吉村昭のレビュー一覧

  • 関東大震災

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    吉村昭の小説はいつもながらリアルです。表目的な事柄だけでなく、どのように被害が拡大してひとびが些細なきっかけで凶暴になっていくのかが描かれている。

    戦争、震災、パンデミック、天災
    いつ起きてもおかしくない。理性を失った時、人はこんなにも簡単に人を殺める。
    そのことが淡々と数字を絡めて書かれている。

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    2023年09月14日
  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

    購入済み

    ゴツゴツとした歯ごたえ

    作家吉村昭のゴツゴツとした歯ごたえが際立つ作品である。司馬遼太郎が時代小説家歴史小説家なら吉村昭は史談 史劇作家 と感じた。想像力の羽ばたきを意図的に抑え、史実に語らせる、という手法がこの作品にも満ちている。そのような手法で描き出される、時代に置き去りにされる老いたシーボルトや、正式な医学を前にして身を引くお稲を感傷を交えずに書き上げている。

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    2023年09月03日
  • 高熱隧道

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    黒部第三発電所建設のための軌道トンネル掘削を描いた本作品。
    黒四ダム建設のような荒々しい男の戦いをイメージして読み始めたものの、ただただ過酷な自然との戦いが休むことなく続き、事故が起きる度に打開策に注力し、やがて克服する人々の様子を描いているのだけれども、少しも自然に勝ったという気持ちを抱かせてくれない、ある種切なく悲しい物語に感じました。
    おそらく現在の技術でもってしても、このトンネルを貫通させるのは非常識極まりないもののような気がしますし、それに従事した人々の姿は決して情熱なんてものではなく、得体の知れない恐ろしい何かが原動力になっているのがひしひしと伝わってきました。
    ラストは想像とかけ

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    2023年09月01日
  • 関東大震災

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    今年で関東大震災からちょうど100年。その間にも大きな地震を何度も体験してきた。将来、また大きな地震が起こると言われているが、過去からどれだけのことを学べているのだろう。

    本書は、関東大震災の発生前、発生後の様子、それによって起こったデマ、どさくさ紛れに起きた甘粕事件について、まるで見てきたかのような解像度で描かれている。

    建物の耐震性は向上し、関東大震災のような被害は多少起きにくくなったかもしれないが、津波への対策などまだ課題はある。また集団心理については、あの頃とあまり変わってないのではないかとも思った。

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    2023年08月31日
  • 関東大震災

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    100年前に起きた関東大震災の状況を丹念な取材と著者の筆力で当時の惨状が生々しく再現されています。
    飛んできたトタンで首が切り落とされた話や火災旋風やデマの恐怖などこれから起こると言われている大地震のイメージトレーニングとしても役立ちそうです

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    2023年08月20日
  • 冷い夏、熱い夏

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    ある冷夏の年の8月、主人公の「私」の弟の肺に影がみつかる。残念ながらそれは、悪性腫瘍の中でも特にタチの悪いものであり、1年以上の生存例が皆無であることを、「私」は医師から告げられる。「私」と親族たちは、弟が癌であることを隠しておくことを決める。手術後、弟は一時的に体調を回復させるが、徐々に痛みを訴え、体調を崩していき、再度入院することになる。癌は進行するが、治療する方法はなく、病院での措置は痛みを和らげること、そして、出来るだけ長く生きてもらうことしかない。徐々に身体の自由を失い、痛みが耐えられないものになっていく弟。まさに、闘病である。そして、残念ながら、前年とは打って変わった翌年の猛暑の夏

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    2023年08月19日
  • 破獄

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    白鳥由栄と思って、読み進めた。
    佐久間の人間性は特異かも知れないが、実はかなり今でも通じる人間の根底にあるものだと思う。
    脱獄させないために手錠足錠をとること人間らしく扱うことが、更正につながる。この考えは、教育界にもつながると思う。

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    2023年08月06日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    上巻の途中からはどんどん読める。

    事件そのものの描写は100頁から133頁までしかない。

    事件前後の緊迫した状況が、確かな筆致で描かれている。

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    2023年08月03日
  • 吉村昭の平家物語

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    吉村昭の作品は色々と読んでいるのだが、本作は「異色作」と言えるのかもしれない。が、なかなかに興味深く読んだ。
    本作は「古典文学を現代語訳というようにすることで、少年少女向けとして世に問う」という企画で登場しているのだという。言わば「現代語訳『平家物語』 吉村昭 訳」というような一冊なのだ。
    吉村昭は熱心に取材を重ね、そういう成果を踏まえた、作中世界で流れる時間や景色が強く感じられるような、濃厚で精緻な描写で知られていると思う。本作は必ずしもその「本来のスタイル」ということでもない。「翻訳」なのだ。同時に、伝えられている『平家物語』を詳細に訳出しようというのでもない。好いテンポで、「普通の小説」

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    2023年06月27日
  • 破船

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    やっぱり吉村昭先生の作品に間違いは無いです。
    生きる為には難破船にだって…。
    人間が一番怖い,そう思える作品でした。

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    2023年06月17日
  • 桜田門外ノ変(下)

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    桜田門外の変が、現場を指揮した水戸藩士関鉄之助の視点から訥々と語られている。膨大な資料を基に徹底的にリアルに描かれており、読みながら大老井伊直弼は生かしてはおけぬと思わされるほどである。桜田門外での井伊大老の襲撃シーンは、鉄之助の横で観ていたかのような映像記憶が残る。事変後は、鉄之助はじめ関与者の過酷な逃避行には胸が締め付けられた。吉村昭の筆力に感動する。★5つでは足りない。

