窪美澄のレビュー一覧
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掌編に近いものもある短編集.
「父を山に棄てに行く」 父親の入所の手続きに奥多摩にある山奥の老人介護施設に行く途中で,いろいろ回想する話.
「インフルエンザの左岸から」 老人介護施設(おそらく1話目と同じ施設)で亡くなった,ろくでもなかった父親の葬儀にまつわる回想.
「猫降る曇天」 黒のタートルネックを着た美女と3.11と黒猫の話.
「すみなれたからだで」 中学生の娘のことで老いを感じた母親が,娘がデートに行ったことをおじさんになった夫に話して・・・.
「バイタルサイン」 窪先生らしい(失礼)かなりHな描写もある,義父と関係を持った娘の話.
「銀紙色のアンタレス」 夏大好きの男の真君(16才)が,夏休みにおばあちゃんちに行った時のひと夏の恋バナ.朝日ちゃんがかわいそう.
「朧月夜のスーヴェニア」 家族からはもうボケたと思われているおばあさんの,戦中の思い出.結構エロイ.スーヴェニアは「お土産」と暗記していたのだけれども「思い出で」という意味もあったのか.
「猫と春」 ついてきた猫と暮らすようになって,彼女が出て行って,猫を捨てたら,彼女が猫を連れて帰ってくる(本当に帰ってきたのだろうか?).
「夜と粥」 同棲していた彼女が出て行ってしまって,落ち込んでいる女性の話.
「あとがき」によると男女の違いがあるが,2話目は1話目の続編とのこと.また,読んだ時の印象の通り,この2作は窪先生自身のノンフィクションに近い作品らしい.この2作も興味深かったが,「バイタルサイン」,「銀紙色のアンタレス」,「朧月夜のスーヴェニア」がお気に入り,特に面白かった. -
Posted by ブクログ
読み終えてから少し経ってからこの感想を書いているのだけど、わりと印象の薄い作品だったのかも、というのがひとつの感想。
中編が2つという構成の作品だったのだけど、表題作はものすごい事件が起こるわけではない日常の物語で、だけど小さな毒があちこちに潜んでいる。
仕事も恋愛もなんとなくうまくいかないアラサーの主人公・紗登子が、自分を捨てた(と思っていた)母と14年ぶりに再会したところから物語は始まる。
自分の恋愛がうまくいかないことを母との関係性のせいにしてしまいたくなったり、仕事と恋愛を公私混同してしまったり、彼女にはどこか境界線を曖昧にしがちなところがある。
そんな様々を含め、自分が産まれた家族や、自分が大人になって築いていく家族とうまくやることの困難さを描いている。
2つめの「キャッチアンドリリース」は小学校高学年の男の子と女の子が主人公。2人は棟違いの同じマンションに住んでいて、同じ塾に通っていて、そして片親の家庭であるという共通点がある。
多感な時期に差し掛かった彼らが、母と暮らしながらたまに父に会いに行ったり、父と暮らしながら祖母と仲良く過ごしたり、その中で性徴を感じる出来事に戸惑ったりしながら過ごしていく。
性的な変化に戸惑う描写が、何だか胸が痛んだ。変化していくことの恐ろしさは、子どもにも大人にもあるけれど、不安定なところに立っている子どもだとその恐ろしさもさらに大きい気がする。
こういう小さい毒が窪美澄節なのだけど、大事件が起きない分マイルドな印象で、だから読後の印象も薄かったのかもしれない。
厚みもそんなにない小説だったのでとても読みやすかった。さらっと読むにはぴったりでした。 -
Posted by ブクログ
十人の人気作家が作る、妖しげな世界。
「ANNIVERSARY」は言葉の持つ明るい世界とは異なる、なんだか奇妙な、悲しい世界だ。
世界がループするのだ。
ちょうど今読み返している『D.Gray-man』にも、繰り返される日々の話が出てきていた。
この漫画について語るのはまた別の機会として、とにかく元の世界においてきた子供のことが気になってしまう。
愛する者との離別を考えると、胸が苦しくなる。
『李果を食む」は、私が感じ取ったおぞましさは二つあった。
どちらだ。
どっちなんだ。
いや、どちらでも構わないだろう。
もうすぐ、スモモの季節。
あの甘酸っぱいすももを、私はこの話を思い出さずに食べられるだろうか?
