酒寄進一のレビュー一覧

  • デーミアン

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    ネタバレ

    少年時代のシンクレアの心中には共感できる部分があったが、青年時代の心の探求の部分では、彼の心中から少し遠ざかってしまった。あまりに深く自分の心の中を考えすぎているように感じたが、人間はその自己を知るということが必要なのだという。私はこの時代を知るものではないので、シンクレアとの乖離を感じるのかもしれない。
    心について深く考えることは自己の反省につながり、延々と自分の嫌な部分を思い出すループに陥る気がしてならない。この反省の先に、シンクレアのように、何か運命を得ることができるのだろうか。

    印象に残っているところは、「人は夢を見て生きている。しかし、多くの人が見ている夢は自分自身の夢ではなく、他

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    2020年10月10日
  • コリーニ事件

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    映画が気になってたのですが劇場に行けず。なので、原作を読んでみました。
    全くと言っていいほど無駄がなく、淡々と物語が進みます。一気読みです。面白かった!著者の他の作品も読んでみたい。

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    2020年09月29日
  • ベルリン1945 はじめての春(下)

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    クラウス・コルドンの「ベルリン」三部作の第三作。
    一作目の1919ではゲープハルト家の長男ヘレ少年の目から第一次大戦の敗戦と王政の崩壊を、二作目の1935ではヘレの弟ハンスの目からナチスの台頭を描いた。そして第三作はヘレの娘である少女エンネの目線でソ連軍の前に崩壊していくナチス、ベルリンの街を描く。
    ヒトラーとナチスの栄光が翳りを見せ、敗戦の色濃いベルリンの街。人々は毎晩空襲を恐れ、一夜明けるごとに街は瓦礫と化していく。
    そんな中、それでもナチスを信じる人々、ナチ党に入党し、その手先となって働いてきたにも関わらずベルリンに押し寄せてきたソ連兵からの迫害を恐れてその過去を隠そうとする人々。そして

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    2020年09月21日
  • 悪しき狼

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     オリヴァー&ピアシリーズ。
     この作品で翻訳されている作品はすべて読み終えた。

     このシリーズのおもしろさは、やはり探偵役であるオリヴァーやピアたちの人間らしさというか、彼らの人生が事件より大きな比重を置いているところだろうか。
     新本格だと90%以上が本筋の事件の謎やトリックに費やされている気がするが、このシリーズだと40%くらいで、他はオリヴァーのままならぬ妻との関係だったり、ピアののろけだったりする。また、探偵役は超人ではなく、しばし誤るが、そこもまた、しょうがないだろうという気もしてしまう。
     この先も楽しみなのだが、もういちど出版刊行順に読み直したくなるシリーズである。

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    2020年09月19日
  • 生者と死者に告ぐ

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    ネタバレ

    オリヴァ―とピアシリーズの第7作。

    犬と散歩中の老女がいきなり射殺される。
    かなりの長距離から。
    翌日には、祖母が孫の目の前で同じく射殺された。
    「仕置き人」を名乗る者から死亡通知が届くが、
    被害者の共通点は、犯人の狙いは。

    ピアは恋人とバカンスに行くところだったのをあきらめて、
    連続殺人を追うことにする。
    オリヴァーは署長に事件分析官を押しつけられ、
    チームはいらつくことになる。

    三人目の被害者が心臓移植を受けたと分かった時点で、
    移植関係の動機だと見当はついたが、
    そこからが意外と長かった。

    義母からの遺産管理の申し出を受けることにしたオリヴァーの生活が
    今後どうなるのかも気になる

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    2020年09月15日
  • デーミアン

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    浪人中の夏休みに読んだ。全て理解できた訳では無いが所々で自分の思いと重なり、心に残った。大学に行って時間ができたらじっくりと再読しよう、次は高橋健二訳でも良いかもしれない、あとニーチェについても学びたい。この文庫の訳は非常に読みやすかった。

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    2020年08月25日
  • 弁護士アイゼンベルク 突破口

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    過去と今の二つの物語が同時進行するのが、このシリーズの特徴なのですね。前作に続き、この作品でも、その様な物語が展開されます。それと、最後にどんでん返しが起きる展開も、このシリーズの特徴です。

