘレの娘エンネの目線で語られます。
前作『〜1933』にて反抗勢力として両親が投獄され、祖父母の元で育った彼女は12歳。父母との再会は果たされるのか。再会しても、その溝を埋めていけるのか…。
あとがきにもありますが、ドイツはこの後、ベルリンの壁の時代を迎えるのですよね。
ほんやり生きている自分について、考えすぎてぼんやりしています。
わたし、これからどうやって生きて行ったらいいんだろう。
ってほどに。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ_それでも人生はつづく。逃げ隠れしようとしても無理だ_
転換期三部作、ついに完結です。
小説を読んでいて、目を覆いたくなるような、というのもおかしな表現だけど、実際に、一瞬瞼を閉じてしまうことが幾度もあった。
ゲープハルト一家との付き合いも30年近くに及んできたので?感情移入しないでは読めない。
可愛かったあの子が、、、
えっ、あの人が?そんなばかな、、、
と序盤からさまざまな衝撃の連続。
敗戦の色濃くなってきた1945年のベルリン。米英軍からの爆撃は普通の市民を容赦なく巻き込みます。
終戦を迎えても、瓦礫の街で生き延びるのは容易なことではなく、ヒトラーを信じた自分を責め続ける人、自由になっても、収容所での地獄の日々から本当の意味で解放されない人、ソ連兵の襲撃に怯えて暮らす人…
簡単に平和は訪れません。
今作は、第1部で主人公だったヘレの娘エンネの目線で語られます。
前作『〜1933』にて反抗勢力として両親が投獄され、祖父母の元で育った彼女は12歳。父母との再会は果たされるのか。再会しても、その溝を埋めていけるのか…。
あとがきにもありますが、ドイツはこの後、ベルリンの壁の時代を迎えるのですよね。
ほんやり生きている自分について、考えすぎてぼんやりしています。
わたし、これからどうやって生きて行ったらいいんだろう。
ってほどに。 -
Posted by ブクログ
_どこから来たかは問題じゃない。大事なのはこれからどこへ行くかだ_
ベルリン3部作の第2部。
世界恐慌のあおりで飢えと貧困が蔓延する1932年のベルリン。
カツカツと聞こえてくるナチの足音は大きくなり、やがて傾倒して行く国民たち。それらに翻弄されての、家族や隣人との悲しい分断。
15歳の少年の目から見た激動の数ヶ月が描かれます。
主人公は、第1部 『ベルリン1919 赤い水兵』の主人公ヘレの弟で、赤ん坊だったハンス坊や。
苦悩しつつ踏み出した社会は、きつい労働に加え、非ナチという理由でナチの従業員から不当な暴力を受けたり、想像以上に過酷。
そんな毎日の中で出会う、同じ職場で働く少女、ミーツェ。
彼女もまた、複雑な生い立ちから決して軽くないものを背負っているのに、雪原に咲く花のように強く清らか。出会ってすぐからふたりは惹かれ合います。
次第にヒトラーの独裁を許していくドイツと、それに抗う人たち。
これでもか、これでもか、って次々に切迫した状況に陥るんだけど、ふたりのロマンスと見守る大人たちの優しい目が、読んでいる間ずっと希望の光でした。
生ぬるいハッピーエンドとは違うけど、人間の尊厳とか、我を信じぬくことの意味を深く考えさせられ、非常に勇気の湧く物語でした。
旗を掲げるシーンはこの目で見たかと錯覚するほど入り込んでしまい、目頭も胸も熱くなりました。
これが少年文庫だなんて。こんなの読める中学生がいるの?すごいな。 -
Posted by ブクログ
_どこから来たかは問題じゃない。大事なのはこれからどこへ行くかだ_
転換期三部部作の第二部。
世界恐慌のあおりで飢えと貧困が蔓延する1932年のベルリン。
カツカツと聞こえてくるナチの足音は大きくなり、やがて傾倒して行く国民たち。それらに翻弄されての、家族や隣人との悲しい分断。
15歳の少年の目から見た激動の数ヶ月が描かれます。
主人公は、第1部 『ベルリン1919 赤い水兵』の主人公ヘレの弟で、赤ん坊だったハンス坊や。
苦悩しつつ踏み出した社会は、きつい労働に加え、非ナチという理由でナチの従業員から不当な暴力を受けたり、想像以上に過酷。
そんな毎日の中で出会う、同じ職場で働く少女、ミーツェ。
彼女もまた、複雑な生い立ちから決して軽くないものを背負っているのに、雪原に咲く花のように強く清らか。出会ってすぐからふたりは惹かれ合います。
次第にヒトラーの独裁を許していくドイツと、それに抗う人たち。
これでもか、これでもか、って次々に切迫した状況に陥るんだけど、ふたりのロマンスと見守る大人たちの優しい目が、読んでいる間ずっと希望の光でした。
生ぬるいハッピーエンドとは違うけど、人間の尊厳とか、我を信じぬくことの意味を深く考えさせられ、非常に勇気の湧く物語でした。
旗を掲げるシーンはこの目で見たかと錯覚するほど入り込んでしまい、目頭も胸も熱くなりました。
これが少年文庫だなんて。こんなの読める中学生がいるの?すごいな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ冤罪で11年の刑期を終えたトビアスは、出所して故郷に帰って来る。