「かぐわしきひと」「喪中の客」はどちらも気味の悪さで際立つ。
前者は自分の思い込みに騙され、そして、終わりの凄惨さに胃液が上がってくる。
後者は、自分の見ている世界が本当に正しいのか、わからなくなる。
それにしても、あの客人は一体なぜきたのだろう?
そちらの方が、より、恐ろしい。 -
Posted by ブクログ
【怪異】をテーマに描く奇譚小説。
アンソロジーシリーズ。
この面子だし、と思って読み始めたのが
間違いだった…
想像のはるか上の上をゆく怖さだった…
夜、部屋で一人で読んでいられないページが
何度もあった。
大好きな米澤穂信の
「わたしキャベンディッシュ」も、
あーー、これが伏線でこうなる感じかぁ
のんきに思っていたあたし。
伏線は伏線でも回収先が違っていて
安定の穂信のぞわぞわ感。
乾ルカの「かぐわしいひと」なんか
ここから先は、もう読めない……と
次の日に
持ち越したくらいなのに
その怖さに上塗りされるように
壊れていく人間の怖さがくる。
えーーー??そっちーーー??!みたいな…
そんな中、
なんとも言えない感情と思いに溺れたのが
窪美澄の「真珠星スピカ」
母と娘、父と娘。
このそれぞれの【2人きりの時間】には
切なさとやりきれなさ、
それに希望が詰まってる。
まだ読んだことがない作家さんも多かった。
少しずつ読んでみたい。
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Posted by ブクログ
ネタバレ三世代の女性を通して描かれる、女性・母親の立ち位置の変遷、そして時代に翻弄される彼女たちとその子供たちへの温かい眼差しに救われる思いがします。
窪さんの作品を読んで毎回思うのは、母親、特にこの小説でいうところの晶子の強さ。ふが僕の主人公の母然り、さよならニルヴァーナの母然り、彼女たちは大きな愛をもって私たちを包み込みます。宗教のことはよくわからないけど、ブッダとかキリストとかそうゆう類の人類に対する大きな大きな愛を感じます。母親にそういった神にも似た母性を持たせてもなお、私たちがこの小説に後ろめたさを持たずに共感できるのは、彼女たちにも様々な葛藤、弱さがあること、自分と同じような過程を通して母になっていってこと、そして自分もいつかは他者を許し慈しめるのではないかと希望を持たせてくれるからだと思います。
誰かが帯に書いていたけど、窪さんは小説で誰かを本気で救おうとしている、類稀なる小説家なのだと思います。 -
Posted by ブクログ
女性の抱えるストレスや苦悩を二つの世代から書き上げた小説。
戦災と震災を背景に、それでも生活は続いている。
そんな中で育つ子供たちのことを、大人は心配してしまうけれど、たしかに、あの戦争ですらも乗り越えて、私たちの祖父母は大人になった。
だからこそ、いま、あの大震災だけではなく、たくさんの災害が降りかかっているこの世界でも、子供たちはなんとか、育っていくのだと思わせられた。
登場人物の真菜に起こった出来事に理由をつけずに置いたことが印象的だった。
寂しいから、なんて言葉にできる理由があるほうが、実は少ないのかもしれない。言葉にできないからこそ、人は人から愚かだと思われる行動をとる。
今の世の中で、男が、女が、そう括ることは時代から外れているけれど、窪さんの描き方はジェンダーとしての男女のあり方というよりも、性を見据えた身体的な部分で男女を描いている感覚。
家族の不和の描き方、子育てで心身を削られる女性の描き方、腹にくるような描写から、ラストの世代を越えた女性の繋がりの描き方が鮮やか。