酒寄進一のレビュー一覧

  • 刺青の殺人者

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    シリーズ第2作。
    ヴァルター警部とエヴァリーン弁護士がそれぞれの立場から殺人事件に関わることとなり、章ごとに視点が変わりながら話が進んでいく。

    前作同様、緻密な構成で、東欧そしてドイツと舞台を移動しながら話がテンポよく進み、全てが収斂していくラストまで全く飽きることなく読み進む。

    話しの完成度が高く、セバスチャン・フィッツェック、ヘニング・マンケルらと並ぶストーリーテリングの巧さを堪能できるので、他の作品も期待大。

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    2021年04月11日
  • 生者と死者に告ぐ

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    ネタバレ

    前作の、児童虐待と性暴力の話も胸が悪くなる話だったけれど、今回もまた勝るとも劣らない嫌な話。
    本来なら人類のためになる技術であるはずの臓器移植を、私利私欲のために行うという、何と愚劣な話。

    殺人を犯した犯人は、もちろん悪い。
    何しろ殺された人たちには何の落ち度もないのだから。
    では、犯人はなぜそれらの人を殺さねばならなかったのか。
    ここが、この作品の肝なのだけど。

    怪しい人が何人も出てくるのね。
    プロファイルされた犯人像に近い人が何人も。
    この人が怪しそうに書いているから、実はあの人が犯人なんじゃないか?と思わせておいての…?
    と、脳内で翻弄され、裏切られ、肩透かしを食わされ、ミスリードさ

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    2021年03月30日
  • 咆哮

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    ドイツミステリー。凍った湖で遺体を発見したのは外勤警官のクロイトナー。次に捜査担当のヴァルナー首席警部の自宅の屋根から第二の死体。どちらも口内から数字を示したバッジが発見された。並行して描かれるのは、昔。バックカントリースキーをしていたら、娘が転落し、救出しようと死にものぐるいの父親の姿・・・

    途中まではそれほど面白くなく、先が楽しみでもないのでやめようかと思った。しかし山岳遭難の方の関わりが分かると急に面白くなる。

    殺人の動機がこれほど読ませる小説はあまりないかも。

    下にネタバレ。


    ※ネタバレ

    スキーで転落した娘を救うために、夜半に山を彷徨ったペーターがやっと山小屋に辿り着いた。

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    2021年03月23日
  • 犯罪

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    同業者の友達に勧められて読む

    ベルリンって、こんなに治安が悪いの?と思ったが、いやいや、これはフィクションで、この描写がベルリンの全てではないと思い直す
    それでも、ネオナチや移民の存在感は日本では想像できないものだった

    著者が弁護士であることもあり、描写が細かく具体的でリアリティがある 被告人に対する視線にも共感が持てる

    「弁護人が証人に尋問する場合にもっとも重要なのは、自分が答えを知らない質問は絶対にしないということだ」
    そう、分かってはいるんだけど

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    2021年03月22日
  • 悪しき狼

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    ネタバレ

    今回の事件は、いつにも増して読み進めるのが辛かった。
    児童虐待。性暴力。
    何度も辛くて本を置き、続きが気になって再び手に取った。

    前作とは違って、オリヴァーは悩みを乗り越えたようだけれど、逆に帰って目立たなくなってしまった。
    オリヴァーのチームというより、ピアのチームだ。

    そしてこのシリーズは、社会の上辺にいる人たちの自己中心的な行動が犯罪を引き起こし、そして犯罪の影には必ず悪女が…というパターンになっている。
    今回はその犯罪の影、必要だったかな?

    今回の犯罪は根が深いもので、隠ぺいするためには手段を問わない犯罪グループが出てくる。
    が、目を覆いたくなるようなおぞましい暴力をふるう割には

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    2021年03月18日
  • 咆哮

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    没頭させていただきました。最後の方、失速?かと思いきや、なかなかの展開で面白かったです。恨んでるのはわかるけど、そもそも自分のせいでは?感が拭えません。検問の時とラストシーンの雰囲気で、クロイトナーの人となりがわかりますね。張り詰めた場面を和ませてくれてる感じです。南ドイツの冬の厳しさがひしひしと伝わります。いつか行ってみられたらなあ。

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    2021年03月18日
  • 夏を殺す少女

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    事故に見える殺人事件、自殺に見える少年少女の殺人事件、一見無関係な事件を追う女生弁護士と刑事。

    二つの事件が徐々に繋がっていくプロットが精緻に練り上げられていてラストまで一気読み。
    女性弁護士と刑事のドラマも過不足なく描かれているし、何より交互に描かれるそれぞれの事件が少しずつ真相に近づく過程が丁寧で、あまり読んだことのないオーストリア産のサスペンス小説だが完成度が高く映像化にも向いている。

    テイストとしてはセバスチャン・フィジェックに少しスパイスを効かせた感じ?

