吉村昭のレビュー一覧

  • 戦艦武蔵

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    ネタバレ

     長崎から棕櫚が消えた。何かが起こっている。冒頭の不気味さ。その棕櫚のすだれに隠された港で造られていたものは。。。
     いやあ、もう悔しいというか怒りというか、時代遅れの巨大戦艦を造るまでの異常なまでの秘密主義に翻弄された人々と、ほとんど成果を上げることなくあえなく海中に沈んだ戦艦の乗組員たちが哀れでなりません。
     それにしても淡々と事実を積み上げてその狂気を描く吉村氏にはますます敬意を払いたい。素晴らしい作家です。現代でこのようなことができるのは。。。。小川哲さんぐらいでしょうか。まだ吉村氏の読んでない作品がたくさんあるので、これからも読んでいきたいです。

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    2025年12月07日
  • 漂流

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    凄かった…
    人も住めないような無人島におよそ12年も生き抜いてとか自分には到底出来そうにないと思った。
    気付いたらずっとページをめくっていたくらい気になってどんどん読むことを止められなかった。
    それくらい面白かった!
    主人公の精神力や行動力、周りを観察する力など学ぶべきところがたくさんあった。
    衣食住が確立していることに感謝したくなる。

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    2025年12月01日
  • 羆嵐

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    え、もう大惨事はじまったん…
    思いの外、事件が起きるのが早い!
    展開のテンポ良さと主人公の存在の曖昧さが余計不安を作りだす、短編ながらも濃厚な作りで吉村先生さすが…と舌を巻く。
    熊の恐ろしさから浮き上がってきたのは、北海道の自然の奥行き、そして立ち向かう人の営みのタフさと脆弱性。

    過疎化地帯が熊の出没を期に森と雪に飲み込まれていく…そんな大いなる自然の流れの一幕のようにも見えた。

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    2025年12月01日
  • 破船

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    ネタバレ

    なんて救いのない物語なんだ。
    海辺の寒村で自ら身売りした父の帰りを待つ10歳前後の伊作。母と下の弟妹たち3人と厳しい暮らしを乗り切るために切り詰めて暮らす様子がなんとも苦しい。父のいない間に村では一人前として扱われるようになり、大人たちの間で共有される秘密を知り、まさに大人の階段を登る。

    しかし、この苦しさが身を切るようでなんとも憂鬱になる物語ではあるのだが、淡々とした文体にどんどん引き込まれ読み進めてしまう。

    吉村昭の本は好きである。

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    2025年11月30日
  • 羆嵐

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    羆の脅威が詳細に書かれた記録文学。
    入植、開拓の厳しさ、土壌の善し悪しに裏付けされる自然の脅威。
    猟師とマタギの違いというか、そういったものがよく分かりました。

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    2025年11月30日
  • 吉村昭の平家物語

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    原文の空気感を残した、簡潔で読みやすい平家物語です。
    時代劇等での義経はイケメン俳優か演じていますが、物語では色白で背が低く、前歯がとくにつきでているとなっています。これが本当の姿でしょう。
    頼朝は、自分が清盛に助けられたために平家を滅ぼすことになった教訓から、平家を根絶やしにします。自分の兄弟までも殺してしまうような猜疑心が強い印象があります。
    最後には頼朝の子孫が味方だったはずの北条氏に殺されてしまうというのは因果応報でしょうか?

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    2025年11月25日
  • 高熱隧道

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    圧倒的な読みごたえと面白さ、学びにあふれていた。
    どこまでが真実なのかはわからない。緻密な取材による確かな骨組みと、その上に乗る人間ドラマ。
    あとがきで登場人物は架空だと語られていた。恐らくそう大差ないやり取りは実際あっただろうし、真面目で極めつくす性分や帰属意識など日本人として共感できる部分も多い。
    厳しく圧倒的な自然への挑戦。泡雪崩ホウナダレという言葉を初めて知った。人間がどうにかできるレベルではない。それでも立ち向かう人々の描写に心を打たれる。
    日々上昇を続ける温度の不気味さの表現も素晴らしい。絶望感が重くのしかかってくる。
    それでも諦めることなく試行錯誤を繰り返す姿勢に感銘を受けた。

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    2025年11月23日
  • 昭和二年生まれの流儀

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    戦争末期の軍隊の悲惨さと、状況が変わった途端に、転向して、あの戦争は軍部がやったと言う文化人などの話を興味深く読む。
    天地が自分のものという主観の拡大、夜郎自大の問題、大割拠という間違い、そして、文民統治すべき背広組自体が金権政治と腐敗に堕落して力をなくし、内部から軍服まがいの背広を育てて自壊したとの由。
    この状況が、戦後80年の今、2025年の政況と符合しているのが恐ろしい。

    何も信じないということ、現場と一次資料に当たるという吉村さんの姿勢は、研究と同じような姿勢だなと思い、信頼できる。

    明治維新以降を批判する一つの史観として英雄豪傑の出てくる司馬遼太郎と、人情、人間を描く池波正太郎と

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    2025年11月16日
  • 羆嵐

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    ネタバレ

     大正4年12月に北海道、天塩山脈の麓苫前村六線沢で起こった史実。丹念な取材に基づく臨場感溢れる記述。

     寒村を巨大なヒグマが襲う。2日間で6人が食い殺された。ヒグマが人間を喰う、その描写が凄まじい。数十人の村人は恐怖に耐えられず村を出る。近くの村の男たち、警察官が徒党を組んで狩りに向かうが、その巨大なヒグマの気配の前になす術がない。人間が対峙できるものではなかった。