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    2023年06月16日
  • 破船

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    面白かった。面白いというと不謹慎だが、淡々とした文章に引き込まれて一気に読んだ。吉村昭氏の本はノンフィクションの記録文学を5冊ほど読んだが、純粋な小説は初めて。
    物語は、どこかの島の南端にある小さな漁村が舞台である。そこに住む少年の視点で書かれているが、食料もままならないほど貧しい生活である。村の人々が待つのは「お船様」で、物資を載せた商船が村の近くを通りかかるときに難破し流れつくものだ。手をこまねいて待つだけでなく、海が荒い日に浜で火を起こして座礁を誘う。お船様は村にとっての恵みであり、1船来れば村全体が何年も飢えずに済むだけでなく、出稼ぎに行く必要もなくなるので影響は絶大だ。
    そんな難破船

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    2023年06月02日
  • 新装版 海も暮れきる

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    ネタバレ

    尾崎放哉はじめて知った
    終盤はどんよりしていくが、お遍路さんの訪れや近所の看病してくれるおばさんのことなど、良いこともあり対比が素晴らしかった

    薫さんはなぜ最後の最後に飛んできたんだろう。どういう心境なのか

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    2023年05月06日
  • 新装版 間宮林蔵

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    かなり面白かった。歴史物で文章が頭に入りづらいこともあったが、間宮林蔵と海峡について知識を得ることができ面白かった。

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    2023年04月30日
  • 雪の花

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    福井藩町医だった笠原良策が天然痘の治療法である種痘を日野鼎哉と協力して福井で広める話。福井という土地柄異国の治療法を広めるのに苦労するところは陰湿な土地柄が出ているようだった。五臓六腑は心、肺、肝、腎、脾の五臓と大腸、小腸、胃、胆、三焦、膀胱の六腑の事らしい。

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    2024年11月19日
  • 破獄

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    「吉村昭」の長編小説『破獄』を読みました。
    『新装版 逃亡』に続き、「吉村昭」作品です。

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    驚くべき手口に、大胆な実行力で、四回の「脱獄」成功。 
    犯罪史上に残る無期刑囚を描いた「吉村」記録文学・畢生の大傑作。

    昭和11年青森刑務所脱獄。
    昭和17年秋田刑務所脱獄。
    昭和19年網走刑務所脱獄。
    昭和22年札幌刑務所脱獄。
    犯罪史上未曽有の四度の脱獄を実行した無期刑囚「佐久間清太郎」。
    その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る

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    2023年03月20日
  • 逃亡

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    「吉村昭」の長編小説『新装版 逃亡』を読みました。

    この季節になると第二次世界大戦に関連する作品を読まなきゃな… という気持ちになるんですよね、、、

    「吉村昭」作品は、昨年10月に読んだ『漂流』以来ですね。

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    戦争に圧しつぶされた人間の苦悩を描いた傑作

    軍用飛行機をバラせ……戦時下の緊迫した海軍航空隊で、若き整備兵が背負った過酷な運命とは?
    初期の力作長篇が待望の再登場
    解説・「杉山隆男」
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    1971年(昭和46年)に発表された作品… 逃げる男の心理を、戦争という暗い存在とともに巧みに描いた傑

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    2023年03月19日
  • 海の史劇

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    日露戦争の事は全く無知であったが、この本で旅順戦での乃木将軍の稚拙な作戦行動、バルチック艦隊が喜望峰を迂回して壮絶な大航海の後に日本海に来た事、日本海海戦が僅か2日で決着がついた事などが吉村昭氏の淡々とした書法で書かれており、とても楽しく興味深く、面白く読むことができた。

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    2023年03月13日
  • 三陸海岸大津波

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    昭和45年に、明治以降の、三陸海岸で起きた3回の津波について調査、聞き取りをした記録。
    実際の津波はもっと多く発生しているが、大きかったものが3回らしい。
    犠牲者は明治29年は26360、昭和8年は2995、昭和35年は105名。いろいろ対策をして、犠牲を減らせるようになっている、今後は亡くなる人もいなくなるのではないか、というセリフがある。
    2023年3月に読んでいるので、その予測が裏切られていることがらわかる。
    被害のたびに対策しても、それでも被害があるという事実を忘れずに、自分も準備しようと改めて思った。

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    2023年03月12日
  • 新装版 赤い人

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    明治初期の囚人が北海道に送られて開拓していく。彼らは皆重罪犯だが、時代の転換期だったし本当は悪く無い人もいたんじゃないか…?囚人の扱われ方がとにかく酷くて真冬でも足袋すら支給されない。典獄は上席に足袋などを求めるが、北海道の寒さをわかっていないのか、却下される。で、支給されない。日本らしい縦割りだなぁ。作業効率を考えて自腹で勝手に支給してもバレなそうだけど。典獄は桁違いにお給料もらってたみたいだし。そんな感じで囚人は安い労働力としてこき使われバタバタと死んでいく。脱走する人も続出し、逃げきれず死んだり、看守に殺されたりする。海外を視察した偉い人によってこの待遇はあり得ない。という風潮が流れ、明

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    2023年02月21日