酒寄進一のレビュー一覧
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罪とは何か。これがシーラッハ文学の中心テーマだ。
…「罪」という漢字を分解すると「目に非ず」と読める。「現実」を把握するのに「百聞は一見にしかず」というが、こと「罪」に関してはこれが通用しない。なぜなら「罪」に見入る者は心の闇を覗くことになるからだ。
ー訳者あとがきより
ブラック・クリスマス、タダジュンさんのおどろおどろしいながらも目が離せない絵に惹かれて読んだ。
たった三遍が載った100ページにも満たないお話。
けれど読みやすい比較的短い文章で綴られた罪に満ちた三つの物語は、その主人公たちの末路はどれもじわじわと衝撃的で、けれど、ああ、これは私たちの物語だ。と思わされた。
主人公たちはカオ -
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『「それから?」 夫はきつい口調でたずねた。「白熊がなにをするか知ってるくせに。首を左右に振るのよ。いつまでも右に左に」「きみみたいにな」「わたしみたいに?」女はおどろいてそうたずね、闇の中でいまいわれたとおり首を左右に振った。「きみはだれかを待っていた」夫がいった』―『白熊』
初めて読む作家、マリー・ルイーゼ・カシュニッツの短篇集。最初の幾つかの短篇を読むかぎり、これまで読んだ欧州の怪奇譚の雰囲気と似ている語り口で、初めてのような気がしない。例えば最近読んだものだとアラン・ノエル・ラティマ・マンビーの「アラバスターの手」とか、シルヴィア・プラスの「メアリ・ヴェントゥーラと第九王国」などが思 -
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カシュニッツは今回初めて読んだけど、面白かった!
人間心理の闇、奇妙な味、といったような短編集。
日常が少しずつずれていく感じや、夢と混ざり合っていくような感じの塩梅がちょうど良かった。
あまりにも突飛だったり、幻想的すぎる話だと個人的には楽しめないことがあるので…。
迷信かと思いきや否定もしきれない『精霊トゥンシュ』。
間違った船に乗ってしまい、奇妙なことが起き続けていることを知らせる手紙が届く『船の話』。
隠れて生きたユダヤ人女性の人生を描いた『ルピナス』。
若い夫婦に追いやられていく老女の『いいですよ、わたしの天使』。
そして、SFホラーぽさもある表題作の『その昔、N市では』。
どれ -
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ドイツ人の名前に馴染みがないので、登場人物の名前は覚えにくいし、間柄や話題によって呼び方が変わるので、ちょっと前のページに戻って確認したりしながら読みました。
元貴族の名前には、フルネームの中にそれと分かる呼称が入っているとか、ドイツ社会の中の警官の立ち位置がちょっと分からない(例えば、取り調べにきた刑事に侮蔑、見下すような眼差しを向けるといった表現があるけれど、日本では警官に対してそういった感情は起きにくいと考える)といったこともあるけど、物欲や見栄や嫉妬というたぶん全世界共通の、ドロドロな人間模様の中でおこる殺人。
面白かったです。 -
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カシュニッツは1901年に生まれて1974年に亡くなった作家で、これまでも何冊か翻訳が出ていたらしいが、全く知らなかった。
読んでみると、暗くて不安に満ちていて、うっすらとした恐怖を感じるという全体のトーンは共通しているが、内容はバラエティーに富んでいて、こんな面白い作家、どうして今まで話題にならなかったのだろうかと思った。
「いいですよ、わたしの天使」「船の話」なんかは岸本佐知子の「居心地の悪い部屋」に入っていてもおかしくない。
「白熊」「幽霊」「精霊トゥンシュ」は、古典的な幽霊小説の風格があるし、「長距離電話」「ルピナス」は構成の巧みさが際立つ。
「ジェニファーの夢」「ロック鳥」「人間とい -
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ネタバレ「物事は込み入ってることが多い。罪もそういうもののひとつだ」。当事者でない人たちがいくら物語を作ろうともそれは真実ではない。。
それでも、作者は現役の刑事事件弁護士なので(こういうこともあるかも…)のリアルさがあります。冷静だけど冷徹ではなくて、情緒もあるけど大仰ではない文章、好きです。