     2025年11月、いま毎日ヒグマ、ツキノワグマが里山から街中にまで出没し、人間の生活圏と交わり、多くの被害が発生している。一度人間を襲ったクマがどうなるのか、この本に詳しい。

     恐怖でしかない。

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    2025年11月16日
  • 破船

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    何この表紙、と思い手に取った初・吉村昭作品
    大当たりでした
    話こそ暗いけれどあまりの緻密さに驚く
    船を見ると、あ、お船様、、と心の中で出てくるようになってしまった、、笑

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    2025年11月16日
  • 羆嵐

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    破船でハマってしまった吉村昭
    たまたま先輩に勧められた羆嵐
    この緻密さはクセになるほどで、想像力の嵐に揉みくちゃにされそうになった、
    まるで自分が極寒の中粗末なボロ小屋の中で羆に怯えている、飢えと寒さを凌いでいる非力な三毛別の民なのではないかと錯覚してしまうほど、緊迫した状況が想像できた

    お腹の大きな方を見ると、腹ちぎらんでくれが出てきてしまうようになり、このセリフだけはわたしの頭の中から消したいフレーズになった、、、

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    2025年11月16日
  • 長英逃亡(下)

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    もったいないの一言。
    時代が違えば。
    色々な人に支えられた逃亡生活も、何の信念も感じない関係から破綻する。

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    2025年11月10日
  • 羆嵐

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    今読むべき本。1915年の三毛別熊事件を題材にした小説。熊が火を怖がらないこと、足跡を意図的に戻って人を後ろから襲おうとするなど、頭の良さがわかる。

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    2025年10月31日
  • 羆嵐

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    淡々とした語り口で、描写も決してくどくないのに、羆による被害の凄惨さ・残酷さや、それと対峙した人々の凍りつくような恐怖が伝わってくる。本当に恐ろしい。
    人間社会は自然の世界に地続きで、そこには人間なんて相手にもならない存在がたくさん生きていることを思い出した。この意識は本当はもっとみんなが持っているべきで、適切に恐怖すること、その上で「棲み分け」という形で共生することがクマにとっても人にとっても必要なんだと思った。
    大正時代の出来事のノンフィクションドキュメンタリーということで、ちょっと読みづらさを警戒していたけど、すごく読みやすくて驚いた。

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    2025年10月25日
  • 雪の花

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    こんな人がいたことを知っておくことは大事だと思い読みました。最初からすごく意識や理想の高い医者ではなかったのがリアルな印象。きっかけや出会いがいかに大切なことかを再認識しました。諦めないことの重要さも。

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    2025年10月15日
  • 殉国 陸軍二等兵比嘉真一

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    ほんの80年前に実際に沖縄であったこと。もし自分があの時代の中学生だったら、…
    時代が常識を創り、思想を創り、正義を創る。
    蛆と虱と蝿にまみれた死体の山。それを踏んで進むのが戦争か。

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    2025年09月27日
  • 雪の花

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    先に映画を観ました。いつの時代も役人ってのは…といいつつ、一般の人にも受け入れられなかったわけで、なかなか信用するのは難しいか。本当を見極められる力を身に着けたい。

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    2025年09月27日
  • 羆嵐

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    第七師団、ニシン漁、穴持たず、村田銃、アイヌ、山岡銀次郎(二瓶鉄造のモデル)、、、これ全部聞いたことある!!ゴールデンカムイじゃん!!!
    ヒグマと第一次世界大戦頃の過酷な北海道の知識をゴールデンカムイである程度知っていたので、凄くわかり易かった

    大正に起こった三毛別羆事件
    こんなにも恐ろしい羆がいたなんて
    吉村昭先生の文章がまた凄すぎる
    日本語だけで綴られているから一つ一つの描写が細かく映像化して読めるんだよね

    こんなに凄い本を読み終えると、次に読む本が陳腐になりそうで困る

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    2025年09月16日
  • 仮釈放

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    「行動は見られるが、経験は見られない。」
    妻の浮気で、激怒し出刃庖丁で胸を刺すのは
    行動だ。殺意は経験である。好きで人を殺す者は
    いない。16年の服役後、再婚相手を過失で殺めて
    しまう。社会で生きていくためには、アンガー
    マネジメントが必要だ。

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    2025年09月15日
  • 帰艦セズ

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    多くは、戦中戦後を生きた人々の話の短編を集めた本です。ほとんどの小説が人の死を扱っています。しかし、読んでいて不快なことは無く、吉村氏のほかの小説と同様に、淡々と語られる物語を静寂の中で読むことは、良かったです。ただ、戦争中、戦後をこのように苦しい日々を送っていた人々が今の日本の社会、また、世界をどのように思うのか、と感じてしまいました。もう一度、ゆっくり読みたいです。

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    2025年09月15日