酒寄進一のレビュー一覧
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続けてドイツ人作家の小説。本作の著者フェルディナント・フォン・シーラッハは、ナチ青少年最高指導者の孫だと云う。そんなの関係ねー!と思いつつ、不穏感が湧いてくるのが正直なところ…。
著者は弁護士の傍ら小説を書き始め、デビュー作の本作でドイツのクライスト賞、日本で2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位を受賞。11篇の連作短編集ですが、それぞれにつながりはありません。
タイトル通り、罪を犯した人々の物語です。著者が実際に携わった刑事事件から着想を得たそうで、まるで11の刑事事件の実録?というほどリアルな印象です。しかし、ただの事件の羅列ではなく、描かれるのは人間の挫折・罪・素晴らしさです -
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最近失恋したので再読。今年の9月くらいに買ったのにもう読むのは3度目だ。この本を自分への処方箋にしているところがあるかもしれない。
最後に主人公が自殺する話を読んで、自分が自殺を考えないかと自分で心配するところがないわけではない。実際、この本が出版された当時、ウェルテルに共感した若者の自殺が相次ぐということもあったそうだ。しかし、本を読むことの良さは自分ではなかなかできない体験を本を通じて理解するということにもあると思う。自分の言語化できない心情を言葉にしてくれる本を通じて、自分の心情をかき分けていくということができる。やっぱり読んでよかった。僕とウェルテルがどれだけ重なっているところがあ -
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ネタバレ自然への憧憬と畏怖から社会や人間への失望への流れと感情の変化をこんなに荒々しく、その上で詩的に表現した文章があっていいのか
感情の濁流に飲み込まれて帰って来れないのではないかという新しい読書体験をした
これはただ失恋で死に魅せられてしまった話ではなく、そもそも自然に憧れた青年が自身の感受性を御しきれなかった話だと感じた。
情緒のある人に惹かれていくものの、その人もまた無粋な社会には適合してしまっている。自分の理解者を見つけられないまま、ロッテが社会の枠にはまらず自分とともに感性に従って生きてくれることを望んでしまった
友愛ではなかったのか。と言えるほど、アルベルトがいながらロッテを愛し自然を楽 -
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自我からの解脱を目標に、苦しみを乗り越えて道を切り開いていくシッダールタの姿に、引き込まれました。
宗教的内容であることを予想し、読み始めは身構えましたが、その心配は無用でした。
苦行を3年間一緒に積んだシッダールタと友人ゴーヴィンダは、違う道を進みます。ゴーヴィンダはブッダの弟子となります。
苦行で身につけたもの(断食、待つ、考える)を遊女のカマラー、商人との出会いの中で手離すことになったシッダールタ。そのかわりに得たものは、官能の喜び、快適な暮らし、富(とみ)でした。しかし、シッダールタの心は満たされず、その後、彼に大きな影響を与える人物との出会いがあり、彼は変わります。
後半は、 -
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刑事事件の専門弁護士である著者が描き出す、奇妙な事件の話が15話収録されている。ふるさと祭りの最中に、給仕していた少女への集団暴行事件を描く「ふるさと祭り」、寄宿学校で秘密結社にかぶれる男子生徒による事件を描く「イルミナティ」、麻薬売買の現場に自宅を提供していた老人と、自分の運命から逃げられなかった男を描いた「雪」など、弁護士の「私」はさまざまな罪の形を語る。
ふるさと祭り
「私たちは大人になったのだ。列車を降りたとき、この先、二度と物事を簡単には済ませられないだろうと自覚した」
ふるさと祭り、がお気に入りです。
法で捌けない罪というのはミステリーではよく登場しますが、怒っても、泣いても、 -
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ネタバレ個人的には2025上半期一番面白かった!
ここが良い!
・細かいミスリード
・先が気になる構成、描写なので飽きがこない
・設定はシンプル王道なのに、楽しめる
ここは好き嫌いありそう
・シンプル王道、長い
・殺害方法がえぐい
・最後の、犯人クリスティアン(ゼバスティアン)との対峙、戦闘描写が急に雑
・散りばめた伏線があり過ぎる
・ユーリ・サルコフとかいう日本翻訳版が出てない作者デビュー作の登場人物の謎クロスオーバー
・登場人物に魅力が、、、キャラクターで読ませる小説ではない
ミスリードが上手。ヴィーは『アルプスの少女ハイジ』が大好きでぼろぼろ泣いたという過去の章の描写。本当に些細な描写で -
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ネタバレ「夏を殺す少女」と同じ作者だったので。
舞台はプラハ、絵画の焼失にウィーンから保険調査員のホガートが向かう。
前任の調査員が行方不明となってしまったためだ。
前任者の立ち寄り先の一つ、
「プラハの王」と呼ばれる密入国を取り仕切る犯罪者の家を訪ねて、
痛い目に遭うホガートだったが、女探偵に出会い、連続殺人事件にも関わることに。
古い映画に、チェスの棋譜に、解離性同一性障害とのせてくるなら、
もうちょっと長くても良かったのでは。
というのも、もう少し長く楽しみたかったのかも。
途中で登場した、ユダヤ人市庁舎の時計塔が興味深かったので、
うっかり調べてしまった。
素晴らしい。
プラハ、行ってみ -
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絶望名言のゲーテを思い出し、新刊?に並んでいたこちらを読んだ。当時流行したとかあらすじは知っていたが、改めて読むと、手紙(しかも一方的)の内容でウェルテルの激化する気持ちが語られる様が面白い。これがもう少し時代が進むとブリジャートン的に不倫などの話になるんだろうが(いや不倫の話は出てこなかったか)、当時定められた婚姻に囚われてこの話に共感した人が多かったということか。
主人公さておき、大勢の幼い妹弟を残して早逝した母の代わりに母親役を全うしようとするロッテの健気なことよ。国を問わず寿命の短かった時代にはこういう状況が多かったのだろうが、家族を守るという遺言、そこにはアルベルトと結婚することも -
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ネタバレ「夏を殺す少女」と同じ作者だったので。
冒頭から女性が次々と残虐な殺され方をして、
かなり読み進めるのが辛い。
その中の一人は女性刑事ザビーネの母親で、
誘拐され、インクで溺死させられ、大聖堂で発見された。
誘拐犯は離婚した父親に電話をし、
なぜ誘拐されたのかという謎を解けば解放すると言っていた。
その説明を信じない警察は、父親を殺人の容疑者として拘束する。
捜査に現われた連邦刑事局の誘拐捜査官スナイデルは、
全てを三言で説明しろと言い、マリファナを吸い、
群発頭痛持ちで、緩和のために鍼を打ち、
特定の本屋から本を万引きせずにはいられない強迫症の持ち主。
誰とも協力せずに捜査を行うが、
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