酒寄進一のレビュー一覧

  • 珈琲と煙草

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    倫理や法律について論理的且つシニカルな短い逸話が繰り返されるが、多くが伝聞や書物に基づくものでサッチャー元首相の逸話なども事実か物語なのか迷わせる。
    人権の話で、ドイツ基本法第1条では、「人間の尊厳は不可侵である」と定められているにも関わらず、2017年にベルリンで前年比60%増の947件の反ユダヤ主義の事件が起きており「私たちは言葉の外へは出られない。私たちの理解できるのは、理性だけだ。説明することを可能にするのは、つねに概念だ。 他に方法がない。しかし自然や生や宇宙にとって、そうした概念はなんの意味も持たない。重力波に善も悪もない。光合成に良心などない。 重力に対して、われわれは無力だ。」

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    2023年06月07日
  • 刑罰

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    久しぶりのシーラッハ。

    いつも通り、感情の起伏がない、淡々とした空気感。なのに、内容はやはり衝撃的でした。
    でも今回は、なぜかとても文学的な雰囲気を感じて、ちょっと感動してしまった。
    私のなかでは、ミステリーではなく、文学だな。

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    2023年05月21日
  • 黒のクイーン

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    オーストリアの作家「アンドレアス・グルーバー」の長篇ミステリ作品『黒のクイーン(原題:Schwarze Dame)』を読みました。

    『夏を殺す少女』に続き、「アンドレアス・グルーバー」作品です。

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    保険調査専門探偵「ホガート」は顧客からある依頼を受けた。
    プラハの展覧会に貸し出した絵画が焼失、調査に派遣した絵画専門の調査員は行方不明になった。
    調査員の安否と保険詐欺のことを調べて欲しいというのだ。
    プラハに飛んだ「ホガート」は、そこで猟奇連続殺人事件に巻きこまれる。
    首と手を切りおとしビロードにくるんだ死体の謎。
    『夏を殺す少女』で衝撃のデビュ

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    2023年03月25日
  • 夏を殺す少女

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    オーストリアの作家「アンドレアス・グルーバー」の長篇ミステリ作品『夏を殺す少女(原題:Rachesommer)』を読みました。
    オーストリアの作家の作品は初めて読みましたね… この前まで読んでいたドイツミステリと同じドイツ語圏なのですが、この作品を読んだ限りではオーストリアミステリの方が好みかな。

    -----story-------------
    酔った元小児科医がマンホールにはまり死亡。
    市議会議員がエアバッグの作動で運転をあやまり死亡。
    一見無関係な事件の奥に潜むただならぬ気配に、弁護士「エヴェリーン」は次第に深入りしていく。
    一方ライプツィヒ警察の刑事「ヴァルター」は、病院での少女の不審

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    2023年03月25日
  • コリーニ事件

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    ドイツの作家「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の長篇ミステリ作品『コリーニ事件(原題:Der Fall Collini)』を読みました。

    『罪悪』に続き、「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の作品です。

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    新米弁護士の「ライネン」は大金持ちの実業家を殺した男の国選弁護人を買ってでた。
    だが、被疑者はどうしても動機を話そうとしない。
    さらに「ライネン」は被害者が少年時代の親友の祖父だと知る。
    ──公職と私情の狭間で苦悩する「ライネン」と、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士が法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。
    犯人を凶行に駆り立てた秘めた

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    2023年03月25日
  • 弁護士アイゼンベルク

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    ドイツの作家「アンドレアス・フェーア」の長篇ミステリ作品『弁護士アイゼンベルク(原題:Eisenberg)』を読みました。

    「ハラルト・ギルバース」の『オーディンの末裔』に続き、ドイツ作家の作品です。

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    凄腕の女性刑事弁護士「アイゼンベルク」は、ホームレスの少女から弁護を依頼される。
    友人のホームレスの男が、女性の殺害容疑で逮捕された件だという。
    驚いたことに、彼は「アイゼンベルク」の元恋人だった。
    物理学教授の彼がなぜホームレスになり、殺人の被疑者に? 
    二転三転する事態と熾烈な裁判の果てに明らかになる、あまりに意外な真実。
    一気読み必至の傑

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    2023年03月25日
  • 終戦日記一九四五

