坂井希久子のレビュー一覧

  • おじさんは傘をさせない

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    おじさん達が切ない。石清水の回、エース営業の門前がいつかおじさんになったらめっちゃ悲惨な人生送ってますように…

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    2025年02月27日
  • 注文の多い料理小説集

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     アンソロジーは初めてかも。柚木さんの『エルゴと不倫鮨』が最高に面白かった。柚木作品に限らず、今まで読んできた短編の中でも1、2を争うほど好き。おしゃれな創作寿司の店で完全に自分のペースに持っていくママがカッコ良すぎる。次点は『色にいでにけり』と『夏も近づく』。なぜかお彩は北川景子で脳内再生された。料理がテーマなので、ほっこりと終わる話が多い。よだれが出そうなほど美味しそうな料理の描写は柚木さんがダントツだった。

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    2025年02月09日
  • ふうふうつみれ鍋 居酒屋ぜんや

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    ついに、妊娠したのか!と思う笑えるキャラ(癒しキャラ)のおえんさんが妊娠。

    寅次郎さんの縁談があり揺れるお妙さん。
    こういう昔のゆるキュンがたまらない。

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    2025年02月01日
  • あったかけんちん汁 居酒屋ぜんや

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    重蔵さんと、おたえさんとの関係性がわかってしまいちょっと驚き。読み進めていくうちになんだか私もぜんやのお客さんになってきたような気がします。

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    2025年02月01日
  • 月草糖 花暦 居酒屋ぜんや

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    大奥勤めをしていたお栄が林家に帰っちゃいましたね。町人になってどうなりたいのか、武家から町人になる覚悟がきちんとできてなかったんだね。まだ16だもんね、部屋住とはいえちゃんと稼いでそれなりに世間を見て考えていた只次郎とは違うよ。熊吉と女郎さんの話、女郎さんにしてみれば愛情でも友情でもなく哀れみをかけられたと感じたんだろうな。お梅ちゃんの輿入れやっと具体的に動き出してよかった。

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    2025年01月30日
  • 虹猫喫茶店

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    喫茶店でほっこりかと思いましたが思っていたのとは違く、猫の去勢や保護に関しては描いていました。人間のルールなので猫にとってはたまったもんじゃないですよね。でも野放しも難しいし…
    考えさせられる内容でした。

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    2025年01月30日
  • つばき餡 花暦 居酒屋ぜんや

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     生き生きと暮らす江戸の町人、女性たち。今はなかなか口にしないかなあ、四季折々の料理。作ってみたくなる。
    主役が料理の時代小説。人が生き生きと生き、そして味わい、お腹と心を満たす。

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    2025年01月29日
  • 赤羽せんべろ まねき猫

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    実の娘には冷たかったのに他人は助けていた父親。そんな父親を慕い、まねき猫は繁盛している。が、明日美の気持ちを思うと求や常連の男どもにはイライラさせられた。親子なんて何があるか分からないのだから容易に立ち入るべきではない。ただ、それでもそんな周りの人たちに囲まれて明日美はなんとか生きていく。明日美1人ではきっと潰れていたと思う。結局人は周りに支えられているんだなあ…

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    2025年01月28日
  • おひとりさま日和 ささやかな転機

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    ひとり暮らしには寂しさが漂うものだけど、考え方を変えるだけで、また違った人生が始まる。
    ペットに癒されたり、趣味に出会ったり、友達付き合いも無理せずに。
    そんな風に、ひとり人生も楽しい、と思えるといいよね。

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    2025年01月28日
  • 江戸彩り見立て帖 粋な色 野暮な色

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    苅安との賭けで湊鼠改め深川鼠を売り出すことになったお彩と右近。辰巳芸者の嫁入り衣装のためにひとはだぬぎ、読売を使って煽ったり。ファッションリーダーにまず着てもらってメディア戦略、といつの時代も流行の作り方は同じなんですね。お彩の幼馴染のお伊勢ちゃんの婿騒動。イケメンに言い寄られても中身を見て選んで想い人が他人から笑われてもあえてその良さを口にしなかったお伊勢ちゃん、お幸せに。

