吉村昭のレビュー一覧

  • 仮釈放

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    吉村昭の小説で初めて読むフィクション。書評にもあったが、犯罪を犯した者が罪の償いをしたことにより、罪に対する心からの悔い改まった。と映ることの危うさを良く表しており、自分だったらと身を置き換える。そうした、現実味のある、肌感覚の恐ろしさを感じさせるところに吉村昭の小説らしさを感じる。淡々と主人公の気持ちを書き下ろす文体が読み手の感覚をあらわにする。小説とは、人の内面を書くもの。と言う吉村昭の主張がそこにある。

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    2016年01月19日
  • 生麦事件(下)

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    ☆☆☆2016年1月☆☆☆

    薩英戦争だけでなく、長州による赤間関を通過する外国艦隊への砲撃なども扱われている。


    ★★★2019年3月★★★


    あまり知られていないが、薩英戦争後の交渉にあたった重野厚ノ丞という人物は立派だと思う。薩摩藩のメンツはつぶさず、戦争を終結させるという離れ業をやってのけた。まず、幕府に言われたからやむなく和議を結ぶという形に持って行ったこと。賠償金の支払いなど譲るべきところは譲るが、きちんと自分の主張もすること。
    戦争開始前に薩摩藩の軍艦を拿捕したことについて激しく責めるというのも、主張すべきことは言うという明快さがある。武器の斡旋を依頼することで薩摩と英国の今

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    2019年03月27日
  • 生麦事件(上)

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    ★★★2016年1月★★★


    生麦事件という事件を通して幕末史を深く分析した作品。「大名行列を横切った外国人を薩摩藩士が殺害した」という事件を、薩摩藩、幕府、外国人それぞれの動きが詳しく書かれている。これを読むと「幕府が可哀想」と思ってしまう。それぞれの人間に立場や苦悩があるんだと感じた。少し驚いたのはまるで島津久光が名君であるかのようになっていることだ。こんな本は初めて。

    ☆☆☆2019年3月☆☆☆

    行列を横切ったという理由で殺されてしまったリチャードソンを憐れに感じた。彼らにも悪気はなかったように感じるから。また、立派だと思ったのは事件発生直後の英国公使ニールの冷静な態度。決して感情

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    2019年03月27日
  • 大黒屋光太夫(下)

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    ネタバレ

    皇帝(エカテリーナ)に帰国許可の勅諭をもらおうと,首都宛に願いを数度出すも,音沙汰なし.イルクーツクで知己となったキリロの提案で,直訴のためにペテルブルグまで真冬に数千キロの旅に出る.遂にお許しが出て帰国資金まで頂き,船を仕立ててオホーツクから根室まで.打ち払いの憂き目を見るかと思いきや,貴重なロシア情報源との扱いで,幕府から住まいと給金をあてがわれ,余生を過ごす.
    出来事が比較的淡々と書かれているのだが,出来事が相当ドラマチックなので,何度も読み返してしまい,同じ場所で感動する.
    結局17人中無事に帰国できたのは3名のみで(1名は帰途に蝦夷で亡くなったので実質2人),運命を決したのは,帰国し

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    2015年12月31日
  • 大黒屋光太夫(上)

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    ネタバレ

    鈴鹿から出航し,暴風雨のために半年以上も漂流したあげくにアリューシャン列島に漂着.その後,数年を経て島を脱出,カムチャッカ,オホーツク,ヤクーツク,イルクーツクまで移動.光太夫とその仲間は,次々と斃れ,帰国の目処も全く立たない,というところまでが上巻.
    大黒屋光太夫の話は実話だが,本書も比較的淡々と話が進み,脚色部分は少ないと思われる.下巻が楽しみ.