    さて今回は、事件もさることながら、アイゼンベルク本人にまつわる驚く話も明らかにされます。ちょっとビックリ。

    それと、相棒?の探偵も出てきて、今後の作品でも、その探偵が出てくることを期待です。そうすれば、話が広がるしね。

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    2020年07月28日
  • 罪悪

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    ふるさと祭りで突発した、ブラスバンドの男たちによる集団暴行事件。秘密結社にかぶれる男子寄宿学校生らによる、“生け贄”の生徒へのいじめが引き起こした悲劇。猟奇殺人をもくろむ男を襲う突然の不運。麻薬密売容疑で逮捕された老人が隠した真犯人。弁護士の「私」は、さまざまな罪のかたちを静かに語り出す。

    第二短篇集。飛ばし読みには向いていません。じっくり味わった。

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    2020年07月04日
  • 生者と死者に告ぐ

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    ネタバレ

    オリバー&ピア、シリーズ、深い疵いらい2冊目を読んでみた(刊行順としても翻訳順としても無茶苦茶だが)

    脳死と臓器移植の問題に切り込んでいくのが主題。金と名誉のために人の死の尊厳をおろそかにしていいのか?そういう結構重くて深いテーマを前面に出しつつ、無差別(と思われる)狙撃殺人事件を追うドイツ警察の捜査ミステリーを描く。

    ちょっと長くて飽きてくるところと、登場人物の名前を覚えきれず誰が誰だか分からなくなりそうになる、という瑕疵もあるが、それ以外は非常に楽しめるし読みごたえもある小説。

    ドイツ人っていい意味にも悪い意味にも真面目だなぁ。日本人の几帳面とはまた違う頑固な真面目さ。警察の側にも犯

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    2020年07月02日
  • ベルリン1933 壁を背にして(下)

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    コルドンのベルリン三部作の第二作目。
    前作は1919年、第一次大戦末期のドイツ革命が起き、帝政が崩壊し、共産主義による貧困からの脱出を夢見るベルリンの人々の姿を10代の少年ヘレの目線で描いた。
    第二作は一作目でまだ赤子だったヘレの弟、ハンスが主人公。
    世界恐慌と、ベルサイユ条約の賠償金によって貧困に喘ぐドイツ。ドイツ共産党とドイツ社会民主党は反目し合い、ヒトラー率いるナチスの台頭を許しつつあり、町にはナチスに入党し突撃隊の隊員となって、職場の仲間に対して脅迫行為に及ぶ者たちが増えていく。
    そして、予想を裏切ってヒトラーがヒンデンブルク大統領によって首相の座につき、独裁政権への着実な一歩を踏み出

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    2020年07月01日
  • 犯罪

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    一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。―魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。

    「コリーニ事件」に続いて、翻訳一作目を読む。うまい。

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    2020年06月28日
  • 弁護士アイゼンベルク

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    面白い!

    ドイツの推理小説と、日本では数が少ない作品ですが、複数の異なる国が地続きであるヨーロッパ特有の背景も物語に盛り込まれていて、それがこの作品の伏線にもなっています。

    いやぁ、結末(の一歩前)は「そう来たか」と。複雑な事件を解決したのに、まだページが結構余っていたので「変だな?」とは思ったんですよね。

    二作目も翻訳されている様なので、読んでみたいと思います。

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    2020年06月26日
  • コリーニ事件

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    新米弁護士のライネンは、ある殺人犯の国選弁護人になった。だが、その男に殺されたのはライネンの親友の祖父だったと判明する。知らずに引き受けたとはいえ、自分の祖父同然に思っていた人を殺した男を弁護しなければならない――。苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士マッティンガーが法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。そこで明かされた事件の驚くべき背景とは。

    映画が公開されるのか、最近コマーシャルをよく目にするので、読んでみた。中編とも言える長さだが、重い。

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    2020年06月14日
  • テロ

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    "モラル、良心、健全な理解力、自然法、超法規的緊急避難、どの概念も抵抗力がなく、揺らぎがあります。いかなる行動が今日正しいのか、そしてわたしたちの考えたことが明日もなお、いまと同じように有効かどうか、はなはだ心許ないのが現実です。"(p.106)


    "蒙を啓かれた民主主義が、それでもテロリスト、つまりわたしたちの社会を破壊しようとしている人たちに対応するには法という手段しかない、とわたしはいまでも確信しています。"(p.153)

