吉村昭のレビュー一覧

  • 破獄

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    吉村昭さんの小説は本当にハズレがありません。
    綿密な取材や時代考証を経て作り上げられる作品は完全なるノンフィクションと信じて疑わないようなリアリティがあり、そして人間味がありありと描かれています。

    本作の中心人物、佐久間の終始漂う不気味さと、その奥には必ず秘めたる真髄があることをしっかり印象付けて400ページを超える間、まったく飽きさせず、最後に急展開を見せる。
    出来すぎた物語ですが嘘くささを感じさせない。

    この上ない満足度を味わさてくれる吉村作品です。

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    2025年03月10日
  • 破船

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    すごい本でした。柚月裕子さんが手元に置いている本ということで購入しましたが一気に読まされました。少し古い本ですが、客観的でテンポ感のある無駄のない文章がとても読みやすく、感情に流されない描写は小さな貧しい漁村の風景や人々の生活を目の前に甦らせてくれました。流行りの軽いストーリーの本で時間を潰すのも良いですが、このような重厚感のある内容の本は読書をしたという充実感を与えてくれると思いました。しばらく余韻に浸りたいと思います。

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    2025年02月24日
  • 三陸海岸大津波

    購入済み

    教訓

    「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉がありますが、私も含めて今住んでいる場所にかつてどのような災害が有ったのかを調べて準備していた方は多くなかったのでは無いかと思います。自らの身に降りかからなければ、実感することは出来なかった多くの事。幾度となく繰り返される災害に対し先人は伝えようと石碑等を残していましたが、時が立つにつれてそれを意識する人は少なくなりまた多くの人が同じ様に被害を被る。とても残念なことです。現代は過去よりも映像等も含めて伝えていくことが容易になっているかと思いますが、それをどの様に受け止めて備え、起こった時にどの様な行動をするかで運命が分かれるのではないかと。

    #タメになる

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    2025年02月24日
  • 高熱隧道

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    黒部第三発電所につながるトンネル(隧道)は岩盤温度165度!
    当時のダイナマイト自然発火温度を50度以上超でもお咎めなし(戦時体制下にあり電力確保は国家命題)の異常な大土木工事を描く。着工から完工までたったの4年間!そりゃ犠牲者は300名以上でますわな。。

    ドキュメンタリーの体裁をとっているが、筆者の卓越した筆力により一気に読ませる。前半と後半で技術者たちを悩ませる内容に大きな変化があるのも魅力のひとつ。

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    2025年02月23日
  • 大本営が震えた日

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    太平洋戦争開戦の時の危機的状況を伝えるドキュメンタリー。上海号墜落、そこには米英蘭を敵に回す軍事作戦の暗号書が持ち込まれていた。電送だけでなく、文書による直接伝達を必須とした日本軍の愚かしさを感じる。真珠湾攻撃に至る場面では、日本の攻撃艦船部隊の隠密行動はほぼ成功していたことが分かった。しかし、宣戦布告の暗号文は米国にいち早く解読されていた。南方戦線での日本軍の先制攻撃を想定した米国は、結果として真珠湾を見殺しにし、「リメンバー・パールハーバー」がプロパガンダとして利用されることを許すことになったのだなぁ。

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    2025年02月22日
  • 少女架刑 吉村昭自選初期短篇集I

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    歴史小説のイメージが強い著者だったが初期にはこのような作品も出されていたのだなと発見。
    初出はいずれも昭和30年前後。7つの「死」の形が、当時の社会的な背景をベースに色濃く描かれている。一言一句が吟味、洗練され、過不足ない文章が心地いい。「服喪の夏」「星と葬列」が好きだった。いずれもまたじっくり読み返したい作品。

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    2025年02月17日
  • 雪の花

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    一生涯を種痘に賭けた一人の町医者。天然痘の流行の前に無力な福井藩の町医者、笠原良策。種痘の存在を知り長崎や京で学び故郷で予防治療に当たるのだが。
    映画化を機会に読んでみた感動作。余計な装飾がなく話のテンポが早いのが良い。
    吉村昭の医学もののジャンルも面白い。書籍、読書習慣が廃れていく中、今でも人気の衰えない稀有な作家。

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    2025年01月27日
  • 事物はじまりの物語

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    ネタバレ

    「解剖」から「万年筆」まで、13の事物について、日本に広まっていった経緯が簡単に解説されています。著者は有名な歴史小説家ですが、自信の想い出が織り交ぜられていて、単なる雑学本ではなく上質なエッセイとして読めます。西洋料理は当初は日本人には不評だったという点と、薩摩藩の西洋式帆船が日本国旗の起源だという俗説を訂正している点が、特に印象に残りました。

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    2025年01月27日
  • 大黒屋光太夫(上)

