坂井希久子のレビュー一覧
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お酒が好きなのと読んだことのない作家さんを開拓したくて手に取りました。
一言にお酒をテーマにと言っても、お酒の失敗や作り手の跡取り、人それぞれの楽しみ方…いろんな視点からのお話が詰まったアンソロジーです。
初恋ソーダでは仲良くしていた山城という男性を主人公の家にあげて、手作りのお酒を振る舞う場面がありますが、短時間自分のテリトリーの中で過ごす中で価値観の違いにより主人公の女性が示す不快感がまざまざと描かれており面白かったです。自分の大切にしているものを雑に扱われるくらいなら1人の方がいいという気持ちはわかりますね。
また、原田ひ香さんの定食屋「雑」も面白かったです。丁寧な味の料理をお酒で流し込んで欲しくない。食事は食事、お酒はお酒で楽しみたい主人公。そんな考えを押し付けて夫は週3食堂に、それすら咎めると離婚を言い渡されてしまいます。そんな主人公がきっかけとなる食堂で働き始めるお話です。定食屋の主人であるぞうさんが魅力的です。気になって調べたら、定食屋「雑」の単行本があるんですね。そちらも読んでみたくなりました。 -
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時代物かと思ったら現代物だった。
浅草芸者たちの群像劇。
離婚を機に、七年振りに地方(じかた・三味線やお囃子担当)に戻ってきた真白、同い年の立方(たちかた・踊り担当)で芸者を辞めようかと悩んでいる美鈴、半玉(はんぎょく・見習い舞妓)のきよ鈴、3人の視点で交互に描く。
ただですら少なくなっている芸者衆、更にコロナで打撃を受けて浅草花街の火が消えかけているという背景を何とか盛り上げたいと足掻く浅草花街の人々。
様々なイベントに出たり、動画配信を始めたり。
花街である以上はきれいなことばかりではないが、かつてのような旦那についてもらったりということもない。
でもお座敷唄や遊びは吉原の文化を引き継いでいて、それらの意味を伝えるのは難しい。
美鈴もきよ鈴も芸者に憧れを持って浅草花街に入ってきたが、続く人たちを増やすにはどうすれば良いのか。
サクサク読めて、明るくまとまったが、きっと大変な世界なのだろうとも思う。
だが考え方も世代も違って衝突することがあっても、ここぞと言うときはまとまるのが頼もしい。
真白の子どもの律の寂しさと健気さと成長も良かった。 -
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キャッチーなタイトルに惹かれて読んでみた。アンソロジーは読んだことのない作家さんに出会えるよい機会なので、ときどき読むようにしている。
よかった順に、「夏も近づく」、「味のわからない男」、「好好軒の犬」、「どっしりふわふわ」、「エルゴと不倫鮨」。
「夏も近づく」に出てくる料理はどれもシンプルで美味そう。塩むすびとか、筍ご飯とか。可哀想な生い立ちの葉月くんが、叔父さんの料理で癒されていく姿が清冽でよい。
「どっしりふわふわ」は年の差20位のパン職人カップルのお話。ラスト2頁で種明かしされるミスリードについては、これがあるのとないのとでは、どれだけ読後感が違ってくるのか、オチを知ってしまった後では何ともよく分からないが、ない方が良かった気がする。
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「居酒屋ぜんや」のセカンドシリーズ、“花暦 ”・第九弾。
神田花房町代地にある居酒屋〈ぜんや〉を舞台にした人情噺、連作五話が収録されております。
無事に長男・桜太を出産したものの、なかなか体調が戻らないお妙に代わり、一人で〈ぜんや〉の厨房に立ち奮闘するお花。
そんなある日、嗅覚が鋭い謎の侍が〈ぜんや〉を訪れ、お花の味付けにダメ出しをして帰っていくのですが、この侍の正体がまさかの・・。
ということで、最近前向きになってきていたお花に思わぬ縁者が登場し、心ザワつかせる事態になるのですが、お妙と只次郎をはじめ、周りの皆からの愛情に支えられてきっちり自分を保てましたね。
“件の侍”も悪い人ではなさそうだし、お花と共にお料理をする場面は微笑ましさすらあったのですが、如何せん今更感&身勝手な申し出ではありましたものね・・。
そんな訳で、この度の“身内騒動”を経てより成長した感のあるお花。
枝豆のトラウマもいつかきっと克服できると信じてますよ~。
一方、熊吉の方は妙な焦りからか、自分で自分を追い込むような無理をし過ぎてぶっ倒れてしまう羽目に。
ここのところ迷走気味な熊吉ですが、お妙さんから「どっちを向いて歩けばいいか分からないときは、周りをよく見てごらんなさい」という助言を貰ったことですし、これを機に周囲の人(特に只次郎)の好い部分を手本にしながら自分の道を歩んでほしいものですね。
ということで、今回も旬の食材を使った美味しそうなお料理と共に、若者たちの成長する姿を楽しませて頂きました。
桜太も健やかに育っているようですし、そろそろお妙さんも元気になって厨房復帰できるよう願っております~。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルで買ってしまった。
北信の湯田中の古本屋併設のフレンチのお店「やまブイブイ」。読書好きの女将さんの、おそらく読んだ本だろう。
折しも、宮沢賢治の『注文の多い料理店』という短編集を読んだところだったので、目について、思わず手に取ってしまった。きれいな古本。200円はお買い得♪
さて、誰から、どの作品から読むか?
折しも、短編集を編むなら、作品の掲載順はどうあるべきかを読み友たちと語る機会があったので、果たして順番は大切か、それとも……、という思いを確かめる意味でも、この短編集は、今、読むべきだとも思ったのだった。
結果、最初に読んだのは柚木麻子から。「エルゴと不倫鮨」
なんといっても『BUTTER』の著者、今、油の、いや、脂はこっちの字か? の乗った作者だ。そのヒット作の影響を色濃く残したような、カジマナを彷彿させる豪快な女性が食の蘊蓄を語り、男どもを翻弄していく。痛快な短篇。
次は、井上荒野。「好好軒の犬」
あまり好きな作家ではないが、ネームバリューはこの中ではある。
作品は、冷めた夫婦間の、なんともいえない機微が描かれていて面白味があった。が、これって、タイトルの「注文の多い……」ではない。「食」の話は出てくるが。
伊吹有喜の「夏も近づく」は、好きなテイストだ。
田舎暮らしの食と生活が丁寧に描かれている。が、これも「注文の多い~」というわけではない。
柴田よしきの「どっしりふわふわ」も悪くはなかったが、パンづくりは、どことなくしあわせと直結しがちな雰囲気が、安易といえば安易だったかな。
いずれにせよ、この短篇集タイトル勝ち。
「料理小説集」や「食のアンソロジー」とか、他のタイトルを付けてあったのでは、手に取らなかったろう。 宮沢賢治におんぶにだっこ? 賢治にエルゴ抱っこ紐、って感じの短編集だった(笑)
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