酒寄進一のレビュー一覧

  • 弁護士アイゼンベルク

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    ドイツの作家「アンドレアス・フェーア」の長篇ミステリ作品『弁護士アイゼンベルク(原題:Eisenberg)』を読みました。

    「ハラルト・ギルバース」の『オーディンの末裔』に続き、ドイツ作家の作品です。

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    凄腕の女性刑事弁護士「アイゼンベルク」は、ホームレスの少女から弁護を依頼される。
    友人のホームレスの男が、女性の殺害容疑で逮捕された件だという。
    驚いたことに、彼は「アイゼンベルク」の元恋人だった。
    物理学教授の彼がなぜホームレスになり、殺人の被疑者に? 
    二転三転する事態と熾烈な裁判の果てに明らかになる、あまりに意外な真実。
    一気読み必至の傑

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    2023年03月25日
  • 終戦日記一九四五

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    1945年ドイツにおける終戦前後の著名作家(反政府的とみなされていた)の生活状況と考察を書いた日記。日本同様ドイツでも終戦前後の混乱はあったようだがその様相は若干違うよう。人名・地名等になじみがないこと、歴史・思想に対する知識不足により少々読みにくかった。それでも全体的な動きは大体理解できたと思う。戦争というものを考える時にその時代の(ほぼ)生の証言は必要であろう。

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    2023年03月15日
  • その昔、N市では

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    文章は理知的。怪異譚もクラシカルな趣きで端正。しかし登場人物の心は揺らぎ、不安定な危うさを秘めている。
    すっと読み通せるが、収められた各短編には読み流すことを許さない、しっかりとした手応えがある。
    表題作は、外国人労働者への依存と無理解、エッセンシャルワーカーの仕事に価値をおかない世界に対する批評が想起される寓話。
    『見知らぬ土地』では、“人間性という壊れやすい幻想がささいなことで消し飛ぶ”様が描かれる。戦後ドイツの連合国による占領地域にて、敵国の軍人と居合わせることによる緊張がサン=テグジュペリの名前を出すことによって緩和されていく。しかし、その交流は脆く、苦い思いが残る。ヒューマニズムを否

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    2023年03月11日
  • 急斜面

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    クロイトナーシリーズ4作目。いつもブレーキでポンコツのクロイトナーが今回はめちゃ働いていて、ミステリーとしてもストレスなく読めた。「働く」とは言え性格は変わる訳ないので、それがエンタメミステリとしても笑いがあって面白かった。

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    2023年03月09日
  • 珈琲と煙草

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    小説とエッセイと観察記録が入り混じっているのだが、その区分けの曖昧さが面白い。

    シーラッハが弁護士だということを初めて知った。
    事実は小説よりも奇なりという言葉があるが、裁判というのは、言い方は悪いけれど、類稀なるドラマが展開されている場と言えるのではないか。

    仕事で、裁判の傍聴をしたことがあるのだが、その人が「語られる」こと、そしてその「語り」を聴いている当事者がいる空間。
    これを、私自身はどんなスタンスで聴けばいいんだろうと、戸惑ったことを思い出した。

    この作品では、誰もが震撼するような事件が扱われているのではない。
    事実があり、そこに誰かが、何かが解釈を施すことによる「え?そういう

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    2023年02月26日
  • デーミアン

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    元々燻っていたシンクレアの内面がデミアンと出会うことで触発されて成長し、変化していく。
    級友に陶酔していた(今もしているかもしれない)自分とシンクレアが重なった。
    そして大衆に流されず、孤独になることが多くても自分の運命を探す強さは心に留めるべきものかもしれない。
    あと聖書や哲学にに精通しているとさらに面白く感じるのかなと思った。

    ただ、率直に難しい。理解出来なかった部分が多数ある。それが悔しいなと思った。

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    2023年01月20日
  • その昔、N市では

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    戦後ドイツを代表する女性作家の傑作選。全15作。
    ふわっとしていて、灰色で、どこか不安になるお話のあつまり。「長距離電話」が好き。わかりやすかった。怖かったのは「いいですよ、わたしの天使」→

