酒寄進一のレビュー一覧

  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    国選弁護人を引き受けた事件の被害者は親友の祖父だった―。それだけでも十分ドラマ性があるのに、後半の思わぬ展開に、読み終わって呆然としてしまった。語り口も淡々としていてそんなに長い小説でもないのに、じわじわ迫ってくる筆致がすごい。この小説がドイツの政治を動かしてしまったということのもうなずける。
    そして小説で政治が動いてしまうドイツという国もすごい。そのことは日本でもよく問題になるけど、責任の取り方というかそれに対する責任の捉え方が、本当に全然違うんだよなぁ…

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    2019年10月26日
  • 悪しき狼

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    ドイツのミステリ、刑事オリヴァー&ピアのシリーズ、6作目の刊行。
    主席警部のオリヴァーとピアは恋人ではなく同僚で、仕事で認めあっている関係です。

    オリヴァーは離婚後やっと落ち着き、幼い末娘に愛を注ぐ日々。
    前作「穢れた風」まではどうなることかと思わされたけど、まずはよかった、よかった。

    川で少女の変死体が発見され、不審な事実が判明。
    一方、人気女性キャスターが拉致されます。
    さらに、事件が‥
    少女虐待を暗示する描写が挿入され、誰のことなのか、過去のことなのか、救出が間に合うのか‥はらはら。
    絡み合う事件がしだいに大きな姿を見せ始めるのです。
    登場人物が多い中で、すべてを失った男がひっそりと

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    2019年10月08日
  • 禁忌

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    ネタバレ

    ドイツの刑事弁護士を長年経験している著者の作品。
    新作が発表されるたびに必ず手にする作家の1人。
    今回は、小説の技法としてもこれまでの作品とは違う。あたかも主人公のアルバム写真を何枚も見せられて、解説をしたものを集めたように場面展開が細切れ的な文体。これが、わかりにくいと感じる人もいるかもしれない。
    今回のテーマも法廷で浮き彫りになってくる。第二次世界大戦の影響を受けた重いもの。
    読者へ投げかけるテーマが、正義とは?罪とは?など誰もが無関心ではいられない根本的なところに鋭く突き刺さる。
    新作の発売が待ち遠しい。

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    2019年07月31日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    鳥肌が立つ。
    この小説を読み私が体感したものの一つ。
    ドイツの法廷劇であり、筆者の淡々とした語り口が、読者とほどよい距離感が保たれており、ページを進めずにはいられない。そして、扱うテーマがとてつもなく奥深く過去の暗い歴史へといざなわれる。読者は自らこの重みを受け止め、対処せざるを得えない。物語の登場人物と、語り手の距離感がそうさせるのだと思う。
    この重厚なテーマをこのページ数で語ることが、著者のすごいところ。ドイツの戦争との向き合い方について、我が国でも参考にするべきことがあるかもしれない。

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    2019年07月13日
  • テロ

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    台本形式(戯曲)の書き方なので、芝居(舞台)をあまり見慣れていない人にはとっつきにくいかもしれませんが、法廷劇や戯曲が好きな人なら絶対に楽しめる作品だと思います。

    ドイツでハイジャック事件が発生し、乗客164名を乗せた飛行機が満員のサッカースタジアムへ向かう。7万人の観衆を救うため、空軍少佐は命令に(あるいは憲法に)背いて旅客機を撃墜、164人を殺害した罪で起訴された。彼は大量殺人者か、それとも7万人を救った英雄か。

    検察側、弁護側双方の主張はどちらも説得力がありましたし、(おそらく)観衆の評決によって被告人が無罪/有罪となる2パターンのエンディングが用意されているのも魅力的でした。
    自分

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    2019年07月13日
  • テロ

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    世界中の人に読むか、触れるかしてもらいたい。法の基本原理どころか人間を人間たらしめるものはなにかという本質にまで触れてくる。怖いけれど、何度でも読んで考え続けなければならないと思う。

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    2019年07月08日
  • デーミアン

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    ネタバレ

    すごく読みやすくてありがたかった。
    それでいて格調もある。

    酒寄氏も解説に記されているとおり、ユング全開といってもいいくらいの作品であることにあらためて驚いた。(それなのにユングに言及されていないという酒寄氏の指摘。おもしろい。)

    ベアトリーチェは見るからにアニマだし、クローマーはたしかに「影」。エヴァ夫人は太母だけれどもアニマ的なところもあるのかな。デーミアンはすべてを包摂した「自己」だと解説には記されていてなるほどと。そうするとラストでシンクレアは自己の統合を果たしたということになるんだろうか。