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    1945年ドイツにおける終戦前後の著名作家(反政府的とみなされていた)の生活状況と考察を書いた日記。日本同様ドイツでも終戦前後の混乱はあったようだがその様相は若干違うよう。人名・地名等になじみがないこと、歴史・思想に対する知識不足により少々読みにくかった。それでも全体的な動きは大体理解できたと思う。戦争というものを考える時にその時代の(ほぼ)生の証言は必要であろう。

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    2023年03月15日
  • その昔、N市では

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    文章は理知的。怪異譚もクラシカルな趣きで端正。しかし登場人物の心は揺らぎ、不安定な危うさを秘めている。
    すっと読み通せるが、収められた各短編には読み流すことを許さない、しっかりとした手応えがある。
    表題作は、外国人労働者への依存と無理解、エッセンシャルワーカーの仕事に価値をおかない世界に対する批評が想起される寓話。
    『見知らぬ土地』では、“人間性という壊れやすい幻想がささいなことで消し飛ぶ”様が描かれる。戦後ドイツの連合国による占領地域にて、敵国の軍人と居合わせることによる緊張がサン=テグジュペリの名前を出すことによって緩和されていく。しかし、その交流は脆く、苦い思いが残る。ヒューマニズムを否

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    2023年03月11日
  • 急斜面

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    クロイトナーシリーズ4作目。いつもブレーキでポンコツのクロイトナーが今回はめちゃ働いていて、ミステリーとしてもストレスなく読めた。「働く」とは言え性格は変わる訳ないので、それがエンタメミステリとしても笑いがあって面白かった。

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    2023年03月09日
  • デーミアン

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    元々燻っていたシンクレアの内面がデミアンと出会うことで触発されて成長し、変化していく。
    級友に陶酔していた(今もしているかもしれない)自分とシンクレアが重なった。
    そして大衆に流されず、孤独になることが多くても自分の運命を探す強さは心に留めるべきものかもしれない。
    あと聖書や哲学にに精通しているとさらに面白く感じるのかなと思った。

    ただ、率直に難しい。理解出来なかった部分が多数ある。それが悔しいなと思った。

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    2023年01月20日
  • その昔、N市では

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    戦後ドイツを代表する女性作家の傑作選。全15作。
    ふわっとしていて、灰色で、どこか不安になるお話のあつまり。「長距離電話」が好き。わかりやすかった。怖かったのは「いいですよ、わたしの天使」→

    もう、死ぬほど怖い。ホラーじゃないんだけど、なんか、怖い。こんなのおかしいよ!って叫びたくなる。読み直したらまた怖かった……。
    「ルピナス」は切ない。切なすぎる。「白熊」や「精霊トゥンシュ」「その昔、N市では」あたりは日本の昔話にありそう。

    「いいですよ、わたしの天使」はコロナ陽性が出てまぁまぁしんどいタイミングで読んで、だいぶんやられた(笑)怖かったよー。でもある意味1番印象残ったわ。たぶん忘れない

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    2022年12月23日
  • その昔、N市では

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    短編集15編
    不可解な,忍び寄る不安,不条理といった精神を軋ませるような世界が広がる.
    「白熊」「船の話」表題作が良かった.少しわかりにくかったけれど「四月」も面白い.

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    2022年12月23日
  • 乗客ナンバー23の消失

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    二か月前に航海中に失踪した少女が、同じ船の航海中に突然現れる。

    豪華客船に潜む謎の失踪事件、そして主人公の妻と子の自殺の謎。

    豪華クルーズ船の旅、それはステータスであり憧れの対象。一方で、確かにこの本にあるように、大洋航海中に飛び込めば捜索は困難で、自殺にはもってこいの場所である。さらに、いったん外洋に出てしまえば、次の寄港地までは閉ざされた空間となってしまう。
    憧れの場所とは似つかないこの現実が、物語の異様性を構築する絶好の舞台となった。

    読んでいて、投げやりになった囮捜査官という主人公マルティンの置かれた状況にやや違和感を感じるも、帯の宮部みゆき氏推薦「ジェットコースター・スリラー」

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    2022年12月21日
  • 刑罰

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    短編の切れ味が悪い。これは褒め言葉。澱のようにとどまり、ぞっとする。遅効性の毒のようにじわじわと心が歪に変形する感じ。