    もう、死ぬほど怖い。ホラーじゃないんだけど、なんか、怖い。こんなのおかしいよ!って叫びたくなる。読み直したらまた怖かった……。
    「ルピナス」は切ない。切なすぎる。「白熊」や「精霊トゥンシュ」「その昔、N市では」あたりは日本の昔話にありそう。

    「いいですよ、わたしの天使」はコロナ陽性が出てまぁまぁしんどいタイミングで読んで、だいぶんやられた(笑)怖かったよー。でもある意味1番印象残ったわ。たぶん忘れない

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    2022年12月23日
  • その昔、N市では

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    短編集15編
    不可解な,忍び寄る不安,不条理といった精神を軋ませるような世界が広がる.
    「白熊」「船の話」表題作が良かった.少しわかりにくかったけれど「四月」も面白い.

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    2022年12月23日
  • 乗客ナンバー23の消失

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    二か月前に航海中に失踪した少女が、同じ船の航海中に突然現れる。

    豪華客船に潜む謎の失踪事件、そして主人公の妻と子の自殺の謎。

    豪華クルーズ船の旅、それはステータスであり憧れの対象。一方で、確かにこの本にあるように、大洋航海中に飛び込めば捜索は困難で、自殺にはもってこいの場所である。さらに、いったん外洋に出てしまえば、次の寄港地までは閉ざされた空間となってしまう。
    憧れの場所とは似つかないこの現実が、物語の異様性を構築する絶好の舞台となった。

    読んでいて、投げやりになった囮捜査官という主人公マルティンの置かれた状況にやや違和感を感じるも、帯の宮部みゆき氏推薦「ジェットコースター・スリラー」

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    2022年12月21日
  • 刑罰

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    短編の切れ味が悪い。これは褒め言葉。澱のようにとどまり、ぞっとする。遅効性の毒のようにじわじわと心が歪に変形する感じ。

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    2022年12月14日
  • 漆黒の森

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    ドイツの作家「ペトラ・ブッシュ」の長篇ミステリ作品『漆黒の森(原題:Schweig still, mein Kind)』を読みました。

    「フェルディナント・フォン・シーラッハ」、「ハラルト・ギルバース」に続きドイツ作家の作品です。

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    取材で黒い森(シュヴァルツヴァルト)を訪れた編集者の「ハンナ」は、トレッキングの最中に女性の死体を発見してしまう。
    被害者は10年前に村を出て帰郷したばかりの妊婦だったが、胎児が消えていた。
    村に伝わる“鴉谷(からすだに)”の不吉な言い伝えや、過去の嬰児失踪事件と関わりが? 
    堅物の刑事と敏腕女性編集者が、閉ざされ

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    2022年11月26日
  • 犯罪

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    ドイツの作家「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の短篇集『犯罪(原題:Verbrechen)』を読みました。

    ドイツの作家の作品は… 「エーリヒ・マリア・レマルク」の長篇戦争小説『西部戦線異状なし』や、幼い頃に読んだり、聞かせてもらった「グリム兄弟」の童話『ヘンゼルとグレーテル』や『赤ずきん』、『ブレーメンの音楽隊』、『白雪姫』くらいしか手に取った記憶がないですね。

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    【本屋大賞翻訳小説部門第1位】
    グリム兄弟
    一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。
    兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。
    エチオピアの寒村を豊かにした、心

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    2022年11月25日
  • 弁護士アイゼンベルク 突破口

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    弁護士アイゼンベルク第2弾。

    恋人を遠隔操作で爆殺した容疑で、映画プロデューサーのユーディットが逮捕されてしまいます。
    偶々目の前でその逮捕劇に居合わせたラヘルは、ユーディットから弁護を依頼されて渋々引き受けますが・・。

    ユーディットが容疑者になった件の事件の経過と、5年前の女性惨殺事件とが交互に展開されるという構成は、前作同様ですが、2つの事件がどう繋がり合うのかも含めてグイグイ読ませるものがあります。
    そして、前巻で示唆されていた“ラヘルの過去”もこの巻で明かされます。
    前巻でのラヘルの元カレのハイコの匂わせ具合から、かなり深い闇なのかな、と思っていたのですが(しかもこの巻ではラヘルの