    西欧の精神史をたどるような内容でもあり、さまざまに読める奥深さを持っている。個人的には、

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    2019年04月01日
  • 悪しき狼

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    ちょっと前に民放テレビで映画「カメラを止めるな」が放送されたとき、冒頭に出演者が出てきて、予告をしていたんですが、「冒頭何分までは、よく分らないかもしれないけど、我慢してみれば、後半は必ず面白くなります。」という趣旨の発言をしていたのが気になりました。カメラではなく、視るのを止めるな、という訴え。
    確かに前半に伏線が一杯張ってあって、分かりにくかったり不自然だったりして、それが後半で回収されていくのが面白さの映画なので、後半まで視てもらわないと、な映画ではありますが、しかし作り手自ら「我慢」って、という違和感。そう、youtubeをはじめとした動画を見慣れた世代は、だらだら退屈な部分はすっ飛ば

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    2019年03月23日
  • テロ

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    よく考えようシリーズ。飛行機がハイジャックされ、サッカースタジアムに突っ込もうと目論むテロが起こる。7万人の観客の命を救うために、160人の乗客を乗せたこの飛行機を撃墜した空軍少佐。この小説はこの事件をめぐり逮捕された空軍少佐の裁判を演劇風に表現したもので、生存権とは、法律とは、市民を守ることとは、命の数を天秤にかけることの是非などの主張が対立する。いわゆるトロッコ問題を、テロを絡ませてとてもリアルに再現して問いかけている。私たちがもっとも苦手とする正解のない、果てしない議論であり、太平洋戦争時代から、シン・ゴジラが来襲した時にも首脳陣が見せた結論先送り・事なかれ主義的なことでは済まされない、

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    2019年02月15日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    禁忌と同じタイミングで読んだため、すこしキャラクターが混じってしまった。
    基本的にこの人の作品では、警察、法曹界野の人たちは常に善良に自身の仕事と向き合っていて、嫌な人間がいないところが良い。
    被害者の二面性、被告人の救われなさ、さすが弁護士、と感心した。おまけに、これは自分自身の話でもあるなんて。すごい。

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    2019年02月10日
  • 悪しき狼

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    ドイツミステリーの女王による、オリヴァー&ピア刑事のシリーズももう6作目。川で少女の遺体が見つかった。凄まじい暴行の跡があった。身元がなかなか分からない。肺にあったのは塩素で消毒された水なので、川で溺死したのではない・・・人気ドキュメント番組のキャスター、ハンナ・ヘルツマンは、大きなネタを掴んだ。極秘裏に取材を進めていくと、とんでもないことが分かってきた。しかし・・・ピアの友人エマは、シングルマザーとその子供のための協会「太陽の子協会」の創始者の息子と結婚し、義父、義母と共に暮らしている。しかし、夫は家庭を顧みず・・・トレーラーハウスで暮らす貧しい男は、裏で弁護士のような仕事をしている

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    2018年12月27日
  • テロ

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    "哲学的命題。マイケル・サンデルさんの「これからの「正義」の話をしよう」の最初に登場するジレンマを戯曲にした作品という印象を持った。
    1人を殺すことで5人を救えるとしたら、その一人を殺すべきなのか?
    本書では、テロリストにハイジャックされた航空機をミサイルで撃ち落としたパイロットが被告として法廷で裁かれる場面を描いている。
    テロリストの意思通りことが運べば7万人で満員になったスタジアムに墜落させ多くの人の命を奪うことになった。
    乗客約200人の命と7万人のスタジアムにいる人々の命が天秤にかけられるべきなのか?我々は法治国家に生きており、すべてを法律原則通りに行動することが正しいのか?

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    2018年11月24日
  • デーミアン

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    ネタバレ

    ヘッセ=甘い、ロマンチストというイメージを感じさせない鋭さを持った内容。
    自分を見つめ苦悩するシンクレア、エーミール。デーミアンと出会い己との向き合い方を探り成長していく。

    その過程の分厚さに腹が膨れる。

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    2018年10月07日
  • デーミアン

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    ネタバレ

    始まりの一節、ラストの一節。

    自分とはいったい何なのか…の始まりと見つけたラスト。

    若い頃、時間があり、思考ばかりしていると考える。

    シンクレアは10歳でイジメにあい、善悪を見つけ出す。
    だいたいそのぐらいの年齢で子供は気付くのだと思う。
    成長過程において。
    私も善悪を強く意識したのも10歳だったと思う。
    無邪気に友達と遊ぶだけでは済まなくなる。