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    2020年06月06日
  • テロ

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    トロッコ問題、超法規的緊急避難

    【P158】ベンジャミン・フランクリンの警告「安全を得るために自由を放棄するものは、結局どちらも得られない」

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    2020年04月24日
  • 弁護士アイゼンベルク 突破口

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    女性弁護士ラヘルは知り合いとは言え仲が良いとは言えない映画プロデューサーのユーディットから弁護を依頼される。恋人を爆弾で殺したという容疑。状況証拠は沢山ある。調べてみると、誰か別人が殺したと思えなくもないが、ユーディットも怪しい。彼女が5年前に参考人となった殺人事件も交互に描かれると・・・

    面白いと言えば面白いし、事件がちっちゃいと言えばちっちゃい。

    動機や方法などかなり読ませる。ただ背後に巨悪が潜んでいる感じがしながら読んでいたのでその辺は肩すかし。しかし、悪いわけじゃない。そんな期待をしていた方が悪い。巨悪じゃなく個人的な話だということを前提に読めば、相当面白いミステリーだった。

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    2020年03月16日
  • ベルリン1919 赤い水兵(下)

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    「ベルリンは晴れているか」の作者深緑野分さん推薦の クラウス・コルドン 「ベルリン1919 赤い水平」は、第一次大戦で敗色濃厚となったドイツ帝国の1918年11月から19年のベルリンを舞台にした小説。
    戦争に疲弊した状況を打破しようと水兵が蜂起し、ドイツ革命が起きる。しかし帝国の転覆と同時に主導権争いが起き、当初は優勢と思われていたドイツ共産党の前身スパルタクス団は劣勢に。そして帝政時に権力を握っていた政治家たちが力を取り戻し、ベルリンは激しあり市街戦へと突入していく。これは今から見ると敗戦国ドイツが混迷の中でナチスの台頭を許す、その一瞬前、それとは別の道を歩めたかもしれないベルリンの混沌を貧

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    2020年03月15日
  • 白雪姫には死んでもらう

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     白雪姫と呼ばれた少女たちを殺した罪に問われたトビアスは、無実を訴えた。けれども有罪となり、罪を償い、生まれた小さな村に戻った。
     両親は殺人者の親として嫌がらせを受け、大切にしていたレストランも閉店していた。

     出所した元少年の身の回りに不穏な嫌がらせが起こる。母も何者かに襲われ意識不明の重体になる。

     トビアスは過去の事件において無罪であろうことは読者にはすぐにわかる。
     では誰が殺したのか?

     小さな村の中のしがらみのある人間関係は陰鬱で、外から引っ越してきたメアリー(殺された白雪姫に似ている)が、風通しのいいキャラクターで魅力的だ。
     過去を知らぬアメリーがトビアスに惹かれるのも

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    2020年03月03日
  • 白雪姫には死んでもらう

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    ドイツのホーフハイム刑事警察署オリヴァー主席警部とピア警部を始めとする群像小説。ずっと前に読んだ「深い疵」は元ナチスの老人殺害事件を扱った謎解き要素の強い小説で面白かったと記憶してる。WEB本の雑誌の連載で杉江松恋氏が「(最新作が面白いのだから)過去作に遡る必要なし」と力説していたので、「穢れた風」を読み始めたものの、オリヴァーがコージマと別れてたり、いろいろ気になるので遡って読むことに。
    結果としては、しっかり楽しめた。登場人物多くて混乱するのは相変わらずだけどね。
    次から次に怪しい人物(しかも名前が紛らわしい…)が登場し、最終的には村全体が犯人なのか、って怖くなる。
    並行してオリヴァー、ピ

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    2020年02月28日
  • 深い疵

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    翻訳第1作だが、オリヴァー&ピアシリーズとしては3作目。
     前に読んだ「生者と死者に告ぐ」より前の話。であるがゆえに「あれこの人は昔こうだったのか」的な驚きがある。

     謎の数字を記されて殺される老人の謎。捜査がままならない状況から進んでいくミステリ。なぜ老人が次々と殺されるのか。最初はまったく見えない点が線になると、恐ろしい理由が明らかになる。
     そうして、その理由の裏側にある深い疵を負ったとある人物の行動が……もう本当に、それだけでこの物語成立してもいいかもって思える。
     単純な謎解きではなく、人々の生きている証が見えるところがこのシリーズの面白さだと思う。

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    2020年02月28日