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    2022年11月23日
  • 終戦日記一九四五

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    戦争末期から終戦後にかけて書かれたドイツの作家ケストナーの日記。ナチスドイツでの人々の様子が、作家の細やかで皮肉のこもった筆致で書かれていて、同時代史料としてとても興味深かった。終戦後に強制収容所を生き延びた人物からホロコーストの実態を初めて聞いた際の驚きを極めて冷静に書き残そうとした様子がうかがえる。
    ケストナーが「一九四五年を銘記せよ。」と記したように、このような時代を書き残すことは作家にとっての責任なのかもしれない。

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    2022年12月16日
  • デーミアン

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    ネタバレ

    主人公の内面描写が細かい分、モヤっと感じることが多い作品でした。特に最初がそう感じられ、主人公幼少期の裕福で温かい世界と級友の貧乏で必死に生きている世界との対比は、互いの世界のルールは通じない。一歩足を踏み入れてしまえば、もう前と同じように戻ることはできない、という苦難と憂鬱さが描かれていました。にも関わらず、青年期に再度踏み入れていく、というジレンマは人間の複雑さを伝えてくれます。やがてデーミアンを通じて知る“自分の意思に従い生きていけるか”ということは、現代の私たちに共感できる場面が多いと思いました。

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    2022年11月07日
  • テロ

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    9.11なども経て創作された架空裁判劇。二幕終わりに観客に投票を促し、その結果で結末も変わる。二幕の検察、弁護士それぞれの主張がおそらく重要だが、劇として上演するには少し固いかもしれない。それまでの被告、証人の証言の方が自分の身に迫ってくるところはある。被告の行いを受け手にゆだねるやり口は、森鴎外の『高瀬舟』に近しいものもあるなあと。

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    2022年10月09日
  • 弁護士アイゼンベルク

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    読み応えありの、ドイツリーガルミステリ。

    女子大生の猟奇的な死体が発見され、元大学教授のホームレス・ハイコが逮捕されます。
    弁護士のラヘル・アイゼンベルクは、ハイコの友人のホームレスの少女から彼の弁護を依頼されますが、なんとハイコはラヘルの元彼で・・・。

    息もつかせぬ、先の読めない展開で一気に引き込まれます。
    中盤まで女子大生の猟奇殺人事件の件と、コソボから逃亡してきた母娘が大ピンチに陥っている様子が交互に展開されるのですが、これらの要素がどう繋がっていくのか・・・二転三転するプロットに続きが気になりすぎてページを繰る手が止まらん!という感じです。
    いかにも“バリキャリ”なラヘルのキャラも

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    2022年09月28日
  • 禁忌

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    本を閉じてカバーを外してじっくり眺めて、あ゛〜。そして最初のページから読み直して愕然、というか底知れぬ味わい。なんか凄い。これまでのシーラッハの作品らしさを感じながら、より真摯に人間の内面を見つめている。芝居にもなるみたいだけど、上演台本難しそう。芸術ってホントややこしい。読み終わって、あれ?アレ?ってページを前にめくりだす体験って素晴らしいかも。

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    2022年09月27日
  • 終戦日記一九四五

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    "数字が生きたり、死んだりするだろうか。ポーランドの広場でドイツ軍の機関銃の前に並ばされたとき、ユダヤ人の母親たちは泣いている子どもたちを慰めた。母親たちの列は数列と同じだろうか。 その後、精神科病院に入院させられた親衛隊分隊長は数字だろうか。"(p.14)


    "自他ともに理解することが必要だ。といっても、理解することは納得することではない。すべてを理解することとすべてを許すことは、決して同じではないのだ。"(p.241)

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    2022年09月18日
  • 聖週間

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    面白い。一気に読み切った。犯人と被害者との面識に少し違和感はあるが、この作者の登場人物の描き方でひとつの家族のドラマとしても成立する。ヴァルナーやミーケには応援せざるを得ないが、クロイトナーの小狡さもなんだか憎めなくなった。

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    2022年09月16日