それに合わせたかのように再び不穏な空気に襲われるアルテンハイン。
暴力事件が起こり、再び少女が行方をくらます。
これ、ものすごく怖い話です。
例えばテレビの「逃走中」で自分一人が残った時に、何十人ものハンターが表情一つ変えることなく自分を追いつめてきたら。
それも、捕まえて終わりではなく、命を取るまでゲームが終わらないとしたら。
ところが自体はそれほど単純ではなくて、真実が少しずつ明かされるたびに二転三転と状況が変わって行く。
トビアスは無罪。
誰が、何のために、彼に罪をかぶせて、なおかつ今もなお暴力で支配しようとしているのか。
加害者が自警団を作り被害者を襲う。
その理由たるや、他人の痛みには知らん顔をしたまま自分の痛みだけを主張するおぞましさ。
だけど、文章は読みやすくて、読後感もそれほど悪くはない。
警察は警察でいろいろ問題を抱えているのだけど、例えば妻の浮気とか、自宅を強制退去させられる刑事の他に、届けを出さずにアルバイトする刑事や(届けが認められたらアルバイト可というのがびっくり)、知人に頼まれて証拠書類を廃棄する刑事(日本にもいるかも)など、日本の公務員に比べて職務専念の度合いの低さに驚き。
次は自費出版されたデビュー作に挑戦だ! -
Posted by ブクログ
ネタバレ何ヶ所、号泣したかなあ・・・
1919年、ドイツ。戦争を終わらせるため、水兵が蜂起したことをきっかけに起こったドイツ革命。それらに命をかけたベルリン市民の闘いを軸に、貧しくも誇り高い主人公ヘレの一家と隣人たちが、世界を、生活を、未来を良くしようと挑む命がけの日々。
大きな時代のうねりをしっかりと描きながら、登場人物それぞれの心の動き、その背景にあるものを蔑ろにしない。とりわけ、主人公ヘレ目線での、家族や友人そして社会に対する心情の描写が素晴らしく、何度も息が止まりそうに切なくなった。
革命がなくても、戦争が終わっても、食うや食わずの苦しい生活の中で、家族や隣人たちと心を寄せ合い、ユーモアを忘れずに暮らすヘレたちの姿に励まされ、その深い人間愛に胸を射抜かれまくりでした。
一ヶ所には到底しぼれないのだけれど・・・
そんな毎日の中でのクリスマス。大切な人へのせいいっぱいの気持ちを贈り合う場面では、彼らの生活や激動の数週間を思うとこみ上げるものが。ラスト近くの送別の場面も、もう泣くに任せるしかない。という状態でした。
こんなすばらしい物語の感想なんてまとめられない!そして、これまで知らないで生きてきたわたしのばか!今読むことができて本当に良かった・・・ -
Posted by ブクログ
ネタバレ何ヶ所、号泣したかなあ・・・
1919年、ドイツ。戦争を終わらせるため、水兵が蜂起したことをきっかけに起こったドイツ革命。それらに命をかけたベルリン市民の闘いを軸に、貧しくも誇り高い主人公ヘレの一家と隣人たちが、世界を、生活を、未来を良くしようと挑む命がけの日々。
大きな時代のうねりをしっかりと描きながら、登場人物それぞれの心の動き、その背景にあるものを蔑ろにしない。とりわけ、主人公ヘレ目線での、家族や友人そして社会に対する心情の描写が素晴らしく、何度も息が止まりそうに切なくなった。
革命がなくても、戦争が終わっても、食うや食わずの苦しい生活の中で、家族や隣人たちと心を寄せ合い、ユーモアを忘れずに暮らすヘレたちの姿に励まされ、その深い人間愛に胸を射抜かれまくりでした。
一ヶ所には到底しぼれないのだけれど・・・
そんな毎日の中でのクリスマス。大切な人へのせいいっぱいの気持ちを贈り合う場面では、彼らの生活や激動の数週間を思うとこみ上げるものが。ラスト近くの送別の場面も、もう泣くに任せるしかない。という状態でした。
こんなすばらしい物語の感想なんてまとめられない!そして、これまで知らないで生きてきたわたしのばか!今読むことができて本当に良かった・・・ -
Posted by ブクログ
ネタバレオリヴァ―とピアシリーズの第8作。
大変良かった。
オリヴァーのルーツとも言える事件が解決したこともそうだが、
長年もやもや、いや、いらいらしていたオリヴァーの私生活が安定を得られそうなことが、とても良かった。
とはいえ、登場人物が多く、かつその関係が複雑で、
さらには過去と現在を把握していないと話について行けないので、
かなり読み進めるのが難しかったことは否めない。
しかも、
知識豊富で、証言を引き出すための嘘も上手い新人が入ってきたことや、
(彼のあだ名、アインシュタインはそういうタイプの天才ではないと思うが)
オリヴァーが義母の遺言で屋敷を相続することになったこと、
今の恋人に心の内を打ち明けられたこと、
長期休暇中の後任にピアが決まったことで、
これが最後の作品になるのではないかという心配も、
読む進めるのを難しくしていた。
オリヴァーの人生そのものとあって、
あちらこちらに心ゆさぶられる場面があったが、
事件解決後にけがで入院したオリヴァーに、
ピアがかわいい贈り物をする場面には心を打たれた。
それと、あとがきで書かれていた訳者の「聖地巡礼」は本当に羨ましい。
この事件の舞台の村、作者が暮らす村内の「聖地」を訪れ、
作者本人に朗読してもらえたとは。