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    2025年01月19日
  • 江戸彩り見立て帖 朱に交われば

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    自分に似合う色教えてほしいなぁ。なんとなく好きな色または無難な色を着るのですがもしかしたら思わぬ色が似合うかも、それをビシッと見立ててくれたらお金払っても惜しくないなぁ。そんなことを思いながら読んでる今作。番頭さん男の嫉妬はみっともないですよ、と言いたくなる所業。奉公人達がお彩が教えてくれない、と思うのもしょうがないけど感覚的なものは難しいよね。元々理論で始めたことじゃないし。流行りを作るのは次巻に持ち越しですね。

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    2025年01月17日
  • 江戸彩り見立て帖 色にいでにけり

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    火事で視力と仕事を失った摺師の父と暮らすお彩。色に関しての才気を右近に見込まれて新作菓子、見合いのための着物の見立て、花魁の仕掛けなどの仕事を持ち込まれる。江戸時代の色の名前の豊富さに驚く。しかもどれも素敵な名前でどんな色か調べたくなる。今でも細かく言えばきちんとあるんだろうけど大雑把な色分けしかしてない。色見本帳を見ながら読みたい一冊。

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    2025年01月12日
  • 菊むすび 花暦 居酒屋ぜんや

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    ネタバレ

    「居酒屋ぜんや」のセカンドシリーズ、“花暦 ”・第七弾。

    別嬪女将・お妙が切り盛りする居酒屋〈ぜんや〉が舞台の人情噺。
    お妙と只次郎の養女・お花と薬種問屋〈俵屋〉に奉公する熊吉の視点が交互に描かれる連作五話が収録されています。

    お花の友人・お梅と〈俵屋〉の若旦那との祝言の料理を依頼されたものの、女将のお妙の体調が優れなくて心配な状況でしたが、実は”おめでた”だったのですね~・・良かったねぇ只次郎!

    そんな訳で、身体を労わらなければいけないお妙に代わって、今回はお花が頑張っております。
    営業時間を短縮したとはいえ〈ぜんや〉の料理をメインで作ることになり、献立も食べる人の体調を気遣って考案しているお花の、
    「・・夏の疲れがまだ残っている人もいるでしょう。おっ母さんに食べやすいものは、その人たちの滋養にもなると思って」
    ・・という台詞に、”お妙イズム”をしっかりと受け継いでいるな、と頼もしく思いました。
    そして、お梅ちゃんの祝言でも任された膳をしっかりと作ることができましたし、汁物が足りないという思わぬトラブルにも機転をきかせて乗り切り〈俵屋〉の台所女中さん達に感謝されていましたね。
    今回登場したお花のオリジナルメニューも結構美味しそうで、特に「利休卵」は私も食べてみたくなりました。

    一方、熊吉はちょっと足踏み状態で、(肉体的にも精神的にも)成長著しいお花を見て焦りを覚えると同時にお花を異性として意識し始めた様子。
    そんな熊吉も女性の不妊の悩み(特に跡継ぎを望む武家)に効く薬の販路を模索し始めたようで、こちらが上手く軌道に乗ると良いですね。

    ということで、お祝い事が重なりほっこり気分で読んでいた本巻だったのですが・・終盤での千寿の”爆弾発言(?)”で、次巻は大荒れの予感が・・どうかお花が辛い目に合うのは勘弁してくれよ~と思いつつ、続きが気になって仕方がない私です~。

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    2025年01月11日
  • セクシャル・ルールズ

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    今年最後の一冊になる。
    専業主夫と働く女。
    だいぶん男女の役割に固定概念は薄れてきていると思いつつ、やっぱり根強く感じてしまうものだろうと感じた。

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    2024年12月31日
  • おひとりさま日和 ささやかな転機

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    あんまりお一人さまと言いたくないけど、やっぱりそういう本に目がいってしまう
    どんなふうに一人の生活を楽しんでいるのだろうと
    初めから一人が馴染んでいる人もあれば、意地を張って生きている人もいる
    どの登場人物もラストは生き生きとそれぞれの今を楽しんでいる姿が素晴らしい

