吉村昭のレビュー一覧

  • ポーツマスの旗
    文字通り国の存亡をかけた綱渡りの駆け引きが丁寧に書いてあって、日本史的な結論はわかっているんだけどドキドキしながら読んだ。この構成、最高。
    自分としては小村寿太郎の私生活が意外にクズだったのが面白かった…
  • 破船
    物語はフィクションであろうが、舞台にとっている設定は必ずしもフィクションとも言い切れないのかも。
    貧しい漁村が生きるために、冬の荒れた海を航行する船に向かって火を灯し灯台と勘違いさせて座礁させその積荷を奪ったという苛酷な生きる知恵とその悪行に対する大きな報い。
  • アメリカ彦蔵
    ジョン万次郎は有名だが、アメリカ彦蔵は知らなかった。吉村昭の史実の正確性を大切にする筆により激動の一生を追体験することができた。彦蔵の眼を通して、幕末維新、アメリカの南北戦争まで見渡すことができる。吉村昭の本は全て読んでみたくなった。
  • 雪の花
    職場で薦められた本です。
    頁数、文字数は多くないけれど、中身はとても重いものでした。

    ワクチン概念のない時代の人たちに、病気の種を身体に入れることを説くのは大変なことだと思う。
    私利私欲なしに、「人々を天然痘から救いたい」という熱い思いに、感謝したい。

    映画化されるようですが、京都から福井への山...続きを読む
  • 海の史劇
    舞台は日露戦争。主に航海中のバルチック艦隊内部や日本海海戦の様子が書かれている。日本側の情勢、二百三高地攻略、ポーツマス講和の内幕など詳しく書かれている。読みやすく読者を退屈させない。
  • 羆嵐
    やー、怖かった。直木賞の「ともぐい」もドキドキしたけど、こっちのほうが格段すごい。視点がいいね。カメラでずっと追ってる感じ。何も起こらない景色までも、嵐の前の静けさを感じさせて、ハラハラドキドキです。
     この世で遭遇する可能性がある中で一番怖いのが羆なんじゃないでしょうか。もう、ゴジラですね。でもフ...続きを読む
  • 羆嵐
    面白い。自然の圧倒的な力を前にした時の人間の無力さ、人間くささ、諸行無常みがある(語彙力がアホですみません)。導入と終わり方も最高のエンタメ小説。
  • 羆嵐
    自然を前にして人間はなんて無力なんだと思い知らされた。文章だけで事件の緊迫した様子が想像出来ました。当時の人々はどれだけ怖かったんだろう。。
  • 陸奥爆沈
    昭和18年6月、瀬戸内海の桂島泊地で謎の爆発で沈没した戦艦陸奥。なぜ事故が起きたかを丹念に検証する作品。

    最先端の技術を用い、国と国の争いで抑止力として重要な存在。浮かべる海城の戦艦。しかしながらそれを動かすのは人。帝国海軍の過去の歴史から同種の事故が頻発していることを筆者は知る。

    技術の極致、...続きを読む
  • 羆嵐
    羆が普通に出没する地域に実家をもつ者です!
    春から実家終いでひとりで片付けはじまるのに読んでしまったことを後悔してます(笑)キツネの鳴き声にもビビり倒す人間なので、被害者が出るたびに「ァァァ…」となりながら読み進めてました。今年は近所にこないといいな、と願ってます(笑)
  • 破船
    なんだろうな...海の恵みの描写とか四季の移り変わりの描写とかうつくしい風景目白押しのはずなのに人々の暮らし描写の陰鬱さがそれに並ぶ不思議。村から出たいとも思わず村長を中心に一致団結することで暮らしが成り立つ不思議。地方の因習ネタのホラーとか好きなんだけど現実に即するとなるとこうなるのか...
  • 羆嵐
    羆に襲われた北海道の貧しい開拓集落の恐怖が淡々と描かれ、かえって怖い。
    エリート風の分署長とアウトロゥな熊撃ち銀四郎、そして熊撃ちの経験にに賭ける区長など、登場人物のキャラも際立っている。

    コレは面白い本だ。
  • 羆嵐
    めちゃくちゃ面白い。

    銀次郎!

    人間パートがたるいのではなく、動物を通じて人間を描くのが正解。
    銀次郎の豹変ぶりも良い。どことなく七人の侍的。銀次郎は菊千代か?

    セリフ頼りではなく、描写でとことん描くの読書の醍醐味。情景が浮かぶだけでめちゃくちゃ怖い。
    骨を砕く音とか赤子を取り出したとか、怖い...続きを読む
  • 戦艦武蔵
    長崎で建造が始まった第2号艦。その地形や造船に関わる人数を考えるとその存在を秘匿するのは容易ではない。前半は数々の困難を乗り越えて巨艦を完成、引き渡しまで。後半は戦艦武蔵と名付けられ戦線に合流するも時代は航空戦力が主になりその能力を発揮できない。
    読みだしたら止まらない。
    知っている最後に向けて話は...続きを読む
  • 深海の使者
    ドイツまでの3万キロを潜水艦で往来していたという事実に驚きました。片道2ヶ月以上、いつ敵に襲われるかわからない状態で、しかも狭い艦内で過ごす精神力。昔の軍人さん達はこのような過酷な状況下でも命懸けでお国のために任務を果たす姿に胸を締めつけられました。
    また、読者にその時の状況を思い描くことができるほ...続きを読む
  • 零式戦闘機
    零式戦闘機の誕生から終焉まで、史実とともに読むことができます。開発者と発注元である軍部との関係や、実戦で示された最新鋭機の活躍、製造工場から飛行場までの輸送手段に牛や馬が使われていたことなど興味深い逸話も知ることができました。
    吉村さんの作品は『熊嵐』以来でした。他の作品も手に取りたいと思いました。
  • 漂流
    江戸時代の漁師の漂流サバイバル小説。この小説を読むと、次のような効能が得られると思う。

    ・困難な状況に置かれた時、どういうメンタルで過ごすのが自分にとっても他人にとっても最善なのか
    ・日々食事にありつけるありがたさ、運動の大事さ
    ・ものを大切にしようとする気持ちが深まる
    ・一方で、必要最低限のもの...続きを読む
  • 新装版 海も暮れきる
    読んでいる時と読後と、様々な感情が湧き起こる作品だと思った。そもそも『海も暮れきる』は、尾崎放哉の句の一部だが数ある句の中からこの語をタイトルにした理由を読みながら探したがわからなかった。
    何が放哉をここまで追い詰めたのか、なぜ酒に溺れるようになったのか。私は彼の激しい自尊心が自身を破滅に追いやった...続きを読む
  • 漂流
    とても面白かった。江戸時代の船乗りが太平洋の鳥島に漂流した後、試行錯誤をしながら祖国に戻る話。土佐で米を運んでいた長平ら4人は時化にあいアホウドリしか住まない孤島に漂流する。長平以外の3人は栄養失調などで死んでしまい一人で過ごすこととなる。その後儀三郎ら率いる大坂船、栄右衛門ら率いる薩摩船が漂流しそ...続きを読む
  • 破獄

    表題の通り、戦前から戦後にかけ4度の脱獄に成功した佐久間(仮称)を話の中心に据え、刑務所内の人間関係を丁寧に描写しているが、国内情勢・司法環境の遷移を緻密な調査をもとに数十年のスケールで厚みのある肉付けがされている。ドキュメンタリーとして非の打ち所ない読み応えある作品である一方、とにかく読み易さが...続きを読む