酒寄進一のレビュー一覧
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トーマスラープ 「静寂」
副題「ある殺人者の記録」とあるが、殺人者の告白や事件解決の物語ではない。殺人者を否定は していないことに 違和感はあるが、宗教的倫理感と切り離して 死を取り上げている。
殺人犯 カールが「死とは何なのか」を 確信していく心理過程を経て、生への希望を描いている。タイトル「静寂」の意味は、母胎であり、愛の象徴であり、親から子へ、生を贈る場所 と捉えた。
最初読んだ時、誤訳かと勘違いしたが、エピグラフと序文の意味は 最後の章でスッキリする。2部 の「死とは何なのか」の内省は かなり面白かった。
カールにとっての静寂の場所
*暗闇や水の中〜何の不自由もない我が家
*地下室〜カールが選んだ避難場所
*修道院=死が具象化する場所→死を裁く場所ではない、救済の道、神への道→カールにとっての我が家
1部 確信「言葉は一度でも口にしてしまえば、もう取り返しがつかない。願いも、呪いも、祈りも」
2部 愛「ある者の成功が自分の行動でなく、他者の行動に依存する決定的局面をゲームと呼ぶ」
3部 希望「逃走は前進に等しい」
「異常なものも普通になり、規則違反が規則になり、正常な状態になる。順応するのは人間の人間らしからぬ最大の才能〜生き延びるコツであり、破滅の原因ともなる」
死とは
*死とは 新しく始まる日
*死は こっそり一緒に歩いているとも知らず、人間は いつまでも生きていられると思っている
*死は奪われることはない。死は 他人の人生と結ばれ、それに固執することから解放してくれる
*死は生からの出口というだけでない。人生の道そのもの
*殺人者=死をもたらす仲介者〜救いとなる不思議な贈り物を手にした使者
*大事なのは生きている者でなく、死んだ者の幸福だ
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Posted by ブクログ
ネタバレ200ページぐらいの本なのだが…日本では、こんな本は書けないんじゃ無いかと思うかな。
無益な戦争、ナチス時代を背景にした悲劇。そして法律の落度…歴史に翻弄される人々…中々難しい本だと思う。
小説には、内面的な描写はあるけど、なんだろう著者の描写は、読者側が読んで想像するような書き方が、とても印象的だったので、深読みしてしまった…嫌いじゃないし、著者が何となく答えを教えてる、ちっとな文章と中々良かった!
読んだ事の無いタイプの本。外国作品は、登場人物ごちゃごちゃになるので、あんまり読まないが、この作品は数人だけで読みやすくて良い。
気になったら読んでみてください! -
Posted by ブクログ
文章を読んでいる最中に、あ、これ『テロ』の作者だったのか、と気付く。
奇矯な作品を世に出しては、有名になってゆく写真家ゼバスティアン。
前半は、彼の独特な感性を作るに至った少年期と、ゼバスティアンと適当な距離を保つことの可能な女性ソフィアとの出会いが語られる。
のだが。
ある時、唐突にゼバスティアンは殺人鬼と化し、まずは読者に「彼は殺人鬼か、否か」の採決を委ねられる。
ここから、後半、ゼバスティアンを弁護するよう依頼されたビーグラーの登場で、一気に話が面白くなってゆく。
私は先に『テロ』を読んでしまっているのだけど、この問いかけに思わず息をのむ。
「テロリストがベルリンに核爆弾を仕掛けたと考えてみてください。それも、あと一時間で爆発する。テロリストの身柄は確保しているが、爆弾の所在がわからない。わたしは決断に迫られます。犯人を拷問してでも、四百万人の人命を救うべきか、手をこまねいて、なにもしないでいるべきか?」
「人命を救うための拷問」は是が非か。
ビーグラー弁護士の舞台を、まずは読んでいただきたい。(もっとも、ゼバスティアンのケースと、テロリストのケースと、十歳の女の子が誘拐されたケースをひとまとめにして良いかは疑問だけど)
さらに、個人的には著者のあとがき「日本の読者のみなさんへ」も読むべき。
「日本の僧侶、良寛(一七五八ー一八三一)は死の床で、介抱する尼僧にこんな句を遺したといわれています。
うらを見せおもてを見せて散るもみぢ」
ドイツの作家さんから、良寛!?と、たまげた。
続き、読みたくなりませんか。
私は『犯罪』に戻っていきたいと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレオリヴァ―とピアシリーズの第6作。
異動を願い出るとか言っていたオリヴァーも、
ようやく私生活が落ち着いてきたようで、良かった。
とうとう実家の離れ、御者の家からも出られそうだし。
幼馴染のインカとの関係は、まだ一波乱ありそうだけど。
とはいえ、
鑑識課長クレーガーとピアのコンビが活躍して、主役の座を奪われそう。
ラストが、事件の解決というよりかは、
犯人たちへの復讐の銃弾と、うち一人の逃亡という結果に終わったのには、
残念、かつ少し失望した。
印象的だったのは、
罠にはめられた元弁護士が、
刑務所に送られ、職も家族も失いながら、
人生をあきらめず無実を証明するべく闘い続けたこと。
あとはSATのような特別出動コマンドが、