    ラストのお話のように出来すぎのクライマックスもあるけれど、たまにはそんなふうに上手く行くことがあってもいいよね
    というか、これは娘さんが出来すぎなんだな

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    2024年12月29日
  • おじさんは傘をさせない

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    仕事から離れれば何も残らない、その事に気づいた中年おじさん達のままならない日常を描いた連作短編集。
    セクハラを注意された男、左遷された猛烈社員、正社員になれずに燻っている派遣社員など会社や仕事から突き放された男達。しかしそこ以外に生きていく道を持たない彼ら。
    時代錯誤なセクハラ、パワハラ思想のオンパレードでムカムカするような一幕もある。その男達がちょっとした出来事をきっとに変わっていく。
    どこか切ない物語。

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    2024年12月19日
  • おひとりさま日和 ささやかな転機

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    ネタバレ

    おひとりさま第2弾。続きものあり、新しい話ありで楽しかった。
    自分もひとりになった時、この本の主役たちのように前向きに生きていけたらいいのですが・・・

    6話中「リセット」は共感できなかった。相談もなしに関係ない子を勝手に認知ってひどい裏切りです。そしてその子と母娘ごっこするのも分からない。

    「友だち追加」「セッション」>「アンジェがくれたもの」「リフォーム」>「この扉の向こう」「リセット」

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    2024年12月09日
  • おひとりさま日和 ささやかな転機

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    ひとりだけど、ひとりじゃない。
    人それぞれ、色んな転機があって、変わっていく。ふと顔を上げたくなる一冊でした。

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    2024年12月08日
  • すみれ飴 花暦 居酒屋ぜんや

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    ネタバレ

    すみれ飴
    花暦 居酒屋ぜんや

    著者:坂井希久子
    発行:2021年10月18日
    ハルキ文庫(角川春樹事務所)
    初出:「菫の香」「酒の薬」「枸杞の葉」「烏柄杓」はランティエ2021年6月~9月号、「夏土用」は書下ろし

    先月初めて読んだ坂井希久子(「赤羽せんべろまねき猫」)は現代ものだったが、この人の時代小説、居酒屋ぜんやシリーズは読んでみたいと思っていた。先月、17冊目が出たようだけど、この本はその11冊目。5編の連作短編集。ただし、一つ一つなにか問題が起きて解決するというような話ではなく、各編に締めくくりはあるものの時差がなく前後がつながっており、限りなく長編に近い連作短編になっている。全てにほのぼのといい話。

    どうして11冊目から借りたのか、自分でも不明。なお、官能小説も得意らしいので、そちらも読んでみたい。1977年生まれ、和歌山出身、同志社女子大卒(ということはお嬢様?)。

    実の母親と暮らしていたお花は、9歳の時に捨てられた。出かけてくるといって出かけたまま帰らない母親。それを見つけたお妙に救われる。お妙は2年間様子を見た上、お花を養女にした。それから3年、14歳のお花と、居酒屋「ぜんや」女将のお妙、その夫である只次郎が主役の物語。

    特徴は、お花は非常に鼻が利くということ。普通の人が気づかない匂いも分かる。とはいえ、この本ではそれで事件を解決するというような捕物帖やミステリー的な展開はない。

    なお、この本の最初の1編「菫の香」は、適度に登場人物の紹介が盛り込まれ、初読者にも理解しやすい。毎回、こんなことをしているのだろうか。ぜひ一冊目の最初がどうなっているのか読んで確かめたい。もしかすると、最初はお花がいなかったのかもしれない。

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    お妙:ぜんや女将、別嬪
    只次郎:夫、旗本の次男坊から町人へ、鶯と商売の指南で稼ぐ
    お花:只次郎とお妙夫婦に引き取られた娘、鼻が利く、14
    お勝:お妙の前亭主・善助の姉、ぜんやの給仕、

    お槇:お花の実母、お花を虐待し捨てた

    お梅:16歳。日本橋本船町、魚河岸で賑わう中にある海苔店「宝屋」が誇る看板娘、親に捨てられた子供だったが、お妙に拾われて宝屋の養女に。宝屋の女将は他に5人の子育てをした豪腕。