    内面を見つめる工程は結構陰気な感じで、今でいうと厨二病という感じか。
    ヘッセの描くこの厨二病はなぜかじわーっとやってきて、綺麗にすら見えてしまう。描き方なのか。
    ドストエフスキーは、鬱陶しさのある感じで、作家によって異なる。当たり前だけど比べ

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    2018年09月29日
  • 弁護士アイゼンベルク

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    ネタバレ

    またひとつ面白いシリーズの登場。テンポよく進み、スピード感を感じられる展開、次から次へと起こる出来事。飽きさせないストーリーで面白い。主人公はじめ登場人物たちが魅力的なのもいい。弁護士としての、母親としての顔があってそのどちらもがこの先が楽しみになるしテキパキとした動きもいい。事件の緊迫した場面と娘と過ごす場面のメリハリも効いている。次作へつながりそうなラストも興味深い。早く続きが読みたい。

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    2018年07月13日
  • 穢れた風

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    刑事オリヴァー&ピアのシリーズ5作目。
    オリヴァーは主席警部で、ピアは同僚です。
    これでやっと順番通りの刊行になる?
    とはいえ、4作目を読んだのがだいぶ前なので~刑事たちの人間関係を思い出すのにしばらくかかりましたよ。

    風力発電建設会社で、妙な事件が起きます。
    ドイツでは、原子力に頼らない再生可能エネルギーの開発が盛んになっているそう。
    彼らの住む州には、フランクフルトを含む都市部と風光明媚な郊外の両方があり、風力発電はまだ盛んではないとのこと。
    メルヘン街道もあるそうですから、景観破壊になっては困りますよね。

    オリヴァーの父親は伯爵で、地元の名士。
    事件に関係する老いた農場主は、古い知り

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    2018年04月05日
  • モナ・リザ・ウイルス 下

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    おおおおおこれは予想以上におもしろかったぞ。ヘレンのキャラもわりとすき。モナリザのミステリアスな微笑みがいい感じのスパイスになってるし、こんなフィクション読んでしまったら、かの有名な奥方に再度会いに行きたくなってしまう。ルーブル行くか。

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    2018年03月04日
  • 死体は笑みを招く

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    刑事オリヴァー&ピアのシリーズ、日本での刊行は4冊目。
    主席警部のオリヴァーと警部のピアは恋人ではなく同僚で、仕事で認めあっている関係です。

    時系列としては「悪女は自殺しない」に次ぐ2作目に当たり、1作目はどちらかというとオリヴァー編だったのが、こちらはピア編といったところ。
    1作目のほうがシンプルで、こちらのほうが筆が乗っている気がします。
    ドイツでは2冊同時に私家版で発表、それが大きな出版社に認められたという作家デビューなのですね。

    ピアは、まだ最初の夫と別居中。
    その夫ヘニングは高名な法医学者で、オリヴァーとも友人でした。
    大事件があると、ヘニングはまたこちらへ来ることにもなります。

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    2018年01月09日
  • 穢れた風

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     第一印象。分厚い!

     風力発電所の建設計画をめぐり、建設を推進したい施設建設会社と、自然保護を名目として建設反対を訴える市民団体との争いを軸にストーリーは展開する。
     風力発電ならばクリーンエネルギーとして環境にも優しいと考えがちだが、巨大な風車を数多く建てなくてはならないから、やっぱり木々を倒し、土地を均して環境を変えなくてはならない。市民団体もその点を突く。さらには自然の立地としても風車を回すほどの風が常時吹くほどの見込みはない。それではなぜそこに建設しようとするのか。その裏に見え隠れするのは補助金やファンドから流れ込む潤沢な資金の影。大金が動くところに人は群がる。そして事件は起こる…

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    2017年11月30日
  • 漆黒の森

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    Romaneシリーズ① 
    ハンナ(フリーの編集者)&モーリッツ(刑事警察主席警部、猫好き)の相棒もの

    ドイツの小さな村が舞台 
    ブルーノの独白に引き込まれた 
    モーリッの亡くなった親友の母親ロレーナ検事やラインハルト法医学者に興味がわいた 
    次作では彼らの事も掘り下げられていくのかな 次作も読みたいな、っていつになることやら…
    ドイツ推理作家協会新人賞受賞

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    2017年08月16日