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    紀州から江戸に向かうはずが嵐に遭い遠くロシアまで漂流した商人、大黒屋光太夫。極寒の地を仲間とともに旅し、ロシア人の支援も受けて帰国を目指す。
    絶望からキリスト教徒に宗旨変えする仲間も出るなか、ひたすら帰国を信じる彼の姿は映画「ショーシャンクの空に」の主人公に重なる。深い教養やロシア語を身につける知性も武器に、細い糸を辿るように帰国への道を切り開いていく。
    吉村昭は華美な形容に走ることなく、淡々と彼らの
    漂流の旅を綴る。過酷な船上生活に極東の凍える寒さ、仲間と生き別れるつらさ…余計な形容を省いた描写が読者の想像をかき立てる。
    自分なら光太夫のように過酷な運命に立ち向かえるだろうか?異国の人々をも惹きつける人間的魅力を備えているだろうか?光太夫の強さにただただ感嘆するばかりだった。

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    2025年01月08日
  • 雪の花

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    天然痘、今のようにワクチン接種などによる予防策がない背景では、種痘するという行為が怖かったと思います。
    ネットもない時代では、口コミのような伝わり方が主で、途絶えさえないことへの執念は素晴らしいことです。
    雪山を越えるシーンは、何とか助かってほしいと願いながら、読みました。
    映画化されるとのことで、楽しみです。

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    2024年12月18日
  • 破獄

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    戦前から戦後の刑務所の設定だが、まるで現代かのように時代を感じさせない。
    刑務官の仕事は大変だ、敬意を持った。
    無期刑囚の佐久間が、彼の持つ頭脳と強靭な体力を犯罪で使わずにいたら、相当優秀な人物として有名になっていただろうと思うと悲しい。
    鈴江府中所長にもっと早く出会えてたら、佐久間は4回も脱獄しなかっただろう。

    引き込まれるように読みふけった1冊でした。

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    2024年12月15日
  • 闇を裂く道

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    確かに帯にあるとおり『高熱隧道』をしのぐおもしろさ。驚くのは鉄道省と国鉄の人事異動の多さ。こんな大工事してんのに所長や責任者がポンポン代わる。水を失った農民に最後まで向き合った静岡県庁の柏木さんが一番偉かった。

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    2024年12月10日
  • 冬の鷹

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    ネタバレ

    前野良沢、杉田玄白それぞれの特性・性格が反映された人生が描かれており興味深く読んだ。

    良沢の執念、玄白の社交性と統率力。両者どちらが欠けても解体新書は世に出版されることはなかっただろうと思った。
    良沢は玄白の祝いの席にも出席したのに、いくら性格が合わず、後ろめたさがあったとはいえ玄白が良沢の葬儀に行かなかったのは不義理だと感じた。

    個人的に好きな場面は老いて隠棲していた良沢を娘の峰子が迎えに来た場面。冬の鷹とはまさしく前野良沢のことだと思った。

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    2024年11月25日
  • 冬の鷹

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    解体新書の訳者は杉田玄白ではなかった、とこの本の概略について事前情報を得ていたので、杉田玄白はとんでもないやつだった!という内容なのかと思って読んでいたが全く異なっていた。
    私は良沢に共感する心と玄白に共感する心の二面性があり、どちらが自分にとっての幸せが掴める生き方なのだろうかと考えながら読んでいた。

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    2024年10月22日
  • 冬の鷹

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    教科書に載っている皆がしっている歴史の事実を、タイムスリップして覗き見ができた感じ。教科書ではわからない、そこに生きた人の性格や生き方に触れることができて面白かった。

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    2024年09月25日
  • 遠い日の戦争

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    八月は戦争関連の本を読む月間。

    太平洋戦争末期に北九州をB29による無差別爆撃で大量の市民を殺戮し、その後撃墜されて俘虜となった米軍兵と、その俘虜を斬首処刑した日本軍人。
    日本人が倹しい生活に苦しむ中、爆弾投下で大量殺戮をした米軍兵が収容所でぬくぬく暮らしていることに憤りを抑えられず個人の感情で斬殺するが、米軍兵が最後に残した愛する人の名前を呼ぶ声が耳に残る。果たして正義とは、戦争とは何か。

    戦後、連合国から戦犯として処刑されることを逃れるための逃亡劇は重苦しい、吉村昭の世界。

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    2024年08月14日
  • 雪の花

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    天然痘の予防のために種痘を広めた町医者の鬼気迫る命を繋ぐ戦いの記録です。

    ワクチンの考えがなかった日本にこの予防法が受け入れられるには大変苦心したと思います。自分の職場にもインフルのワクチンでも拒否反応のある人もいますし、気持ちが分からなくもないです。

    それにしても電車も車もない時代の雪山越えの凄まじさ!命懸けです。かなり後半になってもなかなか種痘法が受け入れられず、やきもきしました。私が車出してあげたい!と何度も思いました。

    子供たちが死んで大八車で運ばれていく列を見るのはもう嫌だと自分の命を削っても助けたい思う優しさが本当に泣けます。7日置きに種痘するって大変すぎじゃない!?

