吉村昭のレビュー一覧
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太平洋戦争でアメリカの戦力差を痛感した日本軍にとって、最後の切り札が細菌兵器だ。その開発を担った曾根二郎軍医率いる満州の極秘部隊は捕虜を使った人体実験を繰り返し、細菌兵器の実用化に努めていた。
作者は曾根の心情を一切書かず、人体実験という残酷な事実を淡々と述べることに徹し、曾根以外の人物には名前をつけない。こうした文章が曾根の不気味さ、孤独さを強調する。
また、曾根は一軍医でありながら、ただ細菌を作るだけでなく、ノミに寄生させて細菌を運搬する方法や人体実験患者の管理、陶器製の細菌爆弾の発明など、様々なアイデアを生み出しす。現実的な細菌兵器を作るためなら、人道や国際法ルールに違反しようが、彼 -
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三毛別羆事件を描いた「羆(ひぐま)嵐」を書いた際に、猟師に取材した話から着想した、熊退治の半小説短篇集。あくまでも内容は小説である。
収録されている7作とも、熊(1篇だけツキノワグマ、その他はヒグマ)を退治しなければならない動機が有り、最後に熊を討つ、それだけの話といえばそうなのだが、半分はドキュメンタリーというところもあって、展開がスリリングでリアリティーを伴う。正直なところ、4作目くらいで「どうせまた、熊を撃つ作品じゃないか」と考えたが、そんなこんなで一瞬で読み終えてしまった。
熊を退治するだけの話という風に読めば、日本昔ばなしになるわけだが、熊に襲われた人の死体(死骸)の表現などで、 -
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静かなる気骨の人、吉村昭の穏やかな声が聞こえるエッセイ集。(親本は平成17年刊、平成20年文庫化)
ⅰ 日々を暮らす
ⅱ 筆を執る
ⅲ 人と触れ合う
ⅳ 旅に遊ぶ
ⅴ 時を歴る
著者は、史伝小説の作者である。小説の中で自分を出すということが無い分、エッセイでは、人柄が溢れている。「資料の処分」は、死後のことを考え、不要となった資料を処分する話であるが、氏の考えは考えとして、もったいなく思った。小説家にとって、小説を書いてしまえば、無用の長物というのは分かるが、何が元ネタなのか、追跡が可能な方が後世のためだと思う。(とはいえ、一個人にそこまで求める事は酷であるが)
「小説に書けない史料」の話も -
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記録文学の第一人者による史実に基づいたフィクション小説。フィクションと言っても、殆どが史実に基づいており、敢えて実名を挙げなかったのは関係者に配慮してのことだろうか。
日本の歴史上の最大の暗部とも言うべき関東軍防疫給水部の創設から解散するまでを描いている。主人公は陸軍軍医中将・曾根二郎であり、石井四郎がモデルであることは自明である。
関東軍防疫給水部…七三一部隊はハルピン南部でペスト菌、チフス菌、コレラ菌などの細菌を兵器として活用しようと俘虜を使った極悪非道の人体実験を繰り返していたのは多くの日本人が知っていることだろう。本書では主人公の曾根二郎が関東軍防疫給水部を創設するに至った内面的な -
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さいきん、19世紀以前の日本と外国との関係について興味が湧き、関係する書籍を読んでいます。
この作品は、江戸時代末期に、幕府の役人として欧米列強との交渉にあたった川路聖謨が主人公の歴史長編です。
舞台は1850年代。
アメリカのペリーに続き、長崎にロシア艦隊がやってきます。
遠い江戸から駆けつけ、交渉にあたる川路。
その後、場所を下田に移し、厳しい交渉に望みます。
複数の通訳を間に挟み、対立する利害を調整していく交渉。
さらに、下田に大きな異変が襲い掛かって・・・という展開。
幕末の開国にあたっては、「欧米列強から高圧的な要求を受けて、日本側がかなり苦しい対応を余儀無くされた」という認識を持っ -
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各作品それぞれに死が絡んでくる短編6編収録の短編集。
小説や映画、マンガをいろいろ読んだり見たりしていると、ほんとに時々「変な話だったな」「奇妙な話だったな」と思うものがあります。
この吉村さんの『星への旅』もそんな本でした。
と言っても、作品の完成度が低いわけじゃありません。いずれの作品も吉村さんらしい真摯で丁寧な描写、
そして過剰に感情を挟みすぎない冷静な文章でとても文学としての完成度は高いと思います。
中でも死体となった少女が語り手となり、自身が解剖されていく日々が描かれる「少女架刑」は語り手の異様さもさることながら、
彼女の語りで解剖に一種の美しさが、ラスト場面の荘厳とし -
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【本の内容】
<上>
若き水主・磯吉の人間臭さのにじみ出た生々しい陳述記録をもとに紡ぎだされた、まったく新しい光太夫たちの漂流譚。
絶望的な状況下にも希望を捨てず、ひたむきに戦いつづけた男の感動の物語。
<下>
十年に及ぶ異国での過酷な日々。
ロシア政府の方針を変更させ、日本への帰国をなし遂げた光太夫の不屈の意志。
吉村歴史文学、不滅の金字塔。
著者渾身の漂流記小説の集大成。
[ 目次 ]
<上>
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