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    2015年12月27日
  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

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    シーボルトの娘お稲が医師となり、明治維新を経て紆余曲折ありながらも日本初の産科医として働く姿を描く大河ドラマ。NHKも意味不明なヒロインやめて、こういうしっかりした原作使えばいいのに。

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    2015年12月22日
  • ふぉん・しいほるとの娘(上)

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    シーボルトが長崎の遊女に産ませた娘お稲の物語。前半はほぼシーボルトと遊女其扇の話しで、シーボルト事件を軸に来日から追放まで。

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    2015年12月15日
  • 遠い日の戦争

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    無差別な空襲から怒りを覚え米捕虜を処刑。官憲から逃亡生活に入る。雰囲気で裁かれ、時の流れで変わる判決、運で転ぶ人生に冷めた境地に達する。2015.11.28

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    2015年11月28日
  • 生麦事件(下)

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    ネタバレ

    生麦事件により薩摩藩とイギリスの戦争に発展し、その最中、長州藩とフランスも戦争となる。その後、さらに長州藩と英米仏蘭各国連合軍との戦争が勃発する。そして薩摩と長州は幕府とともに戦後処理に苦慮を重ねた。これだけでは話は終わらない。蛤御門の変、長州征伐、大政奉還、鳥羽伏見の戦いと幕末の一連の出来事が分かりやすく描かれていました。アメリカの南北戦争が、幕末の日本に少なからず関わっていたことを知りました。

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    2015年09月26日
  • 生麦事件(上)

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    ネタバレ

    江戸幕府、朝廷、長州藩、薩摩藩の夫々の動静がよくわかりました。イギリス代理公使に対する返答の引き延ばしのあれやこれやは、いまの政府の国会での答弁のように思えてきました。今も昔も言い訳には苦労しています。

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    2015年09月20日
  • 魚影の群れ

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    久しぶりに本を読んで鳥肌がたった。総毛立つとはこのことであろう。
    それが、最初の海の鼠である。
    あくまでリアルにリアルに(この話は実話であるようなのだが)描く筆力に感服。
    最後の話、表題作もよい。
    心に迫るものを感じて本を置いた。

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    2015年09月13日
  • ニコライ遭難

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    吉村昭の初読み。

    堅苦しい文体だが、不思議と最後まで引き込まれて読み続けられた。“事実”が持つ重みがそうさせたのだろう。

    読前、筆者についてWikipediaにて検索してみた。吉村昭の特徴は“記録文学”であるという。
    筆者の主観・創作は一切交えず、取材に基いた記述をただひたすら積み上げる……。
    例えば、乗った列車の発時刻や史実上の天候に至るまで、資料に取材し忠実に描写する“ノンフィクション文学とも呼べる”的な記載があった。

    そういう執筆姿勢で描かれた作品であるという事実が、歴史の重みを作品に加えていたのだろう。だからこそ“引き込まれ”た、と思う。

    ただ楽しく読んだだけでなく、得るものの

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    2015年09月14日
  • 大本営が震えた日

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    開戦直前の1ヶ月。秘密裡に戦争へ突入した。ほんの一握りの人が決断し、大きなリスクを負って奇襲作戦を進めた。成功しても英雄とは言えない。2015.9.6

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    2015年09月06日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(下)

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    ネタバレ

     政治・外交に対して冷静な分析力をもち、家族に対して清廉な川路聖謨。
     日本に外交力がない、と昨今もいわれているが、幕末、鎖国を解くことにより起こりうる 国内の内乱という危惧を抱えながら、譲歩せずに進めたロシアとの交渉。その手腕たるや、に感動する。

     すでにこの時期、欧米諸国は日本に対しての情報を共有しつつあった、という状況。幕末に向け、物価の高騰、江戸の火事、といった時代の空気も伝わってくる。位替えになると、一両日ぐらいで行われる、屋敷替えというシステムもあったとは・・
     幕府派遣の初の英国留学生の船に、コマ回し、手品、軽業師などの巡業芸人が、ロンドン巡業のために乗船している史実にも、驚き

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    2015年08月21日
  • 陸奥爆沈

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    暗部というか、大きな組織だしなと思いつつ…。
    陸奥ほどの大きい戦艦であれば、いじめもすごかったことでしょう。しかし…火薬庫を厳重にする前に、もっと何かに気がつけよ!とも思わなくもないですが、時代なのでしょうね。