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    2022年12月14日
  • 深い疵

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    ストーリーは濃厚だが演出が淡白で、もう少し芝居っ気があったほうが自分の好みには合うし、もっと感情移入できただろう。或る一族の歴史の暗部を掘り返すダークなストーリーだけに、不気味さや刺さる感じ、ひりつく感じを味わいたかった。ドイツ人が読めばそういう感じを味わえるようなキーワードが、ふんだんにあったのかも知れないが。

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    2022年12月04日
  • 漆黒の森

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    ドイツの作家「ペトラ・ブッシュ」の長篇ミステリ作品『漆黒の森(原題:Schweig still, mein Kind)』を読みました。

    「フェルディナント・フォン・シーラッハ」、「ハラルト・ギルバース」に続きドイツ作家の作品です。

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    取材で黒い森(シュヴァルツヴァルト)を訪れた編集者の「ハンナ」は、トレッキングの最中に女性の死体を発見してしまう。
    被害者は10年前に村を出て帰郷したばかりの妊婦だったが、胎児が消えていた。
    村に伝わる“鴉谷(からすだに)”の不吉な言い伝えや、過去の嬰児失踪事件と関わりが? 
    堅物の刑事と敏腕女性編集者が、閉ざされ

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    2022年11月26日
  • 犯罪

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    ドイツの作家「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の短篇集『犯罪(原題:Verbrechen)』を読みました。

    ドイツの作家の作品は… 「エーリヒ・マリア・レマルク」の長篇戦争小説『西部戦線異状なし』や、幼い頃に読んだり、聞かせてもらった「グリム兄弟」の童話『ヘンゼルとグレーテル』や『赤ずきん』、『ブレーメンの音楽隊』、『白雪姫』くらいしか手に取った記憶がないですね。

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    【本屋大賞翻訳小説部門第1位】
    グリム兄弟
    一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。
    兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。
    エチオピアの寒村を豊かにした、心

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    2022年11月25日
  • 弁護士アイゼンベルク 突破口

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    弁護士アイゼンベルク第2弾。

    恋人を遠隔操作で爆殺した容疑で、映画プロデューサーのユーディットが逮捕されてしまいます。
    偶々目の前でその逮捕劇に居合わせたラヘルは、ユーディットから弁護を依頼されて渋々引き受けますが・・。

    ユーディットが容疑者になった件の事件の経過と、5年前の女性惨殺事件とが交互に展開されるという構成は、前作同様ですが、2つの事件がどう繋がり合うのかも含めてグイグイ読ませるものがあります。
    そして、前巻で示唆されていた“ラヘルの過去”もこの巻で明かされます。
    前巻でのラヘルの元カレのハイコの匂わせ具合から、かなり深い闇なのかな、と思っていたのですが(しかもこの巻ではラヘルの

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    2022年11月23日
  • 終戦日記一九四五

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    戦争末期から終戦後にかけて書かれたドイツの作家ケストナーの日記。ナチスドイツでの人々の様子が、作家の細やかで皮肉のこもった筆致で書かれていて、同時代史料としてとても興味深かった。終戦後に強制収容所を生き延びた人物からホロコーストの実態を初めて聞いた際の驚きを極めて冷静に書き残そうとした様子がうかがえる。
    ケストナーが「一九四五年を銘記せよ。」と記したように、このような時代を書き残すことは作家にとっての責任なのかもしれない。

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    2022年12月16日
  • デーミアン

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    ネタバレ

    主人公の内面描写が細かい分、モヤっと感じることが多い作品でした。特に最初がそう感じられ、主人公幼少期の裕福で温かい世界と級友の貧乏で必死に生きている世界との対比は、互いの世界のルールは通じない。一歩足を踏み入れてしまえば、もう前と同じように戻ることはできない、という苦難と憂鬱さが描かれていました。にも関わらず、青年期に再度踏み入れていく、というジレンマは人間の複雑さを伝えてくれます。やがてデーミアンを通じて知る“自分の意思に従い生きていけるか”ということは、現代の私たちに共感できる場面が多いと思いました。

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    2022年11月07日