    <俵屋(薬種問屋)関連>
    熊吉:18歳、薬種問屋「俵屋」手代、大柄で腕っ節が自慢、以前は「春告堂」の手伝いもしていた。ルリオの子のヒビキを飼っている。幼いときに俵屋を抜け出して彷徨っていてお妙に拾われた恩義がある、
    長吉:俵屋の小僧、熊吉と同じ年、
    留吉:手代頭
    *取引先の三橋屋は亭主が癇性でけち、肝っ玉が小さい

    <ぜんやの馴染み客>
    「菱屋」のご隠居:大伝馬町にある太物屋の隠居、只次郎の養父になった
    俵屋の主人:薬種問屋、熊吉を手代に8年で抜擢
    升川屋喜兵衛:新川沿いに蔵を構える酒問屋の主人
    ・お志乃:妻、灘の造り酒屋の娘
    ・千寿:息子、8歳
    ・おつな:女中頭
    三河屋主人:味噌問屋
    三文字屋主人:白粉問屋

    <ぜんやの近所>
    おえん:ぜんやの裏長屋に住む、左官の女房、
    おかや:7歳、おえんの子
    お銀:ぜんやの裏店に住む怪しげな人相見

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    (読書メモ、ネタ割れ注意)


    1.菫(すみれ)の香

    お花がどういうふうにお妙と只次郎の養女になったのか、そして、周囲にどういう人たちがいて、どういう人間関係を築いているのか、イントロ的な物語。11冊目でも、最初の1編ではこういう展開にする必要があるが、そのさじ加減こそ作家のテクニックと言える。

    神田花房町代地に店を構える居酒屋「ぜんや」。別嬪女将のお妙が経営しているが、亭主の只次郎も経営に関わる。ぜんやの隣には只次郎の店である「春告堂」がある。鶯が預かりものだけで11羽、飼っているものを含めると14羽。鶯の鳴き声をよくする指南と、商いの指南の謝礼で生活費を稼ぐ。美声を誇った鶯のルリオは死んだが、それに代わる江戸随一といわれるハルオがいる。

    お花は、9歳の秋に実母であるお槇に捨てられた。お槇は出たまま戻らず、あばらやで3夜を過ごしたお花。見つけたお妙と只次郎が面倒を見、戻ってくるかもしれないと2年は様子を見たあと、養女にした。お槇は男と江戸を出たという情報を知っていたが、お花本人には言ってない。

    お花は虐待されていたが、少しでも好かれたいと言いつけはよく守ったつもりだった。日が暮れるまで帰ってくるなと言われれば、猛暑でも吹雪でもあてどなく歩き回って時を潰し、打たれどころがひどく腫れても「泣くな」と命じられ、夜着とも呼べぬ襤褸布にくるまって疼きに堪えた。「愚図、のろま、役立たず」と言われ続け、情を向けられることがなかった。

    そんな体験があるからこそ、お妙の仕事(ぜんやの仕込み)を手伝おうとするが、一定のところまでしかさせてもらえない。魚のさばきもしたいのに、やらせてもらえない。春告堂の仕事も手伝い、鶯への餌やりなどもする。しかし、この日、寛政11(1799)年2月はじめの午の日も、稲荷神社の祭礼だったので、小遣い20文を持たされ、せっかくだから遊びに行くように言われた。店の給仕をしているお勝にも、飴でも買いなと5文握らされる。合わせて25文。遊びより手伝いをしたかったのだが、仕方なく外出。

    日本橋本船町、魚河岸が並ぶ。海苔店「宝屋」でお梅にぼやくお花。お梅は16歳で、やはりお妙に救われてここの養女になる。養母は他に5人の子を育てた豪快な人。しかし、今日は首筋になにか赤くただれている。お花は指摘する。三軒隣の煮売屋の魚を食べたのでは?そうだと言うから、あそこは古い魚を使っているからそうなるんだ、とお花。嗅覚に優れているためそれに気づいた。その日、宝屋に来る客に、お花はあの煮売屋の魚は食べてはいけないと警告をした。

