窪美澄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読み終えてから少し経ってからこの感想を書いているのだけど、わりと印象の薄い作品だったのかも、というのがひとつの感想。
中編が2つという構成の作品だったのだけど、表題作はものすごい事件が起こるわけではない日常の物語で、だけど小さな毒があちこちに潜んでいる。
仕事も恋愛もなんとなくうまくいかないアラサーの主人公・紗登子が、自分を捨てた(と思っていた)母と14年ぶりに再会したところから物語は始まる。
自分の恋愛がうまくいかないことを母との関係性のせいにしてしまいたくなったり、仕事と恋愛を公私混同してしまったり、彼女にはどこか境界線を曖昧にしがちなところがある。
そんな様々を含め、自分が産まれた家族や -
Posted by ブクログ
十人の人気作家が作る、妖しげな世界。
「ANNIVERSARY」は言葉の持つ明るい世界とは異なる、なんだか奇妙な、悲しい世界だ。
世界がループするのだ。
ちょうど今読み返している『D.Gray-man』にも、繰り返される日々の話が出てきていた。
この漫画について語るのはまた別の機会として、とにかく元の世界においてきた子供のことが気になってしまう。
愛する者との離別を考えると、胸が苦しくなる。
『李果を食む」は、私が感じ取ったおぞましさは二つあった。
どちらだ。
どっちなんだ。
いや、どちらでも構わないだろう。
もうすぐ、スモモの季節。
あの甘酸っぱいすももを、私はこの話を思い出さずに食べら -
Posted by ブクログ
【怪異】をテーマに描く奇譚小説。
アンソロジーシリーズ。
この面子だし、と思って読み始めたのが
間違いだった…
想像のはるか上の上をゆく怖さだった…
夜、部屋で一人で読んでいられないページが
何度もあった。
大好きな米澤穂信の
「わたしキャベンディッシュ」も、
あーー、これが伏線でこうなる感じかぁ
のんきに思っていたあたし。
伏線は伏線でも回収先が違っていて
安定の穂信のぞわぞわ感。
乾ルカの「かぐわしいひと」なんか
ここから先は、もう読めない……と
次の日に
持ち越したくらいなのに
その怖さに上塗りされるように
壊れていく人間の怖さがくる。
えーーー??そっちーーー??!みたいな…
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Posted by ブクログ
ネタバレ三世代の女性を通して描かれる、女性・母親の立ち位置の変遷、そして時代に翻弄される彼女たちとその子供たちへの温かい眼差しに救われる思いがします。
窪さんの作品を読んで毎回思うのは、母親、特にこの小説でいうところの晶子の強さ。ふが僕の主人公の母然り、さよならニルヴァーナの母然り、彼女たちは大きな愛をもって私たちを包み込みます。宗教のことはよくわからないけど、ブッダとかキリストとかそうゆう類の人類に対する大きな大きな愛を感じます。母親にそういった神にも似た母性を持たせてもなお、私たちがこの小説に後ろめたさを持たずに共感できるのは、彼女たちにも様々な葛藤、弱さがあること、自分と同じような過程を通して母 -
Posted by ブクログ
女性の抱えるストレスや苦悩を二つの世代から書き上げた小説。
戦災と震災を背景に、それでも生活は続いている。
そんな中で育つ子供たちのことを、大人は心配してしまうけれど、たしかに、あの戦争ですらも乗り越えて、私たちの祖父母は大人になった。
だからこそ、いま、あの大震災だけではなく、たくさんの災害が降りかかっているこの世界でも、子供たちはなんとか、育っていくのだと思わせられた。
登場人物の真菜に起こった出来事に理由をつけずに置いたことが印象的だった。
寂しいから、なんて言葉にできる理由があるほうが、実は少ないのかもしれない。言葉にできないからこそ、人は人から愚かだと思われる行動をとる。
今の世