吉村昭のレビュー一覧

  • 漂流

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    過酷すぎる。児童文学の漂流ものならもっと楽しい無人島生活が描かれているはずなのに、現実の漂流生活は、ただただ餓えぬように食い繋ぎながら、いつ現れるとも知れない船を待つだけの日々である。せめて食料と水が豊富な島であれば、楽しみも見出だせただろうに、やっとのことで辿り着いた先が水も食料もない絶海の孤島だなんて、絶望して余りある状況ではないか。もちろん“ただ食い繋ぐ”と言っても、そこには並々ならぬ苦労と失敗があってのことではあるが、そうはいってもほとんど工夫のしようがないような状況の中ので、本当によく生き抜いたものだと思う。御仏への純粋な信仰心がなければ耐えられなかっただろうし、御仏はもちろんのこと

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    2026年06月18日
  • アメリカ彦蔵

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    好きなんです、吉村昭の漂流モノ。小説なのにドキュメンタリーのような感覚で読めました。漂流、明治維新、アメリカ南北戦争に外国人殺傷事件。ジョン万次郎に劣らず彦蔵の人生も波乱万丈です。アメリカと日本、2国の橋渡しをしながらも、どちらの国にも彼のふるさとは無い。けれど、もし晩年の彼に平凡な水夫としての人生とどちらが良かったか聞いたとしたら、アメリカに行って良かったと言うのではないかと思う。そうあって欲しい。

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    2026年06月13日
  • 関東大震災

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    ネタバレ

    関東大震災から100年が経ち、あまり当時のことを知らなかったので読むことにしました。
    前触れもなく襲い掛かってくる地震に対し、当時の東京、横浜に住む人々の悲惨さがよく描かれています。
    変な噂が広がり暴動が起こったり、犯罪も増えたりと悲惨な状況だったんだなと身が震え上がりました。
    今年に入って能登半島地震、そして昨日は四国で地震があり、地震に備えた準備をする事は、非常に大切な事だなということを改めて学びました。

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    2026年06月12日
  • 破船

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    終始暗くて怖い場面も多かったけど、地域によって形は違うとしても、近代以前の日本の各地には、ああいうムラ独特の習わしや信仰、そこでの共同体の在り方があったんだろうなと思った。全然違う時代に生きている私でも、なんとなく「日本らしいな」と腑に落ちてしまうところがあった。

    船に群がる村人たちの姿を読んでいると、全然違うものではあるけど、ハイエナとかハゲタカみたいなものを連想してしまった。

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    2026年06月12日
  • 漂流

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    これがほぼ史実、ということに驚く
    ロビンソン・クルーソーも目じゃないね


    とか言って「ロビンソン・クルーソー」を検索したら、これも元になった事実があるらしい

    とはいえ、ロビンソンは約4年、長平は約12年
    アホウドリしかいない、水源もない島でよく生き延びたものだ
    長平が無事に本土に帰り着いたところまで読んで、嬉しくもあったが悲しい気持ちにもなってしまった

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    2026年05月29日
  • 漂流

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    稀に出会う名作…

    私は読書のスピードが遅いです。しかし、500ページ超の長編を、通勤電車の中だけで3日で読み終えてしまいました。

    江戸時代、土佐藩の船乗りの長平が、小笠原諸島から更に離れた絶海の無人島に漂着し、水も湧かない、作物も育たない環境で12年以上過ごし、奇跡的に帰還する物語です。

    とにかく次の展開が気になって気になって仕方なく、あっという間に読み終えてしまいました。(全ての小説がこれくらい面白かったら、いくらでも本を読めるのに)

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    2026年05月20日
  • 漂流

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    どんな苦境に立たされても、希望を持つことが、何よりの原動力になるのだと感じさせられました。出会えてよかった作品です。

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    2026年05月18日
  • 漂流

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    ネタバレ

    これって江戸時代の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』じゃない?
    昨年読んだ『破船』もヤバかったけど、この『漂流』もえげつなかった。最後の方、電車の中で泣きながら読んでた。

    後から漂着したグループが先着民の異様な姿を見たりサバイバル譚を聞いたりして絶望、そして先着民は仲間が増えて大喜びっていうめちゃくちゃ残酷なテンドンがリアルだわ〜〜〜〜