お話は特に「ハリネズミ」「緑」「エチオピアの男」が好き。
怖いのは「正当防衛」「愛情」。「愛情」には佐川一政の名前が出てきてタイムリーでした。世界的にも有名なんだな。
「棘」も、一人の人が壊れていく過程が描かれててゾッとしました。職務怠慢だ。。
“弁護人が証人に尋問する場合にもっとも重要なのは、自分が答えを知 -
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フェルディナント・フォン・シーラッハ『刑罰』創元推理文庫。
読者に媚びを売らず、時に読者を突き放すような乾いた文体で、極めて淡々と描かれる物語は長岡弘樹の一連の短編と似ている。人生の機微と不思議な魅力を感じる捻りの効いた犯罪ミステリー短編12編を収録。
『参審員』。世の中には時折、皮肉な出来事が起きる。それは必然であり、偶然ではないという人生の機微。冒頭から一人の女性カタリーナの孤独な人生が綴られる。幸せなひと時から、人生に起きる様々な波乱。幾つもの波乱を乗り越え、新たな職を得ても自ら孤独な人生を選ぶカタリーナは参審員に選ばれる。裁判を通じて夫からDVを受けていた証人に自分の人生を重ね合わ -
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これは面白かった!というか、実に好み。ホラー寄りの奇妙な味、というのかな。柔らかいのだけれど。
読んでいて、なんか読んだことあるなーと思い、カシュニッツはいくつか読んでるんだと思うんだけど、もっと読みたくなった。でも家を探したが河出の『ドイツ怪談集』しか見当たらなかった。特に『いいですよ、わたしの天使』は絶対読んだことあるーと思うんだが、なんのアンソロジーに収められいるのか。訳者あとがきでは既役について素っ気なく、なんのアンソロジーに入っているのかわからない。
特によかったのは『白熊』『ジェニファーの夢』『船の話』『幽霊』『ルピナス』『長距離電話』『四月』『いいですよ、わたしの天使』…あれ -
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刑事オリヴァー&ピアのシリーズ、9作目。
ドイツの警察小説です。
前作でオリヴァーの子供時代からの人間関係に絡む事件が起き、疲れ果てたオリヴァーは制度にある長期休暇を取りました。
オリヴァーは警察ではリーダーで人柄も見た目もなかなかいい男だが、やや女運が悪く振り回されがち。
とはいえ、ここへ来て落ち着いたよう(笑)
ピアは(何年も前になりますが)元夫と別居してこの地で農場を買い、警察の仕事に復帰、今では資格も先輩のオリヴァーと同等の主席警部に。お似合いの相手クリストフと再婚もしています。
さて、オリヴァーが復帰しての新たな事件。
とある邸宅の主人が亡くなっているのが見つかった。
さらに、犬 -
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シリーズベスト級。孤児を受け入れていたラインフェラート家の年老いたテオが死んだ。調べると犬のケージからラップフィルムに包まれた遺体が3体。テオが連続殺人鬼なのか?
すごく時間がかかった。しかしその甲斐あり。
登場人物の多さ、被疑者の多さ。それを正当化するどんでん返しアンドどんでん返し。素晴らしい。
※自分用ネタバレ
犯人は、孤児院で育ち、子供を捨てた母親を憎み、テレビで子供を捨てたことを話した母親を連続して殺した。刑事ピアの妹キムも実はレイプされた子を、親友の産婦人科医を通して、不妊のカップルにあげてしまっていた。そのため犯人に狙われた。 -
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ネタバレオリヴァ―とピアシリーズの第9作。
新聞配達人が発見した老人の遺体。
大きなお屋敷は、以前里子を多く引き取っていた。
死にかけていた犬のゲージの中から白骨が発見され、
母の日に起こっていた連続殺人へと広がっていく。
もう一つのお話として、実の母親を捜している女性の話が
重なってくるが、まさかそれがピアの妹のことだとは思わなかった。
二人とも無事助かって良かった。
ショックだったのは、ピアが白樺農場を売ったこと。
あんなに楽しそうに馬の世話をしていたのに、
馬も犬も亡くなってしまったのもショックだった。
五十歳を目前にして、夫が住んでいた家を買い戻し、
街に戻ってきた。
新しい生活になじん