    自分の先祖たちも自分もこういう方達のおかげで命を繋いでこられたのかもしれないと思うと、頭が下がります。これは映画化されたら観に行きたいです。

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    2024年08月02日
  • 高熱隧道

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    昭和11年8月中旬、日本電力株式会社は黒部第三発電所の建設を開始した。
    豪雨、豪雪、急峻な崖。
    人を寄せ付けない大自然を相手に、欅平から仙人ダムまでの約6キロの隧道工事に命をかけた男達の話。

    ・感想
    超絶面白かった…!!
    立山黒部アルペンルートに旅行へ行く前に工事が過酷を極めたという黒部ダムとかその辺りにある発電所の背景でも知っとくか〜くらいのテンションで読み始めたんだけど、面白すぎて(内容的に面白いと言ってしまって良いのか分からないけど)あっという間に読み終わった。
    (作品はクロヨンでも黒部ダムでもなくそれより前の黒部第三発電所建設時の話)

    ずっーーーと「昭和11年っていつよ…ほぼ90年前じゃん…90年前にこんな人を寄せ付けない大自然相手に大規模工事を行った当時の人々すごすぎ。まじ感謝…ていうか自然恐ろしすぎ…。90年前って思ったより規則とかきちんとしてるんだなぁ」って思いながら読んでた。

    高熱断層により166度の岩盤から熱湯が噴き出す隧道工事、危険なダイナマイト作業、襲いかかる大自然。
    手に汗握る展開と人間描写が素晴らしい。
    そしてあのラストに唸ったわぁ…人夫達の目覚め。
    センチメンタルな人間ドラマな描写はなくて、対自然に挑む男達の戦い?(なぜここまでの犠牲を払いながらも工事を進めたのか。)がメインなので変なストレスがなくてそこも読みやすかった理由かも。
    わかりやすい悪役がいたりとか、主人公が咄嗟の機転で窮地を脱して万々歳!みたいな作品ではない。

    根津とか結構理想的な上司、責任者だった。
    「ここで起こったことは俺が許可した、俺に全ての責任がある」的なセリフがあって、職場の責任者のくせに責任とらない無責任役職者とは使命感とか責任感が雲泥の差だなぁ爪の垢でも煎じて飲ませたいと思ってしまったw

    好きな登山YouTuberが下の廊下(まさにこの作品の舞台になったルート)を歩く動画を以前みてたんだけど、今回この作品を読みながらその動画を改めて視聴しつつ、地形や位置関係を把握しながら読んでた。
    文中に描写されている険しすぎる環境や断崖絶壁のあの場所はこんな感じなのかな?昔は絶対もっともっと危険な道だったはずと想像をめぐらせたり。
    そんな場所を開拓し命をかけて工事してた人たちの凄さたるや尊敬しかないよーーー心の底から感謝の念を伝えたい。
    まさにこの作品の舞台となったキャニオンルートは本来なら今年開通する予定だったんだけど地震の影響で延期になったので開通したら絶対にこの本を携えていくわっっ。

    現代の人間の便利な生活は90〜100年前に現役だった先人達の血と涙と汗によって築かれたものなんだなと実感して改めて感謝しかなかった。
    でもそうやって便利な世の中が当然で当たり前になってしまった私たち…黒部ダムにも犠牲となられた方々の慰霊碑があるんだけど色々な思いが胸中を過った。

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    2025年03月19日
  • 破船

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    小さな村で過ごす少年の3年が書かれている。
    魚をみろ、魚でさえいつも体を動かしている、と口癖のように言う母。お金のため3年の奉公に出た父。お船様からの恵みがなければまともに食べていけない貧しい村。
    少年が成長していく描写が多いにも関わらず、いつこの日々が崩れるのかという緊張感や悲しさが終始漂っており、小さなお船様が来た時には、こうなるだろうと頭では分かっていながらハラハラした。
    悲しい物語と銘打たれている小説より、毎日を淡々と、感情さえも淡々と書かれている方が一層悲しく思えることもあるものだと思った。

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    2024年12月02日
  • 高熱隧道

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    戦時下での黒部ダム建設の過酷な労働状況を読み進めながら、働くという行為に向かう気持ちには共感できる場面が多かった。同時に、いとも簡単に人命が失われる、現代との著しい相違にも驚愕した。毎日当たり前のように使っている道路、橋、水道などの社会基盤を届けてくれた先人達に、感謝しなければならないと思った。

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    2024年07月13日