酒寄進一のレビュー一覧
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戦後ドイツを代表する女性作家の傑作選。全15作。
ふわっとしていて、灰色で、どこか不安になるお話のあつまり。「長距離電話」が好き。わかりやすかった。怖かったのは「いいですよ、わたしの天使」→
もう、死ぬほど怖い。ホラーじゃないんだけど、なんか、怖い。こんなのおかしいよ!って叫びたくなる。読み直したらまた怖かった……。
「ルピナス」は切ない。切なすぎる。「白熊」や「精霊トゥンシュ」「その昔、N市では」あたりは日本の昔話にありそう。
「いいですよ、わたしの天使」はコロナ陽性が出てまぁまぁしんどいタイミングで読んで、だいぶんやられた(笑)怖かったよー。でもある意味1番印象残ったわ。たぶん忘れない -
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二か月前に航海中に失踪した少女が、同じ船の航海中に突然現れる。
豪華客船に潜む謎の失踪事件、そして主人公の妻と子の自殺の謎。
豪華クルーズ船の旅、それはステータスであり憧れの対象。一方で、確かにこの本にあるように、大洋航海中に飛び込めば捜索は困難で、自殺にはもってこいの場所である。さらに、いったん外洋に出てしまえば、次の寄港地までは閉ざされた空間となってしまう。
憧れの場所とは似つかないこの現実が、物語の異様性を構築する絶好の舞台となった。
読んでいて、投げやりになった囮捜査官という主人公マルティンの置かれた状況にやや違和感を感じるも、帯の宮部みゆき氏推薦「ジェットコースター・スリラー」 -
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ドイツの作家「ペトラ・ブッシュ」の長篇ミステリ作品『漆黒の森(原題:Schweig still, mein Kind)』を読みました。
「フェルディナント・フォン・シーラッハ」、「ハラルト・ギルバース」に続きドイツ作家の作品です。
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取材で黒い森(シュヴァルツヴァルト)を訪れた編集者の「ハンナ」は、トレッキングの最中に女性の死体を発見してしまう。
被害者は10年前に村を出て帰郷したばかりの妊婦だったが、胎児が消えていた。
村に伝わる“鴉谷(からすだに)”の不吉な言い伝えや、過去の嬰児失踪事件と関わりが?
堅物の刑事と敏腕女性編集者が、閉ざされ -
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ドイツの作家「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の短篇集『犯罪(原題:Verbrechen)』を読みました。
ドイツの作家の作品は… 「エーリヒ・マリア・レマルク」の長篇戦争小説『西部戦線異状なし』や、幼い頃に読んだり、聞かせてもらった「グリム兄弟」の童話『ヘンゼルとグレーテル』や『赤ずきん』、『ブレーメンの音楽隊』、『白雪姫』くらいしか手に取った記憶がないですね。
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【本屋大賞翻訳小説部門第1位】
グリム兄弟
一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。
兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。
エチオピアの寒村を豊かにした、心 -
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弁護士アイゼンベルク第2弾。
恋人を遠隔操作で爆殺した容疑で、映画プロデューサーのユーディットが逮捕されてしまいます。
偶々目の前でその逮捕劇に居合わせたラヘルは、ユーディットから弁護を依頼されて渋々引き受けますが・・。
ユーディットが容疑者になった件の事件の経過と、5年前の女性惨殺事件とが交互に展開されるという構成は、前作同様ですが、2つの事件がどう繋がり合うのかも含めてグイグイ読ませるものがあります。
そして、前巻で示唆されていた“ラヘルの過去”もこの巻で明かされます。
前巻でのラヘルの元カレのハイコの匂わせ具合から、かなり深い闇なのかな、と思っていたのですが(しかもこの巻ではラヘルの -
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読み応えありの、ドイツリーガルミステリ。
女子大生の猟奇的な死体が発見され、元大学教授のホームレス・ハイコが逮捕されます。
弁護士のラヘル・アイゼンベルクは、ハイコの友人のホームレスの少女から彼の弁護を依頼されますが、なんとハイコはラヘルの元彼で・・・。
息もつかせぬ、先の読めない展開で一気に引き込まれます。
中盤まで女子大生の猟奇殺人事件の件と、コソボから逃亡してきた母娘が大ピンチに陥っている様子が交互に展開されるのですが、これらの要素がどう繋がっていくのか・・・二転三転するプロットに続きが気になりすぎてページを繰る手が止まらん!という感じです。
いかにも“バリキャリ”なラヘルのキャラも -
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面白いものは面白いんだなぁ~
ヴァルナ―とクロイトナー
絶妙の緊張と緩和、あっという間に読み終わってしまった。
この物語は酔っ払い警官のクロイトナーが偶然死体を見つけるところから始まり、そして最後も……。
苦労して犯人を絞りこんでいくヴァルナ―、直観で行動するクロイトナー
で、この2人はチームでもバディでもない。え?なにそれ!
ドイツの警察小説ということで読み始めたが、いい意味で裏切られた。
愛と人生とトラウマを帰納法で証明しようとするシュリンク
犯罪心理を因数分解で明らかにしようとして、結果「わからない」とするシーラッハ
こんな人ばかりと思っていたら、こんなミステリ小説もあるんだって感 -
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ドイツ南部ミースバッハ郡の小さな湖で、厚く凍りついた湖面の下から16歳の少女ピアの死体が発見された。謝肉祭のプリンセスのようなドレスを着て、口の中には数字の書かれたブリキのバッジが押し込まれていた。
第一発見者のクロイトナー上級巡査は自身が手柄を立てようと躍起になるが、ミースバッハ刑事警察署に特別捜査班が立ち上がり、ヴァルナー捜査官が指揮を執ることになる。
捜査が進む中、新たに13歳のゲルトラウトの死体が見つかった。現場はなんとヴァルナーの自宅の屋根の上。
ピアと同じようなドレスを着て、口の中からは数字の書かれたバッジが見つかった。
捜査線上にピアの通う学校の教師が容疑者として浮かぶが、70 -
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戦中日記第四弾。高見順「敗戦日記」、「大佛次郎敗戦日記」、「吉沢久子、27歳の空襲日記」の次にお読みください。1945年5-6月の日記。ここで、初めて田辺聖子の日記が登場して、大阪空襲を語る。更には、ケストナーにとってはヒトラー死亡が確定して、ドイツでの「内的亡命」が終わりを告げるのである。また、高見順たちの鎌倉文庫は予想外の好調を示した。
エーリッヒ・ケストナー(1899-1974)。「エミールと探偵たち」「飛ぶ教室」などで、既に著名な児童文学作家であり、詩人で脚本家であった。翻訳者の酒寄氏は、ドイツ文学者は迎合者、亡命者、内的亡命者の3つに分かれたと書いているが、ケストナーは3番目の内的