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    2021年03月13日
  • 咆哮

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    久々に一気読みした。酒寄氏の訳に間違いないし、アイゼンベルクシリーズとは違った趣も感じた。犯人の目星はつくミステリーだが、読みものとしても面白かった。

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    2021年03月11日
  • 穢れた風

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    ネタバレ

    風力発電に関する推進派(政府・企業)と反対派(市民)の対立。
    しかし、想像を絶するやりあい。
    自分達の主張を通すためには手段を取らないそのやり口は、どちらにも嫌悪を抱かせる。

    風力発電は、環境に優しい再生可能エネルギーだと思っていたので、環境破壊を理由に反対運動が起こるとはびっくり。
    「渡り鳥の渡りのルート上には風車を作らないで」と作家の梨木香歩が言っていたけど、それ以外にもいろいろ問題はあるのだな。
    そして、地球温暖化という不安に簡単に踊らされてはいけないと改めて思う。
    もちろんエコは大事だし、何事につけ踊らされるのはよくないけれど、「地球温暖化」というのは結構な切り札になるので。

    でも

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    2021年03月03日
  • 弁護士アイゼンベルク

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    ネタバレ

    馴染みがないドイツの人名は難しいし、最初は主人公のラヘルがちょっと苦手かも…と思ったのだけど、面白かった。
    現在の事件と過去の出来事がどう繋がっていくのか気になり、一気読み。
    ラヘルには難しい年頃の娘や別居中の夫がいて、それぞれとの関係や日常部分も興味深く読んだ。
    2作目も気になる!

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    2021年03月02日
  • 死体は笑みを招く

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    ネタバレ

    動物園でバラバラ死体が発見される。
    被害者は、カリスマ高校教師で環境保護活動家。
    熱い正義感と引くことを知らぬ行動力で、学生たちの圧倒的な支持を受けている半面、煙たく思う大人たちも多い。

    しかし知れば知るほど彼自身、そして彼をめぐる二人の女性、さらに彼女たちに振り回される男達の、人間の嫌な面が露わになる。
    前作の「悪女は自殺しない」でもそうだったけれども、狭い人間関係の中で嫌な面を見せつけながら繋がっていくのは、読んでいて結構しんどい。
    被害者に心酔する高校生たちも、恋愛のもつれ、嫉妬、目的の違いなど、一枚岩ではないことがわかってくる。

    今作で気になったのは、ピアの恋愛事情。
    別居している

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    2021年02月24日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    事件が進むにつれ、一見残忍に見える犯人が、法の僅かな落とし穴によって如何ともし難い苦痛を味わっていることに気づく。重厚な後味を残す一冊でした。

    所々、表現が長ったらしく退屈する文があったので星4にしました。

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    2021年02月24日
  • 森の中に埋めた

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    邦訳が出るたびに手にとっているドイツのミステリシリーズ。毎回書いてるんだけどこのエピソードが好きで...ソーセージ職人と結婚した作者が夫の店を手伝う傍ら趣味で書いて店頭に置いていたものが出版社の目に止まっていまでは大人気シリーズになっているという警察小説。大都市フランクフルトの近郊の街を舞台にもともとその辺りの領主を先祖に持つ貴族階級出身の男性警官とそのパートナーの女性警官を中心としたシリーズ。思えば最初の頃はドイツ人で固められていた警察も気がついたらトルコ系やシリア人の刑事がいるのはどこまで現状を反映しているのだろうか...。さて、本作ではキャンプ場でトレーラーハウスが爆発し男の死体が発見さ

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    2021年02月23日
  • コリーニ事件

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    ドイツの映画を観たいと思い探していたところ、このタイトルに行きつき、原作であるこの小説をまず読んでみることにした。
    理解したことを書いてみると、戦争中の殺人は、命令だから罪にならない。指導者側にいたとしても時効がある。
    そのような現代の法と照らし合わせた矛盾を暴く、重いストーリーだった。
    私のこのような理解があっているのかどうかわからない。
    映画を観てみたい。