    それにしてもホント、吉村昭ってすごい。ご本人の思うところは差し挟まず、とにかく徹底的に調べている。自分の価値観だけで見ないというのがホント、なかなかできないことです…。

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    2015年08月17日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(下)

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    クリミア戦争で英仏と戦う祖国を離れて折衝に臨むプチャーチンの艦船が地震、津波で被害を受けて沈没し、乗組員五百人が上陸する事態に。厳しい折衝を終え、幕府の配慮で完成した「戸田号」で帰国の途につくプチャーチン。日ロ関係のみならず、日本外交史において最大の功労者ともいうべき川路聖謨の生涯。(親本は1996年刊、1999年文庫化、2014年新装版)

    下巻の前半は、船を失ったプチャーチンを帰国させるための苦心が描かれている。幕府は、開国はしたものの通商は拒否していたが、どのように国益を守るのかが描かれている。後半は、日米通商条約の締結に向けて、朝廷の勅許を得るために苦心する様子や、安政の大獄に巻き込ま

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    2015年08月17日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(上)

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    江戸幕府に交易と北辺の国境策定を迫るロシア使節のプチャーチンに一歩も譲らず、領土問題にあたっても誠実な粘り強さで主張を貫いて欧米列強の植民地支配から日本を守り抜いた川路聖謨。軽輩の身ながら勘定奉行に登りつめて国の行く末を占う折衝を任された川路に、幕吏の高い見識と豊かな人間味が光る。(親本は1996年刊、1999年文庫化、2014年新装版)

    本書は、勘定奉行としての川路聖謨の事績を小説化したものである。内容の大半を、プチャーチンとの交渉が占める。幕末にロシア使節、プチャーチンが来航した事は知っていたが、どの様な交渉が行われていたのか、イマイチわからなかった。
    本書を読むと、幕臣たちが幕末の外交

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    2015年08月17日
  • 暁の旅人

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     医師・松本良順を扱った司馬遼太郎氏の「胡蝶の夢」を読んでいたので、ずっと気になっていた本だった。
     司馬遼太郎氏のような、人格を浮きださせるような描写はないものの、蘭方医が必然不可欠になっていくのが判る。開国に向かうにつれ、日本でコレラが流行り、対処効果が見られたのは蘭方であり、天然痘にも種痘が効果的となっていく。 
     この時代の流れは凄い。さらに松本良順の魅力は時代に乗るのでなく、本人に備わった能力から、時代が取り残さなかった、”暁”という存在出している。
     幕末から明治になる中、戊辰戦争側について、会津藩、仙台藩へと進み、横浜へ戻っての投獄。才覚と実績あればこそ、日本初の私立病院の設立、

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    2015年08月10日
  • 新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨(上)

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     幕末、日本が諸外国から開国を迫られた頃、ロシアのプチャーチンと、開港・通商・領土についての交渉をした勘定奉行・川路聖謨(としあきら)の存在の大きさを知った。
     明らかに軍備、近代化の遅れを目にしながらも、屈せず、粘り強い交渉力、そして人柄が豊か。才能ある者は身分に関わりなく、埋もれず出てくる養子制度が、努力を絶え間なく続けていくような、偉人を生み出していったのだろう。通史と呼ばれている通訳の実力も凄い。
     長崎か交渉舞台が下田となり、この交渉中に起きた安政大地震の甚大な被害など、グングンと内容に引き込まれていく。世界遺産となった韮山反射炉はこの地震に耐え得ていたり、冬の強い海風、戸田村でのロ

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    2015年08月06日
  • 海軍乙事件

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    単に戦史をなぞるだけでなく、そこにさらっと人間を混ぜ込んできているから、のめりこんで読んでしまった。
    人物たちの緊張や悔しさなどがひしひしと伝わってくる。自然と涙がにじむ。
    こういう本が、千円もしないで買えるってすごいなあ。

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    2015年07月24日