    すると、煮売屋が激怒しつつやってきた。ピンチだったが、なんとか熊吉に助けられたお花。熊吉は薬種問屋の手代だが、やはりお妙に救われた恩義があった。

    すると、なにかお妙の匂いがする。まだ家の近くに帰ってきたわけでもないのになんだろうと思うと、天秤棒を背負った売り子がいた。見ると、菫(すみれ)の鉢植えがあった。値段を聞くと30文。25文にまけてもらってお妙のために買って帰った。熊吉は、そんなの売れ残りだから20文になったのに、とぼやくが、お花はどうせお金は使わないしどうでもよかった。

    熊吉がぜんやまで一緒に来てくれた。お妙は、せっかくの小遣いだから欲しいものを買ったらよかったのに、といいながら、お花の優しさに感謝。お花にすれば、9歳のころまで小遣いなんかもらったこともなかったし、寝ていて朝餉が匂ってくることを知ったのもここに来てからだった。本当に感謝し、恩返しをしたかった。ところが、熊吉が煮売屋のことをお妙に話してしまった。お妙は叱った。いくら古い魚を使っていても、使ってはいけない物ではないし、そうして安く売られた煮売魚を食べられるから助かっている人もいると言い聞かせ、一緒に詫びにいくことを約束させる。

    一緒に詫びると、意外にもあっさりと許してくれた。帰ると、只次郎が大きな鉢を持ってきた。お花が買ってきた菫を植え替えるという。菫は土の上に出ている部分は小さいが根が長くのびるから、大きな鉢に植え替えてやらないと枯れてしまうという。それは、お花の将来に向けるお妙と只次郎の目でもあったのである。


    2.酒の薬

    熊吉は丁稚10年で手代と言われているなか、8年でなった。主人に見込まれている。しかし、今回は同期の長吉(小僧)のミスで得意先(三橋屋)に謝罪に行った。戻ると主人に呼び出される。やっかみでベテラン手代たちが冷たい視線を向ける。熊吉におとがめがあることを願っているのか・・・

    主人の部屋に行くと、只次郎がいた。只次郎は俵屋に商い指南をしていた。主人から、只次郎を案内してくれと熊吉は言われた。只次郎は新しいユニークな薬を俵屋も売るべきだと提案していたが、どのようにPRして売るかが問題だった。そこで、面白い売り方をしている薬屋を案内してやってくれということだった。

    吉原には、格子ごしに美童ばかりを集めて薬を売る店があった。経営は禅僧だとういう。男色の小児性愛で売る気か?などと疑問を持つ。色々と回ると、2人はぜんやに。そこには「菱屋」(太物屋)のご隠居がいた。ご隠居はこの店のなじみ客であると同時に、只次郎の養父という関係でもある。夕餉を食べていくことになった熊吉は、遠慮して遠い席に座っていたが、ご隠居に促されて3人一緒に。

    一杯やろうとすると、只次郎だけは不要と言う。今日、買い集めた薬のうち「酒禁丸(しゅきんがん)」を試してみるという。飲んでみると口にはっかのようなスースーする感覚が広がり、確かに飲みたくない。しかし、熊吉はその強がりをやめさせようと見せびらかすようにご隠居に酌をする。飲まない只次郎。結局、その酒禁丸の効力を打ち破ったのは、お妙の作った料理「鰆と筍の炊き合わせ」だった。震えるほど旨かった。ついに盃を頼む只次郎。

    そこに現れたのは、俵屋の主人だった。驚く熊吉。

    俵屋は言う。「どうか龍気(りょうき)養生丹を甦らせて、うちで売らせてもらえませんか」と、お妙に向かって頼んだ。熊吉もその名に覚えがあった。たしかお妙の亡き父が作り、前の良人(おっと)が売り歩いていたという精力剤だったはず。只次郎にとっても、これは寝耳に水だった。


