吉村昭のレビュー一覧

  • 三陸海岸大津波
    昭和45年に、明治以降の、三陸海岸で起きた3回の津波について調査、聞き取りをした記録。
    実際の津波はもっと多く発生しているが、大きかったものが3回らしい。
    犠牲者は明治29年は26360、昭和8年は2995、昭和35年は105名。いろいろ対策をして、犠牲を減らせるようになっている、今後は亡くなる人も...続きを読む
  • 高熱隧道
    とても面白かった。

    最初の方は、半沢直樹とか八甲田山みたいな感じかなーと思っていた。権力を持ったヤバイやつが金と力で推し進めていくのかと、で、この課長の藤平という人が苦労する話なのかと思って読んでいた。

    違った。特に悪役は出てこない。読んでると、本当に工事中止が残念でならなくなってくるから、天皇...続きを読む
  • 新装版 赤い人
    明治初期の囚人が北海道に送られて開拓していく。彼らは皆重罪犯だが、時代の転換期だったし本当は悪く無い人もいたんじゃないか…?囚人の扱われ方がとにかく酷くて真冬でも足袋すら支給されない。典獄は上席に足袋などを求めるが、北海道の寒さをわかっていないのか、却下される。で、支給されない。日本らしい縦割りだな...続きを読む
  • 三陸海岸大津波
    すごい記録!
    この本が出版されたのは、2004年。2011年6月に12刷。
    津波がどんなふうに襲ってくるのか、映像も写真もない、文章だけの表現は本当にこわい。当時の教職員が熱い思いで児童生徒に記録させているのも、それを紹介してるのも、凄いとしかいいようがない!
  • 破船
    こんな過酷な人生を送る人々はいた事に自分の無知を思い知らされた。自分は何と贅沢な日々を暮らしていることか.....
    どうしてこのような土地に暮らすようになったのか?嘗ての平家の落人の部落のように何かに追われたのか、それとも疫病が流行って逃れたのか....
    人間が生きていくには食べることが一番大事でそ...続きを読む
  • プリズンの満月
    この作家の人物描写はオーバーで無く冷静な目で見ていると思う。文体は簡潔だが余韻がある。特に最後の文章にそれを感じます。刑務官を務めあげてから多分サンシャインビルの工事現場の監督を務めそれも無事に勤め上げる。刑務官時代の一時期巣鴨プリズンで戦犯と向き合った時の回想を描いている。確かに戦争の後始末把握戦...続きを読む
  • 蚤と爆弾
    731部隊の歴史的史実の小説でここ迄赤裸々に内容を知ってしまった事実が爆弾級でした。
    曾根二郎と言う天才細菌学者が作り出す戦争兵器…
    正義とは何か,各々にどう解釈する事が出来るか問われる1冊でした。
  • 漂流
    「吉村昭」の長編ドキュメンタリー小説『漂流』を読みました。

    『虹の翼』に続き、「吉村昭」作品です。

    -----story-------------
    流れ着いたのは絶海の無人島、それでも男たちは生き抜いた。
    江戸時代の史料にも残る不撓不屈の生還劇。

    江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまっ...続きを読む
  • 新装版 海も暮れきる
    口語自由俳律で知られる尾崎放哉。その小豆島での最期の8カ月を描いた作品。享年41。
    酒乱で酒を飲めば攻撃的になる。人の施しによってしか生きられない。どうしようもない人間だと思うのだが、「結核」を病み、家族から疎んじられ、長くは生きられないと悟ると、そうなるのかもしれない。もっと句を詠みたかっただろう...続きを読む
  • 星への旅
    人の心の動きと体の動きはどちらも不可解なんだけれど、どちらも鮮やかに描写されて息の止まるような瞬間だった。
  • 戦艦武蔵
    戦艦武蔵が建造されてから沈むまで。
    見つからないように隠して建造するのは大変だし設計図の管理も厳重。
    大変な思いをしてできた船が沈むのは悲しいですね。
    その戦闘シーンも生々しくて実際にその場にいるような感覚にとらわれました。
    とにかく読みごたえがあり読みだしたら止まりません!
  • 関東大震災
    有名な関東大震災ですが、実際にどうだったのか?というのが克明にわかる小説でした。怖いです。本当に怖いです。よく復興したなあ、と感心するくらい未曾有の災害でした。が、人災の部分も多かったと思います。
  • 新装版 間宮林蔵
    間宮林蔵といえば、樺太の地図作った事くらいしか知らなくて、「ひたすら歩いて測量して地図作ってる、クソ地味な男」くらいに思ってたけど、これ読んでほんともうすみません、って思った。
    めっちゃ気合い入ってる漢でした!!
    そーいえば樺太って昔日本領だったもんねーだから地図書いたのね〜とか思ってて、ほんとそれ...続きを読む
  • 破船
    江戸時代の貧しい村における民俗についての詳細な記述が大変おもしろく、また一方で、彼らのある風習によって村に災厄がもたらされる展開はホラーやサスペンス小説を読んでいるかのようだった。

    物語は主人公の父親が身売りに出てから始まる。
    主人公が9歳という幼さながら一人で試行錯誤しながら漁をこなし、一家が食...続きを読む
  • 虹の翼
    ライト兄弟よりも先に飛行機を考え飛ばそうとしていた日本人がいたとはこれを読むまで知りませんでした。先見の明があったにもかかわらず、理解者を得られず資金もなく、ライト兄弟に先をこされてしまう。こういう人物についてしっかりと光を当てて書いてくれるのが、吉村昭という作家です。
  • 吉村昭の平家物語
    祇園精舎の鐘の声諸行無常の響きあり。
    誰もが一度は耳にする平家物語の冒頭であるがその内容は初めて読んだ。
    独特の死生観を持った吉村氏による現代語訳で読みやすかった。

    清盛の横暴、それを諫めバランスを取っていた子重盛。その重盛の死後、一気に破滅へと突き進む平家一族。源平の戦いとその間で激流に巻き込ま...続きを読む
  • 破船
    まずいまずいまずい、と、途中のあのシーンで呟いていた。
    だめだめだめ、と思いながら読み進めていたら案の定。
    辛いなぁ。救いと絶望がしっかりと絡まりあったラストだった。
  • 暁の旅人
    昨日、吉村昭の「暁の旅人」を一気に読みました。
    このテンポの良さは何だろう!
    会話文が極端に少ないせいかもしれません。
    話は幕末時代の幕臣医師・松本良順の生涯です。
    幕府から派遣され、長崎でオランダの医師ポンペから本格的な近代的西洋医術を教わります。
    そのためには当時としては大変珍しい刑死した遺体の...続きを読む
  • 生麦事件(下)

    事実は小説より

    筆者の描く史実は架空の物語をしのぐスリルを与えてくれる。世の中とはこんなに濃密な事実で満ち溢れているのかと。
  • ポーツマスの旗
    歴史小説として個人的には満点の作品でした。
    国の尊厳をかけたギリギリの外交交渉。容易に譲れない全権たちが、それでも講和成立に向け妥協点を探りあう。そんな緊迫した様子をまるで同室で見ているような臨場感が、この小説にはありました。小村という人物にも大変興味をもちました。乃木や東郷が英雄ならば小村も同等に...続きを読む