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    2021年02月08日
  • 悪女は自殺しない

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    ネタバレ

    「深い疵」「白雪姫には死んでもらう」と、日本での出版順に読んできて、いよいよ出版順では3番目ですがシリーズ最初の本作に。
    さすがにシリーズ最初なので、オリヴァーとピア以外の捜査班の面々は大人しめ。
    フランクは最初から仕事の好き嫌いというか、手抜きをするタイプだったのね。

    しかし、最後の最後まで犯人の見当が使いないのは今と変わらず。
    だって怪しい人が多いんだもの。
    っていうか、怪しくない人がいない。
    みんなが彼女を殺す動機を持っている。

    そんな人にはなりたくないなあ。
    騙されてバカを見るのは嫌だけど、人を騙してバカを見させるのって、張りぼての人生のような気がする。

    正義と法律の限界に引っ掛

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    2021年02月05日
  • 森の中に埋めた

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    まず新人が優秀でよかった。仲間内でいがみ合う展開は必要ないと思うし嫌いなので。
    今回は登場人物が多い。一度見失うと迷子になるので無理しないでゆっくり読むべし。
    女難でヘタレのオリヴァーは、ピアに泣くんじゃないかと心配されつつも頑張っている。
    あと、表紙が…キツネ°・(ノД`)・°・
    動物好きとしては、辛すぎるので動物ネタは勘弁して°・(ノД`)・°・
    カイのイメチェンは最後まで謎。気になる。
    私もヌテラは好きだ!

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    2021年01月21日
  • 森の中に埋めた

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    ネタバレ

    登場人物一覧が5頁!
    翻訳ミステリに慣れてない人にはきついか⁈
    でも時間をかけて読む価値あり。
    読み続けてきたファンは特に。

    オリバーはダメダメな時代もあったけど、なんて過酷な人生をおくってきたことか。
    長年の謎の一部が明らかになる。

    彼と周囲の人々の取り戻せない長い時間を思うと胸が締めつけられる。

    女難の相があるのか?女に弱すぎるのか?
    そんなオリバーに今度こそ幸せが…やっと…ほんとに?

    ピアの有能さが際立ち、新しい部下の活躍も期待できそうでうれしい。
    捜査本部内に足を引っ張る奴がいる設定は好きではないが、今回の署長は許容範囲。

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    2020年12月28日
  • 犯罪

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    「物事は込み入ってることが多い。罪もそういうもののひとつだ」読み始めたら一気読み。犯罪に関わった人たちの人生を語るこの途轍もなく面白い元弁護士による短編集は不思議な気持ちにさせる。弘兼憲史『人間交差点』か安倍夜郎『深夜食堂』みたいな味わいだ。登場人物は様々で極悪人もいれば誠実な人、運が悪いだけの人、精神病の人もいる。実録のようなリアルさだ。気になるのは側から見ると気の毒な人たちの話。極貧の中で育った乞食と立ちんぼの恋と相手を守るための犯罪。愛するがゆえに妻を殺さざるを得なかった老人の気持ち。これはおセンチな話ではない。彼らは刑罰より大事なものを守ろうとした。それを守った時に目的は達成され犯罪は

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    2020年11月22日
  • コリーニ事件

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    このドイツ人著者の作品を読んだのは「犯罪」に続いて2作目。この作品をきっかけにドイツ政府も動いたというから衝撃作ですね。殺人事件の裁判を通して、過去のナチ時代と向き合った今作は、ページ数も少ない分内容も凝縮されている。

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    2020年11月12日
  • ベルリン1919 赤い水兵(上)

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    20世紀前半ドイツの3つの転換期を、激動のベルリンで生きる、貧しい労働者一家の目線からとらえた『ベルリン3部作』。
    「ベルリンは晴れているか」の深緑野分さんも推薦するこの作品に大変興味を持ち、1919上巻を読んでみた。
    前半、取り巻く背景が少しややこしく、ちょっとだるいかなぁ・・・って思ってたのが、終盤あたりから、「ヤバい、これ、めちゃくちゃ面白くなる」と感じてきました。
    そして、ドイツの歴史を頭に入れて読んだ方が更に面白くなると思ったので、ドイツの歴史を勉強してから下巻、そして1933,1945にうつろうと思います!

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    2020年11月05日