    3. 枸杞(くこ)の葉

    (前話で)熊吉がお妙にと持って来た当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)と言う薬。なにか意味があるとお花は思っていた。お妙に言われ、怪しげな人相見のお銀にそれを届けた時、お銀は、これを飲むということは、お妙は妊娠しているのか、とからかった。お花は本気にしてしまい、お妙の腹に子がいるのは本当かどうか確かめたかったが、口に出せなかった。夫婦二人にとって初めての実の子、生まれたら自分はどうなるのだろう、また捨てられたくはないから、どこか奉公に出してもらうように頼もう、などとあれこれ考えるばかりだった。それは、3人で枸杞の葉を採りに行った帰り道のことだった。危なそうなところに生えている枸杞は、身重のお妙に採りにいかせず自分で行ったお花。それで手も切ったが言えなかった。

    そうこうしていると、升川喜兵衛の新造(新妻)のお志乃がぜんや前で駕籠から転がり出てきた。お妙を訪ねてきたのだが、駕籠に酔ったという。お妙はとりあえず2階に寝かせる。

    熊吉もほぼ同時に来た。お志乃が駕籠に乗るのをみかけ、気になったので追い掛けてきたという。2階からお妙が降りてきた。お志乃は妊娠していて、つわりが酷くて食欲がないという。だから、枸杞ご飯をたべさせることにしたという。熊吉は、身重の時は枸杞をあまりたくさん食べさせてはいけないと教えた。

    夜、只次郎が帰って来た。どうやらお志乃は喜兵衛の言葉に怒って家出をしてきたらしい。つわりで苦しんでいると、喜兵衛から「2人目なのに慣れねえものかねえ」と言われたので、この苦しさも分からずになにを言うかとカッとなったようである。しかし、息子の千寿が迎えに来て無事に帰った。

    ぜんやのこの日の営業は終わり。残った枸杞ご飯は、お勝やお妙が持ち帰り、朝餉などに使うことに。お花は言った、お妙さんはそんなにたくさん枸杞を食べてはいけない、身重だから。熊吉の言葉を覚えていたのである。

    お妙は子などいないことを話した。そして、お腹の中にいるかもしれない弟か妹を守ろうとしてくれたんだね、と只次郎とともにお花に感謝するのであった。


    4.烏柄杓(からすびしゃく)

    俵屋は5年働いて何らかの役がつかないと他所へ出される。8年で手代になった熊吉は、年上の手代たちから妬まれ、意地悪などもされていた。廁も覚えがないのに汚したと騒がれる。だから他の手代が起きてくる前に起きて廁を使う。そんな朝、若旦那が呼ぶ。どうしたのかと行くと、昨日、熊吉が若旦那に言いつけられ、抽斗に入れて置いた「杏仁(きょうにん)」がなくなっている。それが「桃仁(とうにん)」の抽斗に入っている。桃仁は桃の種、杏仁は杏の種を乾かしたもので、よく似ている。それが混在していた。見分けづらいから間違いのないように注意が必要。熊吉なら何とか分けられる。きっと誰かの嫌がらせだろう。若旦那もそれを見抜き、番頭の前で問題になる前に熊吉を呼んだということだった。

    熊吉はその仕分けのために朝餉が食べられなかった。おたえがおにぎりを持って来てくれた。

    熊吉が酒問屋の升川屋喜兵衛に頼まれた薬を届ける。そこで、精力剤の龍気養生丹を作って販売していたお妙の父の敵は、一橋様だったことが分かったと言う話になる。しかし、一橋様による今回の製造許可が出たとも。また、鶯のヒビキ(熊吉飼い)とハリオ(只次郎飼い)はともに八つで、そろそろ寿命。久世丹後守の用人・柏木様にもらわれた兄弟のタマオは冬を越えられずに死んでいる。10年生きたルリオは相当な長生きだという話題も出た。

    熊吉は俵屋の主人に「ぜんや」で集合をかけられた。店の前では、お花が烏柄杓をしゃがみ込んで見ていた。初めて見るようだった。名前を教えてやった。一緒に店内に入る。すると喜兵衛が既にいて、味噌問屋の三河屋主人もいた。2人は一杯やろうとしている。熊吉も俵屋主人から昼飯をすすめられたが、酒はだめだと釘を刺される。