    衰弱して死にゆく男が仲間に「(もしお前たちが日本に帰れたら)妻に苦労をかけてすまなかったと、そして息子たちには、決して船乗りになってはならぬと伝えてくれ」って遺言するシーンが個人的に一番食らったかも。

    あと最後の方、船が完成していよいよ出航が近づいた頃は

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    2026年05月14日
  • 虹の翼

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    ネタバレ

    「『才能と努力があれば夢は実現する』というわけではない。時代背景と周りの理解、そして、何より十分な予算も必要なのだ。」
    これがこの本の全てになる。
    この身も蓋もないような現実は「才能があり、努力さえあれば実現する」と思っている人たちは、この本を読むと良いだろう。
    私も含めてそうであった。

    ライト兄弟は有名だが、二宮忠八は世界で有名ではない。それはなぜか?
    世界初飛行を行ったことを認められていないからである。
    いくら練習時にベストタイムが出たとしても、公式な大会でその記録が出さなければ、アスリートとしての記録は認められない。
    現在では割と道具が揃っているので、その証拠が残されるであろうが、夜中

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    2026年05月10日
  • 高熱隧道

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     吉村昭の小説は軒並み好きで、『羆嵐』をはじめとして何冊か読んできた。
     この小説の内容は知らず、黒部の発電所という最低限の前情報から、戦後の黒部ダムを描いたプロジェクトX的な小説なんだろうなと思っていた。ところがどっこい、読み進めるととんでもない小説であることが明らかとなり、度肝を抜かれた。あらゆる意味で現代の常識が通用しない、凄絶極まる物語だった。

     まず、その過酷な環境。岩盤の温度が165度、体は腰の辺りまで45度の湯に浸かるというとんでもない状況で岩盤の掘削等の業務を行う……とのこと。平均月収の10倍と言われる給与を貰ってなお割に合わないような、意味不明な労働環境だ。

     次に、それ

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    2026年05月04日
  • 羆嵐

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    『破船』の後、2冊目。吉村昭は本当に巧い。
    獰猛な熊に食い殺された6人もの村人。熊の息づかいや気配すら感じられるようなリアルな文章に怖さが一層増した。何って熊撃ちの銀四郎がカッコいい!プロの仕事に惚れ惚れする。

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    2026年05月03日
  • 漂流

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    ネタバレ

    一回目では、帯のネタバレの方が気になり、内容に対する考察をあまり書くことができなかった。
    そのため改めて感想を書いておく。

    本書は、江戸時代に絶海の孤島・鳥島に漂着し、12年もの歳月を経て奇跡的に生還した、実在の船乗りである「長平」の壮絶なサバイバルを描いた作品である。

    本書のテーマは「生きるとは何か?」ということである。
    単純に「故郷に帰りたい」という気持ちぐらいでは「それが叶わない」という絶望に変化しやすい。
    彼の到着した最初の「悲惨さ」が、むしろ希望に変わる。
    人間は「受け入れていない時」には「どれだけ失ったか?」を嘆く。
    しかし、ひとたび完全に受け入れた時、そこからは「どれだけ加わ

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    2026年04月30日
  • 大黒屋光太夫(上)

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     白子廻船の船頭頭職を世襲する大黒屋の婿養子となった光太夫は沖船職の役目を引き受け、その航海の途中に見舞われた暴風雨によって、遭難してしまう。絶望的なサバイバルの中、ほとんど奇跡のような形でロシアへと漂着することになった光太夫たちだったが、極寒のロシアを彷徨う中でひとり、またひとりと倒れていき……。

     ということで本作の主人公は、ロシア使節のラクスマンによってロシアから日本に送還されてきた船頭大黒屋光太夫の数奇な人生を描いた一冊です。抑制された文章の隙間から立ち上がってくる漂着劇の壮絶さと絶望的な状況にあっても決して日本へ帰りたい、という思いを捨てなかった光太夫の強い意志が魅力的でした。

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    2026年04月21日
  • 羆嵐

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    「野生動物に喰われる」という恐怖をリアルに感じたいなら、この作品をおすすめする。