容疑者の家に突撃して、老婦人に催涙スプレーでやられたことかな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ異能を持って生まれた人間の生涯を描く傑作が、また一つ誕生した。例えば料理の才で人を操るハリー・クレッシングの『料理人』。あるいは世にも稀なる嗅覚を活かした調香の術を使って、ある野望を果たすパトリック・ジュースキントの『香水 ある人殺しの物語』。いずれも寓話的な作品世界の中で、主人公の超人的な才能を描くことに筆が費やされ、作中の登場人物ばかりか読者までもがその魅力に翻弄される頃には、取り返しのつかない事態が起きているという話である。
蝶の羽ばたきが聞こえ、雨音を銃弾の雨あられのように感じ、母親の声がナイフのように鋭く耳に突き刺さるほど異様に研ぎ澄まされた聴覚を持って生まれた人物が主人公の本書も、基本的にはそうした趣向を踏襲した作品だろう。短かい章立てで“次”を予告し読ませるリーダビリティ、荒唐無稽のようでいて奇妙にリアルな主人公の異人ぶりの描写も見事。人々から迫害され、荒れ野に送り出され断食し、死ぬ寸前まで追い込まれながら、復活する。まるでキリストをなぞらえたように数奇な運命を辿る主人公は、前述の2作の中でも、とりわけ『香水 ある人殺しの物語』と共通する部分が多い。個人的な怨恨を越えた、いやそれよりもむしろ怖ろしい、人を生きとし生けるものとして認識しない動機による大量殺人という厄介な代物をそれなりに納得できる形で描いた力量も同様。
ただし、『料理人』や『香水』の主人公が、世界を支配するが如き欲望を持った悪魔的な人物であったのに対し、『静寂』の主人公にはその種の欲望がないというところに大きな違いはあるだろう。ゆえに、悪魔的な人物像を補完するように衒学的な記述が溢れていた『香水』とは違い、読者はひたすら無垢な主人公と一体化して、命運を共にするしかない。母親との死別を契機とし、一切の打算や妥協を許さず、“静寂”を追究する主人公の異常なまでの潔癖性や純心さは、例えばコーネル・ウールリッチの『喪服のランデヴー』の主人公の狂おしさを思わせる。更に付け加えれば、最初は怪物としか描かれていなかった主人公が、非道な殺人を繰り返しながら、一方で次第に人間性を獲得していくことになるのが非常に興味深い。つまりこれは、一種のビルドゥングスロマンなのだ。
そして、そうした主人公に肩入れすればするほど、宿敵である刑事を通して終盤に再会を果たす、ある人物との邂逅に衝撃を受けるだろう。巧みなツイストである。しかも、そこで終わらず、最後から2ページ目で作者の本当の企みを知った読者は、必ずや冒頭を読み返すことだろう。題名から想像される奇妙な味に止まらない、娯楽小説の極みとすら思える。
ただ、主人公の行動はともかく、異能が途轍もないレベルでない分、発達障害の一種と感じとれなくもないから、発達障害の偏見を助長する作品と思える部分があるのは残念だ。巧みなホラ話としてのストーリーテリングと現実に存在し得るレベルの障害の組み合わせが、短絡的な因果律を想起し兼ねない。さらには前年に優生学的な思想に基づく大量殺人が日本で発生したことも決定的だった。相当面白い作品ながら、翻訳が出た2017年に多くの賛同が得られず、ひょっとすると忌み嫌われすらした理由は恐らくそこにある。 -
Posted by ブクログ
~2008年11月 ドイツの小さな村で人骨が発見された。人骨は11年前に起こった連続少女殺害事件の被害者のものだった。死体が見つからないまま10年の刑を受けたのは、同じ村に住む男
トビアス・ザルトリウスだった。彼は冤罪を主張していたが状況証拠や周りの友人、近所の住民の証言はすべて彼の不利になるものばかりだった為、彼は無念のまま刑に服した~
まったく読まないわけではないのですが、正直外国文学は苦手です。ストーリーに入り込む前に登場人物が複雑だと覚えきれない・・・その上、愛称であったり俗称が何の説明もなく出てくるのに困惑してしまう。トビアス・ザルトリウスという名前をようやく覚えた頃に「トビー!」と書いてあっても2ページくらい読み過ぎてから「トビーってトビアス・ザルトリウスの事か!」と何度もページを最初に戻してしまう。本当に外文が好きな方からすれば「何を言ってんだ?」と鼻で笑うのでしょう。でも切実なんです。「だったら読まなきゃいいだろ?」そうはいかない!
「白雪姫には死んでもらう」
こんなキャッチーなタイトル読むしかないじゃないですか!
外文を好きな方だけに届けるのでは読者層は広がらない!でもライトな層を取り込めればそこにはホラ!アフリカで靴も売れるし、アラスカで氷も売れる!本屋で本が売れるんですよ!・・・アレ?
~村に戻った彼を待っていたのは殺された被害者家族を含んだ彼に不利な証言をした村人達の隠すことのないむき出しの悪意だった。「俺は、本当は彼女たちを殺してしまったのだろうか?」トビアスは真実を求め動き出す。彼の無実を信じるのは幼馴染のナターリエと実母から厄介払いされてやって来た不正に敏感な少女アメリー。「あなたがふたりの少女を殺したなんて信じられないってこと」
捜査に当たる刑事オリヴァー&ピアも当時の資料を見て疑問を感じる。「トビアスは本当に少女を殺したのか?」小さな村で起こった連続殺人事件の真相はどこにある~
個人的な意見ですが外文の世界に入り込むにはベタなキャラ付けがいいんじゃないかと思いました。
トビアス・ザルトリアスはブラット・ピット!みたいにね。少女アメリーはナタリー・ポートマン!レオンの頃の!的なね。
※あくまでも個人の意見です。そして若干古いです。