    俵屋主人は龍気養生丹の試作品を作ってきて、それをお妙に見せた。三河屋は以前に飲んだことがあるという。作って分かったことは、非常に高くつくこと。8粒で400文にもなる。お妙の亡父である佐野秀晴はどうしていたのだろう。医師でもあったが商人でもあったので、売れないものは作らない。きっと安く売ったはず。その謎解きをし始めた。もしかすると、高くつく材料を省いた廉価版も売っていたのではないか?金持ちには高いフルスペックを売り、上がった利益で廉価版を売って金のない人を喜ばせる。

    では、何を省けば廉価版ができるのか、という話になった。そのなかで、海狗腎(かいぐじん)、鹿腎(ろくじん)、驢腎(ろじん)が節操なく入っているという話が出た。お花が聞いていて、それは何だと質問した。ちゃんと答えてやらないとへそを曲げてしまうと思い、俵屋の主人は、膃肭臍(おっとせい)、鹿、驢馬の、陰茎と睾丸であることを伝える。お花には通じたようだった。どうしてそんなものを飲みたがるの?と聞いたので、れっきとした薬だからだと教える。高麗人参の話も出た、自分たちが食べているニンジンとは違うことも教える。するとお花は外へ出ていき、烏柄杓を採ってきてこれを買ってくださいと俵屋に言った。熊吉から烏柄杓も生薬の一つだと聞いたからだった。

    俵屋は確かなものしか使わないから、確かなところからしか買わないと断ったが、お金を稼ぐ手伝いをして貢献しないと置いてもらえないというお花の健気な態度にグッとくる熊吉だった。

    おたえ:俵屋に春から奉公に上がった女中、16歳
    三河屋:味噌問屋、龍気養生丹を飲んだ経験がある
    佐野秀晴:お妙の亡父
    熊五郎:熊吉の父親


    5.夏土用

    6月、大暑だった。お花は店の手伝いをしながら眠たさを堪えていた。ちょっと寝てきなさいというお妙のすすめも無視して。5年前の大暑、客が取れたお槇に家を追い出されて暫く帰ってくるなといわれ、暑さで朦朧としているなかで只次郎と会い、救われた。この時季に匂うのは枝豆。お槇も夏になると枝豆を売り歩いていた。貧しい女たちの仕事だった。お花を罵る息も、頰を打つ手も、足蹴にして乱れる着物の裾からも、枝豆の青いにおいがした。それは痛みとともに記憶にすり込まれており、好き嫌いのないお花は今でも枝豆が食べられない。

    最近、お花は額にできたニキビが気になっていた。熊吉が廁を借りに来た時にそれを言うと、今度、薬を作って持ってきてやると言った。

    ぜんやの常連たちから、そういえばぜんやは鰻だけは出ない、食べたことない、いや少しはある、というような話になった。なぜ鰻が出さないのかと聞くと、鰻は鰻屋で食べる方がうまいからだと答える。蒲焼き以外では美味しいものが出来ないし、いまさら蒲焼きを仕込んでもかなわない、と。しかし、料理のうまいお妙ならと、6日後の土用に鰻づくしをしようということになった。

    お花は自分も料理がしたいと思っていて、何度もお妙に料理を教えて欲しいと頼んでいるが、そのたびに「そのうち」とはぐらかされる。さて、今回の鰻づくしについて、お妙は悩んでいた。何を作ったらいいのやら。そうしていると、お花のアイデアがヒントとなって、次々にメニューが決まっていった。

    当日は大好評だった。そして、料理はみんなお花が考えてくれたんだとお妙は言った。そして、「お料理って、面白いな」とぽつりとお花が言うと、「じゃあ、覚えてみる?」とお妙。どうする?やる、教えて!なら明日から、少しずつね。やった!

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    2024年12月06日
  • 菊むすび 花暦 居酒屋ぜんや

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    お妙の代わりに、俵屋の若旦那とお梅の祝言の
    料理を作るお花。お妙から受け継いだ味で、
    お梅の心をほぐすことはできるのか。梅若汁、利休卵…。
    絶品料理が心を温める人情小説。

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    2024年12月26日