    淡々と事実だけが綴られた文章なのに、ものすごい臨場感と迫力がある。
    特に実際に羆に襲われるシーンの描写は、吉村昭さん特有の頭に映像を浮かばせる文章のせいで、そこらのホラー映画なんかよりずっと恐ろしい。

    そして北海道の開拓がどれだけ過酷だったか思い知らされる。

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    2026年04月19日
  • 漂流

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    この作品を思い返すとき、まるで実際に自分が鳥島にいたかのようにリアルな映像が頭に浮かぶ。
    吉村昭さんの情景描写は本当に凄い。
    これはもう体感に近い。

    主観による心理描写などほとんどなく、登場人物の言葉や行動だけで彼らの心情が手に取るように伝わる。

    しっかりドラマチックなのに、ドキュメンタリーのような独特な世界だ。

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    2026年04月19日
  • 高熱隧道

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    ネタバレ

    黒部峡谷のダムや落水発電のためのトンネル(隧道)の完成までの事実に基づいたフィクション本。フィクションといえど、緊迫感や焦燥感などは事実同様なんじゃないかと思うような手に汗握る文章だった。
    最高165度にも達する環境での採掘。その中で人間やダイナマイトを冷やすための水が瞬く間に蒸気に変わってゆく。全く知られていなかった泡雪崩(ほうなだれ)での宿舎消滅や、20mのブナの木が頭から何百本も突き刺さった宿舎。完成までの3年でのべ300名を超える死者。
    掘削の話だけなのかと思っていたが、監督側(技術者)と労働側(人夫)との関係性にも深く触れていて、読み応えのある本だった。

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    2026年04月17日
  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

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    シーボルトの娘、お稲の生涯と幕末から明治維新の激動の世の動きを描く。作者の緻密調査が尋常でない事がこの長編の細々とした描写で窺え、お稲の芯の強さ、行動力を讃えた伝記と言っても良い内容に主人公には羨望すら覚える。思えば、小学校の教科書に載った内容は朧げだが、異国人との混血で偏見の中でも力強く生き、日本で初めて女性の西洋医になったことだったろう。長崎を中心に宇和島、岡山、大阪、東京と頻繁に往き来したこと、有力な人々とパイプを持てたことがずいぶん支えになったことも今回知ることができた。読んでよかった。2026.4.15

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    2026年04月15日
  • 冬の鷹

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     初めてオランダ書を目にして以来、オランダ語に強い関心を抱いた前野良沢は大通詞の西善三郎が江戸に来ていることを知り、会いに行くが、オランダ語の習得は難しく時間の無駄でしかない、と伝えられる。その後、青木昆陽に師事した良沢だったが、大通詞の吉雄幸左衛門からもオランダ語を理解することが厳しい旨を伝えられて消沈する。江戸でオランダ語を学ぶことに限界を感じた良沢は長崎でオランダ語を学ぶことになり……。

     ということで本書は、オランダの解剖書『ターヘル・アナトミア』の翻訳という一大プロジェクトに共に挑みながらも、性格の違い、考え方の違いが対照的であったために、名声を得ていく杉田玄白と得られるはずだった

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    2026年04月12日
  • 羆嵐

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    昨年の熊被害が近所でもあったため熊の小説で有名なこちらを手に取ってみました。
    テレビで内容は知っていたがグイグイと引き込まれてすぐに読み終わってしまった。
    熊の恐ろしさを改めて思い知ったので山に軽々と行けなくなりました。

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    2026年04月04日
  • 高熱隧道

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    大規模工事について、ふと興味を持ち手に取る。
    200ページ程の内容で、割とすぐに読み終わる。

    戦前の黒部第三発電所工事にまつわる灼熱の掘削作業についての物語。
    100度を上回る熱を発する岩壁の中、黙々と掘削が進められ、坑夫が犠牲になっていく。
    物語は彼らを指導する技師の目線で描かれていた。

    作業日誌のように、作業の進捗と起きた出来事を中心に語られていく。
    人の手が加わることを拒むような黒部峡谷の自然が、数多の試練を課してくる。
    起きている出来事が現代の基準とは大きく異なる。
    社会にとっての人命の軽さ、家族にとっては現代と同じく重い家族の命、太平洋戦争直前の緊迫感、行政組織の歪さ。それが説得

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    2026年03月20日